狂愛者は背徳の荊を征く。   作:漣@クロメちゃん狂信者

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お久しぶりです。引っ越しと入学式とオリエンテーションが終わり、やっと一段落ついたので投稿です。

お待たせしましたm(_ _)m


偽り

声は戻っても俺の地獄は続く。

 

毎日毎日、イノセンスとの適合実験。元々のアルビノの虚弱体質と鬼屍に宿ったイノセンスによる負荷、そして度重なる実験とその失敗による強制的な再生によって、俺の身体はボロボロだった。

 

吐血なんかは日常茶飯事。心臓に痛みが走り、過呼吸を起こし、高熱を出して、意識を失う。アルマやユウがいたとはいえ、俺は死にかけていた。でも辛うじて死なないのはアルマとユウのおかげ。アルマとユウがいてくれるから、俺はまだ潰れないでいられる。ありがとう、二人とも…。

 

 

 

───だけど、最近、ユウの様子がおかしい。

 

頭痛を訴え寝坊したり、誰も居ないところに話しかけたり、夢見が悪いのか夜に何度も目を覚ましたり。

 

…心配だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその日は訪れた。

 

その日はユウの様子がいつも以上におかしくて、辛そうで。だから早くユウのところに行ってあげたくて。だからただ願っただけなのに。

 

“早く…こんな実験終わってしまえ”

 

 

 

 

()()()()()()()()

 

 

どうして今なんだよ…

 

 

「せ、成功だ!!」

 

「やっと…やっと完成した!」

 

「イノセンスを2つ宿した薬漬けのバケモノ…ふふ、これでまた我々の勝利に一歩近づいたのだ!」

 

「我々は間違っていなかった!!」

 

 

俺はこの日、もう一つのイノセンスと適合してしまった。

 

即座に動き出した研究者達。

 

待てよ…とりあえずユウのところへ行かせろよ…

今日のユウは苦しそうにしてたんだ!ちゃんと帰ると約束したんだ!おい!

 

「シン…」

 

下に降りて来たのはエドガーと数名の鴉。

 

「君を…」

 

苦しそうに顔を歪めてエドガーは言った。

 

「…ただちに本部へ送ることになった。」

 

 

 

 

 

嗚呼、俺はいつから約束を破るような奴になってしまったんだろうか。ユウとアルマと約束したのに。3人でいつか外へと。3人で自由になろうと。3人で…一緒に頑張ろうと、約束した。なのに俺は…またダメなのか。

 

「シン…少しだけ、時間を貰ったんだ。何か2人に伝えたいことがあるなら…僕で悪いけど聞く。」

 

2人に伝えること………。ならば。

 

「エドガー、耳、貸せ」

 

疑問符を頭に浮かべながらエドガーは耳を傾けた。

 

 

「ホントは今日、あの2人にだけ、教える約束。でも無理、だから…特別お前にも教えてやる。だから、あの2人以外、絶対内緒。」

 

「…分かった。何かな?」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“俺の名前、マオと言う。”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!シン、それってまさか!?」

 

「いい、絶対だから。」

 

そうして俺は、ここに来たときと同じように札で拘束されて、本部へと連れていかれた。

 

───2度目だ。

 

こいつらのせいで大切な者と引き離されるのは。

 

───嫌いだ。

 

僕と父の生活を壊し、父を死に追い込み、ユウとアルマとの毎日を嘲笑ったこいつらが嫌いだ。憎くて仕方ない。

 

───だから隠した。

 

俺の本名を呼ぶのは、伯爵達とユウとアルマだけでいい。

 

イノセンスと鬼屍の能力も偽ろう。

 

いつの日か来るべき日に、奴らに思い知らせる為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本部に連れ戻された俺を待っていたのは憎悪と侮蔑、嘲笑の視線だった。

 

「あれが新たな使徒ねぇ…」

「なんでもイノセンス2つも持った調整体だと。」

「噂で聞いたけどあれの親、ブローカーだったらしいぜ」

「は?まじかよ!人類の裏切り者のガキかよ」

「なんであんなのが使徒に選ばれたんだか…」

 

そうか。こいつらには父と母が裏切り者に見えているのか。友人と言うだけで、死んだ人の情報なんて話したことはない。ただ酒を飲み、飯を食い、語らい合っただけの関係。それすら裏切りになるというのか。

 

フードを被っているおかげでまだマシではあるが、視線がウザイ。早く目的地についてくれ。

 

 

 

 

しばらく歩かされて着いたのは会議室だった。

 

入れという偉そうな声が聞こえて鴉は俺を中に入れた。

 

「やぁ、始めまして。新たな使徒。私の名前はマルコム・C・ルベリエ。これから君がエクソシストとして働くこの黒の教団の長官をしている。どうぞよろしく。今日ここにいるのは教団の支部長達だ。今から君にいくつか質問をする。全てに正直に答えるように。」

 

…面倒だ。てゆーか…ふーん、こいつらが上層部ってワケか。全員の顔を脳に焼き付ける。忘れない。絶対に忘れない。必ず殺しに行ってやる。

 

「返答がないな。私達は言わば君の上司にあたる。今日は見逃してあげるが…以後気をつけるように。それでは質問を始める。先ほども言ったが、全てに正直に答えなさい。」

 

 

無駄な時間が始まった。なんかもう面倒だし、言いたいこと全部言ってやろうと思う。

ほとんど全員の目が鋭くなった。

 

「では、私から。君の出身地は何処だ。」

「…住んでたの…イタリア」

 

「住んでいたの、とは?」

「…人種的、ニホン、イタリアのクォーター」

 

「…なるほど。」

 

「では次は私から。君の両親は働いていたかね」

「…是。」

 

「…職業は?」

「…父、包丁作る、売ってた。母、フラワーデザイン。」

 

「!?そ、そうか。」

 

「では次は私が聞きます。君はとても運動能力に優れていたと聞いた。何かスポーツでも?」

「…否。父と母、元々戦闘に優れた血筋。最低限の護身術、2人から習った。」

 

「そ、そうなの…」

 

「では次は私が。単刀直入に聞くが…君の両親は太った怪しい男と知り合いだったか?」

「……是。」

 

「…話していた内容は覚えているかね?」

 

 

奴らが息を飲んで俺の回答を待つ。

 

 

 

 

「…確か…流行りのスイーツの話、それと、ダイエットの話…」

 

「「「「……はい?」」」」

 

「……だから。流行りのスイーツとか、ダイエットについて、来る度に三、四時間。」

 

「…それは本当かね?」

「……逆に、嘘ついてどうする。少なくとも、お前ら危惧するような話、していない。」

 

「ほう?何故かね?」

「初めて会ったとき、確かに誘われた。でも父が…」

 

「君の父君が?」

「…“ちょー興味ない”って…」

 

「「「「………」」」」

 

 

謎の沈黙が降りた。

 

 




中途半端ですが次へ行きます。

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