NO SIDE
遂に邂逅を果たしたリナ達チーム・ナイトメアと異世界の〈魔戒騎士〉秋月タカヤ。
平行世界との違いに戸惑いを隠せないタカヤとキリクの前に現れたのは神出鬼没の見た目好青年、中身は腹黒、〈名薗森 寛/なぞのもり ひろし〉こと獣神官ゼロス。
一体彼は何の目的でこの場に現れたのか…
SIDE:リナ
「…で?あんたは何でここにいんのよ?機動六課所属でもないし協力依頼もしてないのに…」
あたしは嫌みたらしくゼロスに言い放つ。
今まで話してなかったけどゼロスはSt.ヒルデを卒業したあと、時空管理局に所属せず嘱託魔導師の形でなんやかんやと動き回ってるらしい。
「僕は中立の立場ですから、外から面白おかしくちょっかい出すのが好きなんですよ。リナさんもご存知でしょ?」
そのせいであたし達がどんだけ苦労したと思ってんのよ?!…ま、命を助けてもらった事もあるけどね。
『ち、ちょっとリッちゃん待ってくれ…?その禍々しい魔力、普通の人間とは思えねぇ…ホラーとも違うみてぇだし、一体何者なんだソイツ?!』
あ、キリクはゼロスの素性を察したみたいね。
「ゼロスの事を話す前にあたし達の事を話しとくわ。…あたしとアメリア、ユーノは前世の記憶が存在するの。」
「前世の記憶?それは一体…」
タカヤは不思議がってる…まぁ無理もないわね。
「あたし達は遥か昔、スィーフィードと名付けられた世界で一緒に冒険をした仲なの。とはいってもあたしとアメリアは記憶も人格もそのまま転生したけど…」
「僕は受け継いだのは記憶だけって違いはあるけどね。僕の前世での名前はガウリイ・ガブリエフ。旅の剣士で、リナとは数々の困難を乗り越え…そして結ばれたんだ。」
「そして…そんなわたし達の旅の記録はこの世界に残されてるんですよ。いわゆるライトノベル『スレイヤーズ!』としてね。」
『…?!…ライトノベルって、そんな弛くていいのかよっ?!』
ユーノ、アメリアの告白にキリクが突っ込む。
「いいじゃない、事実なんだし。キャロとノーヴェには今まで言ってなかったけどね。」
「はい…初めて聞きました。」
…ほんとはあんたらが集められたのにも関係があるんだけど、今は話さないでおくわ。キャロはともかく、ノーヴェに関してはまだ確信持ててないしね。
「脱線したから話を戻すわね…で、このゼロスなんだけどコイツも前世の知り合いなのよ。…魔王の側近、獣王ゼラス=メタリウムに仕える〈獣神官/プリースト〉。これがゼロスの正体よ。」
「『なっ?!』」
魔族と聞いて慌てて身構えるタカヤ。
「心配いりませんよ。今は人間と同化して魔力はがた落ちですし、リナさん達と敵対する気もないですしね…」
相変わらず飄々とした雰囲気で話すゼロス。でも、平気で笑いながら目の前の人間の首をかっ切る奴だからなぁ…油断は出来ないけど。
『…まぁ俺も元ホラーだしなぁ、あまり突っ込まない事にするか。短い間だが宜しくな、〈ゼロロ〉?』
「おや、それが僕の呼び名ですか。可愛らしい名前ですねぇ…」
「…それで、ゼロスさんはどうして此処に来たんですか?何か企んでるんじゃ…?」
アメリアの疑問に首を横に振りながら答えるゼロス。
「それはヒ・ミ・ツです。…って言いたい所ですけど、別に隠す事じゃないからお教えしますよ。だって僕の前世のお仕事絡みですから。」
お仕事絡みって…まさかっ?!
「ゼロス、まさかこの一件に写本が関係してるって事?!」
「えぇ、恐らくは。でもその前に…タカヤさんとおっしゃいましたか?貴方のご先祖が倒したホラーの名前は…〈魔獣甲冑・ズイヌフィア〉で間違いありませんか?」
『…?!…ゼロロ、アンタが何でその名前を知ってんだ?』
「やはり…リナさんやアメリアさんならこの名前、ピンとくるのでは?」
えっ、名前って言われても…ズイヌフィア、ズイヌフィア…ん、魔獣甲冑?…あ?!
「そうか、そういう事か!それなら確かに写本…〈異界黙示録/クレアバイブル〉が絡んでいても不思議じゃないわね…。」
でもアイツが相手だとすると…実戦に慣れてないキャロとノーヴェは苦戦しそうだわ。
「そういうわけなので、僕も協力させて戴きます。ただし…」
「分かってるわよ、もし写本が存在したら処分する…でしょ?あたしらは別に必要ないし、構わないわよ。タカヤもそれでいいわよね?」
「そうですね…むしろお願いしたいくらいです。」
よ~し決まりっ!このメンバーならまず負けは無いわね。
ボーン、ボーン…
翠屋の柱時計の鐘が鳴った…もう7時か。
「さ~て、それじゃ手分けしてパトロールしましょうか?2人1組でコンビ組んで何かあったら直ぐ連絡、決して無理や無茶はしないこと。いいわね、キャロ、ノーヴェ?」
「「はいっ!」」
うん、いい返事ね。それじゃアミダくじでコンビを決めましょ。って訳で…?
〇あたし&キャロ
〇アメリア&ゼロス
〇アリサ&すずか
〇ユーノ&神威
〇ノーヴェ&タカヤ
の5チームに。ホラーがどれほどのもんか知らないけどチーム・ナイトメアの初任務、必ず成功させてやるわ!
SIDE:ユーノ&神威
「…なぁ、ユーノ。」
「何ですか、義父さん?」
僕と義父さんは町外れの路地を捜索していた。空を飛べる者同士のペアは上空から、そうでないペアは地上を探索している。
「すまねえな、お前は空飛べんのに俺が飛べないせいで…」
「仕方ないですよ、義父さんは魔導師ですらないんですから。」
辺りを見回しながらすっかり暗くなった路地裏を駆け抜ける。
「そうか…それはそうと、何で約束を破った?俺に勝つまでお預けだったはずだろ、リナに手を出すのは?」
うっ…?!
「…すいません!この間の食事会の時に酔い潰れたリナが無性にいとおしくなって…」
「酔い潰れたって…あいつ、未成年なのに飲酒したのか?こりゃ後で説教だな。」
あ、しまった!この話は内緒にしとくんだった?!
「あ、あの…?」
「まぁそれはいいさ…それよりどうすんだ?」
「もちろん責任は取りますよ。必ずあなたに勝って、リナを伴侶に迎えます!」
「お~その意気だ。ま、簡単には負けないけどな。…どうやらお出ましのようだな。」
…!!
僕たちの目の前の現れたのは、黒に金色の装飾が施された甲冑を纏った異形の兵士…これがホラー?!
「…らしいな。一つ言っておくが、伝承では…」
「返り血を浴びるな…でしょ?タカヤから聞きました。」
なんでもホラーの返り血を浴びた人間はホラーのご馳走らしく、激痛に見舞われるらしい。
「ま、そんな間抜けにはウチの可愛い娘はやれないからな?…逢魔流当主・逢魔神威…」
「…同じく師範代、逢魔・S・ユーノ…」
「「罷り通る!!」」
僕と義父さんは剣を抜くとホラーを強襲する。海鳴の平和は僕達で護ってみせるっ!
NO SIDE
ユーノ達がホラーと遭遇したのを皮切りに、海鳴市内の各所で眷族ホラーが発生、パトロール中のメンバーと遭遇していく。そして…
SIDE:タカヤ
ヴゥオン…
「…タカヤさん、これって…?!」
「うん…間違いない、ズイヌフィアの眷族ホラー、〈ズィヌフ〉だ…気を付けて!」
ノーヴェのエアライナーでビルの上から探索していた僕達の前に現れた眷族ホラーの一団。
(一匹一匹は大したことないけど…結構数が多いな。)
僕は手に持った魔戒剣斧オウガを剣形態に切り換えて構える。すると…
ゴゴゴゴゴッ!
『なっ…なんだこの封鎖結界は?!こんな堅固な結界みたことねーぞ!』
辺りを黄金色の魔力光が包み込んでいき、外界から切り離される。これってシャマル先生の結界より強い気が…?
『ん~、これで10倍がけってトコ。まだまだ余裕だけどね~♪』
頭の中に念話が響き渡る。リナさんに似た声だけど…どこか違うような。
『あ、アンタ達にははじめまして、かな?あたしの名前はナイトメアハート・ルシフェリア。逢魔リナのデバイスだよ…みんなからは〈L様〉って呼ばれてるけどね。』
L様?!物凄く人間臭いデバイスだなぁ…あれ、どうしたのキリク?
『この魔力…普通の魔力じゃないっていうか…何なんだよアンタは?』
『ん~っ…何だって言われたら〈元・神様〉であり〈元・世界の根底〉かな?…ま、今は只のデバイスだよ。』
いや、「只の」じゃないと思うんだけど…?
『とにかく、この一帯は完全に封鎖したから、魔法・必殺技使い放題だよっ!殺りたいように殺っちゃいな!』
…今物騒な事言ったような…後でリナさんに聞いてみよう。
僕はオウガを振りかぶると目前のズイヌフを一刀両断に。よし、これなら…?
『黄昏よりも昏きもの 血の流れより赤きもの 時の流れに埋もれし 偉大なる汝の名において 我ここに闇に誓わん…』
僕の後ろでノーヴェが呪文の詠唱を始めた…けどなんだこの呪文は?
『これは…嬢ちゃんの言葉に魔力が宿ってるのか?それにしてもとんでもない魔力だぜこりゃあ?!』
僕が数戟打ち込みホラーを倒す間にも、ノーヴェの詠唱は続く。
『…我等が前に立ち塞がりし 全ての愚かなる者に 我と汝が力持て 等しく滅びを与えん事を!…タカヤさん、避けてくださいっ!!』
ノーヴェの警告に身を避けて振り返ると…
『いっけぇ~!竜破斬[ドラグ・スレイブ]!』
ノーヴェが放った赤い砲撃は身を避けたタカヤの真横をすり抜け、ホラーの一団を丸呑みにする。
「な、な…なんて威力の砲撃魔法なんだ…。これがスィーフィード式の呪文?!」
『マジかよ…いくら眷族だからって一撃で全滅なんて有り得ないぜ…』
あまりの威力に呆気にとられた僕とキリク。
「やりましたねタカヤさん!」
「うわっ?!」
不意に後ろからした声に振り向くと、ノーヴェが頬を寄せ抱きついてきた。
(…落ち着けタカヤ…この子はノーヴェであってノーヴェじゃない。平行世界のノーヴェなんだ…?!)
そう思いつつも、意識してしまう。
「どうしたんですか、顔が赤いですよ?」
「な、なんでもないよっ?!…それより凄いね、今の呪文。」
ノーヴェは身体を放すと照れ臭そうに鼻を掻く。
「へへっ、ドラグ・スレイブって言って、リナさんの得意呪文なんですよ…まだ不完全なんですけど、タカヤさんがサポートしてくれたから。」
『…確かに、ちょっと呪文が長いか…単独だとキツいかもな。』
ノーヴェの言葉に同意するキリク。
「でもタカヤさんの方が凄いです。タカヤさんって何歳なんですか?」
「えっ僕?僕は18歳だけど…」
「じゃ、あたしの方が年下ですね♪…タカヤさん、お願いがあるんですけど…?」
…?なんだろ、お願いって?
「…タカヤさんの事、〈お兄ちゃん〉って呼んでいいですか?」
…?!
(おい、タカヤ?!)
(解ってるよキリク。でも…)
健気な瞳でこっちを見るノーヴェ。
「うん、僕で良かったら。」
「…!…ありがとう、タカヤお兄ちゃん!」
平行世界の人間に深くは関わっちゃいけない事は解ってるけど、僕にはノーヴェの申し出を断る事は考えられなかった。
…そう、その考えが浅はかだったとしても…
次回はお風呂回…なのか?(謎)
次回も見てくんないと…
『リリカル、マジカル、頑張るぜ!』
(BY キリク)