ダンジョンに救世主っぽい何かがいるのは間違っているだろうか   作:泥人形

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 何かすごい期間空いてしまいましたな…多分次の投稿もかなりかかるかも。
 そして今回もノリとテンションで書いてたから違和感とか色々あると思います。そしてその内修正が入る気がします。


和食と日本っぽい何か

 情けは人の為ならず、という日本語のことわざがある。

 このことわざ、本来は「情けは人の為だけではなく、いずれは巡り巡って自分に恩恵が返ってくるのだから誰にでも親切にせよ」といった意味なのだがこれまた勘違いされやすい。

 ならず、と言ってるところから否定的な意味だと捉えてしまうのかもしれないが決して「情けをかけることは結局その人の為にはならない」という意味ではないのだ。

 因みにこの意味のことわざを情けが仇、という。

 

 急に何故こんな話をしたのかそれは―俺が今現在、その言葉の意味を噛み締めるように味わっているからに他ならない。

 

 つまり今俺は―

 

「うめぇ…! 和食最高…!!」

 

 この世界に来てから間違いなく最高レベルの幸せを享受していた。

 いやはや和食様様…いや命ちゃん様様…? むしろタケミカヅチファミリア様様である…

 

 そう、現在俺がいる場所は黄昏の館ではなくタケミカヅチファミリアの本拠である。

 では何故ここにいるのか? 

 その理由は至極簡単、前回俺に軽いトラウマ刻んだ…もとい見知らぬ人のところに連れまわし紹介するという暴挙に出た少女がここの眷属…命ちゃんなのだ。

 しからば何故今その子のとこのファミリアにいるのか、

 これまた簡単なことだ。何てことはない、いつもの様にダンジョンに入って遊んでいたら偶然出会ったのだ――

 

 

 

 

 ――その日は珍しく寝坊することもなくいつも通り、ダンジョンで狩りをしながら下へ下へと向かっていた。

 新しく手に入れたおにぎり君17号の切れ味に惚れ惚れしながらもゆったりじっくり下へと歩を進めていたのだ。

 いつもならこんなゆっくりと進まないんだが…ま、たまにはこういうのも良いよね!

 そう考えながら襲い掛かってくる獣達を両断しながら歩いていた時だった。

 

「あーーーーーっ!!」

 

 キーン、と甲高い声が俺の耳を貫いた。

 凄まじくうるさい。

 まだ上層とはいえダンジョン内で大声上げるんじゃねぇよ…モンスター集まってきちゃうだろ…

 一体どんなアホが叫んだんだ、周りをキョロキョロと見回すと後方にそいつらはいた。

 妙に日本っぽい感じの服装に身を包んだ黒髪の少女に若干影の薄そうな少女、そしてムッキムキの青髪のおっさん。

 

「うわぁ…」

 

 正直総毛だった、今の俺はムキムキのおっさんが軽いトラウマなのだ…

 しかしそれよりも俺を後ずらせたのがいた。

 それは刀を思わしき武器を腰にひっさげた黒髪少女である。

 何故ならその娘はピンと立てた指をこちらに向け、更には大口を開けていたからだ。

 因みにパーティーメンバーと思われる他二人はその子を驚いたように見ていた。

 

 ……うん、確実こっちを指さしてる気がするけどここはスルーの方向で。

 何だか面倒な匂いがするんですよ…

 素早く前を向き早足にその場を立ち去ろうとする。

 何なら途中から走り出そうとしたまである。

 しかし、それは一歩踏み出した瞬間に阻止されることになった。

 

 おかしなことに、俺の身体が一ミリも、ピクリとすら動かなかくなったからである。

 いや、何故かはわかっている。

 あの黒髪少女がガッチリと俺の手首をつかんでいるからである。

 つまり、俺は名前すら知らない100%他人の女の子に触られて緊張のあまり動けないのである。

 あとはあれ、コミュ障故にどう反応したら良いのかが謎過ぎてもうだめ。

 あああああ、取りあえず離してお願いしますぅぅぅこのままじゃ思考回路が死んで発狂するからぁああああ!

 

 軽く涙目になりながら恐る恐る少女を見るとキラッキラした眼でこちらを見つめてくる。

 何だその純粋そうな瞳は、おいやめろそんな眼でみるな浄化されちゃうだろ…

 そんなことを思っていた俺は気づいた。

 この子のパーティーメンバーのムキムキと少女が近づいてくるのに。

 あ、これダメなやつだわ(確信

 メンタル限界まで擦り切れているところにトラウマ(弱)に類するものが近づいてきた時点で俺は限界を迎えた。

 

「いやぁあああああああああ!!?」

 

 

 叫ばれたり掴まれたり叫んだりと取りあえず色々とうるさかった。

 

 

 それから落ち着くのに約十分である。

 

 

「私ですよ私!」

 

 ピョンピョコ跳ねるようにそう言う黒髪の女子。

 誰だこいつ。

 

「誰かな君は」

 

 思ったことをそのまま言うとガビーンッと目に見えて落ち込む黒髪。

 取りあえず胸元さらしだけとか防御力が低すぎる。

 

「私です! 命ですよ!」

 

 いや名前言われても分かんないっす、はい。

 というか押しが強いな…苦手なタイプです(バッサリ

 

「い、いやだから知らないっす…」

 

 若干引きながらそう言うと命ちゃんとやらの隣にいた筋骨隆々のイケメンが前に出た。

 髪が青い。この世界染髪料とかないのに頭がカラフルなの多すぎてちょっと付いていけないよね…

 神ならまだしも普通に人間やってるやつにも赤とか緑とかいるんだぜ?

 いや獣人とかエルフがいる時点で常識もくそもないんだけどね?

 

「思い出せないか? お前は命が俺たちにお前のことを紹介している時に逃げ出したんだがな…」

 

「…?…!」

 

 思い…出した…! この子あの時の頭イッちゃってる系の女の子だ…。

 助けてもらった立場だというのにコミュ障こじらせた俺をたくさんの他人に紹介するという苦行を与えた鬼畜少女っ…!

 ということは今回のはあれか…

 「てめぇ折角私の好意で他人に紹介してやったってのに逃げだしやがって…覚悟はできてんのやろなぁ?」

 的な感じで落とし前みたいなのをつけさせられちゃうやつか…!?

 

 こりゃもう逃げの一手しかありませんわ。

 そうと決まったらさようなら!

 無言でバックステップを決めようと軽く足を曲げた瞬間だった。

 

 ガッ、とまたもや右手を掴まれた。

 今度は影の薄そうな少女Bである。

 絶対に逃がさないってか?

 何なのお前らそんなに俺を泣かせたいの…?

 

「命の話を、聞いてあげてください…」

 

 見た目に反することなくボソッと呟かれるように、しかししっかりとした声量で影うす少女はそう言った。

 ぬぐぐ…俺は手を掴まれている以上離脱出来ないから聞かざるを得ないんだけどね?

 いや無理やり振りほどくなら余裕だけどそんなことしたら多分この子怪我しちゃうし…

 

「分かった…」

 

 やれやれ仕方がないな…みたいなポーズを取る俺。

 飽くまでポーズである。内心はほぼ全く知らない人に囲まれて冷や汗ダラダラのガクブル状態だ。これこそ正に仕方がない…!

 

「お、思い出してくれましたか!?」

 

「ん、少しは。名前とかは覚えてないや」

 

「そうですか…では改めて! 私はヤマト・命と申します! 前回は誠にありがとうございました!」

 

 なんと、服装が着物みたいだと思ってはいたが名前まで日本人っぽい。これはもしかしたら彼女らはあの極東出身なのではないだろうか…?

 

「あ、ああ、俺の名前は御神楽甘楽だ。前のことは特に気にしてくれなくて結構」

 

 多少声が震えたがむしろその程度で済んだことに感動すべきである。

 若干嬉しくなりながらも差し出された手を掴む。

 自分の手と比べて小さい手。

 刀を握り、振るい続けた俺の硬い掌とは違い、命ちゃんの手は多少の硬さはあるものの柔らかい手をしていた。

 見る限りまだレベル1か2だろうしこれからどんどん硬質化していくのだろうなぁ…そんな感想を抱いた。

 

 と、手を離そうとしたところで違和感である。

 なんか手を離せないのだ。

 どうしたのだろうか、軽くビビりながらも命ちゃんの顔を覗くと感動したようにじっくりと握った俺の手を見つめる命ちゃん。

 …なんか犬みたいな尻尾をブンブン振ってる幻覚が見えた気がした。

 

 何だか気恥ずかしくなり無理やりひょいっと手を払う。

 その後は続くように影うす少女と筋肉男と握手をした。

 

「ヒタチ・千草です…よろしくお願いします…」

 

「よ、よろしく」

 

 影うす少女は緊張しているようでぼそぼそとそう言った。

 お陰で謎の安心感が生まれて俺の心の平穏が多少なりとも戻って感謝の極みである。

 

「俺はカシマ・桜花という、仲間を助けてくれてありがとう」

 

「お、おう、よろしく…」

 

 堂々とした声でそう言ったのは筋肉男改め桜花くんである。

 ガッチリとした筋肉質の男である桜花くんは俺の嫌な記憶を呼び覚まし平穏の戻りつつあった俺のメンタルをぐっしゃぐしゃにしかねない危険人物だ。

 いや桜花くん自体は嫌いじゃないんだけどね? 

 ただむっきむきのおっさんには苦手意識があるもので…主にあの猛者とかいうやつのせいで。

 

 というか全員とても馴染みのある名前をしている。

 命ちゃんとかどっかの宇宙戦艦とか思い出しそうになるし千草ちゃんの苗字の後には思わず in spire the next とか付けたしたくなる。

 カシマとかどっかのコンビニで出現したことがありそうなものだ。

 

 もしや彼らも俺と同じ転生者とかではなかろうか? 気になるがしかしさらっと聞けることでもないので困りものだ。

 だってもし自分がいきなり「あなたは転生者ですか?」とか聞かれたら聞いてきた人の頭を心配しちゃうわ。

 しかももし違ったらお前何言ってんの? となり不審な目を向けられること間違いなしである。それはあまりよろしくない。

 でももし転生者なら甘楽さん嬉しいんだけどなーこのちょっと寂しさ感じてる現状から解放されるんだけどなー

 色々この世界に来て困ったあるあるとか話したりして盛り上がってみたいんだけどなー…。

 

 ただ、まあ恐らく彼らは違うだろう。

 大体、抽選云々言っていた時点で俺みたいなのは絶対数がかなり少ないのがうかがえる。

 だから、この三人が転生者である可能性というのは限りなくゼロに近いと俺は予想しよう。

 別に聞いた挙句違った時が恥ずかしすぎるとかそういうことは関係ないのである。関係ないったらないのだ。

 

 不意に顔をあげるとこちらの様子を伺っている三人。

 どうやら少しばかり考えすぎてしまっていたようだ。

 

「すまない、考え事してしまっていた」

 

 そう言い軽く頭を下げる。

 これは流石に俺が悪い。話していた人を無視して自分の世界に入ってしまうとか礼儀的にアウトだ。

 

「い、いえ! 大丈夫です!」

 

 ハキハキとそう答える命ちゃん。

 それなら良かった、と更に言葉をつづける。

 

「それで、用はこれだけか?」

 

 と言いつつもこれ以上用がある方があり得ないだろう。これでゆったりと気ままにダンジョンライフに戻れる。

 ――そう思っていた時期が俺にもありました。

 

「いえ! 我らが主神が是非会いたいと申しておりまして…我がファミリアへ来ていただけたら、と」

 

 え、ええぇぇ…

 まさかあの程度のことで他人様のファミリアの主神に興味抱かれるとか俺ってば凄まじくツイてねぇぇ…

 まあこれはあれだ、安定のお断りだ。申し訳ないが俺はそもそも”神”ってのが苦手なのだ。

 だってあの方たちナチュラルに人様の心読んでくるんだもの…なんだよ嘘がついてるか分かるとか…嫌すぎるわ…。

 ついでに言えば身に纏ってるあのオーラ…神威? が凄い嫌い。あの強制力半端なさすぎて泣きたくなる。

 あれに抵抗してる間とか呼吸はし辛いわ汗はダラダラだわ体から力が抜けていくわで最悪である。

 今でこそヘファイストス様とか仲良さげだけど会った当時とか一方的に俺が恐れまくってたまであるからね。

 フレイヤ? あれはもう論外^^ あそこは主神も眷属も相性最悪だ。

 

「やはり、嫌でしょうか…?」

 

 思わず苦い顔をしていたら命ちゃんが不安げにこちらを見てきていた。

 う、うーむ、何か断りづらい雰囲気…。

 そうだな、それじゃこうしよう。

 もし彼らの主神が日本神話系の神だったらついていこう、それ以外だったらお断りってことで!

 …まあ日本神話系の神の名前なんざこっち来てから聞いたこともないから実質お断りしますと決めているようなもんなのだが(笑)

 

「うーん、一つ聞きたいんだが、君たちの主神の名前はなんて言うんだ?」

 

「あ、言い忘れていましたね! 私たちはタケミカヅチ様を主神とするタケミカヅチファミリアです!!」

 

 うそん…こんな偶然ありかよ…?

 これには流石に驚きを隠せない…っていうかもうどうなっているんだってばよこの世界…

 日本はないのに日本神話の神がいたり北欧なんてないのに北欧の神がいたり、ギリシャもないのにギリシャの神がいる!

 一体どんな世界観してんだよ! もうわけわからんぜ…世の中不思議に包まれ過ぎだ…

 

「うちはまだ贅沢を出来るようなファミリアではないですが精一杯おもてなしさせてもらいます!」

 

 しかも貧乏なんかーい…しっかりしろよ我が国が誇る雷神さまよ…

 いや、武神でもあったか? まあもう何でもいいや(思考停止

 ただ、まあ自分で決めたルールには従っておこう…

 

「あ、あーそれならお言葉に甘えよう、かな」

 

「本当ですか!」

 

 嬉しそうにはにかむ命ちゃん、見れば千草ちゃんに桜花君も少しばかり嬉しそうだ。

 そんな姿を見てまあ喜ばれているのなら、まあいいか、とそう思った。

 そして物語は冒頭へ…である。

 

 

 

 

 べとついてはおらずサラサラとしており、かといって硬すぎもない、噛めば噛むほど甘みが感じられる白米。

 小さな正方形に切られた真っ白なお豆腐と透き通るような一口サイズのワカメが浮かぶ白みそベースのみそ汁は一口飲めば虜にされてしまいそう。

 パリッと焼かれた魚は奥まで火が通っていて、身にはしっかりと脂が乗っている。さっとレモンを振って食べればあっさりとした味わいの後に塩と、魚の旨みが口の中に弾ける。

 

 俺の語彙力ではこの美味さを表現しきることは不可能ではあるのだが一欠けらでも伝われば嬉しい、この幸せ誰かと共有したい…。

 いつも他人を羨んでばかりの俺も今日ばかりは幸せいっぱい夢いっぱいである。

 

 前世では見慣れた、扱いなれた箸やお茶碗を手に持ち幸せを感じる。

 箸を器用に使いこなす俺を見て、三人と一柱は少しばかり驚いているようだった。

 だがまあ、その反応も当然と言えるだろう。

 俺にとってはいつも扱っていた箸もここ(オラリオ)では珍しいものなのだ。

 ここでは基本的に使われるのはフォークとナイフとスプーン。つまり洋風が強い。

 そんなところに住んでいる俺が置かれているフォーク等に触れることすらせず難なく箸を使いこなす姿は少しばかり驚きだろう。

 

 折角気を遣って置いてくれたであろうそれらは寂しく放置されっぱだがまあ許せ。

 俺は久しぶりに箸で和食を食べれて有頂天もいいとこなのだ。

 

 

 

「ご馳走様でした」

 

「お粗末さまでした」

 

 しばらくして綺麗に平らげた俺は若干の名残惜しさも残しつつも手を合わせてそう言うと馴染みの言葉が返ってきた。

 どうもタケミカヅチ様が言ったようである。

 なるほど、この世界の極東はやはりそれなりに俺のいた日本に近しいものらしい。

 といっても、文明の進みは圧倒的遅れを見せているようだが、それはまあこの世界においては仕方がないだろう。

 なんてったって車より早く走ろうと思えば走れるやつばっかだし、魔石とかいう謎パワーを持つ物質もあるからな。

 そもそも科学なんてものに頼ろうと思うものが全くいないしな、だって魔法で何とかなるもの。

 魔法無しで何かを成し遂げてぇ、何て発想する人は限りなく少ないだろう。

 

「満足してもらえたようで何よりだ」

 

 深い思考の海に浸ろうしていた俺をその言葉が引き上げる。

 人前だろうと関係なく考え事をしてしまうのは俺の悪い癖だな、そう思いながらも治す気はない。

 というか治せる気がしない。

 

「ええ、オラリオで食べたものの中で一番美味しかったです」

 

 思考を断ち切った俺は本気でそう言ったのだが命ちゃんたちはどうもお世辞だと思っているようだ、不服である。

 だがそれが嘘かどうかわかってしまうタケミカヅチ様は嬉しそうにそれは良かったと顔を綻ばせた。

 信じてもらえてなによりだ。

 

 まあそれより、である。

 流れに流されここまで来てちゃっかり食事を堪能したのだが、この後どうすれば良いのだろうか。

 じゃあな!飯美味かったぜ!みたいなフランクなノリで帰って良いのだろうか…

 こっちに来てからソロで活躍していたせいかぼっちが加速しているのだ。

 最早どう振る舞ったらよいのか分からない。

 

「甘楽殿、と言ったかな」

 

 内心おろおろしていたらやけに重々しい雰囲気でタケミカヅチ様が口を開いた。

 

「ええ、はい。御神楽甘楽と申します」

 

 反射的に俺は言葉を紡ぐ。

 

「そうか、少し前のことになるが、俺の眷属を救ってくれて本当にありがとう…恩に着る」

 

 するとタケミカヅチ様は神であるというのに俺にその頭を下げた。

 嘘だろお前簡単に頭下げ過ぎぃ!

 

「頭をお上げください、あそこを通ったのは偶然なのですから」

 

 命ちゃんがラッキーだっただけです。

 若干のテンパりを見せながらそう続ける

 当然だが偶然というのは嘘である。

 あの時も命ちゃんの悲観の念が俺の頭を揺さぶっていたのだ。

 だがまあ説明するのも面倒だし、そもそも自分のスキルを自ら開示するとかアホの極みである。

 

「だがしかし…」

 

 しつこいな、そこはあっさりと「そうか」くらいで終わらせてくれたら楽なのに。

 ただまあそういう訳にもいかないのだろう、実際命ちゃんは俺がいなかったら死んでいたかもしれないのだから。

 

「美味しい食事も頂けて満足ですので、それで貸し借りなしってことにしましょう」

 

 正直貸し借りのある関係とか肩こって仕方がないのだ。

 こちらとしては極東の話とか聞いてみたいしまた和食食いたいしでせめてタケミカヅチ様とだけでも仲良くしていきたいのだ。

 対人レベル最底辺の俺が縁を結びたいと思っているのは珍しいことなのだからあっさりさっぱり仲良くしてほしい。

 

「う、うむ…」

 

「タケミカヅチ様、甘楽殿もああいっていることですし…」

 

 それでも納得いかない様子のタケミカヅチ様に桜花君が助言する。

 良いぞ! もっとやれ!

 しかし渋ること渋ること。何だなにが納得いかないのだ。

 食事程度で命を助けてもらった恩を返せないとでも思っているのだろうか。

 だとしたら律儀か、と笑いたくなる。

 

「ではこうしましょう、タケミカヅチ様」

 

 うむむと唸る一柱の神は若干不安そうにこちらを見る。

 

「見たところあなたたちは極東出身。そして自分は現在極東にとても興味を持っているのです。ですから極東のお話をお聞かせ願いたい」

 

「…? そんな程度のことで良いのか?」

 

「そんな程度だなんて、自分にとっては現状最も価値のあることですよ」

 

 不信そうに声を漏らすタケミカヅチ様と桜花君。

 だが本当の本当に俺は今極東についてもっと詳しく知りたいと思っているのだ。

 資料を漁るよか実際そこを知ってる人から聞いた方が面白いし、記憶に残りやすいしな。

 ついでに言えばここにちょいちょい来ればまた食事を頂けるのでは、という下心もある。

 

「ふむ…本当にそれでいいのなら、こちらとしては構わないが…」

 

「本当ですか! ありがとうございます!」

 

 嘘ではないと判断したのか戸惑いながらもそう言うタケミカヅチ様。

 それにかぶせるように礼をする。いや実際本当にうれしい。

 そして何より知らない(ひと)を相手にここまで上手く話すことが出来たことが嬉しすぎてやばい、にやける。

 

「で、ではこれから一週間に一回ほどはお伺いしたいのですが…」

 

「うむ、それに関してはいつ来てくれてもいい。俺は常にここにいるからな、日中であればよほどのことがない限りいるだろう」

 

「ほ、本当ですか! それでは明日からお伺いしましゅっ…」

 

 

 ―――ここに来てやらかした俺である。

 顔が急激に羞恥に染まるのを感じた俺は耐えきれずに謝罪の言葉を叫びながらその場から全力で離脱をしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―次の日からタケミカヅチファミリアに毎日のように通う一人の青年の姿が見受けられたとかなんとか。

 

 

 

 

 




 因みに三人とも転生者ではなかった模様。聞いた後の主人公の顔は真っ赤だったとかなんとか。

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