紅魔の次女に転生しました   作:センゾー
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番外編【Wild Hunt in The Halloween】
前日譚其の一【真っ赤なハロウィン】


 トリック・オア・トリート、お菓子くれなきゃイタズラするぞ。

 少女は、籠を片手に無邪気に笑った。その笑顔は無垢で、正しく子供のそれだった。

 えぇ、いいわよ。

 女性は笑顔でそう言うと、子供に背を向け家の中に入っていく。

 やった。

 少女は明るく声を上げる。

 元気ね。

 女性は笑う。

 ありがとう。

 少女が言った。

 いいえ。

 女性は応えた。

 嬉しいわ。

 少女が駆け寄る。

 待ちきれないの。

 女性が問う。

 いいえ。

 少女が笑う。

 血の匂いがした。

 女性は振り返った。

 ありがとう、それじゃあ。

 少女がいた。

 いただきます。

 女性は最後にその声を聞いた。

 ごちそうさまでした。

 最後に残ったのは。

 お粗末様でしたも言わないのね。

 闇だけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハッピー・ハロウィン!

 私はそう心の中で唱えた。今日は10月31日、所謂ハロウィンだ。トリック・オア・トリート、そう言って、仮装した子供は近所の家を訪ねて周り、お菓子をもらう。街は飾られ、ジャック・オ・ランタンを模したカボチャが彼方此方に晒し者のように置かれる。

 あぁ、今日はハロウィン。幸せなお祭り、ハロウィン。あぁ、幸せな日。

 

 そう、現代ならば、幸せなお祭りの日だった。

 

「クソッタレ! ハロウィン!」

 

 私は片っ端から後にパチュリーが継承するのであろう属性魔法を乱射しながら、腹の底から声を出して叫んだ。

 

「五月蝿い! 作業に集中なさい!」

「だって、こんなこと叫ばずにいられるものですか! 毎年の事とはいえ、」

 

 私が生きるのは中世ヨーロッパ。ハロウィンがまだ、本来の意味を失っていない時代。幻想が幻となっていない時代。で、あれば結論は一つ。

 

「こんな量の悪霊、相手したくはありません!」

 

 私は幾千もの悪霊犇く墓場のど真ん中で、クソッタレの祭を呪った。

 

 ハロウィンは元はケルトのお祭りであり、その目的は秋の豊穣を祝う事、そして、悪霊を払う事だ。問題なのは悪霊で、人間は色々して悪霊対策しているが、あれは実際のところ少しも効果がない。

 じゃあ、なんで悪霊が暴れ回らないのかと言うと、人間がいなくなると困る私達化生、主に吸血鬼系統の連中が墓場で悪霊を鎮圧しているからで、私は今、その作業を行っている。

 毎年、万越えの悪霊相手に戦争を仕掛けているのだから、もう堪らない。やめたい。休みたい。

 いっそ墓場を焼い払おうかと思ったが、それは流石にマズイ。

 感謝もされないのに辛い思いをして、こんなに戦っているのだ。叫びたくもなる。

 

「あぁ! あぁ! あぁ! もうハロウィンなんて嫌い!」

 

 ありったけの呪いを、悪霊にぶつけて私は戦う。その呪いが来年の悪霊を強くすることも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

「疲れたわね、早く帰りたいわ」

「そう、ですね。早く帰りましょう。あぁ......当分、魔法は使いたくない」

 

 戦い終えて、私達は帰路についていた。夜も更け、時刻は恐らく丑三つ時くらいになっていて、疲労困憊の私は羽根を動かすのも嫌になって、羽根を生やしたゴーレムに運ばせていた。

 ようやく、戦い終わったのだ。休ませて欲しい。何も起こらないで欲しい。ひたすらに願った。

 だが、その願いは無残にも打ち砕かれることとなった。

 最初に気づいたのはお姉様だった。

 

「ねぇ、あそこの村、血の匂いがするわ」

「家畜が襲われたんじゃないですか? 私、もう魔法は勘弁して欲しいのですけど......」

「いえ、人の血よ、これ。ちょっと生きましょう」

 

 お姉様が不安を顔に浮かべて、降りて行く。私は、「えー」と不満を漏らしながらも、ついていかないわけにもいかないので、渋々付いて行った。

 そして、そこで地獄を見た。

 

「なんですか、これ」

 

 そこは赤く赤く、染まっていた。むせ返るような血の匂いが鼻をついた。嫌になるくらい、月明かりで赤く照る村はどう見ても、この世のものではなかった。

 恐らくは化け物の仕業。でも、ここらでこんなことする奴はいない。

 

「近くで、何かの封印が、解けた......?」

 

 私は小さく呟いた。誰も答える者はいなかった。

 呆然とする私達の意識を取り返したのは、小さな小さな声だった。ハッとした私達は声の元へ駆け寄った。そこには男がいた。腹が割かれて内臓がいくらか無くなっていた。

 何度も、同じ言葉を言っているようだった。私達は耳を澄まして、その言葉を聞いた。

 

「Lumina......Ah......《光、を》」

 

 直ぐに男は息絶えた。不安を覚えた私達は直ぐに化け物を探した。しかし、誰も見つからなかった。それ以上事件が起こることもなかった。

 

 ハロウィンの夜に起きた怪事件、その正体を私達は知らない。

 

 そこには闇があるだけだったのだから。

 

 もしも、知っている者があるならば、それは闇に他ならないのだろう。

 

 影の行方は、誰も知らない。




10月31日22:30にハロウィン何もしてないと思って、慌てて一時間で書いたので雑です。すみません。でも、内容は直ぐに思いついたので割と楽でした。



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