砂隠れは繁栄しました   作:布団玉
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第2次忍界大戦
1. スタート


 目が覚めた。

 延々と起きていたかのような妙な目覚め方をした。
 最初に認識したのは自身が転生したのだという事実であった。転生前の記憶が鮮明に残っている。前世を昨日の出来事のように思い出すことができた。
 次に認識したのは人の声だ。

「予定日よりも早いから少し心配していたが」
 降り注ぐ声に耳を傾ける。これは若い男の声だ。

「いやいや、元気な子だの」
 初老であろう女の声。

「サボテン」
 若い女の息切れた声。細い腕で俺を抱きしめ、苦しそうに息を吐く。

 そうして『サボテン』という新たな名前を貰い、俺は生まれた。
 生まれたこの世界が死屍折り重なる忍の世など、誰が想像するのか。


 前世の記憶を持ち合わせているため、赤子の時期はなんともいえぬ羞恥心に晒されながら過ごした。頭脳は活きているが体のほうは頭についてゆけず、うまく言葉を喋ることができなかったのだ。
 あー、だの、うー、だのと発すれば母が俺をあやした。なにぶん、精神は成人済みである。こうしてあやされるのが恥ずかしくて仕方がない。だが赤子へ注がれる温もりは、けっして悪いものではなかった。
 年を重ねるごとにやっと言葉を喋り始めることができ、3歳の頃には難しい本や巻物をあさって読んでいた。両親は大層喜んで俺を天才だとうたい、4歳になる頃には忍術を教えてくれた。

 そう、忍術。
 なにを隠そう、ここは忍者のはびこる世界である。

 いつかは別の世界に行ってみたいものだと思っていたが、本当に行くことになるとは思いもよらなかった。見ているだけならまだ構わないが、渦中の人物になってしまうと話は別だろう。
 せめて比較的平和な土地へ生まれることができればよかったのだが、今の時代どこの国も戦だらけだ。

 ことさら不都合なのが砂隠れの住人となってしまったことである。

 霧隠れよりは生き残れる可能性があるかもしれないが、本命は湯隠れだ。でなくともせめて木ノ葉隠れであってほしかった。両親の会話を盗み聞き、今が『第2次忍界大戦時代』だと判明したのだ。つまりこれから砂隠れは、大名によって軍縮を余儀なくされる状況へと追い込まれる。そうなれば貧困の里がさらに貧困となってしまうだろう。

 人口も軍事も経済も他里より劣る砂隠れは、1人の忍に対して負担が大きい。忍になれば頻繁に任務へ駆り出されること必然だ。任務へ行けば死ぬ確率も上がる。
 ――俺は嫌だぞ、体を切り裂かれたり拷問されて死んでいくのなんて。
 忍にならなければいいのだが、里がそれを許してはくれない。前述のとおり、ただでさえ忍の数が少ないのだ。忍の子供を忍にすれば、秘伝忍術などは各家庭で学ばせるため、学校の教育費用も少なくて済む。なにより平民出身より優秀になる場合が多い。

 忍の子供に生まれた時点で俺の忍行きは決定していたのだ。

 平民になれないのなら、この世界での戦いにどうやって生き残るかを考えなければならない。
 生き残るためには身体能力、精神力、体力ならびに体術、忍術、幻術の向上。すべて重要だろう。

 さればまず自身のチャクラ属性を把握しておきたい。旨を両親に伝えれば快くチャクラ感応紙を持ってきてくれた。随分準備がいいが、両親もそろそろ感応紙で俺の属性を調べるつもりだったらしい。

 結果、紙は濡れた。

 俺のチャクラは水が得意属性であった。
 砂スタートで水遁使いとか地の利なさすぎだろう、とは思ったが贅沢などできない。
 本当なら最低限3つの属性は使えるようになりたい。だが、結局のところ普通の忍術では秘伝や血継系に勝てないだろう。そんな時間があるなら水遁を極めつつ、自身専用の術などの開発に割いたほうがよさそうだ。
 さらに、水遁使いならば土遁対策として雷遁を補助で扱えるようにはなっておきたいが、これも時間が許す限りといったところだろう。
 あとは武器や忍具などをうまく扱えばチャクラ節約にはなる。自身のチャクラ量はまだ把握できていないが、量に関係なく消費を抑えて強力な技を繰り出せるほうがいいだろう。

 生き残るために重要なのはいかにチャクラを低消費で済ませ、上手に立ち回るかである。少なくとも俺はそう思っている。

 この世界のインフレーションについていけるか不安だったが、賽は投げられたのだ。否でも応でも、俺はここで生きていくしかなかった。






 まだ4歳だったある日のこと。
 任務へ行ったきり帰ってこない両親の代わりのように、赤髪の男と長い暗髪の女が家へ訪れてきた。

「この子ね」
「そのようだ」

 部屋で本を読んでいた俺を見るなり、2人は顔を見合わせて相談をはじめる。

「命の恩人の子だからな。オレたちでなんとかしてやりたいが……」
「うちにも子供がいるものね。でも、もしかしたら私たちの家庭がこうなっていたかもしれないのよ。やっぱり、できるかぎりのことはしてあげたいわ」

 初めはなにを言っているのか分からなかった。しかし俺の精神は4歳児ではない。状況からすぐに両親が死んだのだと悟った。

「ちちとはは、は、なくなったんですか」

 まだあどけなさの残る口ぶりで問えば、2人は目を見開き額にしわを寄せて口をあけ、難しい表情で驚いていた。まさか4歳児がこのような問いかけをしてくるなど予想もしなかったのだろう。
 だが驚きから覚めたあと、少々迷った様子だったが男のほうから両親について教えてくれた。

 はたけサクモ。

 木ノ葉の白い牙その人に殺されたらしい。両親はサクモからこの2人を助けて亡くなったという。

 2人は俺を養子として引き取ると言った。両親は互いに2人の古い友人であったらしく、後見人としてきちんと俺を見守ってやりたいとのことだった。

 両親が殺され、さらには家族が変わるかもしれないというのに自身は奇妙なほど冷静だった。
 おおよそ4歳とは思えない思考力と冷静さは、もちろん前世の記憶がしかと残っているためであった。しかし4年でも共に過ごしたのだ。情くらい湧きそうなものだが、どこか達観していた。
 これが第2の人生だからだろうか。それとも、この世界が絵空事だと知っているからだろうか。現実ではないような気がしていた。

 あまりに落ち着いた4歳児を見て逆に心配になったのか、長髪の女が俺を抱き上げる。そして男が覚悟を決めたように腕を組んだ。

「あの」

 すでに話はつけてあるのだろうが、俺のほうは正直乗り気ではなかった。

「ようしのおはなしはとてもありがたいのですが、おれはひとりでもだいじょうぶです」

 彼らの子供になれば秘伝の忍術を教わることができるかもしれない。しかし彼らにも子供がいるらしい。それが気がかりだった。ただでさえ金銭的に余裕のない里だ。きっと彼らは無理をして俺を養おうとしてくれているのだろう。
 好意はとてもありがたい。普通ならば俺は見捨てられる立場だ。それをわざわざ救おうとしてくれている。だからこそ余計に養われるのは気が引けた。

「あなたはまだ4歳なのよ? 1人で暮らしていくのはとても無理よ」
「そうだぞ。なにも心配なんてしなくていい。オレたちと一緒に暮らそう」

 2人は食い下がった。それでも俺は首を縦には振らなかった。
 困り果てた2人から次の言葉を紡がせないように、俺はある頼み事をした。

「ようしのおはなしを、ことわるかわりといってはなんですが……。ひとつだけおねがいがあります」





 2人へ頼んで訪れた先は3代目風影の執務室。本日運よく、風影が部屋の椅子へ腰かけ仕事を行っていた。

「おれを、でしにしてください」

 容姿はどう見ても4歳児である。4歳児が発したとは思えない言葉に風影が俺へ注目した。
 見定めるような鋭い眼。人傀儡ではない生身の姿を拝むのは初めてだが流石は風影、威圧感で押しつぶされそうだった。

「小僧、名は」
「サボテン、です」
「お前は何者だ?」

 俺より先に2人が事情を説明してくれた。

「なるほど。……ならば小僧と2人で話をしよう。すまないが下がってくれ」

 風影は表情を変えないまま2人へ命じる。2人は納得して頷いたあと執務室を出た。
 部屋には、俺と風影とその付き人のみ。

「なぜオレの弟子になりたいのだ」

 もっともな質問を投げかけられた。

「あなたがさとでいちばんつよいから、です」

 淡々とした問いに淡々と答える。

「なぜ強さを求める」
「いきたいから」
「なぜ生きたい」
「しにたくないから」
「まるで死を迎えかけた者のような答えだな」

 風影が面白そうに口角をあげた。

「しにたくない。ちちとははがみることのできなかった、このせかいのゆくすえをみとどけてみたい。でも、いきのこるためにはつよさがいる」
「小僧、本当に4の歳か? 化けの皮でもかぶった獣ではなかろうな」
「4さいです。いろいろなほんをよんで、べんきょうしました」

 しばらくの沈黙。

 数十秒後、風影は興味なさげに卓上の書類へ視線を戻した。万年筆の音が部屋へ響きだす。
 これは手ごたえなしかと諦めかけた――のだが。

「いいだろう。弟子にしてやる」

 このやりとりで、風影の性格がなんとなく分かった気がした。






 里の長である影は当然多忙だ。そう頻繁に修行などつけてはもらえない。独学で学べる部分はできるだけ学んだ。若い脳みそだからか、躓くことなくこの世界の知識を吸収していくのはありがたかった。

 3代目風影といえば、磁遁の砂鉄。俺は水遁しか使えないので磁遁は不可能だと思っていたのだが、磁遁において5属性は関係ないらしい。風影が直々に説明してくれた。必要なのは陰遁と少しの素質とのことで、陰のチャクラで磁力を操り砂鉄に流し込んでいるという。
 血継限界であるが故に、当然だが並大抵では習得できない。
 だか、血継限界を自力で分析・開発し習得した我愛羅の父――羅砂という実例がある。血継限界を直接受け継いだわけではないので秘伝忍術と言うほうが正しいだろうが、習得不可能ではないと証明したのだ。
 さらには無から塵遁を教わったというオオノキの存在もある。血継淘汰を血継でない者が習得できるのだから、ますます可能性は高まる。

 風影の弟子となったのは磁遁を教わるためではない。しかし、わざわざ風影が磁遁について詳しく説明したということは、俺に習得の可能性を感じたということなのだろうか。
 教わることができるならば習得するに越したことはない。便利だし、なにより砂鉄を操るなんてかっこいいではないか。

 善は急げ。俺は是非にと磁遁を教わることにした。




 ――結果、磁遁が違うものに変化した。

 俺は磁遁を教わっていたはずだったんだ。
 風影による修行はスパルタだったが、磁遁の修行はさらにスパルタだった。普段の修行疲れに鞭打って修行に励み、それでも磁遁はなかなか習得できなかった。

 なおも必死に修行を続けていたある日のこと。
 疲れがたまっていたのもあった。その日は雨で修行に集中できず、弛んでいると風影にしごかれていた。
 もうやけくそになって磁遁を出そうとチャクラを練ると、いつもと違う感覚が経絡系を駆け抜ける。
 やったか、と感喜の雄叫びをあげかけて、やめた。

 ――なぜか雨の『水』が俺の周りへふよふよと漂っていたのだ。

 水遁を使った覚えはない。ましてこれは磁遁でもないだろう。
 どういうことだと風影に目配せすれば、風影から「なぜ水遁を使ったんだ」とのお叱り。

「おれ、水遁つかってないです」

 磁遁ではありえない。水は微弱であるが反磁性体だ。ならば水遁かと問われればそれも違う。先ほど述べた通り、俺は水遁など使った覚えはないのだ。

「まさかあたらしい術ですかね?」

 はは、と乾いた笑いを出せば風影が沈黙した。
 ――沈黙は肯定ととるべきである。いやまさか。本当に新術なのか。
 しばらく考えていた様子だった風影が、ついに重々しく口を開く。

「磁遁を出そうとしてそうなったんだな?」
「はい。やけくそでしたけど」
「…………」
「あの、なにか」
「小僧の得意属性は水だったな」

 いまさらである。しかし、どうやら言いたいことは別にあるらしい。

「もしかしすると、水遁の原点へかえったのかもしれん」
「げんてん、ですか?」
「磁遁の元は陰遁。水遁もしかり。つまり、陰遁から磁力を操る力を生み出そうとしたが、生み出したのは結果的に水を操る力であったということだ。お前は水遁を使う故にそうなったのだろう」

 風影が普段とは違った様子で、少々興奮気味に捲したてる。

「腕のいい忍はチャクラから水を生み出すことができるが、水遁とはもともと既存の『水』という『流体』を操る力。水遁の原点とはすなわち『流体操作』だ」
「でもこれってけっきょく水遁になりますよね」
「阿呆が。流体はなにも水だけではなかろう」

 ――なるほど。水以外の流体も自在に操れるということか。そんなロマンあふれる術を、俺が習得してしまったらしい。

「小僧、貴様はセンスがあるらしい。偶然とはいえ術を根本から理解していなければできぬ芸当だ」

 珍しく、非常に珍しく風影が俺を褒めた。

「極めれば他の流体も操ることができるだろう。その感覚、絶対に忘れるなよ」

 こうして俺は流体を操る力、水遁ならぬ『流遁(りゅうとん)』を手に入れたのであった。
 当初の目的である磁遁は未だ習得できないままであったが。



 流遁を使用できるようになってからというもの、磁遁の修行はしばし中断となった。風影としては、既に自身の扱っている磁遁よりも新術の流遁を育ませることのほうが重要らしい。俺も同意見だ。
 流体を操れるとはいえど、水遁などのようになにか1つへ特化したほうがいいだろう。流体そのものの特性を理解して、適切にチャクラで扱ってやらなければならないからだ。ならばどの流体を扱うか決めなければならない。

 流体と言われて俺が真っ先に思いつくもの。

 それは、金属のくせに凝固しない唯一の元素『水銀』である。

「水銀か。面白い」

 水銀を扱いたいと伝えれば、風影も興味を示してくれた。
 水銀はロマンだ。前世の世界でも水銀という存在はすべてを解明されていない。そんな水銀を自在に操ることができればどれほどいいことか。

 とりあえずは軽めな流体を操ることから始めるとする。最終目標は水銀を自在に操作し、水遁のように水銀をチャクラから生み出すことだ。
 道のりはまだ長い。






 俺が5歳になった頃。
 修行に修行を重ね、俺は確実に強くなっていった。流遁のほうも少しずつではあるが扱えるようになり、まだ生み出すことはできないものの既存の水銀を操ることはできるようになっていた。

「小僧、忍者学校(アカデミー)へ入れ」

 唐突である。風影が告げた時には既に入学手続きは済ませてあり、俺は1年早く忍者学校へ入学した。
 1年早い理由は教えてくれなかったが、俺の頭脳や才能を認めてくれたのだと思いたい。厄介払いのために入学させたのだとしたら流石に傷つく。

「貴様ならすぐに卒業できる。すでに忍者学校で学ぶこと以上をやってのけたのだからな」

 俺の心中を察してか、風影が言った。後者の説ではなかったようだ。

 そして風影の言う通り、俺はとんとん拍子であっという間に忍者学校を卒業した。卒業年齢は7歳。学校で学んだ期間、2年。専門学校並みである。俺は記憶があるため当然であるが、カカシやイタチはこれを地頭でやりとげ、さらに1年で卒業してのけたのだから化け物である。もっとも、砂と木ノ葉ではカリキュラムが違うらしいのだが。


 たった2年とはいえど、学ぶことは多かった。
 各自家庭などで小学生レベルをこなしていること前提に進み、入学したときには中学生レベルから始まる。卒業するときには大学レベルをこなしているかこなしていないかの量だ。これでは、孤児ではあったがいい血統で生まれたはずのナルトが落ちこぼれてしまうのも、幾分納得できる。

 前世の時と全く変わらない授業もあれば、『術式語』『忍具学』などのように新たに覚えなければならないものもあった。
 術式語とは、術式を扱う際に避けては通れない語学のことである。梵字に似た文字を延々と覚えていくのだが、そう難しくない。これは語学でもあるが、同時に化学でもあり、論理学でもある。言語よりも本質の理解が重要になってくる分野だ。
 忍具学とは、主に忍具の作り方を学ぶ授業である。クナイや手裏剣や刀、煙玉や起爆札、兵糧丸などの構造や術式を理解し、自身の力で作れるようになることを目的としている。砂隠れなので傀儡の授業も行っていた。
 そしてメインの忍術・体術・幻術。これらはいわば『科学の総集編』である。が、陰と陽のチャクラを理解していればあとはどうとでもなる。この世界の知識を手にしている俺にとって、理解は造作もなかった。

 そして一番気になっていたことを、忍者学校で知ることができた。
 この世界の銃の扱いについて、だ。
 銃自体は存在するらしいのだが、忍がなぜ銃を使用しないのか。

 理由は簡単だ。
 隠密性の問題や、そもそも忍術があるため必要がないということもあるが、なによりも『起爆札』の存在であろう。クナイに起爆札をつければ、あっという間に簡易銃のできあがりである。

 術式語は化学であり論理学である。つまり起爆札に書かれている術式は、前世でいう化学式や論理式の構造と同じなのだ。
 起爆札のように化学反応を起こすものなのか、口寄せのように契約を結ぶものなのか、忍具などを収納するものなのかで式は変わる。しかし、そうと分かれば話は早い。

 言わずもがな、起爆札に書かれてある術式は化学式である。

 チャクラ感応紙を使用しているのかと思えば、どうやらただの紙で起爆札は作れるようだ。とても手軽である。術式を覚えれば複製も簡単にできてしまう。もちろん、起爆する際は自身のチャクラを流し込まなければ発動しないようにはしてあるが。これなら、小南がやってのけた6000億枚の起爆札も夢ではない……かもしれない。
 火薬も不要であった。術式が火薬の化学式を表しているためである。ちなみに煙玉にはきちんと火薬が入っている。
 殺傷能力の低めな火薬の化学式であるため、術式をいじって火力の高い火薬に変えれば、デイダラの爆遁と同等の威力を出すことができるだろう。
 なぜ殺傷能力の低い火薬が選ばれたのかは、隠密性の問題と、火薬の発展の遅れのせいだろう。忍術で補えてしまうため、化学式の研究が進んでいないのだ。
 6000億枚の起爆札といい、互乗起爆札といい、起爆札はまだ可能性を秘めているはずだ。なにより紙切れを持ち運ぶだけでいいし、忍術よりチャクラ消費が少なくていい。
 流遁に加え、起爆札も今後の研究対象にすべきだろう。

 この世界の術とは、それこそあらゆる分野の知識がつまっている科学の結晶なのだ。
 術の研究とは、すなわち科学の研究。術式の研究すなわち化学や論理学の研究。
 幸い、俺には前世の先人たちが見つけ出し生み出した知識が備わっている。そうと分かってしまえば、なんでも解ける気がした。




 忍者学校を卒業後は、砂隠れも木ノ葉隠れと同じように上忍1人、下忍3人1組のフォーマンセルを組むことになっていた。来るべき中忍試験のためだ。
 この時代の中忍試験は巻物の奪い合いではなく、直接的な戦闘によって個々の戦闘力を重視する。戦の時代であるが故の試験内容となっているのだ。

 名前が呼ばれ、班決めが終了する。
 砂隠れは学校の生徒数も木ノ葉隠れより少ないため、年齢も性別もかなりばらけた班決めとなっていた。

 俺と一緒のメンバーはバキと夜叉丸だった。
 ――おかしい。絶対におかしい。女子がいない。3人1組なら1人は女子が入っていると相場のはずだが。俺が思い込んでいただけなのか。ただでさえむさ苦しい忍者の世界なのに、華がなくてどうするんだよ。
 悪態をついたところで決まった班を変えることはできない。おとなしく集合場所へ向かうことにした。

 午後には集合場所へ担当上忍がやってきた。
 だが――まさか10代後半へギリギリ掠るくらいの、少年と呼ぶべき男が現れるとは思わなかった。風影の執務室で見かけた時に会釈をした程度だが、名前ははっきりと覚えている。

「よし、集まってるな」

 俺たち3人の前で腕を組み、どっしりと構えて立った。

「まずはオレから自己紹介でもするか。オレの名前は羅砂だ。厳しく指導していくから、若さでなめてると痛い目見るぞ」

 後の我愛羅の父親である男だ。