礼装少年今日も行く   作:泥人形

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ガチャ引いても引いても礼装しか出ない今日このごろ。


フランスにて

 

 1431年 フランス

 

 俗に、百年戦争と言われる争いが起こっていた時期。そんな時代に俺たちはレイシフト―簡単に言えばタイムトラベルをした。

 いや別に訓練から逃げ出したとかでもなく牛若丸から逃げ出してきたわけではない。これは俺のカルデアでの唯一の存在価値にして、使命。

 すなわち、人理定礎の復元である。

 今回は過去のフランスで歪みが発生し、特異点が出来上がってるってことで来たのだが

 

「何か空に巨大な光の輪が浮かんでるんだけど」

 

「現状ではまだわかりませんね、ここはドクターの言う通りに霊脈を目指しましょう」

 

「ん、そうだな」

 

 そうして晴天の下ナビゲートに従い霊脈に向かって歩き始める。

 道中で疲れ切った兵士たちと交戦したりもしたがこちとら英霊×3+デミサーヴァント+魔術師(素人)である。

 一瞬にして終わってしまった戦闘。殺してはいないが立つこともできないほどに痛めつけた兵士たちに話を聞くとなんと、シャルル王があのジャンヌダルクに焼かれ、殺されてしまい、今では竜の魔女として名を馳せているとかなんとか。

 この話が本当だとするとおかしい。ジャンヌダルクは火刑によって死んでしまったはずだし、そのジャンヌダルクにシャルル7世が殺されたなんて歴史と違いすぎる。この前まで高校生やってたんだ、ちょうど社会でやってたし覚えてる覚えてる。

 しかし不思議だ。歴史によればジャンヌダルクは聖女として崇め奉られほどの聖人なのだ。そんな人物がそんなことをするだろうか、いやそれ以前に処刑されたはずなのに活動してる時点でおかしい。つまりこれは英霊と化したジャンヌダルクによるものなのだと推測できる。

 だがそもそも英霊となったとしても彼女がそんなことをするのだろうか、逸話によって善・悪・混沌を決められる召還システムによって召還されたのならば、彼女は少なくとも善。それもクラスでいえば一番あてはまるのはルーラーってところだ。もしかしたらバーサーカーってことも考えられるが…うーむ、良く分からんな。霊脈を確保した後はジャンヌダルク探しだな。これが今回の特異点の原因だろうし。

 

 あまり出来のよろしくない頭でうんうんと唸りながら考えていると不意に体を引っ張られる。

 

「うぉお!? 何だ何だ?」

 

「呆けてんじゃねえぞ、敵襲だ。それもアホみてぇに数が多い、援護頼んだぜ」

 

 そう言ったランサーは愛槍ゲイボルグを持ち、前方にいる骸骨兵たちに突撃していき、それに続くように牛若丸とメディア、マシュも戦線に加わっていった。

 

「牛若丸と、覚えてもらおう!」

 

「ここで消えてしまいなさい」

 

「武装完了…行きます!」

 

 血のような朱の槍が、光を反射する白い刀が、巨大な十字の盾が振るわれる度に何体もの骸骨兵が地に還り、緑の魔弾が飛ぶたびにその体を粉々にしていった。

そんな四人を援護するように俺はルーン魔術で時には燃やし、時には凍らせ、時には動きを封じていく。

 

「何とかなりそうだな…」

 

 視界一杯に広がっていた骸骨兵たちがみるみる減っていくのを確認して確信したその時、猛烈な悪寒が体中を包み込む。

 勢いよく上空を見るとそこには、緑の鱗をまとい悠然と、しかし勢い良くこちらにやってくるドラゴン…いや、ワイバーン。それも数えるのもアホらしくなるほどの大軍。

 

「くそったれかよ…」

 

 悪態をつきながら懐から取り出すはメモ帳サイズの分厚い札の束。

 それの内一枚を持ち、ワイバーンたちの先頭に向けて魔力を流し込む。

 

「ガンド!」

 

 叫ぶと同時に札から撃ち放たれた赤黒い魔弾はワイバーンの腹に直撃、そのまま貫通してみせた。

 

 本来のガンドという魔術の威力にしてはあり得ない威力。もちろん、俺の技術や魔力量はほとんど関係していない。皆ダイスキー概念礼装の力である。

 概念礼装として呼び出されたガンドの術式が刻まれたそれは現代の魔術と比べて破格の威力を誇っていた。いや、そもそも概念礼装として呼び出された時点で現代のものと比べるのすらおこがましい程のステータスを持っていた。

 それこそ、竜種の強靭な鱗、肉体を貫き通してしまうほどに。

結論、概念礼装パない。

 

「上空から敵襲! 数は分からん、とにかく多い! 後多分ワイバーン!」

 

『了解!』

 

 骸骨兵どもを蹴散らし切った皆がそろって空を見上げ顔をしかめつつもしっかりと返事をしてくれる。

 

 相手は空を駆る竜の軍勢。それだけで攻撃しにくいことこの上ない。こりゃ苦戦するかなぁ、と思ったのも束の間。

 

 本日のお天気は晴れ時々ワイバーンです♪といわんばかりにワイバーンが落ちてくる落ちてくる。血まみれで。ふと空を見れば竜の背を駆け首を切り落としていくランサーとライダー。

 地上から魔弾でワイバーンを穴だらけにしていくメディア。落ちてくる死骸から俺を守ってくれるマシュ。そしてできる限り全力でガンドを撃つ俺。

 再結論、英霊パない。

 

 と、そんな勢いでガンガンと倒していくがいかんせん数が多い。その上援軍のように追加されていくのだからどうしても攻勢に出させてしまう。

 何頭ものワイバーンが大きく口を開いた。

 ギラリと光を反射する牙が並んだ口の奥からは炎熱の塊

 しばしため込まれた後にそれは大気を舐り尽くすように放たれた。

 

「しまっ――」

 

 こいつはまずい、そう思った時暖かな光が体を包み込み、己を焼き尽くすはずの炎を避けた。

 

「お怪我はありませんか!?」

 

 炎の向こうから現れたのは、金の髪を背中で束ね、紫の装束でその手には雄大な旗を持った一人の女性。

 

「私はジャンヌダルク、説明は後にしてまずはあれを撃退しましょう!」

 

「は? へ、あーうん、了解?」

 

 ぶっちゃけ思いっきり混乱している。これがジャンヌダルク? シャルル7世を焼き殺し、魔女とすら呼ばれている女性? まさかまさか、この英霊がそんな存在であるわけがない、いやでももしかしたら――

 考え始めたら止まらない思考、それを無理やり停止させ魔術にのみ思考を傾ける。

 

 無心にしてガンドを放ち続けること十数分、空を覆うものは雲だけとなったころにようやく息をつくことができた。

 

「んで? あんたは一体何者なんだ? 噂の魔女とも思えない」

 

「…はい、私は確かにジャンヌダルク。ですが魔女と言われてる彼女とは別の存在…なのだと思います、少なくとも、私が現界した時には既にその噂が広まっていました」

 

「ふぅん…なるほどね、取りあえずは信じるとする。ただ、悪いけど信用するにも材料が足りないから少なくとももう一人のジャンヌダルクを見つけるまでは一緒に行動してほしい」

 

「分かりました、ですがその前にあなた達のことも聞きたいです」

 

「ああ、そりゃもちろん…てか勝手に進めちゃったけど良かった?」

 

「おう、俺は問題ねぇと思うぜ」

 

「私も、主殿がお決めになったことに従います」

 

「私も特に異論はないわね」

 

「私も同意見です、先輩」

 

「それなら良かった」

「そんじゃ、まずはこっちの事情説明からだな、まず俺たちは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「世界を救うために人理を修復すべく過去へ…何とも不思議な話ですね」

 

「やっぱ信じられない?」

 

「いえ、貴方の言うことに嘘はないと私は感じます、最初の予定通り共に行きましょう」

 

「ああ、良かった。それじゃこれからしばらくよろしくな、ジャンヌ」

 

「ええ、よろしくお願いします、十時」

 

「そんじゃまずは霊脈確保行くかぁ」

 

そうしてナビに従い歩き続けて一時間、霊脈であるジュラ―ではなく、その手前にある街ラ・シャリテが見えてきたところで違和感を感じる。

 

「街から火が出てる…?」

 

「もしかしてっ」

 

 全員が顔を見合わせ頷き合うと同時にその場から駆け出す。目的地はもちろんラ・シャリテ。

 ようやくついた街の惨状は、無惨の一言に尽きた。

 倒壊した建物、未だ燃え続ける植物、住民であったであろう屍兵たち。

 

 そして、竜に乗りこちらを見下す5騎の英霊たち。

 

 

「――なんて、こと。こんなことが起こるなんて」

「ねぇ、誰か私の頭に水をかけてちょうだい」

「だってそれぐらいしないと、あまりに滑稽で笑い死んでしまいそう!」

 

 先頭にいた、ジャンヌによく似た英霊、いやジャンヌをそのまま黒くしたような…強いて言うなら闇落ちジャンヌとでも言うべき存在が嘲笑とともに嘲りの声を上げた。

 

「あなたは、あなたは一体誰なんです!?」

 

「あら、分からないの? 私はジャンヌダルク、火にかけられた後にまたこの地に蘇った竜の魔女」

 

「な、なぜこんな馬鹿なことを…」

 

「馬鹿なこと、ですって? そんなこともわからないのですか私!」

「国のため、人のために立ち上がりフランスに勝利をもたらしたにも関わらず!」

「信じた者たちに無惨に裏切られ!」

「最後には異端として処刑された!」

「そんな国を信じ真っ当に救おうとしたことの方が馬鹿なことだったのよ!」

「だから、私は全ての人を殺し、この国を死者の国とする。それが私の救国」

 

 その言葉は全て間違いなくジャンヌダルクの本心だったのだろう。

 国に裏切られ、民に裏切られた彼女の真の心の内だったのだろう。

 故に、それを聞いたジャンヌは否定することもできずに呆然とその場に立ちつくしてしまった。

 そんなジャンヌを見て、黒に染まったジャンヌは口を開く。

 

「やはり、あなたは私ではない、ジャンヌダルクではなく私が捨て去った過去。私の搾りかす。もういいわ」

「バーサーク・アサシン、バーサーク・ランサー、好きなだけ、存分に貪り尽くしてしまいなさい」

 

 それを聞くや否や、背後から二騎の英霊が俺たちの前に降り立った。

 

「わたくしは血と肉体をいただきますわ」

 

「ならば吾輩は魂をいただこう」

 

 短く言葉を交わしこちらをにらむ二騎の英霊。

 

「では、行くぞ!」

 

「先輩! 皆さん! 来ます!」

 マシュが叫ぶと同時に黒の装束に身を包んだ白髪の男はその手に長槍を持ちこちらに飛び込んでくる。

 

「ランサー!」

 

「おう!」

 

 それをランサー、クー・フーリンが受け止める。互いの武器がぶつかり合い激しい金属音が空間を揺らす。

 繊細さを失っているものの強烈にして激烈な勢いで攻め立ててくるバーサーク・ランサーとまるで鞭でも扱っているかのように縦横無尽に槍を振るうランサー。

 どちらも俺の目では追いきれないほどの速さで行われる戦闘は熾烈の一言に尽きた。

 

「あら、私を忘れてもらっては困るわよ?」

 

 狂気に染まりながらも美しさを感じられる声が鼓膜を揺らすと同時に緑の魔弾が眼前で爆発した。

 

「っつ…メディア! あれの相手頼めるか!?」

 

「えぇ、任せなさい」

 

 瞬間弾ける色とりどりの魔弾。それは二人の間を凄まじい速さで行き交った。

 バーサーカーとして呼び出され狂化したアサシンのステータスは本来のものよりも上となっており、それ故に荒々しく攻め立ててくる。

 しかしメディアは魔法に等しいとすら言われる魔術を扱う稀代の魔術師。守りに徹していながらも決して押されているわけではなく、完璧に対応してみせていた。

 

 

 

 

「マシュとジャンヌはいつでも宝具を使えるように準備しておいてくれ、牛若丸、残り叩くぞ」

 

「了解です、主殿」

 

「な、先輩!? ダメです前に出てはいけません!?」

 

「大丈夫だって、俺にはとっておきがあるから」

 

 ニヤリと笑ってそう返しながらも懐から数枚のカードを取り出す。

 それを上空に放り言霊を唱える。

 

「信仰こそ人の証し、忘れ去られた神秘をこの手に、水月に届けこの一撃、我これに悔いを残さん」

 

 瞬間それは光を放ち俺の体を包み込む。

 

 概念礼装 鋼の鍛錬

 概念礼装 コードキャスト

 概念礼装 一の太刀

 概念礼装 騎士の矜持

 カードとなった概念は今ここに顕現する。

 それは光に姿を変え持ち主に人ならざる力を与える。

 その光は肉体を人の限界以上にまで押し上げ、運命すら捻じ曲げる必中の一撃を与え、敵対する者の綻びを見抜く力を与える。

 気づけば光は形となりその手に木刀として具現化していた。

 

「さて、と高みの見物してないで俺ともあっそびっましょー!」

 

 英霊にすら匹敵する速さで黒いジャンヌに迫り勢いよく木刀を振り下ろす。

 瞬間、二人の間に入る人影。それは鞘から引き抜いた剣で受け止めて見せた。

 激しい音を響かせながら互いに距離を取り合う。

 

「あんたの名前は?」

 

「私はバーサーク・セイバー、シュバリエ・デオンだ。君たちとは敵対したくないのだがね、体が言うことを聞かない」

 

「そっか、そんじゃさっさと叩き潰して楽にしてやんよ」

 

「出来るものなら、そうしてくれ」

 

 男とも女ともとれる容姿をした英霊の言葉を皮切りに凄まじい剣戟が始まった。

 上下左右、あらゆる方向から放つ俺の攻撃をデオンは何ともないように受け流していく。

 概念礼装によって限界以上まで強化された肉体が悲鳴を上げるほどの速さで全身を扱う。空間を穿つ勢いで放たれた突きも、音すら置き去りにする斬り込みも全て受け流されていく、しかし受け流されるだけ、である。そう、デオンはわざと防御に徹しているのではない。守勢に出ざるを得ないのである。それほどまでに礼装に刻み込まれた魂は、俺の全てを跳ね上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、では私の相手はおぬしか」

 

「あら、野蛮なお方ですね、でもそうね、私を止めてくれるならその方がありがたいわ」

 

「ああ、すぐに息の根ごと止めてみせよう、我が名は牛若丸。そちの名はなんという」

 

「ええ、私はベタニアのマルタ、これでも竜を治めた聖女です」

 

「あい分かった。その名覚えておこう、では!」

 

 瞬間二人は同時に飛び込みぶつかり合う。

 片や日本屈指の大英雄、知らぬものの方が少ないとすら言える知名度を誇る牛若丸、またの名を源義経。

 片やバーサーク・ライダーとして呼び出されていながらも自我を保ち、狂化に抗うことのできる悪竜タラスク鎮めたといわれる聖女マルタ。

 

 白く光る刀と十字の杖がぶつかり合いその場を激しく揺るがした。

 自らの手足のように振るわれる十字の杖、それは一撃一撃に信じられないほどの破壊力が込められている上に自然に織り込まれてくる激しい拳や蹴撃に不覚にも牛若丸は攻勢を許してしまっていた。

 

「っく、お主本当に聖女か!? どう考えても戦い方がヤンキーだぞ!」

 

「あなたは本当に失礼な方ですね!?」

 

 

 

 

  それぞれの戦いは、始まったばかり―

 

 

 

 

 

 

 




王妃とか音楽家の出番を奪っていくスタイル。

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