八幡と留美の距離が縮まる、そんな時の一場面です。

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やはり俺とルミルミの関係は間違っている

初夏の風が吹く中、俺、比企谷八幡はいつも通りに通学路を歩いていた。

今朝も小町の朝食をもぐもぐパクパクと食べ、「お兄ちゃん!行ってらっしゃい!」と満面の笑みで見送られ、小町戸塚の次に天使!愛してる!と心の中で叫んでいると、目の前にランドセルを背負った女の子がいることに気づく。まあそんなことはどうでもいい。

 

が、その女の子、体調が悪いのかフラフラしている。これはあれだ。また俺が←事故っちゃうパティーンだ。ソースは俺。いや俺かよ。

(っ……また病院で2週間も監禁されるのは面倒だ)そこで俺は、その子供の手を引き安全な小道に連れて行った。はたから見れば完璧なロリ変態野郎だろうが、幸い周りに人はいない。

 

そこで初めて俺はその子の顔を見た。…………………なぜお前?そう、その子はかつていじめっ子たちを叩き潰し、ツンツンしてながらも俺を気に入っているちょっと変わった小学生、鶴見留美本人だったのだ。通称ルミルミ。俺はナイスネーミングだと思ったのだが本人には好かれていない。

「お、おう…久しぶり…って留美お前大丈夫か?熱あるみたいだけど」

 

「……うん…八幡、、、、体が熱い」

 

おでこに手をやるとかなり熱い。これで歩けたのが凄いくらいだ。

「病院に行こう。俺がついていく」

 

「いいよ…自分で行く…八幡と行ってもその腐った目の人は君とどういう関係だ?とか聞かれそうで面倒…」

 

「……高熱の中でもさらっと罵倒するのやめてくれる?」

八幡心折れちゃう。朝の小町を心の中で反復再生していた矢先、反動でダメージは大きい。現役ぼっち男子高校生の俺の心を折るとは、、、(変なところで弱いが)末恐ろしい。

 

「いいから行こう。ほっとくわけにはいかない」

 

「……ん、わかった…でも八幡学校は、、、、?

 

「いい。どうせ平塚先生にファーストブリッド喰らうだけだしな…」

 

「???」

 

 

 

時は昨日にさかのぼる。放課後奉仕部の部室に向かっていると職員室へ向かう平塚先生に鉢合わせした。正直この先生はこの学校、いやこの世界に闇をもたらす空気を漂わせているのであまり関わりたくはない。

「おう比企谷、調子はどうだ?雪ノ下や由比ヶ浜と上手くやれてるか?」

 

「まあぼちぼちですね、、用がないなら行きますよ俺」

 

「まあ待て比企谷。少し話をしようじゃないか。そうだな…洗濯物についた汚れはなぜもあんなにしつこいのか」

 

「……らしくないですね。そんなどうでもいい話するなら行きますよ」

本当にらしくない。なにこれ八幡チョットコワイ。裏ありそう。

「いや、昔を思い出していてな、学生のころ洗濯板をよく使ったものだ」

 

「洗濯板?ああ、あの非効率に衣服に付着した汚れを強引にこすり落とすための道具ですね、最近滅多に聞かないので忘れてました。そんなものを学生の頃使っていたなんて、、、そのへん年の差を感じ…」

 

「比企谷???」

見ると先生は指をバキボキと鳴らしている。無駄に笑顔だ。美人なので笑顔は美しい。なんで結婚できないんだろう、、、。って、そんなことを考えている暇はない。

ヤバイこれは、、、。

 

「衝撃の…」

「平塚先生〜職員会議始まりますんで急いでください〜」

助け舟だ。さっさと逃げましょうここは。が、

 

「すみません。私生徒指導担当としてこいつの腐った根性を叩きのめしてるのでちょっと待ってて下さい」

有無を言わせない。てゆうか今叩きのめすって言ったよね?生徒指導じゃなくて生徒殲滅だろうこれは………。

 

「ふむ、確かに職員会議よりそちらが優先かもしれませんね」

助け舟は泥舟だったため沈んだ。しかしそんなことでやられる俺ではない。自慢の(いや全然)ステルス機能を全開稼働し、先生方の会話の隙に逃げ出した。後方から、「ひぃぃぎいいがあぁやあああ゛」という怨霊のうめきが耳に入ったが聞こえなかったこととした。

 

 

とまあ、そんなこんなで学校へ向かうのは憂鬱だったのだ。留美を病院へ連れて行くのは口実にちょうどいい。

「ふぁ、ふぁーすとぶりっと…?」

 

「なんでもない。行こう」

 

 

 

「風邪です」

「へ?」

 

「いやですから、単なる風邪なのでご心配なさらずに」

「ほ、ほんとに?なんかの発作とか、、そういうのじゃないんですか?」

 

「おそらく疲労からですね。抗生剤を出しておくので高熱もなくなるでしょう」

安心した。入院とかになったらどうしようと思ってしまった。

「あ…有り難うございます」

 

「ええ、ところであなたこの子とどういう関係で?お兄さん?」

 

「(うっ…)い、いやあ、、」

本当に聞かれてしまった。これでお友達ですなどと答えたら、明らかに変な目で見られるに違いない。どうしようかと思いあぐねていると、留美が

「……彼氏」

「へ?」

「は?」

2人同時に言った。

「だから、彼氏って言ってるの…///」

顔を真っ赤にしながらも言った。

ようやく状況を理解した俺は、

「いやいやいやいやいやいや!!なんで!?」

と叫ぶ。医者は呆然とし、「はああ、、、」とだけ。脊髄反射で俺はで留美の手を引き、部屋を出た。

 

 

「で、どういうことだよ留美……」

 

「だって、、、私八幡のこと好きだから…さ」

うっ……不覚にも可愛いと思ってしまった。何これ、小学生に告白されちゃったよ!これが世に言うツンデレか!……なんと答えればいいのか、、、、、3秒後の脳内会議でお礼をいうことが決まる。

「お、おう…さんきゅ、、、」

沈黙。男子高校生と女子小学生が見つめ合っちゃってる。どうしまひょ、、、、、、

 

「だ、だから八幡さ…暇で暇でしょうがなくてもしよかったら私と今度の日曜日出かけない……?」

来たよこの展開。なんか前も同じようなことがあった気がするがまあ要するにデートだ。しかしぼっちの名ははこの程度で動揺するほど伊達じゃない。お得意の台詞で切り抜ける。

「ああ…ごめん。日曜日はその…用事があって」

 

「そ、そっか、、、」

うっ…………上目遣い。てゆうかとても悲しそうな顔をしてるので罪悪感が。………………致し方ない。

「で、でもまあ…なんとかなる用事だから留美とデートするよ…」

 

「デ、デート!?違う!一緒に出かけるだけだよ!////」

「お、おうお出かけ行こう…」

こうして俺は小学生とデート、じゃなくてお出かけすることとなった。ちなみに学校は大遅刻したため、平塚先生に撃滅のセカンドブリッドも喰らう羽目となった、まる。

 

 

日曜日。

朝の感動や情熱を逃すのは誠に遺憾だが致し方ない。

小町には奉仕部の活動があると言って出てきた。ジト目で見られ完全に嘘を見破られていたが逆に拗ねられてしまい気まずい中家を出た。

故に服は自分のコーディネートな訳だが、これで良いのだろうか。

下はやや古くなったジーンズ、上は薄いフリースに半袖のジャケットを羽織った感じ。まあ雑踏の中に溶け込めているのでよしとするか。

 

そうこうしていると待ち合わせ場所に着く。待ち合わせ5分前。完璧だ。ところが、留美は先に来ていた。しかも「遅いよ!」と言われる始末。まったくわがままったらない。まあそれはいいとして、デートと言ってもどこに行くのかなにも決めていない。留美に一応聞いてみるとするか。

「体調は大丈夫か?」

 

「うん、薬飲んだらねたから」

 

「ところでさ、どこ行くかとか…考えてるか?」

 

「え?だって年上の八幡が考えるのが普通じゃないの?」

…いやだって留美からデート、いやお出かけ行こうって言ったよね?俺は付き合ってあげよう的な感じのスタンスだったんだが。

「俺も考えてない…」

 

「ええ〜八幡役に立たないなあ」

………酷い。ナチュラルに罵倒すんのやめてほしい。

 

取り敢えずマッカンを買い、一休み。(まだなにもしてないけど)

「八幡、これ甘い」

 

「わかってないな、この甘さがいいんだよ。俺の人生すべて苦いんだから主飲物くらい甘くてもいいだろ?」

 

「主飲物てなに、、、」

 

結局、定番の映画を見ることになった。

ちょうど留美も見そうなものがあったのでちょうど良い。何故かポップコーンを大量購入し、入る。

「留美さん……もう少し食べる量考えて買おう」

 

「食べられるからいいの!この程度食べられないほど子供じゃない!」

どこに意地張ってんだお前は。「だいたい映画のポップコーンなんて満腹になるまで食べるものじゃないぞ全く……」

「いいから行こ!」

しまった声に出てたか……

 

 

 

「結構面白かったな」

 

「うん、八幡と見れてよかった」

ぶふっ!俺は飲んでいたファ◯タをストローで逆流させた。なんで小学生に動揺してんだ俺は……。

「次、どこ行く?」

 

「そうだね、なんかお揃いのキーホルダーとか欲しい///」

 

「お、おう…いいけど」

そこで俺らは映画館のグッズショップで様々なものを買い漁るのだった。(金は全て俺に泣)

「色々買えたね八幡」

 

「おう……(財布が軽いぜ☆)」

すると、同じくお揃いのキーホルダーを買い、写真を撮っている高校生らしきカップルを見つけた。嫌な予感がする。

「八幡、あれ」

 

「おう」

 

「………」

 

「なんだよ」

 

「八幡鈍感すぎる」

 

「お前の説明が足りないのは明確だと思うぞ」

 

「お前じゃない、留美」

 

「じゃあ留美、なに?」

 

「……写真撮ろうよ」

やっぱりな。幸か不幸か俺はスマホをちゃんと持っている。アルバムにリアルの写真が2枚しかない。悲しきかな………

「早くカメラ」

 

「はいはい」

 

カメラを内カメにしてキーホルダーを持つ。が、ここで問題が発生。写真を撮るために留美と近づき、かなり密着してしまっている。綺麗な髪から鼻腔をくすぐるいい匂いし、体から暖かさが伝わってきて正直困る。一色や由比ヶ浜でスキンシップに慣れているような気がするが、可愛い女子小学生と密着するのはぼっちにはまだまだ耐え難い。

そんなことを考えていると、留美が

「八幡目すごい腐ってる。キモい」

急激な速度で現実に引き戻された。留美の言葉はスルーし、

「じゃあ撮るぞ」

パシャッ

留美が少し笑った気がした。

 

 

「じゃあそろそろ昼飯食うか」

 

「うん、どこ行くの?」

 

「俺が考えんのかよ…」

 

「当たり前。エスコートしてよ」

エスコートなんて単語よく知ってるな。

「じゃあなに食べたい?」

 

「うーん…、洋食ならなんでも」

 

「じゃあ近くのサイゼで」

 

「……つくづく八幡って鈍感かつデリカシーないよね」

 

「理由を教えて欲しいね!」

 

「……やだ」

少し拗ねているが怒ってはいない。留美の手を引き、サイゼへ向かった。

 

 

サイゼで席に着き、落ち着くと今度は留美が顔を赤くしている。怒ったかな、、、。

「……八幡ってほんとデリカシーないよね」

 

「2回目!?」

見ると手をひらひらさせている。

「えーっと…手が何か?」

 

「……もういい」

なんとなくショックを受けていると、留美が

「八幡これ食べたい。あとこれとこれ」

見ると肉魚が1つもない。

「いいのか?後で腹減るぞ」

すると留美は少し横を向いて呟いた。

「……るから」

 

「?なんて?」

 

「太っちゃうから!さっきもポップコーン食べたし!」

なるほどな。でも小学生でそんなに気にすることないのに。

取り敢えず俺も注文し、2人でドリンクバーを取りに行った。留美は色々と混ぜ、おぞましい色と化していたが本人は美味しそうに飲んでいた。俺は烏龍茶を飲み、留美が「ダサい…」とボソッと言っていたけと気にしないもんね!………俺キモっ

 

昼飯も食い終わり、2人でのんびりサイゼを出た。

「じゃ、ゴートゥーホームですか?」

 

「は?そんなわけないじゃん、八幡次それいったら絶交」

 

「それは困る…二度と言いません」

 

「よし」

いつの間にか留美の下僕になっている気がする。まあ中学から罵倒され続けているためこの程度そよ風のようなものだ。やばい目から汗が………。

「ほら八幡、今度はどこ行くの?」

 

「んー、、服とか買いに行くか?」

 

「ふーん、八幡にしてはいい提案だね。行こっ」

くっ…心に小さな棘が刺さっていく…。

 

 

というわけで、近くのショッピングモールへやってきた。ここなら色々な店があり、たくさん選べそうだ。

早くも留美はいろいろな店を見て回っている。あくまでクールな小学生なため、由比ヶ浜などのようにくるくる走り回って見たりしない。

「八幡、これどう?」

見ると、これからの季節に涼しげな水色の薄いスカートだ。派手な感じもなくて、よく似合うと思う。

「いいと思うぞ。どうせなら試着したらどうだ?」

俺は試着室を指差し、言った。すると耳ざとい店員が、

「いいですねえ〜どうぞどうぞ」と留美を試着室に連れて行った。

しばらく。留美がカーテンを開け、すこし恥ずかしがりながら出てきた。

「ど、どう?」

それは、留美にとてもよく似合っていて店員も自分が売る側なことも忘れ、「まあ…」と見入っていた。無論俺もかなり見入ってしまい、留美に「八幡見すぎ。キモいよ」と言われたわけだが。

そのごもたくさんの服を試着、購入し、合計7着も買ってしまった。

留美が終始楽しんでいたのでよしとするか。

 

 

そろそろデートも終盤である。留美も少し眠そうにしていて、最後に近くのス○バに入った。チョコレートチャンククッキーを食べながら留美は嬉しそうな顔をしている。楽しんでもらえてよかった。

 

2人で電車に乗り、最寄駅に着く。

「留美、送るよ」

 

「ありがと…まあこれで送らなかった絶交だけど」

 

「いちいち絶交かけんのやめてくれる?結構現実味ありそうだし」

すると留美が自分から俺の手を取り、

「帰ろ」

とやや顔を朱に染めて言った。2人で手をつないで帰り、

「私ここだから、今日はありがとう……それと、、ちょっと屈んで」

?何かと思いながら屈む。その直後、頬に柔らかいものが触れた気がした。留美は「じゃあね!」とさらに真っ赤になりながら手を離し、家に入っていった。俺も今のことを理解し、どんどん恥ずかしくなる。おそらく今の俺はトマトだ。でも、留美が幸せそうにしていると嬉しい。それならいいかなと思い、俺は帰路に着いた。

 

帰ると小町が玄関で仁王立ちしている。まあだろうな……

「お兄ちゃん!どこ行ってたの!小町心配したんだから!」

 

「…悪い」

一応言わないこととする。

「どこ行ってたの!」

 

「秘密」

 

「なにそれ、お兄ちゃんらしくない!わーん、お兄ちゃんのばか!もう知らない!」

小町は階段を駆け上がっていった。まあ明日になったら事情をゆっくり話せばいいか。今後もこういうことが続くのかな……

………やっぱり俺、比企谷八幡と彼女、鶴見留美の関係は間違っていると思うんだが。どうだろう?



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