SIDE:リナ
「どう?誰もいない?」
キョロキョロ辺りを見回しながらあたしはなのはに尋ねる。
「だ、大丈夫だと思うの…」
なのはの答えにほっとしたのもつかの間、背後に気配が…!
「「こ~ら~!なに夜に外出してるんだ!しかも無断で…」」
振り向くと、予想通りお父さんと恭也さんがいい笑顔で立っていた。
「ははは…(汗)こ、これはねちょっと事情が…」
言い訳しようとしたあたしの胸元からユーノが顔をだす。それに恭也さんの後ろに
いた美由希さんが気づいて抱き上げる。
「きゃあ、可愛い!どうしたの、このフェレット?」
よし、美由希さんナイス!今の内に…
「あのお父さん、じつはね…」
…いきさつを説明してるからまっててね…
「なるほど、要はそのフェレットをうちで飼いたい、と…別にいいんじゃないか?
なぁ、時雨?」
「えぇ、リナが責任持って飼うんだったらOKよ。」
「ありがとう、お父さん、お母さん!」
続けて、なのはが士郎さんにお願いする。
「ねぇお父さん、今日このままリナちゃんの家にお泊まりしていい?このユーノ君の事で相談したい事があって…」
「ん?うちは構わないぞ。なのはちゃん、遠慮せず泊まりな。」
「それならいいが、明日も学校があるんだから、あまり夜更かしするんじゃないぞ。」
「は~い!」
これでなのはの方もOKね。とはいえ、あたし達の「O・HA・NA・SHI」は
これからなんだけどね。ハァ…
所はかわって、ここはあたしの部屋。今ここにいるのは、あたし、なのは、ユーノの2人+1匹。そしてあたしとなのはのデバイス、レイジングハートとゼルガディスソウル。さて、誰の話から始める、なのは?
「わ、私が決めるの?」
「だってこの中でなのはだけが完全な聞き手だから。」
「…それじゃ、最初にユーノ君に事情を
説明してもらって、その後リナちゃん、かな?」
「…それでいいわ。ただゼル、最後でいいからあんたの事情も説明して。いいわね?」
「…了解した。」
あたしは一旦話を止めると、ユーノに話を始めるよう促す。
「まずは改めて僕の名前はユーノ・スクライア。管理世界ミッドチルダで考古学を研究してます。」
「え?あんた使い魔なのに考古学なんて難しい事を研究してるの?」
ユーノはあたしの疑問に首を傾げ、ポンと手を打つ。
「あ、僕は人間ですよ。歳はあなたたちと同じくらいかな?」
そっか、人間なんだ。なるほ…ってちょっと待て!ということはつまりさっき…
あることに気付きあたしの頬が赤くなる。
「リナちゃん、どうかしたの?顔真っ赤だよ。」
「…大丈夫よ、話を続けて。」
…ユーノには後で個人的にO・HA・NA・SHIね…
「…それで僕はある世界で魔力の結晶、ジュエルシードを発掘してそれを輸送していたのですが、その途中に事故が発生して…後はご存知の通りです…」
「で、ジュエルシードは全部でいくつあるの?」
「ジュエルシードは全部で21個。内回収できたのは僕が回収した1個と、さっき
2人が回収した4個の計5個です。」
う~みゅ…まだ1/4って所か…先は長そうね…
「あ、あの…さっきは仕方なく力を借りたけど、1週間も休めば回復するからその間だけ…」
「「却下(なの)!」」
あ、なのはとハモった。
「ユーノ君、それはだめなの。もうわたしたちはこの事件に関わったんだから、最後までお付き合いするの!」
「そ!それに、こんな面白そうな事黙って見てるなんて、できるわけないじゃん!」
あたしとなのはの言葉に、ユーノは涙ぐみながら頷く。
「リナ、なのは…ありがとう。それじゃ、よろしくお願いします。」
「うん、よろしくされたの。じゃ、次は
リナちゃんの番なの。」
…さて、何から話すべきか…
「えっと、簡単に説明するとあたしには、前世の記憶があるの。」
「「前世の記憶?!」」
「えぇ。その記憶によるとあたしはその世界でも魔導士で、強い力を持っていたわ。でも、より強い力によってこの世界に転生させられた…ってところね。それで…」
あたしは机の上に置いていたゼルを手のひらの上にのせる。
「あたしのデバイスの中の人格、ゼルガディスはその当時の旅の仲間…それでいいよね?」
「…あぁ、構わん。」
「でも転生なんて…魔法の存在を知ってなかったら頭大丈夫?ってレベルなの…」
うわ~なのはも結構毒舌ね…
「ま、そういう訳であたしが教わらなくても魔法が使えたり、その術式が異なるのはその魔法が転生前にあたしが使えたり魔法だから。でも、あの瞬間まで使えなかったのに…」
「あ、それはゼルガディスソウルがリナの術式をミッドチルダ式に変換したんだと
思う。そうだよね?」
あたしの疑問にユーノが答え、ゼルも同意する。
「あぁ、この世界は俺たちのいた世界より魔力が薄いから、術式が安定するように変換してみた。違和感は無かったか?」
「全然。そっか、ゼルのおかげで魔法が使えるようになったんだ。サンキュー、ゼル。」
「俺はお前を手助けしただけだ。俺は独りではなにもできん…」
あたしはそこで疑問をゼルにぶつける。
「そこよ!ゼル、あんたどうしてデバイスなんかになってるのよ?一体何があったの?」
「そうか…その辺の事情は説明せんとな。話は少々長くなるかもしれんが…」
「構わないわ。なのはとユーノもいいよね?」
あたしが尋ねると、なのはとユーノは互いにうなずく。それを見てゼルは話し始めた。
「お前たちと別れた後、俺は元の身体に戻る術を求めて世界中を駆け回った…」
「あの…ゼルディガスさん…」
「…ゼルガディスだ。呼びにくいならゼルでいい。」
あ、なのはが名前間違えた。あたしも最初出会った頃やったなぁ…
「すいません…じゃあゼルさん、元の身体ってどういう事ですか?普通の人間とは何か…」
「あぁ、俺は元々普通の人間だった。しかし、とある魔導師の実験によって、岩人形[ロック・ゴーレム]と邪妖精[ブロウ・デーモン]と合成させられ、こんな姿になってしまった…」
ゼルがそういうと翠色の宝珠からホログラムが浮かび上がる。あたしにとっては懐かしいゼルの姿。でもなのはには衝撃的だったみたい…
「あ、ごめんなさい…」
「まぁ、いいさ。話を戻すぞ?俺は元に戻る術を探し続けた。しかしそれは見つからないまま、時間だけが過ぎていった…
そして、俺の身体に来たんだよ、限界[リミット]がな。」
「限界?」「あぁ、リナには解るだろうが魔法で造り出した生物、キメラの寿命は
短い。それは俺も例外じゃ無かった…」
…あたしも言葉を失う。共に旅をしてた時は彼をキメラなんて思いもしてなかったから…
「…あんたも苦労したのね…」
「…まぁ、な。で、身体の限界が近づいた俺は僅かの望みをもって、とある遺跡を探索することにした。そこに禁断の魔導、蘇生と解呪が記された宝珠(オーブ)があると聞いてな。そして宝珠はそこに確かにあった。だがその宝珠にできたのは限定条件付きの蘇生だけで、解呪はできなかった。」
そんなことが…でも待って?まだあんたがデバイスになった理由になってないわよ?
「あぁ、簡単な話だ。俺はその宝珠の前で力尽きた。そして次に目覚めたのがついさっきだ。その宝珠になって…」
………
「え~~~!あんたデバイスに取り込まれたって事?というか、何であの世界にミッドチルダのデバイスがあるの?」
「俺が知るか。ただ倒れた時に声が聞こえたんだ。『生きたいか?』ってな。それに俺は『生きたい。まだ死にたくない。』と答えた。俺の記憶はそこまでだ…」
ゼルの呟きに無言となる。あたしとは違うかたちの[転生]…そしてあたしとゼルが異世界で巡り会えた[奇跡]…
「でも、リナちゃんとゼルさんが出会えたのは多分運命なの。わたしとリナちゃんが出会ったみたいに…」
…うん、そうかもね。なのは、いいこと言うじゃない。
「うん。というわけでこれからもよろしくね、ゼル!」
「あぁ、こちらこそだリナ。」
さぁ、夜も遅いしそろそろ寝ましょうか?なのはは隣の部屋ね。
「うん。おやすみなさいなの。」
おやすみの挨拶をしてなのははでていった。後は…
「さぁ、僕も…」「ちょっと待て。」
「な、何リナ?」「ユーノ、あんた何で人間だってこと黙ってたの?!」
あたしは寝ようとしていたユーノの首根っこをつまんで持ち上げた。
「べ、別に隠してないよ?」
「あたしの胸に潜り込んで黙ってたら、隠してるのと一緒!さぁ、O・HA・NA・SHIしようか?」「NO~!」
…その夜、ユーノの悲鳴が響いたとか響かなかったとか…
はい、ユーノ君はとんだとばっちりでしたね…(笑)
次回はいよいよフェイト登場!てわけで
次回!「十一、雷光を 纏いし少女 現れし」
「リリカル…マジカル…頑張ります。(赤面)」
「くくく…あ~おかしい…」
(BYゼルガディス&リナ)