【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血   作:APOCRYPHA

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えー、マジで更新が遅れてすいませんでした。
休みの日にストーリーが思い浮かばず、仕事に出勤する間にやっと思い付いた展開を書き連ねた結果、丸一日近く遅れてしまいました。
今後気を付けます……はい。


第八十二話

【蛙、襾唖――――あっ…………」

 

 そう呟くと、先程までの身も心も焼き尽くすような不快感と身も心も呑み込み押し潰すような、なのにこれまでも何度か感じたこれ以上は無いと言い切れる安心感を抱く矛盾を抱えた謎の圧力は嘘のように霧散し、ハクは地面に向かって堕ちていった。

 

『ハ、ハハハ、ハハハハハハ、ハハハハハハハハハッ――――』

 

「『ちょっ!?』」

 

 バカ笑いする犯罪神を尻目に、俺はハクが地面に叩き付けられる前に駆け寄って受け止めようとする。

 例え守護すべき民衆以外には碌な事をしない光の外道とも呼ぶべきあの女でも、一応は次期統治者なのだ。こんな所で死なせるつもりはないし死なれても困る。

 死ぬならせめて、リーンボックス(統べる国)が崩壊してからにして欲しい。

 

 それだけの思いから駆け寄り、黒に染まって上昇している肉体能力で堕ちるハクを受け止めたが――――

 

「『ガアッ――――?!?!」

 

『クハッ、ハハハ、ハッハハハハハハハハ――――!!!!』

 

 力が堕ちる。

 身体から際限なく溢れ出し、攻撃の威力をKあシeいた黒い力が引き出せなくなり、黒い力を再生に回す事が出来なくなった結果、残留した残り滓のような量の力が肉体を内側から壊していく。

 幸い、残留した力が抜けるも早かったから最小限のダメージで済んだが、後数秒遅ければ自分で使った力で戦闘不能に陥っていた所だった。

 

「な、なにが……!?」

 

 相変わらずバカ笑いを続ける犯罪神を気にする余裕もなく、まるで接続の切れたネットワークのように、先程までは手足のように―――とは言い難かったが、自分の意思で使える程度には扱えていた黒い力の使い方さえ靄が掛かったように不透明なものになっていく。

 

『――――――ハッハハハハハハハハ――――ゲホッ、ゲホッ!!!!』

 

「どう言う…ことだ!?」

 

 黒い力を得る前、それこそネプテューヌ達が捕まる前後にまで力が下がった影響で笑い過ぎて喉が詰まったのか、勝手に死にかけている犯罪神を倒す事も出来ず、確認の意味合いも兼ねて一度ハクから離れても見たが、それでも喪失した(レベル)を含む黒い力やその使い方の知識や感覚さえ戻る事は無かった。

 

 それでも、黒い力さえ戻れば犯罪神にトドメが刺せる故に、必死になって黒い力を引き出す術を思い出そうと記憶を漁るが―――

 

『―――貴様、我ヲ笑イ殺ス気ダッタノカ?』

 

「――っ」

 

 ―――どうやら、時間切れのようだ。

 こちらが黒い力を引き出す術を思い出そうと必死になっている間に犯罪神は咳き込んでいた状態から復帰して、ウサギ頭でニヤリと嘲笑うような表情でこちらを見る。

 

 俺は犯罪神との戦いに黒い力を宛にするのは諦めて、本来の構えとは違うものの、左腕で邪剣を正眼に構える。

 この戦いでの勝利は実質的に諦める事にはなるが、今右腕で抱えているハク(これ)を安全まで運び、目覚めるまで時間を稼げればもうそれで良い。先程の力さえ発揮出来たなら、ハクは犯罪神を正面から叩き伏せる事も出来ると俺は確信している。

 

(この場で倒せればそれが最善だとは思うし、約束的にも俺が倒したかったが……まあ、最終的に犯罪神が倒せればどちらでも同じだろう)

 

 そしてこれは勘でしかないが、次の覚醒は先程の歪な気配を孕んだものではなく、ハクの自身の本来の力だと、何故だかそう感じられた。

 故に俺は、この場からハクを逃がす為の隙を窺おうと犯罪神を視る。

 

 そうして一挙手一投足を見逃す事のないように犯罪神を視る中、犯罪神は嘲笑うような表情のままゆっくりと槍を頭上へ振り上げると―――っ?!

 

「ガアッ!?」

 

 それを辛うじてでも防げたのは奇跡だった。

 振り上げられただけの構えもなにもない槍に対して死を感じ、咄嗟に侵蝕の倍率を上げられるだけ引き上げ、更には身体から黒い力が抜けても尚、女神の神器を優に超える程の膨大な力が溢れんばかりに漏れ出ている邪剣で叩き付けるように降り下ろされた槍を辛うじて受け止める。

 だが、ハクを抱えて片腕であった事と使い手である俺自身の力が急激に低下していたのが原因で、先程のように力尽くで押し返して逆に斬り掛かる処か受けきる事も叶わず、凄まじい勢いで背中から瓦礫の山に叩き付けられる事となった。

 

『ドウシタ? コノ程度デ殺ラレルヨウナ貧弱極マリナイ加護デハアルマイ』

 

「ぐ、ごふっ……」

 

 犯罪神は槍を向けながら訳の分からない事を宣うが、こちらはそれを考えられる状態ではない。

 今の一撃で俺の身体は背骨が折れ、肋骨も折れたようだ。衝撃で折れた肋骨が心臓を含めた幾つもの内臓に刺さり、胸や腹を突き破って飛び出している。

 更には、右腕で抱えていたハクも遠くに吹き飛んでおり、別の場所で力なく倒れている。

 異常に頑丈なのか血の匂いこそしないものの、内部の状態までは分からない。

 

(今のは、単なる人間……いや、女神でも死ねるか)

 

 壊れた内臓の修復は諦めて生来の異能で胸部や腹から流れ出ようとする血液を壊れかけの内臓と共に体内へ引き戻し、折れて好き放題に散らばった骨は操作した血液で諸共に体外へ排出する。

 同時に、その骨を含んだ血液を使い遠くで倒れているハクの改造修道服と髪を固め、引き摺るようにして更に遠くへと持ち運ぶ。

 

「……これで、足手纏いは居なくなったか」

 

 ここには血を薄めて嵩増しする水がなく、流した血を最小限度に留めても尚、気絶したハクを避難させる為に血を使うと攻撃用に使える血液はないに等しくなるが仕方がない。

 血の制御を一歩間違えば内臓を零れないように抑えている血の膜は失われて零れ落ちるだろうし、破れた血管や心臓の血流を異能で代用している以上、これ以上は血を体外へ放出する事は即ち死を意味する。

 血のストックは黒い力の影響で使い物にならないほど腐り果てた以上、現状の残量でどうにかする以外にはないのだ。

 

『貴様ガ動カヌナラ、我カラ行クトシヨウカ』

 

 そう言った犯罪神の姿が掻き消えると共に、首から下の感覚が消えた。

 

「っ――――」

 

 声を出そうにも掠れた音さえ出せず、視界もどんどん下へ落ちていく。

 そうして頭から地面に叩き付けられ、自分がどうなっているのかを把握した。

 

(……ああ、首から下が消し飛んだのか)

 

 首から下にあった穴が開いた胴体も、それに付随していた手足さえ、今の俺には無かった。

 血を操作して生命維持を図るにしても、肺が無ければ酸素の供給も儘ならない。

 感覚的に邪剣を持っていた左腕だけは何処か遠くに有ると感じられるものの、左腕だけではどうにもしようがない。

 

『…………ム、マサカ、本当ニコノ程度ダッタノカ?』

 

【――――――!!】

 

 何かを言っているらしい犯罪神の声が聞こえる。

 しかし、俺が見たのは他総てを塗り潰すような闇と、その闇の中で踊り狂う黒い女だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤黒い空も、黒く染まった呪われた大地も、幾つも山のように積み上げられたゲーム機やソフトも、捕まっていた当時から比べるとその量も濃度も落ちたと感じるギョウカイ墓場

 ネプテューヌの所の人間も、ユニを含む候補生も、ブランも欠けた現女神だけでそこへ突撃した私達は、厄介な足留めを食らっていた。

 

「ハク! ハク!! 起きなさい!!」

 

「…………」

 

 そうベールは叫びながら、何故かこんな場所に居て、何故か死んだように眠るリーンボックスの女神候補生の身体を揺すっている。

 

(……まあ、こんな場所で寝てる理由は分からなくもないのだけど)

 

 明らかにアレが関わっているだろう、骨を含んだ血で髪と服の一部を固定して引き摺るように運ばれていたリーンボックスの女神候補生――ハクを見て、私は慌てて来た原因となった情報との差異に顔をしかめて考える。

 

(……ダメね、情報が少な過ぎる)

 

 しかし、あまりにも情報は少な過ぎ、考える事が無意味と言う結論にしか行き着けなかった。

 私は、この訳がわからない現状で唯一はっきりしている方、つまり、犯罪神の力が感じられる方を見る。 

 

「……犯罪神は、あっちの方みたいね……」

 

 その力は数分程飛べば埋まる程度とは言え、離れていても尚恐怖すら感じる程に強大で、聖剣があっても本当に勝てるのかと言う不安が消える事はなかった。

 なにせ、亜空間と呼ばれてはいても実質的な繋がりは殆どないギョウカイ墓場からゲイムギョウ界にまで空間を超え、震災と言う形で大きな影響を出した程の力だ。

 最低でも空間の壁をぶち破って大きな影響が出せるレベルである事は想定でき、そこまでの力は女神にはなく、そもそも四天王を倒しにいった時よりも戦力は下がっている現状では勝率は非常に低い。

 

(……いいえ、グロウは勝てないのに勝てると言うほど耄碌も盲信もしてなかったわ)

 

 勝てる訳がないと理性で判断したものの、思い出すのは矢鱈自信満々に私達を送り出した信頼できる副官の事だった。

 あいつは踏まれたり過剰な労働を課されたりして悦ぶような変態ではあるが、それだけにそんな現状が失われるような結果になる可能性は徹底的に排除するような奴だ。

 

(……まあ、ユニ達が連れて来られない以上は考えても仕方ない、か)

 

 正直、今のレベルダウンした私達より戦力になり得るユニ達が連れて来れればとは思うものの、無理なものは仕方がない。

 犯罪神の力に影響されたのか、地震が治まったと思えば突然町や村に襲撃してきたモンスターの軍勢には無駄に戦力が揃っているプラネテューヌは言うに及ばず、ラステイションだってあいつが集めて鍛えた部下が対応するから上位の危険種以外ならある程度は大丈夫なものの、そこで気絶している候補生がモンスター退治を過剰にやっていたリーンボックスには対応できる人材が足りずに幾つかの町が陥落しかけていた。

 

 だから同盟を結び、これから守護女神戦争を終わらせる為の和平を結ぶ関係上仕方なく、リーンボックスに貴重な戦力であるユニやネプギアを送り込むしかなかった。

 

(まあ、その穴埋めは後できっちり請求するとして、問題は犯罪神をどう倒すかね)

 

 そう、一番の問題はそこだ。

 感じられる気配からして、犯罪神と候補生を含む私達女神の力には大きな開きがあり、女神化した私達が全盛期だと仮定して全員で戦っても十中八九で力負けする。

 候補生()達に加えて雪崩れ込んだ吸血鬼達に対処する為にブランも不在のこの状況では、頼みの聖剣が役立たずだった時の為にグロウ曰く全盛期の私達四人に近い力を持つらしいリーンボックスの候補生が目覚めるのを待つ以外の選択肢はない。

 

 そんな事を考えていた時かしら?

 

「……ん、んぅ…………?」

 

「ハキュッ!?!」

 

 ベールの妹が目を覚ました――――ッッ!?!?

 

「あばばばばばば、ヤバイ! ヤバイよこれ」

 

 ベールの妹が目を覚ましたと同時に、突然犯罪神の力が爆発的に高まる。

 その力は先程の比ではなく、先程を蝋燭の火に例えるなら今は山火事と言った所だと思う。

 

「な、なに!? なんなのよ、この力は?!」

 

 動揺して慌てるネプテューヌの隣で思わずヒステリックに叫んでしまうが、それほどにどうしようもない力の差だ。

 

(さっきまでだって勝てるかどうか分からなかったのに! こんなの、勝てる訳ないじゃない!?!)

 

 しかし、悪い事は続くようで

 

『……………………』

 

「あ、ぁあ……」

 

「もうだめだー……おしまいだー……」

 

 犯罪神が、目の前に現れた――――


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