Mobが心を持った時   作:泥人形

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何か書いた自分でも良く分からんのが出来上がったけど書いてて楽しかったから良いや。
剣の世界~の方がだれてきたからこっちを投稿。
ではでは楽しんでいただければ幸いです。


ラグーラビットの場合

 

走る走る走る。

 

周りの景色が高速で後ろに流れていく。

 

ただ只管にがむしゃらに足を前に出す。

 

あまりの酷使に四肢が悲鳴を上げている。

 

それでも止まらない、止まる訳にはいかない。

 

自分の頬を青く光る何かが切り裂き地面に突き刺さる。

 

目から涙がこぼれ始めた。

 

恐怖が全身を強く包み込む。

 

いやだいやだいやだ。

 

死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。

 

ボロボロと流れる涙が空中に軌跡を残していく。

 

嗚咽が口から漏れる。

 

心臓は強く早く脈打っていた。

 

バクバクと鳴る心音に押されるように自分の足が少し早くなる。

 

これなら、逃げ切れるかもしれない―――

 

そう思った直後、自分の背中に大きな衝撃が走った。

 

短く悲鳴を上げて大きく吹き飛ぶ。

 

たったの一撃で自分のHPは9割がた消し飛んでいた。

 

後ろの方から歓喜の声が聞こえた。

 

全身に走る不快な感触を堪えながら必死に立ち上がって左に大きく跳ねた。

 

瞬間頬を切り裂いた物と同じものが地面を穿つ。

 

それを認識したと同時に地を蹴った。

 

次の瞬間自分の体は大きく宙を舞った。

 

ゆっくりと自分のHPが減っていき0を示す。

 

直後に自分の視界は真っ赤に染まり徐々にブラックアウトしていく。

 

自分の身体から何かが抜け落ちたような感じがする。

 

それは勘違いではなくしっかりと形を作りその場に落下した。

 

既に見えなくなってきた目で自分を仕留めた人間を見る。

 

黒髪黒目背には一本の剣を背負い、その顔は歓喜を表していた。

 

悔しいとは思わなかった。

 

恨みも持たなかった。

 

憎いとも思わなかった。

 

ただ、虚しかった。

 

必死に抵抗したにも関わらず簡単に殺されたことが心底悲しかった。

 

自分の足りなさに心底反吐がでた。

 

そうして今まで抱いたことのない感情を抱えながら自分は天に還った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めたら一面何もない平野だった。

 

キョロキョロと周りを見回しても特に何もない。

 

自分を殺した人間もいなければ自分と同じモンスターもいない。

 

空を見てみれば先ほどまでは朝日に包まれてたというのに今ではすっかり帳が降りている。

 

そうか、私はリポップしたのか。

 

珍しくすぐではなく時間を空けて復活したのだろう。

 

それにしても、ふむ…

 

初めて殺されたが、あれは思っていた以上に恐ろしいものだな。

 

今までは軽く考えていたが体験してみるとあれほど恐ろしいものはないと思えるほどだ。

 

逃げている間はあの少年が悪魔が死神にしか見えなかったほどだ。

 

思い出すと身体が震える。

 

ああ、怖かった。

 

全くあんな目にあってしまうとは我が身体も罪なものよのう。

 

いや、我が肉というべきか。

 

何を隠そう私は超のつくレアでスーパーなモンスターで、この肉は超超美味しいスーパーレアなものなのだ。

 

その名もラグーラビット。

 

直訳すると…煮込みウサギ。

 

つまり煮込み料理にするとおいしいよ!ということだ。

 

本人からしてみればたまったものではない。

 

お陰で誰かを見かけた瞬間逃げ出さないといけないのだから。

 

今まではあっさり逃げきれていたのだが今回ばかりは違った。

 

軽く血走った目で私を追いかけてくる姿は何の比喩もなく悪魔だったと言えるだろう。

 

二度と遭遇したくないものだな。

 

まぁ、また会う確率は凄まじく低いから問題はあるまい。

 

何故なら私がポップする確率は私の下位互換モンスターボイルラビットの0.00001%。

 

一千万匹ほどそいつらを狩れば確実に遭遇できるレベルだ。

 

故に会うことは二度とないだろう。

 

二度と会うことはないことが残念どころか嬉しさでしかない。

 

まぁ、そんなことを考えていたせいで遭遇フラグが立ったらたまったもんじゃないのでここらでやめておこう。

 

取り敢えずは身を隠せる場所を探そうと走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神速が如き速さで地を駆ける。

 

長い耳は宙を緩やかにたなびく。

 

右へ左へゆらゆらとフェイントをかけながら走り続ける。

 

後方には三人の人間がいた。

 

しかし先ほどの少年程早くはなく、飛んでくる武器も躱しやすかった。

 

お陰でグングンと距離が離れていき、やがて彼らの姿は消えた。

 

 

 

 

う、うおおおおおお…さっき殺されたばっかだから焦ったああぁぁ…

 

あいつら見かけたときはやばい、フラグ立ってたか…?

 

と戦慄したが何とか逃げ切れて良かった。

 

安堵しながら木陰に身を隠し今のことを振り返る。

 

今までに比べてあっさりと逃げ切れた気がする。

 

何か違和感を感じて自分のステータスを確認してみる。

 

いつもと変わらないHP、相変わらず脆弱な防御力、いつまでたっても非力な攻撃力。

 

そして、唯一の自慢の敏捷力。

 

900少しで止まっていたそれは何と1000を超えていた。

 

一体何があったのだ…?

 

もしや殺されて肉を落としたせいで身体が軽くなったとでも言うのか…!?

 

いやいやと首を振るが他に理由が思いつかない。

 

うんうんと数分唸り、最終的にまあ良く分からんがラッキーだってことで良いや。

 

きっと速さの神様にでも愛されてるんだろう、という結論を出した。

 

仕方ないじゃない、私はあまり賢くはないのだから。

 

そう自己弁護して立ち上がる。

 

考え事をしていた時に私は一つやりたいことを見つけた。

 

それは―――人との全力競争。

 

え、何がしたいと思うの、と思う方もいるかもしれなが私には娯楽といものが全くないのだ。

 

故に他の者をからかうくらいでしか暇を埋めれない。

 

この上がった敏捷を全力まで試したいと思う気持ちと、

 

少年に刻み込まれた恐怖を取り払うためにもする必要があるはずだ。

 

そう思い人のいる街に向かって歩き出した。

 

 

 

 

街の前には二人の人が大きな槍を持って見張っているので仕方なく近くの木に身を隠す。

 

そうしていたら門から栗色の髪の美少女が出てきた。

 

十時の入った白と赤の服に腰につけられた美しい細剣。

 

目に入った瞬間私は察した。

 

この人は速い、と。

 

根拠はないが自信はある。

 

そんな妙な自信を持ち私は彼女の腹にタックルをかました。

 

彼女は私にタックルされた腹を押さえつつ私を見て驚きに顔を染めた。

 

瞬間閃く右の手を後ろに避け、挑発するように愉快な笑い声を上げてみせた。

 

彼女の髪が幽鬼のように逆立ち微笑んだかと思ったら一気に私に駆けてきた。

 

同時に私も前を向き走り出す。

 

右に左に揺れながら走る走る走る。

 

彼女は飛び道具を使わずただ私を捕まえようと駆けてきていた。

 

私の限界まで鍛えられた敏捷が唸りを上げていっそう速く景色が流れていく。

 

しかし距離を離されることなくそれどころか距離を詰めてくる彼女に私は恐怖ではなく何故か歓喜を覚えた。

 

自然と口は弧を描き嬉しさで声を上げていた。

 

やがて平野から森に私たちは足を踏み入れた。

 

無我夢中で右へ左へ木を避けていく。

 

彼女はそんな私を見失うことなく、多少の距離を離されつつも追いかけてきた。

 

それを認識して、私は心底楽しいと思った。

 

何故かはわからないが、私は今の状況を楽しんでいることだけは分かった。

 

私は悲鳴を上げ始めた足に鞭を打ち更に速くなろうとする。

 

高速で森を抜けた私たちはまたもや平野にて競争を続けた。

 

もっと、もっともっともっと速く!何よりも速く駆け抜けたい!

 

今まで感じたことのない感情を抱きながら走り続ける。

 

音に追いつけ光を超えろ―――

 

私の速さは周りを視認できないほどにまで達したその時。

 

首にとんでもない衝撃が走った。

 

何だ何だ何が起きたと困惑していたら首に手がかかっていた。

 

そのまま私は首根っこを引っ掴まれ持ち上げられ、彼女の顔の真ん前にぶらさげられる。

 

彼女は息を荒くしながらも笑顔で

 

「捕まえた」

 

そう言った。

 

ああ、そうか。

 

私は負けたのか。

 

殺し合いではなく、間違いなく私の土台で。

 

私の最も得意として私の唯一の武器である速さで戦い負けたのか。

 

不思議と悔しくはなかった。

 

むしろ嬉しくさえあったと言えるだろう。

 

無抵抗に見つめる私をどう思ったのか両手で持ち直し数秒見つめた後に笑顔で言う。

 

「今日から君は私の子ね!名前はピョン吉!」

 

何と、私をペットにするというのか。

 

まぁ嫌ではないし了承しよう。

 

しかしだな、ご主人殿よ。

 

名前、もう少し良いの無かった…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後持ち帰られた私は私を殺した少年を見かけ震え上がり更にはご主人の思い人であることを知り何とも言えぬ感情に呑まれたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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