古代スタートで頑張ろう   作:ぼっち野郎

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再始動です。宜しくお願いしたします。




古代都市編
何てことのない物語の始まり


 それはもう、腹が立つほど快適な目覚めであった。

 

「……ん、んんーっ、」

 

 目に入ったのは青と白の空模様、少年は仰向けの状態で目を覚ます。

 寝転んだまま辺りを見渡すと、四方八方を見分けの付かぬ木々が辺りを囲んでいる。一度中に入ってしまえば何処に進んでも迷うのは必須、そんな印象を受ける森だった。

 

「何処だろうな、ここ」

 

 コレが彼の寝起き第一声である。ホント何処だコレ、再度そう呟いてしまう程見覚えの無い土地、更には森の中で独りぼっちという状況に立たされて(実際は寝転がって)いる。ビル群に囲まれて生活していた彼にとってはイマイチ現実味に欠ける風景、そして現実味に欠ける状況である事だろう。

 

 実はこれ夢じゃないのか?というか夢であってほしい。そんな寝起きの冴えない思考から少年は自らの頬を叩こうとする。

 

パチーーン!!!!

 

 ........が、当然そんな筈は無い。結果としては頰の痛みだけが残る。

 痛みもあるので夢では無い、そして先の衝撃で意識が覚醒しここに至るまでの経緯を思い出す。

 

 ここまで至った経緯を簡潔に言うならば......そう、彼は拉致された、相手に邪な心があったのかと言われれば否だろうが、兎に角拉致されたのだ。

 

 と言うのも、この少年、杠 優斗 (ゆずりはゆうと)の正体は第二の人生を歩むもの、俗に言うところの転生者であるらしい。

 

 

 『事実は小説よりも奇なり』という諺があるが、先程杠が体験したはまさにソレであった。

 朝だと思って目を開けたら無の空間、そこで謎の超絶女神様に『可哀想だから転生してあげるわ』と言われ、ちょっとした説明の後に慈愛の瞳で頑張れとか何とか、多少粘って抵抗したがその甲斐虚しく意識がブラックアウト、.....といった感じで今に至る。

 

 

 確かに、確かに神様転生には憧れた。厨二臭いと自覚しつつも、異能を使って正義の味方か何かに成れれば、などと考える事もあった。

 しかし、そんなものは幼心の延長上、彼も本気で成ろうとした訳ではない。

 就職して、家族作って、老後迎えて、そうやって死ぬ。そんな普通を送れれば本心はそれで満足。それを理解した上で絶対に叶わぬ夢物語に心を躍らせていた、謂わば普通の有り難みを理解していた少年であったのだ。

 

 ......だというのにこの仕打ち、やっぱ転生を断りたいと申し出ても何故か却下、転生場所は森の中、そして独りぼっち。理不尽のてんてこ舞いである。

 

「ハァ......糞」

 

 ボヤいてばかりいても始まらない。杠はそう判断することにした。どっこいせ、という掛け声で立ち上がり軽く土埃を落とす。

 

 そう、こういう時は前向きに考えるのだ。彼はそう自分に言い聞かせ始める。

 

 自分はこうやって第二の人生を始める事が出来た。空から落とされるとか、赤ちゃんプレイを強要されるとか、誰かの屍の上に立つとか、そういうのではない。つまり幸運であったのだ。ならばそれでいいじゃないか。気楽に生きてやればいいじゃないか。

 

 よし、そうしよう。その路線でいこう。

 

 簡単な自己暗示を終え、杠は取り敢えず現状と向き合う事にする。始めにこのRPGよろしくな現状で取るべき行動はやはりスタートボタンのプッシュ、差し引いてはステータスや装備品の確認だろう。

 

 服装は彼が愛用していた(好き好んで着ていた訳ではないが)黒い学ラン、体調は万全である。

 女神様曰く前世(?)の死因は心臓発作による急死、いわゆる心不全だそうだ。しかし、現在は特に身体に違和感はない。寧ろ身体が軽くて快適なくらいである。

 

 身体は良し、服装もまぁ良し、これなら今まで通り支障のない生活を送れるであろう。そう判断した杠は、次にお待ちかねの転生能力、所謂お楽しみ特典を確認する。

 

 女神は『頭に3つ欲しい特典を思い浮かべてね、それで決まるから』と口にしていた。つまり貰える特典は三つのみ、いや、三つも貰えるという事になる。

 それならばと一時的とはいえテンションが爆発していた彼は、年甲斐もなく三つのチート能力を考えあげる事にしたのだ。それはもう考えに考え、三十分近く考えた末に出た結論が......

 

 

一つ、好きな作品のキャラクターの能力を自由に使うことができる能力

 

 

二つ、物質を創造できる能力

 

 

三つ、健康体

 

 

 このテンプレにして至高、そんな三つの特典達であった。

 そもそも女神様から転生先を聞かされていない、と言うか教えてくれなかったので Theチート‼︎ を選んだ次第だ。コレなら一般社会でも、D×Dのような世界でも生き延びる事が出来るだろう。

 因みに三つ目だけパッとしないのは前世の死因が影響している。急病で死ぬなんてのは一度で充分という考えらしい。

 

「よし、確認してみるかな!」

 

 杠は珍しく声高にこう口にし、能力実験へと移ってゆく。出来る事なら転生なぞしたくなかった、と先程言ったがソレはソレ、コレはコレだ。異能は男子の永遠の憧れ、その憧れが叶おうとしているのだから心躍らない筈がない。

 

 まず確認を行うのは一番期待をしている一つ目、イメージは憑依、キャラクターはとあるシリーズの一方通行(アクセラレータ)だ。理由は好きだから、カッコいいから、強いから。それ以上は必要ないだろう。

 

 目を閉じ余分な情報をシャットアウト、そして神経を研ぎ澄ます。イタコ、アーチャー、麻倉葉、綿月依姫、頭にある憑依能力者をイメージ、彼らを真似ることだけに集中する。

 

「......ハァ‼︎」

 

 身体を強張らせ、気の入った声と共に両目を見開いた。

 手応えとしては完璧、未使用の能力ではあるが、備わっているのであれば確実に発現出来た。間違いなくそう言い切れる程の手応え、

 

 しかし......

 

「.....は?」

 

 再度繰り返すが『事実は小説よりも奇なり』だ。超人的な事を成そうとしている彼がコレを使うのは可笑しいかも知れないが、『小説などのご都合主義ではあり得ない展開』であることには間違いがない。

 

 実際に目の前に浮かび上がっているのか、はたまた脳内の映像が視覚化されただけなのかそれは分からない。が、どちらにせよ確かな事実が一つ。

 視界には紅く彩られたゴシック調らしきテキスト、そんな派手なテキストで英単語がたった一つだけ....

 

 『Impossible』と、そう浮かび上がっていたのだ

 

「んなっ!?」

 

 予想だにしない展開に変な声が出る。

 一応、一応同じ動作を繰り返す。一方通行を思い浮かべ、それを憑依させる。先程と同じ工程を踏むが、予想通りというか何というか、ともかく結果は同じであった。

 

 

衛宮士郎...........『Impossible』

 

司波達也...........『Impossible』

 

うちはサスケ...『Impossible』

 

兵藤一誠...........『Impossible』

 

空条承太郎.......『Impossible』

 

球磨川禊...........『Impossible』

 

ランスロット...『Impossible』

 

 

 

 

『Impossible』『Impossible』『Impossible』『Impossible』『Impossible』.........

 

 

 キャラが悪いのかもしれない。そう思い色々なキャラを使うがどれもimpossibleの一点張り、何も浮かばないのではなく不可能、というのもタチが悪い。

 

(ああ、なんかダメだ。やる気が失せた。)

 

 十数回程同じ動作を繰り返した所で杠は諦めた、と言うより心が折れた。

 

 『不可能だ』、と言われてしまった。しかも能力に、ゴシック調フォントで。備わっていないのでは無く単に使用できないだけ。つまり、

 

”俺を使うのにお前は未熟者過ぎるぜ!!”

 

 という事なのだろう。そこがなんだか小馬鹿にされた様でそこが尚の事癪に触る。

 

(ああ、何してんだろ俺......)

 

 訳の分からない厨二っぽい事を一人で続ける学生、端からみた彼の印象はこんな感じ、誰かいたなら重症患者と白い目を向けられる事間違いなしであろう。

 そう思うと何だか恥ずかしく、同時に馬鹿馬鹿しく思えてしまう。

 

(.......寝よう、うん、そうしよう)

 

 やはり夢なのだ。頬を叩いたら痛かったけど、やけにリアルな視覚だけど、夢を夢と認識出来ちゃっているけど、『能力を貰って転生しても結局使えませんでした。』なんてデタラメな展開はやはり夢に違いない。

 ならば寝るに限る。次に目を覚ました際にはいつもの天井が視界に映るだろう。

 そうと決まれば善は急げ。夢であるものの空はこんなに青く、風はこんなにも暖かい。これで眠くならない筈がない。

 

 杠は目を覚ました時の様に寝転がり、大の字のポーズを取る。

 

ポスッ

 

「...ん?」

 

 何かが腕に当たった。手応えからして植物のようなものだろうか?そう思い、目線を向けるとそこには一輪だけ白無垢の花が咲いている。鈴蘭の花だった。

 

「鈴蘭かぁ......」

 

 別段花が好き過ぎる。とか、図鑑を丸暗記している。という訳ではなかった。

 ただ、とあるゲームをやり込んだ際に偶然鈴蘭の事を知り、そこから詳しく調べたのだ。

 

 気になった、と言うのもあるが、どちらかと言えばそのゲームキャラが何と無く好きだったのだ。

 出番は少ないし描写も薄い。人気投票では70位台と微妙な上、最強キャラという訳でもない。

 だが、それでも杠は何故か好きだった。

 杠はそんなキャラの名前を口に出す。思い描くでもなく、瞑想するでもなく、ただただ声に出したのだ。

 

「鈴蘭と言えば、やっぱりメディスンだよな」

 

 そして、コレが文字通りのキーワードとなった。

 

 突如、例の赤いフォントが現れる。浮かび上がったのは番号、60、59、58、と次々に入れ替わっていく。コレが何かしらのカウントダウンなのは疑うまでもない。

 

 突如浮かび上がる数字に戸惑う杠、しかし何をしても止まる様子はない。

 

 そのままカウントダウンは1の数字を迎え、次の瞬間......

 

グワァン!

 

 彼の身体が謎の浮遊感に包まれる。それは誰かの身体に憑依した、否、されたかのような感覚、何が起きたのか分からず数十秒程呆けていた杠だったが、ハッと我に返り自分の身体を確認する。

 

 外見は全く変わらない、変わらないのだが中身がまるで違う。別人の視点から見ているような、それこそ画面の中のキャラクターを操作しているような感覚に陥っていた。

 そして、同時に大量の情報が脳内に流れ込んでくる。

 

 

ーー曰く、コレは怨念で動く妖怪だと。

 

ーー曰く、この身体は毒で出来ていると。

 

ーー曰く、鈴蘭の花こそが力の根源であると。

 

ーー曰く、ニンゲンとは忌むべき対象であると。

 

ーー曰く、曰く、曰く曰く曰く曰く曰クイワクイワク.........

 

『ッッ!?』

 

 あまりの情報量に卒倒しかけるが、杠はそこで何とか踏み止まる。

 流れてきたのはメディスン・メランコリーと呼ばれる付喪神の全て。その生い立ちから信念、力の使い方まで多岐に渡るが、それら全てが自分の記憶として保存される。

 

『.........』

 

 杠は何も言わずに手を前に突き出し、そして強く握り締める。

 そこからは紫色の液体が溢れ出した。その毒をポタリと雑草の上に落とした瞬間、炭酸が弾ける様な音と共に草が枯れ、遂には跡形もなく消え去る。

 精製されたのは言うまでもなく毒、それも雑草を一瞬にして枯らすほどの劇毒だ。

 

『おー! 凄い凄い! 成功したわ‼︎ スーさんのお陰ね‼︎』

 

 杠はいつの間にか隣を飛んでいた(・・・・・・・・・・・・・)小さな妖精とハイタッチをする。

 その声はノイズ、と言うよりも二つの音声を合成した様なもので、片方は言うまでもなく杠自身の声、もう片方は幼く、とても男のモノとは思えぬ可憐な声であった。そしてテンションは先程のものとは段違いに高い。

 

『なんか変な気分だわ、身体の中に二人いるみたい。口調も変わっちゃってるし......まぁ良いか。そ、れ、よ、り、もっ!』

 

 ホイッ!という掛け声と同時に杠の身体が宙に浮き、周囲を彼方此方に飛び回る。

 最初は若干ぎこちなかったものの、数十秒もしない内に馴れたようでスマートな飛び方へと変わっていった。

 

『続いて弾幕! 行け〜!』

 

 号令と共に4色の米粒の様な霊力弾、そしてそれに合わせて毒々しい色を帯びた気体が彼を中心にそれぞれ互い違いの螺旋を描く。彼が動くとその螺旋も動き、彼が回るとまたその螺旋も動きに合わせて回り始める。

 

『あはは! 楽しい! 楽しいわ! もっと!』

 

 そんな元気に響く声に呼応する様に弾幕と飛行の速度はどんどん上がっていく。

 

 空を駆ける、異能を操るという事がこれ程に楽しいとは知らなかった。今まで刺激の無い人生を送ってきた上それに何も疑問を浮かべなかったのだが、コレを体験すればそんな考えは一気に変わる。

 未知の体験は素晴らしい、人生に潤いを与えてくれるのだ。お陰で歴史に名を馳せた探求者の気持ちを理解できた、様な気がする。

 そんな感傷や優越感に浸りつつ、杠は弾幕や毒を彼方此方にばら撒いていた。このままずっとこうしていたい、もっと色んなことをして見たい。そんな悦に浸っていたのだが........

 

『ん?』

 

 再びあの忌々しいフォントが現れる。数字は『30』、常識的に判断すれば終了のカウントダウンなのだろう。

 

『ちぇー、もっと遊びたかったなぁ』

 

 口惜しみつつも渋々と地面に着地する杠、能力がいきなり切れて落下死、と云うのは御免なのだ。あっという間に目の前のカウントダウンは十秒を切った。

 

『まぁいいか、コレが最後って訳じゃないし』

 

 

『じゃあね、お兄さん! またあそぼ!』

 

 そして、カウントダウンはゼロを迎える。

『....ん? な、んだ今の.........? あ、抜けた」

 

 憑依に成功した時の浮遊感にもう一度見舞われ、次の瞬間には全てが戻る。どうやら無事に能力が切れたらしい。

 当初はポンコツだと思っていた能力を無事に使い切る事が出来た。それ自体は喜ばしい。喜ばしい事なのだが、

 

(........最後のは何だ?)

 

 如何せん、訳の分からない所だらけであるのは変わらない。

 

 先ず能力の発動条件、メディスンと口にしたのがキッカケになったのは間違いない。

 だが、一方通行と口に出してみた所で浮かび上がるのはやはり『Impossible』だ。東方キャラで通った事を鑑みて八雲紫と口に出すも変化なし。再びメディスンを使おうとしても発動出来ないというのも気にかかる。

 だが、時間をかけて次々と名前を挙げていくと成功するキャラが何人か存在した。

 割合にして1割に満たない程であるが、確かに能力は使えているのだ。しかし、その違いは未だに分からない。となれば、現状では能力を使いたくなったらキャラクター名を適当に連呼するのが効果的、という訳である。........人前で使うのは控えた方が良さそうだ。

 

 そして、更に気になるのが口調の変化、そしてメディスンの『お兄さん』である。

 メディスンを憑依した際、声は杠のモノと少女、おそらくメディスンのモノの二つを合成、口調は彼方側に引きづられた形となっていた。

 それに加え、普段では考えられないほどのテンションの高揚も感じ取れた。ここまでは分かる。

 だが最後のは何だ? 無意識に口に出した『お兄さん』とは自身の事なのだろうか? となると、つまり........

 

(本当に魂が乗り移っていた........?)

 

 そんな仮説を立ててみるが蛇足。確証がない上、コレらを考え出したらキリがない。

 云々と唸り続けていること数時間、気付けば辺りは夕暮れ時だ。

 森に囲まれたこの空間においては既に目の前の視界を確保するのがやっとの状況、妖怪.....とまでは行かないが熊ならば襲い掛かられても不思議はない。

 

「あー、こりゃマズイな。寝床を探さないと」

 

 杠は思考を中断し、寝床の確保に取り掛かる。とは言ったものの取った行動は簡単、広間の外縁の縁に移動し、そこで手を前に突き出しただけであった。

 イメージする。家だ、何でもいいから家を創り出す。キャラ憑依能力を使った時のように集中、そして....

 

「ハッ!」

 

 再び恥ずかしいポーズと掛け声を発する。思わず赤面してしまったが誰にも見られていないのでセーフとする。ともかく家を造れればそれで良い。そう思っていたのだが、、

 

.......しかしなにもおこらない。

 

「??????」

 

 彼としては手から光が溢れ、そこからいろんなモノが現れる。というのを想像していたのだが、全く、これっぽっちもそんな様子は見られない。

 

「まーたかよ」

 

 ぼやきながらその場にへたり込む。こちらも一癖ある能力だったらしい。

 杠は仕方なく再び頭を回し、原因を考える事にする。....とは言ったものの実質手詰まりだ。ヒントが無い。考えられるとしたらやはり、''未熟者に使わせる能力はねぇ!出直しな!”という所だろうが、今日中に家を創れないのならばどちらにしろ手詰まりである。

 

 どうしようか、ああしようか、その様に頭を悩まし始めて数十秒経過した時、突如異変が起きる。

 

 轟音が、ゴゴゴゴゴなどという、テレビの中でしか聞いたことがない轟音が真下から響く。

 直後、地面から屋根のような(・・・・・・)黒い石材が勢いよく飛び出した。

 

「カ、ハッ....!?」

 

 あまりに咄嗟の出来事過ぎて反応が出来ない。

 屋根の勢いに負け、杠の身体はへの字型に勢いよく折れ曲がる。体内からはミシミシミシ、という嫌な音も聴こえる。

 屋根から3メートル程だろうか、上空へと吹き飛ばされ、そして落下。

 

(く、クッソがぁ!)

 

 当然まともな着地なぞ出来るもなく、そのまま成す術もなく屋根の上を転がり落ちる。

 そのまま地面に落ちるかと思われたが、そこは火事場の馬鹿力、寸前の所で雨樋にしがみ付き、なんとか地面に落ちる事だけは免れる。

 

「はぁっ、はぁっ、これは、流石にっ、あんまり過ぎやしませんかねぇ? ふ、ふふっ」

 

 肋の激痛を我慢しつつ、力を振り絞り何とか屋根によじ登る。ここまで理不尽だと笑いが止まらない。

 家が足元から飛び出して来て肋骨が折れる、だなんておかしな事を誰が思いつくだろうか?そして実践してやって見せるだろうか?これこそ正に『現実は小説よりも奇なり』であった。

 

 

........そして哀しい哉、こういう時、小説では大概悲劇が続くのだ。

 

 再び地鳴りが聞こえる。それも間違いなく先程のものも同様の。

 額から大量の冷や汗が溢れ返る。

 確かに、確かに二回家を建てようと能力を行使した。だがそれはあんまりではないか。どちらかは重複という事で帳消しにしてくれても良いのではないか?紛いなりにも神のくれた能力だ。それくらいの慈悲があっても良いではないか。

 そう祈り続ける杠だったが、どうやら神は彼を見捨てたらしい。

 

 家があった場所の真下から家が生える。この結果から導き出される現象はただ一つ、崩壊だ。

 

(........人生やっぱり甘くないな。)

 

 瓦礫と共に落下する中、彼は心の中でこう呟き、そして痛みも感じる間もなく、意識が完全に吹き飛んだ。




今回登場したのは東方Projectよりメディスン・メランコリーです。全国のメディスンファンの皆様人気が微妙とか言ってスミマセン。

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