砂隠れは繁栄しました   作:布団玉
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戦間期
4. ある1日


 第3次忍界大戦が起こるか起こらないかの、幕間のある1日の出来事である。

 俺の1日は、サボテンが順調に育っているかを確認することからはじまっていく。俺の名前ではなく、植物のサボテンだ。家にはサボテンがずらりと並べてあり、花が咲いているもの、休眠をとっているもの、それぞれ大切に育てている。
 家にいる間、俺の会話相手はサボテンのみだった。しかしつい先日に住人が1人増えたので、むなしく独り言を連ねることもなくなるだろう。

 今日はサボテンの水やり日ではないため、病気になっていないか、ひとつひとつ丁寧に観察していく。
 様子を見ていたヤマトが、俺に近づいて言った。

「それ、なんですか?」

 ヤマトは、人差し指で丸いサボテンを指している。このサボテンのみ卓上へ隔離されているため気になったようだ。

「きれいな赤い花ですね」
「このサボテンか? 実は、羅砂先生の結婚祝い用に贈るためのサボテンなんだ。花が咲くまで待っていたんだが、今日、綺麗に咲いてくれた」

 このサボテンは、最低1週間から2週間は花を咲かせ続ける。咲き終わったら返品でも一向にかまわないが、確か我愛羅の趣味はサボテン栽培だったはずだ。もし我愛羅が生まれれば、これも育ててもらいたいと思い、サボテンを贈ることにした。初心者用で、そこまで珍しいサボテンというわけではないが、サボテンへ初めて触れるにはもってこいだろう。

「それで今日は……研究を手伝えば、修行につきあってくれるんですよね」
「ああ、大丈夫だ。ちゃんと見てやるよ」

 今日は風影がいない。任務もないので、思う存分修行をつけてやれる日であった。
 ふと、ヤマトが視線を卓上へと戻す。「あの」と言いづらそうに再度丸いサボテンを指した。

「トカゲが2匹、サボテンを食べてますけど……」
「マアアァァジロオオォォオオウ! バアアァァッシイイィィイイ!」

 急いで止めた。




 俺の家はサソリ宅ほど広くはないが、地下には大きめの研究室を備えつけている。質素で無機質な肌寒い空間だが、集中力を高めるにはこの程度がちょうどいいくらいだった。
 砂隠れの家は、荒れ狂う砂塵の季節を無事に過ごすため、大抵の家庭で地下に簡易シェルターのようなものが存在する。俺の家も例外ではなく、砂塵嵐用に地下室が存在していた。しかし快適な研究ライフを送るためこれを研究用に改造、現在の研究部屋になったというわけだ。

 そうして、今日はヤマトに手伝ってもらいながら研究を進めていった。やはり、1人よりも2人で作業するほうがとても効率的だ。

 まずは時空間忍術の解析に取り組むことにして、研究に没頭していく。今日で大分解析が進んだはずだ。
 時空間忍術は4次元を利用したものらしい。前世では机上の理論だったが、ここではそれが実現しているようだ。
 例えば絵や写真。3次元で写した写真は、2次元だ。しかし2次元ではその写真を曲げることや、別の場所へ収納することはできない。平面の世界がすべてだからだ。3次元では、それが可能になる。
 つまり術式で3次元という写真を、4次元にいったん収納するのが時空間忍術の大本。
 2次元から3次元を見るのと同じように、3次元の人間が4次元を見るのは不可能である。だから時間を飛び越しているように見えるのだ。実際は、移動時に3次元へ1次元を足し、戻すときは4次元から1次元を引いて、空間を介しているだけなのだが。

 理論はなんとなしに分かる。だが改造は無理そうだ。口寄せ契約自体の術式は理解できるのだが、それを取り巻く空間の術式が難解すぎる。
 それに、改造以前に時空間忍術も素質がいるらしい。いつかミナトや扉間のように使えるようになりたいという欲望はあるが、あまり期待はできないだろう。術や力を求めすぎれば、大蛇丸のようになってしまう。それだけは絶対に避けたいという思いもあった。

 故に、今日も今日とて行きつく先は起爆札の術式研究ということになる。

「で、で、で――」

 全身を震わせ、思い切り手を上へあげた。

「でェーきたァー!!」

 思わず万歳をしてしまうほど嬉しい結果だった。
 今まで構想だけだった起爆札が、ついに完成したのだ。

 その名も『化薬札』。
 火薬ではなく化学薬品の起爆札だ。

 どの国もだが、特に資源の少ない砂隠れでは化学薬品などが高価である。薬品の実験も医療忍術や毒薬研究のみ。純粋な薬品実験は少数派であるため、入手が非常に困難なのだ。
 だから思いついた。起爆札の術式が化学式ならば、薬品の化学式に改造すればどうなるのか。たまさかに薬品そのものの効果が得られるのではないか、と。
 そして本日、研究の成果が実を結んだのだ。

 問題は、その分手軽に持ち運べることである。一見全く問題はないように思えるが、大問題だ。
 手軽ということは、すなわち人の手に渡りやすいということ。危険物であるため、使用方法さえ判明すれば悪用されてしまうだろう。そのため、俺のチャクラに加え水のチャクラ、流遁のチャクラがないと発動できないよう3重ロックをかけておいた。きちんと段階を踏まないと解除できないようになっているのだ。穢土転生の二の舞を演じるわけにはいかないため仕方のないことである。
 解除に段階を踏むので、ここぞという緊急事態の場合や点1秒を争う戦いでの使いどころはほとんどないだろう。使用方法は、主にトラップや陽動。これならば活躍してくれるはずだ。

 完成したのも束の間、俺の脳みそはすでに悲鳴をあげ、おかしな思考回路をつくりあげていた。

「チャクラが少ない。忍の才能がない。万年下忍中忍。そんなことで困ったことはございませんか?」
「なにかはじまったぞ……」

 ヤマトが呆れ顔で俺を見ている。

「そんな時はこれ。サボテン特製改造起爆札。発煙札や化薬札もございます。これさえあれば気分は上忍。あなたも特攻隊員として部隊に採用されること間違いなし。ただし命の保証はありません」
「命の保証ないじゃないですか」
「今なら100枚につき、互乗起爆札を1枚お付けいたします」
「聞いてないですねぇ……」
「シリーズ全種類をセットで注文されたお客様には、普通の紙を6000億枚お付けして、なんとタダ。もちろん送料無料です。使うことのなくなった起爆札は俺が使うので下取りいたします。今すぐお電話ください」
「いい加減戻ってきてください」

 やりきったところで、ふと我に返る。

「――俺は今なにを言っていたんだ」
「やっと戻って来た。頭ぶっ飛んでましたね」
「マジで」

 ――ぶっ飛んでたのか、俺。相当だな。

「そんなことより、早く修行をみてくださいよ」
「はい」

 俺の身になにかが乗り移っていた。通販界に君臨する神の、なにかが。
 研究のし過ぎで大分頭がおかしくなっているらしい。今日はこの辺で切りあげてヤマトの修行へ移ることにした。




 地下の研究室を出て場所を移動し、しばらく歩いたところで目的の修行場へついた。
 ここはいくつもある修行場とは違い、小さくて細い川が存在している。水遁の修行をする時、いつもこの修行場を利用しているのだ。

 チャクラの理論など基本的なことはすでにヤマトへ教えているため、今日からは本格的な修行となる。修行と言うよりも、訓練といったほうが正しいが。忍者なので、らしく『修行』だと言っているだけだ。

「チャクラについてはきちんと理解できてるよな。じゃあ、チャクラ感応紙で属性を調べるぞ。紙へ思いっきりチャクラを流しこんでみろ」

 ヤマトは、言われたとおりに紙へ自身のチャクラを流し込んでいる。結果はすぐに表れた。

「――濡れて崩れたか」

 つまり木遁が使えるのだろうか。
 ヤマトが実験体になった時期は不明である。10歳以下の時期であることには間違いないのだが、俺が拾う前からすでに実験体となっていたのだろうか。

「ヤマト、木遁出せるか?」
「それって初代様だけの血継限界でしょう? 無理ですよ」

 どうやら実験体になった様子は無いようだ。ならば木遁を使う以前から水と土が得意属性だったということか。
 ――俺も初めから2属性欲しかったな。ヤマトは実験体を回避したことで木遁は使えないが、それでもスタート時点で2属性はかなり有利だ。

「どうしてボクが木遁を使えると思ったんですか?」
「ああ、ほら。ヤマトはもともと木ノ葉だったろ。水と土を初めから使えるなら、もしかしたら千手の血統かと思ってな。そんなわけないのにな」

 木遁を使えないヤマトなんてなにか違う気もするが、ヤマトにとってどちらが幸せなのかは俺にも分からない。

「よし。ヤマトが水と土だって分かったことだし、修行に入るか。水は俺も得意だから教えてやれるが、土は羅砂かバキのほうが詳しい。俺との修行じゃ基本的に水を扱うことになるが、いいか?」
「お願いします!」

 修行を始めてからおおよそ数十分後。バキと夜叉丸が近くを通ったので、声をかけた。

「おーい。バキ、夜叉丸」

 俺とヤマトの姿に気づき、迷うことなくこちらへ近づいてくる。

「これからお前を修行に誘うところだったんだ」
「もう修行していたんですね」

 バキが言い、夜叉丸が微笑む。
 連帯を生むためにはひとりで行う修行よりも他者と共に行う訓練のほうが良いだろう。例えば猪鹿蝶のように。なので俺は、修行をするときはできるだけバキと夜叉丸を誘っていた。2人にもそれが身についたのか、修行の際はできるだけ3人のうちだれかひとりでも誘うようになっていた。今回もそのようである。

「ちょうどいいところで通りかかってくれたな。なら、ここで一緒に修行しないか? 俺はヤマトに水遁しか教えられないんだ。2人が協力してくれたら助かる」
「かまわんぞ」
「ボクもです」

 バキと夜叉丸の了承を得て、あとはヤマトだけ。

「ヤマト、いいか?」
「是非お願いします」

 ヤマトのほうも快諾であった。
 こうして、バキと夜叉丸を交えての修行に切り替わった。ついでに俺も修行できるので一石二鳥だ。




 修行も終わり、帰宅。
 今までならば自身で作った料理をひとりで味気なく食べているのだが、今はヤマトがいる。これが彼女であれば最高なのだが、今の俺にはそんなものいない。この世界では一生独身である可能性も否定はできなかった。

 料理も1人分ではなく2人分になり、いつもの夕食を作ったのだが、食卓に並べられた料理を見たヤマトの第一声はこうだった。

「……なんですか、これ」

 苦虫をかみつぶしたような顔。この料理を初めて目にしたならば当然の反応ではあるが、あまりにも露骨である。

「サボテンステーキだ」
「えぇ……」
「ドラゴンフルーツもあるぞ。サボテンの実も」

 育てた食用ウチワサボテンのステーキ。サボテンがサボテンを育てサボテンを食すとはこれいかに。
 ちなみに育てているサボテンの水やりは水遁を使ったら元気に育った。水遁すげえ。命を生み出すという柱間の木遁の元になるだけはある。

 皿の上には、こんがり焼き色のついた緑色の多肉植物。香りは逸品だが、見た目で大幅に食欲が削がれるだろう。ヤマトが顔を強張らせるのも無理はない。しかしこれ以上にまともな盛りつけ方法も思いつかなかった。
 砂隠れでもサボテンを主食にする家庭は少数派だろうが、火の国とは環境が違うのだ。国によって主食が異なるのは致し方あるまい。

 緑のステーキと睨み合いを続けていたヤマトが「共食いですね」と言った。

「俺じゃないって」
「じゃあ、カニバリズムですかね」
「前提からしておかしいって。俺は植物じゃない、人間だ」

 ――ヤマトは俺をなんだと思ってるんだよ。

「とにかく食ってみてくれよ。見た目ほどマズくはないぞ」

 ついに覚悟を決めたのか、嫌そうな表情は変えないままヤマトはステーキを口へ放り込んだ。恐る恐る味わい、飲みこむ。
 瞬間、暗い表情が一変。鈍かった箸の進みも、皿へと伸ばす手が軽やかになっている。

「オクラとか、アロエみたいですね」
「食えるだろ?」
「はい。意外とおいしいです」

 ――料理は科学。どうだ見たか、俺が手塩にかけて育てたサボテンどもは。

 水遁を使えば味もよくなるらしい。水遁の水は栄養剤でも入っているのだろうか。チャクラの無駄遣いである。月に1回から3回の水やりなので、無駄遣いというほどでもないか。
 おかげで、ジョウロのように優しく水やりできる術を身につけてしまった。水遁・水やりの術。水槍じゃなくて、水やり。こんな術いらない。よく考えなくても役立たない。
 まず対人戦になるだろ? すかさず水やりの術を使うだろ。手から小雨のような弱々しい水が流れ出るだろ。その隙に俺は死ぬだろ。自殺するにはもってこい。環境には優しそうだが。

「こんばんは!」

 思考に耽っていると、ドアの呼び鈴と音と同時に、声が届いた。この声には聞き覚えがある。
 さっそくドアを開けてやれば、予想通りの人物が立っていた。

「あ、夕食中だったんですね。ごめんなさい」
「やっぱりマキだったか。いや、大丈夫だ。また発煙札か?」
「ええ。風遁の修行にもってこいだから。あと、パクラ先生も何枚か欲しいっていってたから、プレゼントしてあげようと思って」
「そいつは嬉しいな。じゃあ、今日だけ半額大サービスだ。先生に持っていってやりな」

 儲けられるときに儲けておく。金は命より重い。卑劣と言われようが金は大事だ。起爆札専門の店などを開けば、結構売れるのではないだろうか。世界が平和になったら、小さな店でも開いてみるかな。

「ありがとうサボテン兄さん! ……そうだ。新作の札とかありますか?」
「すまん。今日新作ができたばかりなんだが、俺以外は使用できないようにしているんだ。また新しいものができたら教えるよ」
「そうですか……。じゃあ楽しみにしています!」
「おう。また来いよ」
「ヤマトもまた学校で会いましょうね!」

 後ろを向けば、マキの声に反応して、食卓に着いたままのヤマトがドアの向こうのマキへ手を振っている。
 マキが去った後、玄関を閉めてまた食卓へとついた。

「マキでしたか」
「ああ……そうか、ヤマトと歳近かったもんな」
「はい。同じクラスです」

 マキは両親を霧隠れの忍に殺され、パクラの元で修行をしているらしい。似たような境遇から、ヤマトもよく遊んでいるようだ。
 ここで、俺はあることに気がつく。

「クソォ……俺には幼馴染の女の子なんていなかったぞ。全員野郎だったぞヤマトォ……!!」
「なんのことですか!?」
「不条理だ!!」
「だからなんのことですか!?」

 俺が食卓へ手をつきうなだれると、ヤマトが恐怖で支配できそうな目をして突っ込みを入れた。

「ところで、発煙札ってなんですか? 今日研究してた札じゃないやつですか?」
「なんだ、ヤマトも気になるのか。発煙札は爆発じゃなくて、ただ煙を出すだけのものなんだよ」
「役に立つんですか?」
「戦いには直接役立たないな。けど、ほかは色々役立つはずだよ。マキみたく、修行に使ったりもできる」

 修行で使うというのは俺の想定外だったが。有用に使ってくれているのはとても嬉しいことだ。自身の作ったものが良い方向で使われてるのは幸せなことだ。なにせ扉間の開発した穢土転生は、後に改悪されてしまうのだから。

 食事と会話の途中、また呼び鈴が鳴った。

「サボテン、てめェいい加減にしろよ」

 ――サソリだ。声に怒りが混じっている。だが怒っている理由はすでに察しがついていた。
 ドアを開ければ、緊迫した空気で場が張り詰める。

「サソリ……」
「…………」

 今にも獲物を狩りとるかような目つきだった。怒りの原因は、サソリへ渡した注文書。恐らく()()返却しに来たのだろう。

 最近、頻繁にサソリへ傀儡の注文をしているのだが、毎度毎度断られている。いつもならば使者をよこすのだが、今回はサソリ直々に注文書を返しにきたようだ。俺が届けた巻物型注文書を手にして、眉間にしわを寄せている。

「なぜなんだ、どうして俺を拒絶するんだ」

 ――悲劇の主人公を演出。お涙頂戴間違いなし。ただし非常に鬱陶しいので友達を無くす可能性もあり。

「オレの作ってる傀儡見りゃ分かんだろ……」

 そんな演出をもろともせず、サソリは我慢ならないというように叫んだ。

「それは、オレの、芸術じゃ、ねーんだよォ!!」
「ええ――――ッ!?」

 わざとらしくリアクションをすれば、サソリは俺の渡した巻物型の注文書を床に叩きつけた。それを見て俺は「ああーなんてことをするんだー」と棒読んだ。破かれなかっただけマシではある。

「これ傀儡にしたら絶対かっこいいじゃん。芸術じゃん。最高じゃん」

 思わずカンクロウが乗り移った。

「オレの傀儡をソレと一緒にするな!!」

 そう。俺が渡した注文書の内容は――メカ型傀儡だ。

 メカだぞ、メカ。ちゃんと変形型や装着型、四脚型だって考えたんだぞ。四脚だぞ四脚。ぼくのかんがえたさいきょうのくぐつ。
 ――角都だって忍術にロボットネタ使っていたじゃないか。鉄の国の侍だってそれっぽいの着てたじゃん。なら傀儡だっていけるだろ。

「却下だ! 全力でな!」
「くそォッ……ダメかァ……!」

 やはりダメなのか。たぎる熱い想いだけではダメだというのか。

「どうしてもこの案はダメなのか?」
「無理だな」

 現在進行形で天才と呼ばれる傀儡師にこう何度もはっきり断られると、いくらなんでも堪える。

「――いや。例えば、だが」

 叩きつけられた巻物を俺が拾えば、サソリが言いにくそうに頬を掻いた。

「もっとマシなものを考えてきたら……『共同開発』も、考えてやっていい」
「――!」

 俺の目的は把握してくれていたようだ。流石はサソリ。
 メカ傀儡を制作してほしいという下心もある。しかし、なによりサソリと協力することが、里抜け回避をより凝固なものにするのではないかと考えていたのだ。
 ふとサソリの左腕を見た。潰された左腕を傀儡で補い、不自由なく暮らしているらしい。このように、片腕のみで自分に合った傀儡の左腕を作ってしまうほどの男だ。いつ何時、人傀儡に興味を持って里抜けしてしまうとも限らない。

「……ああ。ありがとう。お言葉に甘えてまた考えてくるよ。でも、この案を諦めたわけじゃないからな」
「せいぜい吠えてな」

 こうして、サソリは帰って行った。嵐のようだった。
 ドアを閉めまた食卓へつけば、ヤマトが俺の手にある巻物を興味深そうに見つめている。

「あの、どんな発注したんですか?」

 注文内容に興味があるようだった。

「こんな感じなんだけどな――」

 巻物を広げ、ヤマトへ見せる。

「――かっこいい」

 小声だったが、はっきりと聞こえた。

「ヤマト」

 ――ありがとうヤマト。本当にありがとう。君は最高だ。

「成人したら酒でも飲みつつ語り明かそう」

 戸惑うヤマトに構わず無理矢理手をとって、握手を交わしておいた。
 こうして、俺の忙しない1日は幕を閉じた。