時間はかかりそうですが頑張ります!
SIDE:スバル
「んっ、んっ…よし、準備OK!」
ウォーミングアップを終えたあたしはビルの屋上から町並みを見渡す。
町並みっていってもここには人なんて住んでいない…ここは時空管理局の訓練施設だから。
あたしは今日ここで行われる陸戦魔導師Bランクの昇格試験を受けるために来たのだ。もちろん…
「こんなところにいたのスバル?探したじゃない!」
「ごっめ~んティア姉!なんか待ちきれなくってさ…」
あたしの最高のバディ・ティア姉も一緒だ。
「ま、気持ちは分からなくもないけどね…時間よ!」
ブーッ!
「はい、皆さん集まってますね~っ?!」
ブザーの音と共に現れたホログラフに映ったのは少し幼い印象の少女。
「わたしは本日の昇格試験の試験官を勤めさせていただきます、八神リインフォース・ツヴァイ空曹長です。よろしくお願いしますです!」
「「よろしくお願いします!」」
リイン空曹長の挨拶にあたしとティア姉は敬礼を返す。
「はい、良いお返事です!…確認しますが、ショートカットのあなたがスバル・ナカジマ二等陸士、そしてお隣がティアナ・ランスター二等陸士。本日受験するのは陸戦Bランクで間違いないですね?」
「はいっ!」「間違いありませんっ!」
あたしたちの返事に頷くリイン空曹長。
「はい、それでは試験内容を説明します。あなた方二人にはこれから制限時間内に出現する仮想敵を倒しながら指定されたゴールを目指して頑張って貰います。あとこの試験会場では他にも数組のペアが試験に挑んでいるのであなた方も負けないよう頑張るですよ!」
「「はいっ!!」」
他の人達…うん、負けられないよね。だってその中には…必ず全員合格しよ~ね、ノーヴェ、ウェンディ?
あたしはそんな事を思いつつ、試験開始のシグナルを待つのだった。
SIDE:ノーヴェ
「1、2、1、2…」
あたしはウォーミングアップしながら今日のパートナーを待っていた。
本当は妹のウェンディとコンビ組みたかったんだけど、残念ながら今日は別チーム…今頃は違うスタート地点で試験開始を待っているはず。
「それにしてもコンビの子まだかなぁ~?そろそろ試験始まっ…」
「あ、あの~…ノーヴェ・ナカジマさん…ですか?」
あ、やっと来たのかな?はい、あたしがノーヴェ…え?
あたしが振り向いた先にいたのは…ピンクの髪の可愛らしい女の子。
「あの…逢魔キャロ、9歳です。本日はノーヴェさんのコンビを務めさせていただきます…どうかよろしくお願いします!」
か細いながらもはっきりとした声で挨拶する少女・キャロちゃん。
「うん、あたしがノーヴェ・ナカジマだよ。よろしくねキャロちゃん。」
「は、はい。こちらこそ!」
う~ん、初々しくてかわいいなぁ…ん?今確か…?!
「ね、ねぇキャロちゃん?あなたの名字の『逢魔』ってまさか…逢魔リナさんと関係が?」
「はい、リナお姉ちゃんはわたしの義理のお姉ちゃんですよ。ノーヴェさんの事はお姉ちゃんから聞いてたので…」
リナさんがあたしの事覚えてくれてた?!あたしはそれだけで胸が熱くなる。
「でも…あれ?確かエントリーネームは…?」
確認してみるとキャロちゃんの名前は「キャロ・ル・ルシエ」になってる。
「あ、それはお姉ちゃんが内緒にしとけって。わたしも色々あったんで…」
そっか…まぁ、あたしも余計な詮索はしないよ。ところでリナさんは元気にされてますか?
「はい、元気すぎるくらいで今日もお仕事だって朝早くに出ていきましたよ。…そろそろ時間のようですね。」
ビーッ!
『受験生の諸君、おはよう。本日の試験官を務める、八神リインフォース・アインス一等空尉だ…よろしく頼む。』
ブザーの音と共に画面に映し出されたのは翠色の髪をロングにした女性だ。
あたしとキャロちゃんは敬礼を返し次の言葉を待つ。
『確認するが…赤い髪の方がノーヴェ・ナカジマ、小柄な方がキャロ・ル・ルシエ…それで今日は陸戦Bランクの昇格試験で間違いないな?』
「「はいっ、間違いありませんっ!」」
「うん、いい返事だね。それでは間もなく試験開始だ…準備はいいかい?」
アインスさんの言葉に頷くあたしとキャロちゃん。
キャロちゃんの服装は比較的軽装だけどフード付きのロングコートに両手にコア付きの手袋…あれがデバイスかな?
「…それではready…go!」
いよいよスタート!あたしは愛機のデバイス・ジェットエッジをフル稼働させて飛びだ…いけない、キャロちゃん?…え?!
『…[翔封界/レイ・ウイング]!』
ゴワァッ!
「どぅわっ?!…それってリナさんの…?」
そう、キャロちゃんが使ったのはリナさんが得意としている高速飛行の呪文。あたしもマスターしようと勉強したけど適性がないのかとうとう覚えられなかったのに…?
「すいませんノーヴェさん、呪文の発動に時間がかかっちゃって。やっぱりリナお姉ちゃんみたいに上手くはいかないなぁ…」
いやいやいやいや、十分だって?!…あれ?
あたしはふと出た疑問をキャロちゃんに尋ねてみた。
「キャロちゃん、翔封界使えるんだったらなんで空戦魔導師を目指さないの?」
翔封界が使えるなら十分空戦できるはず…なのになんで?
「あはは、実は…わたしまだ低空飛行しかできなくて…高度をあげるとコントロールできなくなっちゃうんです。」
地面すれすれをあたしと並走するように飛びながら話すキャロちゃん。…なるほどね。
「それよりノーヴェさん、前方に障害発見、頑張って行きましょう!」
見ると前方に小型のターゲットが…よし、いこうキャロちゃん!
それにしてもキャロちゃんとリナさんが姉妹なんてね~?世間では恐怖の対象(汗)なリナさんだけど、意外にどっかでキャロちゃんの事見てる気がするなぁ…なんとなくだけど。
「[氷結弾/フリーズ・ブリッド]!」
キャロちゃんが放った氷結魔法が無数のターゲットを氷漬けにする。…さすがリナさんの義妹だけのことはあるなぁ。
「ま、あたしも年上だし…頑張らないと、ねっ!」
バキッ…バキバキッ!
あたしの振り抜いた右足がターゲットを粉砕!…なんだかこの子との相性いいかも?!
「よし、この調子で行くよキャロちゃん!」
「はいっ、ノーヴェさん!」
よ~し、リナさんに誉めてもらえるようにがんばるぞ、お~!
こうして新たな世代の少女たちが奮起していたころ、おなじ会場の離れた場所では…?
SIDE:リナ
「…へっぐちん?!」
う~みゅ、誰かあたしの噂をしているよ~な…?
「あれ、リナちゃん風邪?」
隣でタッチパネルを操作していたなのはがあたしのくしゃみに振り向く。
「そんなんじゃないわよ、多分誰かが噂でもしてんでしょ。それより準備はできた、なのは?」
あたしはそう言いながらモニターに映る映像を見る。
映ってるのはあたしの義妹・キャロ、そして…
「ノーヴェ・ナカジマ…あの時の子がこんなに大きくなってるなんてね~。」
4年前に起きた空港火災の時に助けた女の子。あの時はめそめそ泣いてたあの子が今では…
『どりゃあっ!』
キャロの呪文で動きの止まったターゲットをバキバキ蹴り飛ばしてく。
「やっぱりあの子がノーヴェだったのね。…向こうのノーヴェとはちょっと雰囲気違うけど。」
以前迷い込んだ異世界で出会ったノーヴェはベリーショートでボーイッシュな感じだったけど、こっちのノーヴェは元気な女の子のイメージ。
「ま、素直ないい子に育ったみたいで何よりだけどね…キャロとも仲良くなったみたいだし。」
「わたしも吃驚だよ…あの時助けたスバルがこんな立派になって…ううっ…」
ち、ちょっとなのは何泣いてんのよ…そんなに感動したの?
「ううっ…久々に台詞しゃべったよぅ…」
ドンガラガッシャーン?!
「ち、ちょっとなのは?!」
「だってだって~?!みんな出番があったのにわたしだけ…忘れられてたのかなって。」
あんまりメタな発言は止めてよね全く…
「それよりそろそろ時間じゃない?早く行かないとみんなゴールしちゃうわよ。」
「あ、そうだね…それじゃわたしはスバルとティアナの所にいくからリナちゃんは…」
「わかってるわよ…ノーヴェとキャロん所に行ってラストバトル…でしょ?」
あたしはそう言うとバリアジャケットを纏ってナイトメア・ハートを構える。
「あ、リナちゃんこれこれ!」
そう言ってなのはが渡したのは…某世界で一番有名な子猫のお面。
「それで一応顔隠してね。…まぁすぐバレるとは思うけど。」
そう言うなのはは何故か般若の面。…正直、むちゃくちゃ怖いんですけど…ま、いっか♪
「さ、あたしを驚かせてよね、ノーヴェ、キャロ…楽しみにしてるわよ♪」
「…リナちゃんの方がよっぽどおっかないの…」
いかがだったでしょうか?
別枠にて新たに短編集・「リリカルすれいや~ずすぺしゃる!」も開始してますのでよろしければ。
それでは次回「六十七、マジですか? まさかあの呪文(わざ)使うとは…」
次も見てくんないと…
「「リボルバー…」」
「ナックル!」「スパイク!」
(BY スバル&ノーヴェ)