NO SIDE
異世界の〈魔戒騎士〉・秋月タカヤとその相方・魔導装具のキリクが海鳴市でユーノや神威と出会ったその翌朝、リナ率いる〈機動六課特務班・チームナイトメア〉もまたこの地に赴いていた…
SIDE:リナ
バシュン!
転送ポートの扉が開くとそこはあたしの親友の1人であるアリサ・バニングスの実家の庭だった。
「リナ久しぶりね。元気してた?」
「アメリアちゃんも久しぶりだね?」
「やっほ~、アリサ久しぶり!」
「すずかさんもご無沙汰してます。」
出迎えてくれたのはそのアリサとこちらも親友の月村すずか。2人とも嘱託魔導師として家業を継ぐために海鳴に残っている。
「なのはたちは元気にしてるの?」
「…今頃若手をビシバシ鍛えてると思うわよ、多分。」
なのはとフェイトのチームは今日も訓練してるはず。
「で、この子たちがあんたらの教え子…ってなんだ、キャロじゃん。」
「お久しぶりです、アリサさん、すずかさん!」
キャロはあたしの義妹として引き取られた後しばらくは海鳴の実家で暮らしてたからアリサとすずかは顔馴染みだ。
「…そっか、リナちゃんと一緒のチームになれたんだね。それでもう1人の子は…?」
「ど、どうも…ノーヴェ・ナカジマです。お2人には空港火災の時にお世話に…」
「…あ~、リナが救助した子だ!」
「ナカジマ三佐の娘さんだね。」
2人は空港火災の時を思い出して感慨に耽っている。
「まぁ今回は2人ともお願いね♪…じゃ、翠屋にいくとしますか。」
「翠屋?翠屋って…?」
ノーヴェが不思議そうに尋ねる。
「翠屋は、なのはさんの実家の喫茶店ですよ。なのはさんのお父さんの士郎さんの入れるコーヒーと、お母さんの桃子さんが作るシュークリームが絶品なんですよっ!」
キャロが翠屋を熱く語る。こっちで暮らしてる時に連れていってあげたらすっかり虜になっちゃって。
「なのはさんのお父さん…お母さん…(ガクガクブルブル)」
あれどうしたのノーヴェ?なんか震えてるけど。
「なのはさんの両親って…やっぱり悪魔みたいに強くて恐いんですか?」
ズコッ!
あ、あのね…
「…大丈夫よノーヴェ。士郎さんも桃子さんも優しい人達だから。」
っていうか別になのはも普通の女の子だからね?!…多分。
「そうなんですか?スバルお姉ちゃんからは羨ましがられたんですけど…」
あ~、スバルはなのはの事尊敬してるから。…多少百合ってる気もするけど。
「心配いらないわよ、あんたも桃子さんのシュークリーム食べたら納得するから。さ、行くわよ?」
アリサは待ちきれない様子だ。
「そうね…父さんやユーノも待ってるはずだし、次元渡航者…確かタカヤって言ってたっけ?にも会いたいしね。」
あたしはそう言うと翠屋へ向かう事にした。
カランカラン~
「いらっしゃい、リナちゃん久し振り~♪元気してた?」
「あ、美由希さん!」
出迎えてくれたのはなのはのお姉さんの美由希さんだった。
「美由希さん、お早うございます!」
「ご無沙汰してます美由希さん。」
美由希さんと面識のあるアメリアとキャロが挨拶し、アリサとすずかも会釈する。
「うんうん、皆元気そうで何よりだよ。ところでそっちの子は初めてだね?」
「は、はじめまして…ノーヴェ・ナカジマです。よろしくお願いします。」
「わたしは高町美由希。高町なのははわたしの妹だよ、よろしくね。…奥の席でユーノくん達待ってるよ。」
美由希さんの案内で店の奥の個室に行くと…
「やぁリナ、待ってたよ。」
「おっせ~ぞリナ、待ちくたびれたぞ?」
ユーノと父さんが声をかけてきた。…おんなじ事言ってる筈なのにどーしてこんなに印象違うんだろ?不思議だ。
「お待たせ~。そこにいるのが例の渡航者ね?」
あたしはユーノの隣に座ってる少年に目を走らせる。年はノーヴェ達と同じくらいだけど、実戦を潜り抜けたであろう風格を感じる。
「はじめまして、秋月タカヤと…?!」
タカヤは挨拶の途中で言葉を詰まらせる。その視線の先には…?
(…ノーヴェ?)
そう、タカヤが見つめていたのはノーヴェだった。…まさかタカヤ達の世界って〈平行世界〉でノーヴェと知り合いだとか?
ま、とりあえず詳しい話を聞くとしますか?どうやら敵の正体を知ってるみたいだしね…
SIDE:タカヤ
「お連れ様がお越しになられました~。」
美由希さんの声がすると同時にドアが開き、昨日通信で話したリナさんが入ってきた。「やぁリナ、待ってたよ。」
「おっせ~ぞリナ、待ちくたびれたぞ?」
「お待たせ~。そこにいるのが例の渡航者ね?」
「はじめまして、秋月タカヤと…?!」
挨拶しようと立ち上がった僕の視界に2人の少女が入る。
1人はキャロ・ル・ルシエさん。自分の世界においては家族同然の人だ。
確か僕の記憶ではエリオさんと一緒にフェイトさんのチームだったはずなんだけど…平行世界で少しぶれてるのかも。
でもその後ろにいた少女の姿に僕とキリクは驚きを隠せなかった。
(お、おいタカヤ?!…ろ~ちゃん〔キャロ〕は兎も角、あれは…)
(うん…雰囲気は違うけど、あれはノーヴェだ。でも何で?)
ノーヴェはまだこの頃はスカリエッティさんの元にいるはずなのに…
(それにしてもあまりに可愛すぎじゃねーか、ノーヴェ嬢ちゃん?ツンツンしてないし、どっちかというとロリ…)
「?…あの~、あたしの顔に何か?」
「い、いえ?!僕の大事な知り合いに似てるもので…秋月タカヤです。これからしばらくよろしくお願いします!」
『俺はキリク、タカヤの相方の魔導身具だ。よろしくな!』
「あたしはノーヴェ・ナカジマ。もう1人の子は逢魔キャロ…リナさんの義理の妹さんです。短い間になりますがよろしくお願いします!」
「う、うん…」
(JS事変の頃というと…ノーヴェは16歳位?でも僕より幼げに見えるよ…ねえ、キリク?)
(あぁ…それにろ~ちゃんのチビ竜、アイツもなんか感じるな。上位ホラーに匹敵する力を感じるぜ。)
確かに…フリードの色は白かったはず。なのにこの世界のフリードは焔のように赤い。
(一体この世界はどうなって…?)
「それでは今回の任務について特務班〈チーム・ナイトメア〉副隊長であるこのわたし、八神アメリアが説明させていただきます。」
ショートカットの見知らぬ少女が立ち上がり名乗りをあげる。
『八神?…ってことは、はや~や(はやて)の親戚か何かか?』
キリクの言葉に僕の隣に座ったリナさんから出たのはまたも予想外の答えだった。
「アメリアは正義の巫女…5人目のヴォルケンリッターよ。多分あんたらの世界にはいなかったでしょ、タカヤ?」
5人目のヴォルケンリッターだって?…だめだ、ちょっと混乱してきた…
「…あたしやアメリアに関しては後で説明したげるから今は…ね?」
「わかりました…」
僕は気を取り直してアメリアさんの方を向く。
「今回わたし達に与えられた任務は、ここ海鳴市に発生した異常な魔力に対する調査です。参加するのはチーム・ナイトメアの4人とユーノさん、アリサさん、すずかさん。そして…秋月タカヤさんと逢魔神威さんにも協力していただきます。」
「それで…タカヤはその魔力の正体を知っていて、それを追いかけてきたって事でいいのよね。」
リナさんの問いかけに僕は頷き…ホラーという異形の存在、そして遠い過去に逢魔一族と協力してホラーを討伐した経緯を説明した。
「…なるほどね。わたしが出会った怪異とも違う存在みたいだし…」
すずかさんが納得した様子で話す。この世界のすずかさんは、魔法とかじゃなく何か不思議な力を感じる…〈怪異〉ってのと関係あるのかな?
「…つまり、この海鳴の地に再びそのホラーってのが復活した…と言うことですね、タカヤさん?」
「はい。ホラーには基本的に対抗できるのは魔戒騎士だけです。ですが逢魔一族の退魔術、それにリナさん達の使う魔法…スィーフィードでしたっけ?」
「そうよ、この世界とは違う世界の〈魔族〉の力を借りた呪文…ならそのホラーってのにも効果があるはず。」
リナさんの言葉に僕は頷き話を続ける。
「そうですね…皆さんに協力して戴けるなら心強いです。」
「こちらこそあんたみたいなスペシャリストがいるのはありがたいわ。よろしくねタカヤ、キリク?」
『おぅ、任せときなリッちゃん!』
「リ、リッちゃん?!」
…キリク、人に勝手にニックネーム付けるのはダメだよ…リナさん面食らってるから。
『…なかなかいいネームセンスしてますね。僕にも付けていただけませんか?』
「『なっ?!』」
突如聞こえた謎の声に、僕とキリクが驚き振り向くとそこにはおかっぱ頭の細身の青年が立っていた。
「い、いつの間に?!」
『…なんだこの禍々しい魔力?…まさかホラーか?』
でも周りのリナさん達は平然としてる…
「…相変わらず神出鬼没ね、ゼロス。」
「まぁそれが僕のカラーですからね…」
青年は飄々とした態度…この人は一体?僕とキリクの混乱は治まる処ではなかった…
次回からいよいよホラーが動きます。
皆様のご意見お待ちしています。