オリ主が再びIS世界でいろいろと頑張る話だけど…side:ASTRAY《本編完結》 作:XENON
「………依頼を引き受けることにした…」
「そうか……もしかしたらマルスとやり合う……厄介な事になるかもな」
「劾!マルスと戦うのか!!」
二人の会話に割って入るのはサーペントテール2…イライジャ・キール。彼にとってマルスは戦友であり弟分として共に任務に当たり兄弟のように仲が良かった。だからこそ感情的になってしまうのも無理はない
「待てよイライジャ、何もマルスと真っ向から戦う訳じゃない。それにだ依頼内容には戦う事は含まれてないんだ」
「でもなあ…劾はどうなんだよ」
「………依頼を引き受けることには変わらない。イライジャ、この依頼から降りてもかまない」
「…………………オレは降りない。依頼人とじかにあってから決める…ロレッタや風花は知ってるのかよ」
「ああ」
そっけなく言う劾…しかしイライジャは無理やり納得するしかなかった、劾もマルスのことには目をかけていたのを知っていたからだ
「わかった。じゃあ機体の整備やるからいくからな……………なあ、劾」
「なんだ」
「………なんでもない……」
それだけいうとMSデッキへと向かうイライジャを無言で見送る劾、リード……サーペントテール同士の戦いが現実になる日がこないことを祈るしかなかった
「8さん!核ミサイル発射予測地点は!?」
ー今、予測発射地点検索中………絞り込んだが大きく分けて四つだー
赤い炎…ファントムライトを揺らめかせながら全天周モニターには連合ロシア暗部組織が所有する衛星からから核ミサイルが撃たれるであろう弾道予測データ。しかも四方向。その中から一つを確実に選ばなければならない事実に焦りの色が見えた
翔真がクロスボーンガンダムX1・フルクロスで束が捕らわれた基地へ強襲をかけて15分、ミサイル発射まで5分…一刻も早く絞り込まなければならない
(…………どうする…8さんのおかげで四つにまで絞り込めたけど綱渡りな状況、ミサイル発射から着弾まで予測時間は五分。四方向とも距離は変わらない、もし間違えたら翔真さんはおろか周辺都市が…どうすれば……考えるんだ……でも時間が)
成層圏すれすれで滞空するゴースト…眼下にはロシアの大地、そして連合暗部組織の基地が米粒のよう見える。四方向のうち一つが間違いなく核ミサイルが発射される衛星…弾道予測、迎撃可能な時間、成功率を何度も繰り返し判断するも絞り込めない。傭兵になってからこんな状況に置かれたことは多々あったが、一人で行うのは初めて。フォントことマルスの思考速度はすでに限界を超えようとした時、何かとつながる感覚にとらわれた
(な、なんだ………核ミサイル……アソコから?…)
赤金に瞳を輝かせながら様々な情報が堰を切ったような溢れかえり四方向のうち一つから何かを強く感じる……理屈じゃない何かに引き寄せられるようアームレイカーを勢いよく引き伸ばし左右勝手反対に回し込み押し込み叫んだ
「8さん!ゴーストをミラージュ・ワ……っ!?」
鼻に違和感を感じ手で拭うと真っ赤に手の甲がそまる…鼻血がでている、しかし今はそんなことは気にしてはいられなかった。再びアームレイカーを押し込むとゴーストに変化が起きる。頭とバックパックが90度後ろへ、胸から下が二つに別れ両脚が左右に開きロック、最後に両腕が顔を隠すように背中へ向く
「………フ、ファントムライト展開!ミラージュ・ワゾー……いくよ!!」
ーサポートは任せろ!!ー
赤い炎、ファントムライトが展開と同時に加速し瞬く間にマッハ15を超え激しいGが全身に襲いかかった
Return:Mission04《接触と極寒の空を舞う蜃気楼鳥ーミラージュ・ワゾーー》(後編)side・ASTRAY:副題第一期《第111話「幻想殺し対超能力兵士」》
同時刻、マリア・デュノア所有の島
さんさんと太陽の日差しが白い砂を照らし、波が押し寄せる海岸におかれたビーチパラソル。その下に座るユキカゼ、レオがジッと空を見上げている
「ユキカゼちゃん、レオちゃん、なにたそがれて~る~の~♪♪」
「うわっ!」
「ひゃあ!?」
頬にいきなり冷たい感触に軽く声を上げる二人の背後にはこの島の持ち主でありフォントことマルスを匿っているマリア・デュノア、その手にはトロピカルジュース二つ握られ、イタズラが成功した子供のような笑顔をみせながら間に座り手渡した
「お、おどろかせるなって毎回言ってるだろ!?」
「そうだ!アニキから任務ってきいて来てみたら海水浴って……あたしたちはマリアさんと遊んでるヒマは」
「ノンノン、あんな暗い場所に籠もりっきりより、たまには外にでて太陽を一杯浴びなきゃだめよ~♪……女の子なんだし偶には私と話しをしましょ♪」
「い、いま、そんな気分じゃ」
「フォントくん……マルスくんの事が心配?」
何気なく、さも当たり前のようにでた言葉に二人は顔をふせ小さくうなづいたのをみて軽いため息をついた。二週間前にマリアとアリサがいる孤島に傷ついた翔真を連れ現れた傷だらけのMSから降りてきた三人はアリサに翔真を預け連れて行ったのを見計らって二人を残しマルスはマリアに報酬に関しての交渉を始めた
しかし交渉よりも海賊傭兵《クロスボーンバンガード》のリーダーを名乗るマルス達の機体もみたこともない。ただゴーストと呼ばれる機体がアリサが作ったクロスボーンガンダム・X1《フルクロス》と似ている。必要以上に素性を隠そうとする態度を言葉の節々から疑問を持ち思った踏み込んでみた
『もし間違えていたらゴメンね………あなた達は《この世界の先》から来たの?』
『……………!』
ほんの一瞬、身体が震えたのをみてマリアは悟った…わずかな間をあけサングラスを外したマルスは語り始めた。その事実に驚きながらも交渉し決まったのは大きく分け、
一、海賊傭兵《クロスボーンバンガード》をマリアが個人的に雇う(またの名をかくまう)。そして、この時代の翔真、一夏とは接触をせずに二人の行動を気づかれないよう影からサポートする(帰還するまで)
二、もし帰る手段が見つかり帰還した場合は自分たちがいた痕跡を完全に消し去る(不慮の事故等で目撃された場合は除く)
三、自分たちのことは偽名で呼ぶこと
そして四番めの条件…それを思い出しながら二人の頭を優しく手をおき撫で始めた
「な、なんで撫でるんだよ!やめろったら!?」
「も、もう子供じゃないんだから……なでるな~」
「てれない、てれない……安心なさいフォントくんは必ず帰ってくるわよ。あなた達を誰よりも大事にしているんだから」
「あ、当たり前だろう。アニキは約束を必ず守るからさ」
「そうだな。帰ってくるまで楽しませてもらうかな」
顔を見合わせ笑顔になり海へ羽織っていたパーカーを脱ぎ捨て駆け出すのを笑顔で見送るマリアの脳裏には自分の娘シャルロットと面影が重なって見えながら、四番目の条件をおもう
『最後にコレだけ……もし僕に何かがあって連絡が一週間途絶えたら、クリス、ノーヴェさんを僕たちが跳ばされた時間まで保護してください……二人には待っている人がいるから』
(………フォントくん、いえマルスくん。アナタは優しすぎる、やっぱり翔真の過去を話すべきじゃなかったかも…)
翔真の過去を話してしまった事を後悔するマリア。ユキカゼ、レオは境遇に憤りを感じていた。しかしマルス…フォントは何も答えなかった
フォントが席から離れたのを見計らい、二人からマルスが二年前以前の記憶が無いことをしり迂闊だった事に気づくも遅かった。それに、この二週間すぎたあたりであることにも気づいた…異性から好意を寄せられていてもナニかしらのハプニングで台無しになる《To LOVEる体質》。コレには喪われた記憶、もしくは深層心理に深い傷を持ってて《大好きな人もしくは異性》に何かがあって、遠ざけようと嫌われるような事を無意識的していることに
「(…………ユキカゼちゃん、レオちゃんの恋の行く末が心配かな、まああと二人いるみたいだけど。でも記憶を喪う前の彼に《アフターケア》をしなかった誰かが大きな原因ね。もし私が知ってる人だったなら力いっぱいひっぱたいてあげる…必ず)…………ユキカゼちゃん、レオちゃん、今日はめいいっぱい遊ぼ~よ♪♪」
心の中で強く決め、マリアもどこから取り出したのか巨大なウォーターガンを構え二人がいる波打ち際へ駆け出した
「……ん、ぐ、ぐぐ……8さん!核ミサイルとのランデブーまでの時間は!?」
ーあと二分、目的地に着弾まで二分七秒………本気でこの作戦でやるのか?ー
「……う、うん………コレしか方法がないんだ!冷却カートリッジ装填!!」
凄まじい速さで雲が流れ、強烈なGでシートに押しつけられながらフォントは操縦に集中しながらマリアから語られた翔真の過去を思い出す。大事な人たちを喪いながらも、友を、自分を想う人を守るために傷つきながら、歯を食いしばり必死に戦い続けて、二週間前の戦いでもまた《大事な人》を失い、それでも戦う姿勢は普段の姿とは違いすぎた…二年前以前の記憶が無い自分には大事な人はいない
傭兵になったのも喪われた記憶を探す為だ…利己的な理由…過去もあやふやな自分に誰かを守る資格はあるのか、この二週間ずっと考えていた
答えは見つからない…でも今はこの任務をと悩みを振り払うと同時に熱源反応。映されたのはマッハ34で連合暗部組織基地へ向かう核ミサイルが接近してくる…
(………核ミサイルを撃ち落とす作戦はクジャクは転移時のショックで大破したからつかえない、今のゴーストにあるのはフレイムソードのみ……考えられる作戦はひとつ…核ミサイルに接近と同時に変形も兼ねた減速、ファントムライトで再加速して速度を合わせ弾頭をヒートモードのフレイムソードで切り払う……併走可能時間は七秒……出来るのか…僕に)
守るべきモノなんか…と言いかけて飲み込んだ。核ミサイルとゴーストが交差、僅かに距離が開く
「……い、いややってみせる!げ、減速ッ!ゴーストに変っつ形ッ!」
ー了解!ゴーストガンダムに変形!ファントムライト稼働と冷却!ー
パシュっとカートリッジが勢いよく飛び出し、ゴーストガンダムのファントムライトが炎のように燃え盛り加速、徐々に併走し遂に同期する…タイムリミットは七秒。ターゲットロックカーソルが定まらない中、腰部スラスターからフレイムソードを引き抜き加熱し赤く刃が輝く
「………ゴ、ゴースト……誰かを守る資格が…ぼ、僕に、な、無くても……今だけは……」
ターゲットロックカーソルが重なろうとするもぶれる、それでも必死にアームレイカーを操作しつぶやく…瞳の色が再び赤金に輝き、それに反応するようバイオコンピューターが最大稼働を始めマスクが開き放熱し始める
「……今だけは……僕に…傭兵としてではない僕に力を貸してくれ!ゴオォォストッ!ガンダアアアアアアアア!!」
ーバイオコンピューター最大稼働!二段階強制放熱モード起動!!ー
フォント、マルスの叫びに応えるようフェイスカバー、さらに頬が大きく裂け叫びにも似た雄叫びを上げながら身体をひねり一気に横凪に核ミサイル…弾頭を赤熱化した刃が溶かしミサイル部分を切り落とした。泣き別れになったミサイルは爆発、弾頭は近くの山脈に落ちていくのを呆然とみていた
ー成功したぞマルス……どうした機体を立て直せ!!ー
「あ、頭が痛い………それに腕があがらない……」
激しい頭痛と脱力感に意識が朦朧としていくマルス…限界を超えた思考と過度のGが精神的、肉体的に蝕んでいた
ファントムライトの勢いもなく錐揉み状態になりながら落ちていくのを感じていた時、声が響きわたった
ーアニキ!ー
ーマルス!ー
ーマルスさんー
ーマ~ル~ス♪ー
クリス、ノーヴェ、アインハルト、御門…四人の声と顔が見えた瞬間、アームレイカーから離れかけていた指が動き力強く握りしめ、スロットルペダルを力いっぱい踏み込む…ファントムライト、いやミノフスキードライブから光の翼が強く輝くと再び最大稼働状態、
二段階強制放熱モードへ移行し再び空を駆け出した
「ま、まだ……死ぬわけには……死ぬわけにはいかない!!」
雄叫びが夜の帳が落ち始めた空に響きわたった
「おやじ、ナニみてんだよ」
「名瀬か。あれをみてみろ…」
「ん?コイツは今開発中のファントムに似てんな。確か御門が担当してんだよな」
「ああ、しかも光の翼…うちでもまだ開発中のミノフスキードライブを積んでやがる…」
ロシア、ティワズ支社のロビーにいる老人を親父と呼ぶ白のスーツ姿に帽子をかぶった男性、名瀬にみせたのはロシア上空を駆けるファントムライトを展開したゴーストガンダム。ニヤリと不敵な笑みに鋭いまなざしを見せた
「F97は売れなくなっちまったが、F99は開発中………負けてられねぇな。人員を補強して完成を急がせるぞ名瀬」
「わかったよ。親父」
手をヒラヒラさせ部屋を後にする名瀬を見送る初老の男性…ティワズ会長《マクマード・バリストン》は後にこう記している
ーこの幽霊を目にしなければ最高の義息子にあうことにならなかったかもしれないなー
と……幽霊ーゴーストーが繋いだ奇妙な縁はここから始まった
Return:Mission04《接触と極寒の空を舞う蜃気楼鳥ーミラージュ・ワゾーー》(後編)side・ASTRAY:副題第一期《第111話「幻想殺し対超能力兵士」》
了
次回はエロ回……