オリ主が再びIS世界でいろいろと頑張る話だけど…side:ASTRAY《本編完結》 作:XENON
三年前、火星…急進派閥所有コロニー。同執務室
「ルセディス!」
「なんだ?ジェダ」
「あの三機が何故ハンガーにある!それにアレは我々の持つ技術では修復不可能といわれていたモノではないか!」
「……修復に関してのメドがついた。事後承諾になったのはすまないと思っている。あの三機は我々《火星の未来》に取って益をもたらす………切り札と言えるエクシェス同様にな」
「…………………エクシェスと同じだと」
「あの三機は修復は出来たが、まだまだ解析が出来ていない……機体を知ることは未知の技術を得るきっかけとなる。まだ火星は《国》としては政治的にも力も弱い。オーストレルコロニーの奴らは現状維持をよしとし未来への指標…火星のテラフォーミングすらもおこなわれていない」
「……わかってる!我々《火星圏コロニー》は火星を第二の故郷として志願者で編成された。だが我々の力では」
苦々しく吐き捨てるジェダ…彼は火星圏へ招かれた技術者だった。しかし火星圏開拓は困難を極め、テラフォーミングより技術者が住むためのコロニー建造、水と空気の製造プラントが優先され結果的に他のコロニーと遜色ない群を作り上げるに至ったが未だにテラフォーミングは実行すらされていなく、火星地表で見つけた稀少鉱床から採掘された稀少鉱石を地球へ送り生活の糧にするしか出来なかった
「………火星圏に住む我々は遅々として進まない火星開拓に援助すらしない地球圏の連中に疲れ恨んでいた……だがスティル・カデンツァヴナ卿は違った新たに技術者の派遣、資金の支援をしてくれた事でテラフォーミングは50年から10年内に短縮、実行可能になると試算出来た………」
テラフォーミングが成功すること。それはコロニーという不安定な居住空間しかない火星国家に経済的地盤、新たな大地を手に入れる事は国としての基盤を盤石のモノとする
安定した大地は火星圏コロニーに住む人々の希望だった
何よりもテラフォーミング計画は影で急進派閥メンバーが極秘裏に参加し進めていた。彼らにとってまさに同士だったのだ
「カデンツヴァナ卿は我々、急進派閥…いや火星圏に必要な人間だ…地球の誰よりも我々と同じ心を持っている………我々の友だよ」
「ああ、わかってる……以前あった事がある……彼は火星の未来を考えてくれて……」
頷こうとした時、胸元から澄んだ歌声…珍しく慌てるアレスの手には黒と赤の携帯端末が握られ開いた
「………………………ジェダ、データは端末に送っておく。急用を思い出した」
「な!?待てルセディス!………ったくいつもコレだ…」
やや慌てたように執務室を出るアレスへ小言を漏らしながら現在までの修復状況をみて小さく感嘆の声をあげるジェダ…
(マズい………急がなければ)
長い通路を歩くも徐々に早くなり駆けだしていくアレス
(……今日はクリスの……)
先ほど鳴ったのはあらかじめセットされていたアラーム…今日は自身と同居している義妹《雪音クリス》のが通う学園での歌唱祭の日
クラス全員での合唱、そして選抜された一名による代表戦にクリスが選ばれた。その日の晩にクリスが少し照れうつむきながら告げてきた
ー………べつに無理に…その、あのう……あ、兄貴に聞いてほしいんだアタシの歌をー
ー………わかったー
ーいったな!ぜったいだかんな!!来なかったら、ゆ、ゆるさないからな!ー
あの日から素直じゃないながらも信頼してくれるクリスの想いに応えるために駆け出した…
Mars・days:03ー進む計画、響く歌声ー
リディアン音楽学院
同講堂
「ク~リ~ス。おちつきなったら」
「な、なにいってんだ!あたしは、その…おちついてっから!」
「はいはい、大好きなお兄様なら必ず来るから安心しなよ」
「た、だ、だ、だ、誰が兄貴がす、す、好きだって!?あんな無口でしゃべんねぇ、無愛想で…」
顔を真っ赤にしながら表情を変え俯きながらゴニョゴニョと口籠もる様に生暖かい目で見守る一同…最初は乱暴でなかなかクラスに溶け込めず授業を抜け出す問題児だったがある日を境になりを潜めたが話し掛けずらかった。しかしクリスが一人で音楽室で歌っていたのをみたことがきっかけで一人、また一人話しかけるようになった
最初は煩わしく感じていたが、少しずつ話すようになった……話してみると意外と面倒見が良い事がわかりいつの間にかにクラスの一員にぎこちないながら溶け込んだ
「夜遅く帰ってくるけど。この前なんかさソファーで寝ていて、その寝顔がすごく可愛くて……こんな顔して眠るんだなって」
「クリクリ~お兄さん自慢はスト~~ップ!」
「わ、な、なにすんだ!胸をもむなあああ!?……ん///」
「クラスのみんなより発育よろしいようで……羨まし~~い♪」
「や、やめろったら!あたしの胸をさわんなったら~ひゃん!?」
背後からクリスの年には似合わない豊満な胸をわしづかみにする同級生ハヤテから逃れようとする…クラスメートは何時もの事。そして思った
((((((ま、負けた………))))))))
自分の胸を見て落胆するクラスメート…同性からみても白銀の流れるような髪、すらっとしつつ豊かな胸、ウェストから曲線を描くヒップ。スタイルも顔立ちもいい……何度か学外からの生徒から告白もされていた
『あん?あたしと付き合いたい……わりぃんだけどさ、あに……好きな奴いるから』
外面しかみていない輩は素の態度で逃げ出し、それでも耐えた者も、この言葉で玉砕していったのを見てきたクラスメートはクリスの好きな相手が誰なのか興味しんしん。しかもその相手が今日行われる歌唱祭に来る
「ふう、はいはいハヤテ、そのぐらいにしなさい。本番始まるわよ」
「ん~残念。もっと大きくしたかったのに……」
「ハヤテ~あとで覚えてろよ!…………ったく」
残念そうに離れていくハヤテを恨めしそうに睨みながら乱れた髪と服装を整え大きく深呼吸を三回しか舞台へと歩き出し壇上にたち一礼…目の前には保護者、家族たちが席を埋めている
人前で歌うのは亡き父と母の前でしかない…緊張しドキドキする中で講堂の扉が開いた
(あ、兄貴!?)
クリスの目に映るのは肩で息をし、スーツの所々が破けふらふらしながら歩く保護者にして義兄アレス・ルセディス。やがてあらかじめキープされていた席へ座った
(まさか、あたしの歌を聞くためにボロボロに……バカ兄貴……)
アレスが来てくれた…胸の奥が暖かくなりドキドキし始めるのをもう一度深呼吸…そして紡がれた歌が講堂に響く。堂々とした振る舞いと繊細で誰もが楽しく、誰かに向けての歌だと気づく中、アレスは歌声に身を委ねた
(…………ああ、いい歌だ。クリスの歌は本当に……)
(……パパ、ママ。あたし大好きな人出来たよ。あたしの歌を誉めてくれたんだ………)
歌にアレスへの想いを乗せるクリス…自分を助けてくれて、勝手に逃げ出した自分を探し出して本気で怒ってくれた。無愛想で無口だが仕事が忙しくても夕食を囲み、親身になって話を聞いてくれた
(………あたしは兄貴を………愛してる!!)
すべてを込めた歌が止み、静かになる講堂からやがて拍手の音が木霊した
ーーーーーーーーー
「兄貴!」
「クリス、どうした?」
「あ、あのさ………え、えと……その………今日来てくれてありがと」
「…気にするな…今日の歌とても良かった」
「あたりまえだっての……って兄貴?」
歌唱祭はクリスのクラスが優勝で幕を閉じ、今二人がいるのは誰も居なくなった講堂…クラスメートはクラスでパーティーを開く準備に追われている。その席に座るクリスの前でアレスはうつらうつらとしている
「すまない。少し…眠る…クリス」
「あ、兄貴!?あう、あう~」
そのままクリスの胸に顔を埋めるように倒れ眠りだすアレス…ここまで来るのに何故かわからないがいきなりの雨、カマイタチ、バイクの故障……さらに連日の徹夜作業がついに肉体の限界をむかえさせてしまったのだ
(う、あ、兄貴の顔がこんなに近くで!?それに息があたって…)
互いの距離は近く、胸にはアレスが埋まっている…今までこんなに無法備な姿はみたことがない上に自分の胸の鼓動が跳ね上がるのがわかる
「………兄貴……」
ゆっくりと抱きしめ髪を梳く。指の間を滑る感覚は深いじゃなく心地よさを感じた時、講堂の扉が勢いよく開いた
「クリクリ~パーティーやるよ~…………………………………」
ハヤテ、カナ、メグの三人が石のように固まる…アレスの頭を胸に抱き寄せ優しい笑みを浮かべたまま動かないクリスの姿……やがて油が切れたロボットのように扉へ後ずさりする
「お、お邪魔しました~イケメンお兄様と朝まで……でも床は固いから」
「クリス大胆ね~その胸は最強ね」
「……まだ早いかもしれないけど、最初は痛いから」
「っ!な、な、な、なにいってやがんだよ?っうかそんな目であたしをみるなああああ!!」
クリスの叫び声が講堂いっぱいに響き渡った……しばらくの間、皆からからかわれたのは言うまでもなかった
Mars・days:03ー進む計画、響く歌声ー
了