魔法少女リリカルすれいや~ず!   作:タカヒロオー

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すいません、間が開きました。

それでは本編、どうぞ!


七十六、激突す 破邪と魔戒の 模擬試合

NO SIDE

 

ホラーとの邂逅、そしてお風呂屋での一幕から一夜開けた早朝の逢魔家。タカヤはユーノとの模擬戦を控え日課の朝練に励んでいた…

 

 

SIDE:タカヤ

 

ブンッ!ブンッ!

 

『準備は出来たかタカヤ?』

 

「うん、身体は十分暖まったよキリク。」

 

逢魔家の庭を借りて素振りで身体をほぐした僕は魔戒剣をしまう。さすがに模擬戦にこれは使えないからね。

 

「おっはよー、早いわねタカヤ?」

 

「おはよう、タカヤお兄ちゃん!」

 

声のした縁側の方を振り向くとそこにいたのはパジャマ姿のリナさんとノーヴェだった。

「あ、おはようございますリナさん。ノーヴェもおはよう。」

 

「朝から頑張るわね~…毎日やってんでしょ?」

 

まぁ、「継続は力なり」って言いますしね…ユーノさんは?

 

「ユーノだったら早朝トレで今ごろは走り込みしてるはずよ。…そろそろ帰ってくんじゃない?」

 

「おはようリナ!みんな早いね。」

 

話している最中にジョギングウェア姿のユーノさんが帰ってきた。

 

「タカヤもおはよう。準備は万端かい?」

 

「はい!今日は手合わせよろしくお願いします!」

 

「こちらこそ。それじゃ道場へ行こうか。」

 

ユーノさんに促され、僕らは逢魔家の道場へと向かった。

 

NO SIDE

 

場面は変わって逢魔家の道場。既に中央ではユーノとタカヤがそれぞれ刃引きした模造刀をさげ、その傍らにはリナ、アメリア、ノーヴェ、アリサ、すずかが見守っていた。

 

(キャロは絶賛睡眠中)

 

やがて道場の扉が開き、この道場の主である神威が現れる。

 

神威に何時もの飄々とした雰囲気は無く真剣そのもの。

 

「さて…これより〈逢魔流・皆伝〉、逢魔・S・ユーノと〈魔戒騎士〉、秋月タカヤの試合を始める。武器は今手に持っている模造刀のみ、戦闘不能・戦意喪失を持って勝敗を決める。格闘戦も認めるが急所への攻撃は反則とする。…2人とも、準備はいいか?」「「はいっ!!」」

 

2人はそれぞれ構えを取る。

 

タカヤは正眼に構え、ユーノはいわゆる帯刀の状態で右手を柄にかけ、体勢を低くする。

 

「…あれは居合いの構え…な~る、ユーノは短期決戦を選んだか。」

 

リナの呟く通り、ユーノの抜刀術は神速…並の剣士では見切る事はまず不可能。

 

「…しかも鞘に納めないで抜刀するって…あれ〈巌流・つばめ返し〉?何でユーノがあの技知ってるのよっ?」

 

アリサがぼやくのも無理はない。〈巌流・つばめ返し〉は江戸時代の剣豪・佐々木小次郎の一族に伝わる秘伝技で、アリサもその末裔である親友が使ったのを見ただけなのだから。

「あ~…逢魔家の書物庫には古今東西あらゆる武芸の秘伝書が眠ってるから。そんなもんユーノが黙って見逃すと思う?」

 

「ううん、思わない。」

 

「文系剣士の面目躍如、ですね。」

 

「と言うかさ…それ何処の無限書庫よ?!」

 

「さ、無駄話はこれぐらいにして…試合に集中しましょ♪」

 

SIDE:タカヤ

 

改めてユーノさんと相対した僕は、正眼に構えつつ目の前の人を見る。

 

僕の世界のユーノさんが肩書き通り〈魔戒騎士〉とすれば…目の前のユーノさんは〈破邪の剣聖〉。

 

『あぁ、何て言ったもんか判んないが、静かな…それでいて強い意志の力を感じるぜ。油断するなよ、タカヤ?』

キリクの忠告に僕は頷いて応える。

 

「勿論だよキリク。元々僕達の世界でもユーノさんは実力者だからね。」

 

『それならいいんだがな。…そろそろ始まるぞ。』

 

ルール説明を終えた神威さんが一歩下がり…

 

「それでは…始めっ!」

 

試合が始まったその瞬間…

 

シュン!

 

一瞬にしてユーノさんは距離を詰め、模造刀を凪ぎ払う。

 

「なっ?!…でも居合って解ってれば!」

 

しかしその光速の居合をかろうじて僕は刀ではじく。

 

恐らく僕とユーノさんの実力は拮抗してる。パワーと防御力、体力では僕。スピードと剣技、魔力ではユーノさんといったところ。

「予想以上に堅いね…さすが魔戒騎士といったところかな?」

 

そう言ってつばぜり合いから距離をとるユーノさん。

 

「はは…。初めてですよ、居合が来るって判ってて受け止めるのが精一杯なんて…」

 

思わず冷や汗が頬を伝う。

 

『…マジかよ、俺が今まで見たホラーでもあそこまで速いのは見たことないぞっ?!』

 

…でも、今のでスピードは見切った、今度はこっちの番だ。

 

「行きますユーノさん!…でやぁぁぁっ!!」

 

僕は刀を構え直しユーノさんとの距離を詰めると渾身の一撃を撃ち込む。

 

「ぐっ…やるね。これだけの一撃、父さん以外じゃ久々だよ。なら…」

ユーノさんは刀の刃を滑らせ攻撃をいなすと両手に構えた刀を左手に持ちかえ、弓を引くような構えから…

 

「…いくよ、〈牙突・零式〉!」

 

至近距離から放たれた突きに僕は慌てて後方に宙返りして回避する。

 

「はぁ、はぁ…何て強さなんだ…」

 

「…そりゃそうでしょ。」

 

僕の呟きに答えたのはユーノさんじゃなく観客のリナさん?

 

『おい、そりゃどういう意味だリッちゃん?』

 

聞き返したキリクにリナさんは言葉を続ける。

 

「あたしとユーノ、それにアメリアは前世の記憶があるっていうのは昨日話したわよね?」

 

そう、僕とキリクは昨日の夜にその話を聞いた。

 

「ユーノの前世はあたしの前世のパートナー、ガウリイ・ガブリエフ…あいつは一言で言ってしまったら〈剣技の天才〉。どんな状況も剣一本で切り抜ける凄腕の剣士だったわ。けど…」

 

『…?…けど何だよ?』

 

キリクの疑問にリナさんは空を仰ぎながら答える。

 

「…ガウリイには知識と理解力が皆無だったのよ。そのおかげで前世でどんだけ苦労したか…」

 

成る程…あの剣技は天性のものだったのか。

 

「でもそれはガウリイが勉学に励む環境になかったから。その点ユーノは…あんたも知ってるでしょ?」

…!

 

ユーノさんは無限書庫の司書長を史上最年少で拝命できる学力の持ち主。魔導師ランクもAAAランクだ。

 

そこにガウリイさんの天性の剣の才能が加われば…?!

 

「勘違いしないでほしいけど、ユーノがガウリイから受け継いだのはあくまで素質だけ。その素質を開花させたのは…ユーノの努力よ。」

 

「リナ、それぐらいにしといてくれないかな?正直恥ずかしいよ…」

 

ユーノさんは物凄く照れ臭そうに手を振って否定する。

 

「それより…試合を続けようか。まだ出しきってないだろう、全力?」

 

「勿論です!はあぁぁっ!」

 

僕は刀を振りかざしてユーノさんを切りつけるも、全てギリギリのところで避けられる。

 

「くっ、なんで当たらないんだっ?!」

 

『落ち着けタカヤ、剣筋が粗くなってるぜ!』

 

焦りからなのか、それともユーノさんの技術なのか…

 

「…そろそろ終わりにしようか。…はあっ!」

 

ユーノさんの放った一閃は僕の模造刀を弾き飛ばす。そして…

 

「これで…王手、かな?」

 

ユーノさんの剣先が僕の目前に突き立てられる。

 

「…そこまで!勝者、ユーノ!」

 

神威さんが試合の終わりを告げる。

 

(…手も足も出なかった…完敗だ。)

打ちひしがれる僕にユーノさんが手を差し出してくる。

 

「お疲れ様。怪我はさせてないつもりだけど…大丈夫?」

 

「はい。いい勉強をさせて貰いました。」

 

ユーノさんの手を取り立ち上がる。

 

「リナから聞いたけど…迷いは晴れたかい?」

 

「…正直、判りません。だけど、道は見えた気がします。」

 

そう。僕にできるのはノーヴェを傷つけない事。

 

兄貴分と慕ってくれるのは嬉しいし彼女の力にはなりたいけど、最後の一線だけはけじめをつける。

 

「そう、それは良かった。」

 

「ね~、男同士で世界に入るのもいいけどさ…そろそろご飯にしない?」

 

リナさんの声に手を上げてOKサインのユーノさん。

 

あれ、そう言えばキャロさんは…?

 

「キャロは昨日が夜遅かったからね…まだ寝てるわよ。」

 

そうか…こっちのキャロさんはまだ9歳ぐらいだったっけ。

 

「とはいえ、そろそろ起こさないとね。ノーヴェ、頼んでいい?」

 

「は~いっ!」

 

元気な声で返事をして駆けていくノーヴェ。

 

(…あの笑顔、絶対に曇らせない!)

 

そう思いつつ、ユーノさんと僕はシャワーを浴びに向かうのだった。

 

NO SIDE

 

こうして終わったタカヤとユーノの模擬試合はユーノの勝利に終わった。

 

まだタカヤの迷いは晴れたわけではないだろうが、一歩進んだのは間違いないだろう。

 

だが…

 

「キャロ~、そろそろ朝ご…」

 

クラッ…

 

(あ、あれっ…?)

 

《…目覚めよ、内に眠りし紅き…》

 

一瞬立ち眩みを覚えたノーヴェの頭の中に、得体の知れない声が…

 

(…あれ、聞こえなくなった…?)

 

「むにゃむにゃ…おはよー、ノーヴェさん…」

 

はっとして前をみるとキャロが寝ぼけ眼で此方を見ていた。

 

その傍らにはフリードとシルの姿。何故かフリードが一歩後ずさる。

 

「お、おはようキャロ。もうすぐご飯らしいから早く着替えなさい!」

 

「は~いっ♪」

 

(でも…なんだったんだろ、今の声?…気のせいよね、うん。)

 

ノーヴェは自分を納得させキャロを急かす。

 

…どうやらこの事件、一筋縄ではいかない予感が立ち込め始めたようだ…

 




う~ん、ペースが上がらない…

なんとか今年中にもう1回は投稿できればとおもいます。

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