SIDE:リナ
「♪~」
「…ちょっとアメリア…あんたまた大きくなってない、胸?」
あたしはバスタオルに包まれたアメリアの胸元を見ながらぼやく。
「へへ、実は…。」
サウナの暑さのせいか、顔を赤らめながら答えるアメリア。
まったく…いったい幾つなのよ、サイズは?
「えっと…86のD?」
「なっ…?!」
アメリアの答えに思わず絶句するあたし。こちとらやっと78のAで『お待ちかねのAカップ~♪』って浮かれてたのに…
「…で、でもリナさんの胸って型良いですよね、美乳だと思うんだけどなぁ…。」
慌ててノーヴェが間に入ってごまかそうとするけど、あたしは騙されない。
「そういうあんたもあたしより大きいよーな気がすんだけど…正直に言いなさい、怒んないから。」
「…81cmです。」
それを聞いた瞬間、あたしはその場に崩れ落ちる。自分で言っててなんだけどまさか4つも年下の子に負けるとはっ…?
「くっ…どーやらあたしの負けのようねアメリア、ノーヴェ。」
「いや、別に何も勝負は…」
「それよりそろそろ上がりませんか?皆も待ってると思いますよ。」
え…あ、待ち合わせの時間か…そんじゃ休憩室に 行ってなんか飲もうか。
「「は~い♪(ほっ…)」」
それはそうと男連中は何やってんだろ?ユーノやタカヤはともかく、父さんとゼロスが心配なんだけど。
SIDE:タカヤ
「「へっくしょんっ?!」」
あれ、神威さんとゼロスさんどうしたんですか、くしゃみなんかして?
「…いや、多分誰かが噂してんなこりゃ?」
「…おそらくリナさんあたりじゃないですか?彼女なら遠慮なんかありませんから。」
う~ん…確かにあの人ならありえそうだ。ふと横を見るとユーノさんも苦笑いしてる。
『おう、そうだ。ユンユンに聞きたい事があったんだ。…リッちゃんやノーヴェ嬢ちゃんが使ってる魔法、あれって魔族の力が媒体なんだよな?』
洗面器の湯に浸かったキリクがユーノさんに尋ねる。…確かに少し気になるかも。
「うん。…リナやノーヴェの使ってる[竜破斬/ドラグ・スレイヴ]は元の世界の魔王であるシャブラニグドゥの力を借りて放つ呪文だよ。カオス・ワーズっていう特殊な言語を用いるんだけどね。」
成る程…でもリナさんのデバイス…L様でしたっけ?
「あの封鎖結界…ノーヴェの竜破斬でもヒビひとつ入らなかった…シャマル先生の結界より遥かに堅いですよねあれ?」
「比べるのはシャマルさんが可哀想と思いますよ。何せあの方の異名は[金色の魔王/ロード・オブ・ナイトメア]…僕たちの前世の世界の根源その物なのですからね。」
「更に言うなら古代ベルカ神話に伝わる女神でもある…マスターであるリナが暴走したら冗談無しに世界は滅ぶよ、間違いなく。」
なっ…?!
「まぁリナもなんだかんだ言っても人間の範疇だからL様の能力の半分も引き出せたら御の字だよ。それ以上は暴走の危険性があるからね…」
ユーノさんの言葉に言葉が出ない僕とキリク。
(世界の根源、神話の女神…ホラーどころの騒ぎじゃないよキリク?)
(あぁ…下手をすりゃ原初ホラー以上の存在だぜ…リッちゃんのデバイスで良かったよ、ホントに…ん?!)
どうしたのキリク?
(いや…なんかホラーの気配を感じた気がしたんだが…多分気のせいだろ。)
そう?それならいいんだけど。
「さ、そろそろ上がるとするか。リナたちも待ってるだろうしな。」
神威さんに従い風呂を上がった僕達は先に上がっていたリナさん達女性陣と合流した。
「ヤッホー、遅かったじゃんユーノ?」
「ごめんごめん、色々話しててさ。」
ユーノさんとリナさんは仲良さげに話してる。…やっぱりこの2人、何処かで繋がってるんだな。
「…タ・カ・ヤさんっ♪」
ムニュ
「うわっ…ノ、ノーヴェ?!」
後ろから抱き付いてきたのはノーヴェ…押し当てられた胸、そしてお風呂上がりの石鹸の匂い…
(ま、まずい…このままじゃ僕の理性が…?!)
「こ~ら、タカヤが困ってるじゃない?湯冷めしちゃうから早く着替えてらっしゃいノーヴェ、キャロ?」
「「は~い♪」」
僕が戸惑ってるとリナさんがうまく誘導してくれた。
「ありがとうございますリナさん。お陰で助かりました。」
「良いわよ別に。ってかノーヴェとなんかあったの?えらく気に入られてるみたいだけど。」
「えぇ、実は…」
僕は自分の世界のノーヴェの事、そしてパトロール中の出来事を説明した。
「ふうん…でどうすんのよ?」
そう言うリナさんの表情は真剣そのもの。
「そりゃあんたの世界ではノーヴェは歳上でしかも大事な人なのかもしんないけど、あの子は別人なんだから絶対にあの子を泣かせるような事はしないで…約束できる?」
「…はい。約束します。」
僕がそう言うとリナさんは笑みを浮かべる。
「それならよし!あたしが言うことは無いわ。じゃ、身支度したら駐車場に集合ね?」
そう言ってリナさんはその場を離れ、残されたのは僕1人。
(リッちゃんのいう通りだぜタカヤ…この世界の嬢ちゃんはタカヤの知ってるノーヴェとは別人だ。何時かはお別れしなきゃならないんだ…判ってるよな?)
キリクの忠告…自分では判ってたつもりだったけど、それは甘かったと痛感させられてしまう。
(…かと言って、無下に冷たくするのもおかしいし…どうしたら?)
(別に普通に接したらいいんだよっ?ただ必要以上に関わるなってだけだ。)
キリクの言葉に自問自答しつつ駐車場に向かうと…
「さぁ、帰って晩酌でもすっかな?ゼロス、お前はもう呑めんだろ、付き合えよ。」
「それはいいですねぇ。ありがたくご相伴させて…」
「別にいいけどほどほどにしなさいよ、明日も仕事なんだからさ?…あれ、どうしたのキャロ?」
リナさんが先に車に乗り込んだキャロさんに声を掛ける。すると…
「リナお姉ちゃん、車の中にこの子が…?」
降りてきたキャロさんが胸に抱いていたのは栗鼠ぐらいの大きさの小動物。毛色は白銀色で外見は小さな狐にも狼にも見える。
「クルルゥ…♪」
抱かれた子狐?はキャロさんにすっかりなついてるみたいだ。
「ねぇリナお姉ちゃん、この子わたしが飼いたいんだけど…ダメ?」
キャロさんのおねだりに困惑するリナさん。
「ん~、飼うのはいいけどフリードもいるのに大丈夫なの?」
そりゃそうだよね…見た目は小さくてもフリードは火竜。一瞬に飼うのは…ってあれ?
「クルルゥ♪」
「アギャア♪」
子狐?はフリードを見つけるとキャロさんの胸から抜け出し一緒に遊び始めた。
「…どうやら大丈夫みたいね。でも何なのかしらこの子?びみょ~に魔力感じるんだけど…ユーノ、ゼロス、判る?」
リナさんに尋ねられたユーノさんとゼロスさんだったけど、2人とも首を横に振る。
「ごめん、僕は解らないなぁ…ゼロスはどう?」
「いや…僕にも解らないですね。お役に立てず申し訳ないです♪」
…ゼロスさんが全然申し訳なさそうに見えないのは僕だけなのかなぁ?
「仕方ないわね…その代わりちゃんと最後まで面倒見ること、いいわね?」
「うん!ありがとうリナお姉ちゃん!…そうだ、名前を決めなきゃ。」
キャロさんは子狐?を抱き抱えて少しの間思案する。
「う~ん…よし、あなたの名前は〈シル〉に決定!よろしくね、シル?」
「クルル…クルゥ♪」
どうやら名前も決まったみたいだ。
「うん、正体が解らないのは少し不気味ではあるけど…いざというときはL様もいるからね。」
ユーノさん…あ!
「あの…ユーノさんにお願いしたい事があるんですけど?」
「僕に頼み事?」
僕は今思い立った事を頼んでみる。それは…
「ユーノさん、僕と剣術で試合して貰えませんか?」
…ノーヴェの事で迷いだらけの今の状態を脱け出す為にも、ユーノさんみいな強い人と闘って気合いを入れ直す。
「分かった。明日の朝でいいかな?」
「はい、ありがとうございます!」
「やるからには手加減はしないよ?」
「勿論です。お互い全力で!」
よし、後は勝ち負けはともかく全力全開でぶつかるだけだ!
お楽しみいただけたでしょうか?
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