【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血   作:APOCRYPHA

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第八十一話

 ハクに撃ち込まれた灰色の光は、俺の身体を融かす処か焦がす事も叶わなかった。

 

【……………………】

 

『……………………』

 

 大地に空いた穴から無傷で出た俺に、撃った張本人(張本神?)のハクも第三者の犯罪神も押し黙ってしまう。

 一体なにが遭った……ハクの放つ光、しかもあの充填時間から逆算した威力なら、仮に普段と速度は変わらないとしても俺一人を蒸発させるには十分過ぎる程の火力が片腕の時点である筈なのだ。

 

「『……………………』」

 

 なのに、あの光は足場の大地を融かすばかりで俺を蒸発させる事もなく、挙げ句に傷付いた身体を回復させる始末だ。

 これまでに一度としてなかったあの女(ハク)の放つ光の一面に思わず別人か否かと疑うが、そんな事はありえない。あの光と大地を融かし穴を開けた熱量は紛れもなくあの女の力であり、感じる気配も多少の違和感は有れどあの女のものと大差ない。

 だが、こんな真似(異能の光で回復)が出来るのならあの女が仮にも女神である以上は公の場で間違いなくやるし、今まで気が付いていなかっただけだとしても片腕の一撃は犯罪神を狙っていた。にも拘らず両方とも回復の力を発揮するだけの理由がない。

 

 そもそも、異能というものは力を応用する事までなら出来ても根本的な在り方を変質させる事はまず出来ない。

 現に、端から見れば異能の変質だろう俺の扱っている黒い力を俺自身は自分の力だと感じられないし、これまでの血を操る力の方がその出力はともかく、俺自身の身体には良く馴染んでいる。

 

 あの女の力は徹頭徹尾、破壊にしか使えない。出来ても精々が殺菌や加熱料理位のものか?

 どちらにしろ、熱を用いて加工するのが精一杯である以上は再生処か回復さえ夢のまた夢、仮に出来たとしても熱気のみで構成された気体生命体のような炎熱属性を吸収する存在位のものだろう。

 

 そして、俺の足場だった大地が融けている辺り異能の根底に在るだろう属性は変わっていない。

 同一ないし類似した異能を持った人物の噂は聞いた事がない故に同一人物であるとは思うが、ならばこの回復は何故――――

 

【……………………ニィ】

 

「『……っ!?』」

 

 予想外の事態によって戦闘中であるにも関わらずつい熟考してしまったが、それは突然走った背筋の寒気によって中断を余儀なくされた。

 

【ahaha、ahahahaha……!!】

 

 突如大声で笑い出したハクは、何時もの澄まし顔とは程遠い、攻撃的なとすら言える凄惨な笑みを浮かべて俺を見る。

 

「『……うわぁ……』」

 

『……コレハ酷イ』

 

 今回ばかりは犯罪神の言葉に全面的に同意せざるを得ない。それぐらいに酷い笑みだった。

 ハクの容貌が人外の域で整っているから見れるだけで、毛先から3分の1程の長さが黒くなっている長い金髪を振り乱し、両目を見開き黄金の瞳を物理的にも輝かせ、口元は歪に歪み、頬は興奮からか上気して赤く染まる。

 不気味とか不快感とか、そんな領域を通り越してただ純粋に、逃げたい……心底そう思った。

 

【kyaha! kyahahahahahahahaha!!】

 

 しかし、逃げる事は叶いそうになかった。

 

「『ぬ、おおおおおおおおおおお!?!?』」

 

 凄まじいとしか表現しようのない速さで俺の前に現れたハクがケタケタと笑いながら振り降ろした大剣を、俺は咄嗟に左へ跳ねて避けた。

 地面を焼いて融かしながら大剣の勢いをどうやってか抑え込んだハクは、そのまま犯罪神など知らんとばかりに俺が避けた方に向けて融けた地面の中で向きを変えて大剣を振り上げる。

 

【ahahahahahahahahahaha―――!!】

 

「『あぶ、って熱っ?!』」

 

 それも更に左へ跳ねた事で大剣はなんとか回避できたが、マグマのようなグズグズの液状になるまで融けた地面が飛散して皮膚を焼かれた。

 幸いにも火傷の方は黒い力の恩恵で即座に再生したが、熱さで怯んだ隙をハクが逃す筈もなく

 目の前に立ち、既に頭上に上げた大剣を振り降ろしているハクから逃れる術は、俺にはないのだった。

 

(……ああ、これで俺も終わりか)

 

 何故か傍観者を決め込んでいる犯罪神を視界の端に収めながら、俺は圧倒的な安心感と穏やかな気持ちで振り降ろされる大剣を見ていた。

 本来ならば既に斬られている事とは思うが、恐らくは走馬灯の如く、死に貧した身体が生き残る為の術を探す為の時間を作ろうと思考速度を加速しているのだろう。

 

 しかし、未練も懸念もなくした俺は、この終わりを享受すべく目蓋を閉じ、考えに耽るのだった。

 

(犯罪神は倒せなかったが、あの時の無力感は晴らせた。唯一の懸念と言っても良い犯罪神にしても、今の俺を正面から殺せるのなら倒せるのだろうと思う。肝心なウラヌスとの約束こそ何も守れなかったが、気に入らないとは言えど新たな世代の女神に殺されるなら…………ああ、望んでいた結末とは言い難かったが、これはこれで悪く――――)

 

 ――――そう、思っていたのだがな…………

 

(…………?)

 

 体感時間にして一分、二分と過ぎて行き、何時まで経っても斬られない事を疑問に持った俺は、閉じた目蓋を開いた。

 

【a、aa――亞aあ阿A娃鐚a閼鴉痾會ア錏蛙…………】

 

 ……そこには、振り上げていた大剣を放り捨て、頭を抑えながら呻き、何かを探すように周囲を見回すハクの姿があったのだった。  

 

【蛙、襾唖――――あっ…………」

 

 そうして暫く呻き続けたハクは、足元に居た俺を見た途端に浮かべていた苦悶の表情を安心感と微笑みに変え、突然バタン! と、俺の上に倒れて来たのだった。

 

「『………………はっ!?』」

 

 俺は、近くでゲラゲラと大笑いをしている犯罪神を気にする余裕もなくして困惑するしかないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【kyaha! kyahahahahahahahaha!!】

 

 ワタシ()は、夢現(ゆめうつつ)の境界をさ迷いながら、光輝と暗闇の境界に在りました。

 それは私の心を焼き、何か取り返しが付かない事をしているような不安と焦燥感が、私の心を焦がし続けました。

 

【ahahahahahahahahahaha―――!!】

 

 それ故か、ワタシ()はひたすら目の前の黒いナニかへと私の一部である神器を振るいます。

 目の前の黒いナニかは、ワタシ()の光で熔け落ちる事がありませんでした。嬉しいです。

 誰もワタシ()の浄化を受け入れられない。これは私がワタシである以上は当然の事なのかもしれませんが、絶対に認められない事なのです。

 

(……だって、もし誰もワタシ()の浄化を受け入れられないって事は――――)

 

 ――――いいえ、そんな事はありません。あり得る筈がありません。

 故にワタシは認めませんし、私は浄化を続けるのです。

 

(そして今日、やっと、やっと見付けました)

 

 ワタシ()の光で熔けなかったアナタ……私の総てで守護()するアナタ

 だから……まずはその(穢れ)を祓いましょう?

 

 けれど、幸福な時は長くは続きませんでした。

 

【あ"あ"? 残り滓が調子に乗ってんじゃねーよ】

 

【a、aa――亞aあ阿A娃鐚a閼鴉痾會ア錏蛙…………】

 

 突如暗闇の方から聞こえてきた声は、私の意識を絡め取り、細切れにするように引き千切り始めました。

 

(痛い! 痛い! 痛い! 痛い! 痛い! 痛い!)

 

 苦しいです、痛いです、悲しいです、哀しいです

 ですが絶対に諦めない……必ずアナタはワタシ()のモノに

 その一念だけで最後の力を振り絞り、薄れる視界を動かしながら先程の黒いナニかを探すと―――

 

【蛙、襾唖――――あっ…………」

 

 ――――みぃつけたぁ




……うん、すっごく迷走した結果なんだ。これ
出来が悪くてごめんなさい。と、素直に謝罪します。
一回出来上がりそうだったのをなんか違うと没にしたらこんなに時間がかかったよ……うん、反省


……なお、次はアトリエの方を更新する予定です。

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