オリ主が再びIS世界でいろいろと頑張る話だけど…side:ASTRAY《本編完結》    作:XENON

9 / 89
新暦75年、クラナガン南部《次世代エネルギー開発研究所》

「ちくしょう!俺達の要求に飲まないだと!!」


「………俺達をテロリスト?そのような要求に屈しないだと?ふざけるな大東!!」


声を荒げるのは顔をマスクで隠した男達、そのうちひとりがいらだち紛れに近くにある椅子を蹴り飛ばし壁に勢いよくぶつかりけたましい音と共に壊れた。彼等はGspirits隊、綾崎翔真たちとの戦いに敗れた地球蒼生軍の残党。彼らはGspirits隊の追跡から逃れるためにクラナガン南部にある《次世代エネルギー開発研究所》になだれ込み施設を制圧、職員百人余りを人質に取り半日が過ぎていた

次世代エネルギー開発研究所は鉄壁の守りに加え外部と独立したセキュリティーが完備されていた為にまさに要塞と化していたのもありGspirits隊は突入手段をどうするか考えあぐねていた時、彼等…地球蒼生軍の残党は人質解放の条件として捕らえられ投獄されたメンバーの釈放、さらには逃走経路、現、管理局地上本部提督《大東貴一》の即時退陣を要求。もし飲まなければ人質を30分ごとに五人ずつ射殺すると宣言した

しかし、管理局地上本部提督《大東貴一》は『テロリストのいかなる要求には屈しない』と要求を突き放し今に至る…ようやく研究所の見取り図とセキュリティーフレームへアクセスに成功し、突入の準備が整おうとしたとき、悲劇は起こった


研究所の内部LIVE映像がクラナガン中のありとあらゆる報道機関へ流れ、五人の人質がテロリストの前に引き出された。


『大東貴一!我々をテロリストよわばりし要求に屈しないと言ったな…その結果を今から見せてやる!!』


乾いた音が響く…頭を撃ち抜かれ倒れる老人、さらに三回鳴り響いた…三十代前半の女性、十四歳前後の少女、九歳ぐらいの女の子が額を撃ち抜かれ血を辺りに撒き散らし倒れていく…

『あ、ああ……うわあああああああああ!!』

あまりの惨状に最後に残された少年の叫び声が響いた。あばれ回る少年を強引に押さえつけゴリッと銃口が眉間に押し付けられた

『安心しろよ?寂しくないようあとを追わせてやるよ。恨むなら大東貴一、Gspirits隊を恨めよ?さあ死にな…』

引き金に掛けられた指に力が入ろうとした瞬間、犯人の動きが止まる、いや胸を撃ち抜かれ倒れた。それが合図のように扉が開き突入部隊がなだれ込んだ。
射殺された犯人以外はすべて拘束され捕らえられていた人質は解放された

ただ少年だけはふらふらと立ち上がり、射殺された四人に近寄り膝をついた…瞳孔は刻みに震えかすかに言葉が漏れた


「母さん、じいちゃん、ハーティ、ノイン姉さん………う、うう、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア…ッ!?」

血に汚れながら四人の前で過呼吸状態になりながら止め止め無く溢れ出す涙、ついに糸が切れたように倒れそうになった少年を誰かが抱き留めた。突入部隊として参加していたGspirits隊メンバー《スタニック・デュノア》は少年の前に血だまりに倒れた4人を見て否が応でも悟ってしまう

「…………まさか、この四人は…この子の家族…もっと早く突入していれば……医療班、早く来てくれ!!急いでくれ!!」


地球蒼生軍残党による次世代エネルギー開発研究所立てこもり事件…これを最後に徹底したローラー作戦で地球蒼生軍残党は完全に壊滅した


この時、新たな火種が生まれたことをニックはおろか、大東貴一提督はまだ知るよしもなかった




ASTRAY:六番目の蛇《マルス・レディーレ》
PHASE-00 「復讐者が生まれた日」side:ASTRAY


宇宙…ありとあらゆる生を拒絶する空間に二つの光が見える。光の正体はMS…ザフト正式採用機ザクファントム、背中には長距離移動と高機動を目的としたウィザードパック装備しているが目を引くのが所々に赤い装甲が目立つ機体の後ろに追従する機体はさらに異様だった

 

全身を黒く塗られ連合、オーブ…様々なMSのパーツが組み込まれ、さらに特徴的なのは連合のGATシリーズと似た頭部、背中には小型の翼が二対ある機体はザクファントムと共に少しずつ減速を始めた

 

 

『マルス、もうじきしたらアジトにつくぞ』

 

 

『……了解。着陸シークエンスに入ります』

 

 

二機が向かうのは小規模の資源衛星、その表面が動き上下に分かれMSが入れるくらいのゲートが開かれ、そのまま滑り込む。内部に並べられたらMSデッキへザクファントム、黒く塗られた機体が慣れたように着地、各種ブームが機体を固定されハッチが開いた

 

ザフトのノーマルスーツに身を包んだ銀髪に顔に傷がある美青年、そして黒塗りの機体から連合のノーマルスーツ姿の黒髪に前髪あたりに赤いメッシュが目立つ年の頃、十五歳前後の少年がふわりと降りた

 

 

「よう、イライジャ、マルス。無事かえってこれたみたいだな」

 

「リード、おまえまた飲んでるのかよ……ああ、ミッションコンプリートだ」

 

 

「はい、無事に帰ってきました。リードさん、昼間からまた飲んで……また風花さんに怒られますよ?」

 

 

「ははは、まあ固いこというなって…おまえも酒の味を知ればわかるからな…っとマルスは未成年だったな……ん、ん……くぅ~たまんないな」

 

 

ぐいっと酒を飲むリードに少しため息を二人はついた

。だがこうみえてもリードは連合に独自の人脈を持ち戦闘に参加はしないモノの培った人脈と情報網、高い交渉術を駆使し様々なミッションを支えるメンバーだ。ふとイライジャはナニかを思い出したようにリードに訪ねた

 

「そういえば劾はドコにいるんだ?」

 

 

「劾か?今、別な依頼を受けてココにはいねえな…っと忘れてたマルス、お前に依頼だ。しかもクライアントが直々にお前を指名してきた、ほらよ」

 

「わわっと?僕に依頼ですか…」

 

 

思い出したようにリードが機体の整備に向かおうとしたマルスにデータ端末を軽く投げる。それを慌てて受け取る。傭兵になってから初めて名指しでの依頼に驚きながらデータ端末に目を通す。内容と共にクライアントの動画データも張りつけてあるのを確認して開いた

 

 

ー私はP・T。傭兵部隊サーペントテール、マルス・レディーレ。アナタに依頼を頼みたいの………この世界とは違う世界《ミッドチルダ》にある管理局地上本部《大東貫一》提督直属部隊Gspirits隊に関しての動向および戦力調査。そしてソコに現れるだろうMSウイングガンダム滷獲もしくは破壊。ただ破壊および滷獲に関してはアナタに一任します。Gspirits隊に関しては彼等が私たちの世界に驚異となるかを見極めて貰いたい。別世界へ行く手立ては同封したプログラムをインストールすれば転移可能になりますー

 

 

動画データには緩やかなウェーブが目立つサングラスをかけた黒髪の女性。彼女の言葉からは自分に対しての信頼を感じる。それ以上にGspirits隊、大東という固有名詞にマルスの心に響いた。

 

マルスは二年前に火星圏のデブリヘルトで半壊したMSのコックピットに冷凍睡眠し漂っていた所をジャンク屋に拾われた。目を覚ました時、過去の記憶が喪われてて唯一おぼえていたのは《エクシェス》という名前だけだった。生きる術を得るためにジャンク屋で働いていた時、ジャンク屋の知り合いである傭兵部隊と出会った瞬間、管理局、Gspirits隊、大東貫一と頭に浮かんだ。もしかしたら失った記憶を取り戻せるのではないかと考え傭兵部隊のリーダーに自分を入れてくれとジャンク屋と共に頼み込んだ。ジッとサングラス越しにしばらくマルスと向き合ったリーダーは静かに告げた

 

 

ー………いいだろうー

 

 

そして、傭兵部隊サーペントテールの六人目のメンバーとなったマルスはジャンク屋から餞別に自身がのっていたMSの残骸に連合、オーブのパーツを組み込み再生されたMS《アストレイ・エクシェス》を手渡され以降は愛機として自身が何者かを模索していた

。しかし記憶が戻る気配もなく二年間過ぎてしまったときに来た依頼…意図的なモノかソレとも偶然かと悩むマルス。本来なら個人の感情を仕事に持ち込んではいけないのだが、依頼人のP・Tの言葉に心が動いた、静かに端末を閉じた

 

 

 

「リードさん、この依頼を引き受けます…」

 

「そういうと思ったぜ。んじゃ必要なモンは揃えておくから休んでな。クライアントには俺からメールで伝えておくからな」

 

手をひらひら返しリードはクライアントへと連絡を取りに通信室に向かう。機体の整備を終えたのかイライジャの姿は無い。マルスはゆっくりと床を蹴り自分の愛機《アストレイ・エクシェス》の顔に手を添える

 

 

「………この依頼を引き受ける事にしたよエクシェス…初めてのクライアントからの指名されたからにはかならず成功させよう」

 

 

マルスの言葉にエクシェスはなにも答えない。それでも心はあると信じ相棒から離れると自室へ任務に向けての用意をするべくMSハンガーから出て行った

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「……システムチェックOK、次元転移マーカー正常…光圧推進システム連動開始……」

 

 

すべての用意を終えマルスは機体状況、次元転移システムと光圧推進システムの最終調整を進めていく。アストレイ・エクシェスが居るのは宇宙空間。近くにはイライジャ専用ザクファントムが控え眼下には地球が見える

 

『マルス。準備はできたか?』

 

 

『…問題ない。次元転移マーカーおよびシステム起動…ヴォワチュール・リュミエール!!』

 

 

アストレイ・エクシェスの左右に伸びた小型のウイングが展開、同時に金色の翼《ヴォワチュールリュミエール》が起動し加速、マルスのノーマルスーツに対Gアーマシステムが装着。モニターに現在の加速速度、次元転移までのカウントが刻まれ機体正面に幾重の幾何学的紋様《魔法陣》が現れ迷わずスロットルを全開にし飛び込んだ、瞬く間にアストレイ・エクシェスはその場から消え去る

 

 

 

「システムチェック…空間変動値、転移マーカー正常稼動確認……カウントダウン開始」

 

 

不可思議な空間を光に限りなく近い速さで駆けるエクシェス。マルスはシステムチェックと同時平行で操縦に集中する、一つ間違えば永遠にこの空間をさまよう可能性がある。いかに科学が発展しようとも完璧な技術は存在しない…コントロールスティックを握る手に力がこもる。やがて新たな魔法陣が現れ通り抜けた先には何処までも広がる海面、空には二つの月が浮かんでいる

 

「転移完了…ヴォワチュールリュミエール解除……現在位地確認……第一管理世界ミッドチルダ、クラナガン湾岸部と照合確認。現時刻よりサーペントテール《6》マルス・レディーレ、ミッションを開始する」

 

 

レーダーに引っかからない為に海面すれすれを飛行するエクシェス…向かうは管理局地上本部《大東貫一》提督直属部隊《Gspirits隊》基地がある湾岸部…水しぶきを上げながら向かった頃、マルスに依頼したクライアント《P・T》…彼女は薄暗い部屋で報告を受けていた…

 

 

「わかったわ、報告ありがとう。さがっていいわ」

 

「では失礼します。テスタロッサ議長」

 

敬礼し部屋をあとにしたのを確認した彼女は空間投影モニターを開く。ソコにはマルスとよく似た少年の顔写真、過去、経歴が詳細に映し出されジッと眺め少しだけ笑みを浮かべた…その笑みからは妖艶さがかもしだされている

 

 

(……綾崎翔真、織斑一夏、篠ノ之箒、サーペントテール《6》マルス・レディーレ…役者が揃うまであと少し…さあ、世界はどう動くかしら)

 

 

笑みをたたえたまま、静かに椅子から立ちモニターを閉じた彼女…ザフト最高評議会議長《プレシア・テスタロッサ》は自らの理想を想い描き、次の一手をうつべく思考する

 

 

……傭兵部隊サーペントテール、六人目のメンバー《マルス・レディーレ》にクライアントとして接触し任務を依頼したのか?それは彼女に胸の内しかわからない

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。