SIDE:フェイト
わたし、フェイト・テスタロッサは不幸な子だった。母・プレシアからは役立たずと罵られ、理解者だった母の使い魔・リニスは姿を消した。自分専用のデバイス・バルディッシュと使い魔のアルフは側にいてくれるけど、わたしは常に孤独感を感じていた…
つい先日までは。
突然、母さんの態度が変わったのだ。
「フェイト、今までごめんなさい。わたしはやっと気づいたの、貴女がわたしにとって大切な娘ということに…」
母さんはそういうとわたしを抱きしめてくれた。わたしの眼から涙がこぼれた。
「母さん…母さん…!」
「あぁ、私を母と呼んでくれるのね、嬉しいわ…」
どうして母さんが変わったのか解らないし何か思惑があるのかもしれない。実際、
アルフは今でも疑っている。
でもわたしは母さんが優しく接してくれる今が幸せなんだ。この時が永久に続けば…と思うぐらい。
だから、母さんがわたしとアルフに、管理外世界に散らばったジュエルシードの探索を指示された時も嬉しかった。母さんが
わたしを頼ってくれてるんだから…
もっとも、不安がない訳じゃない。母さんは近頃突然、高笑いをするようになった。「ほーほっほっほっほっほっ!」と高笑いしている母さんははっきりいって怖い。
それはまだいい。わたしが唯一母さんに
対して困っているのは服装の趣味だ。
以前着ていた魔導師のローブもあんまり
好きじゃなかったけど、今の母さんが身につけているのは所謂ビキニアーマー。それもショルダーガード付きって、一体どこの悪役?
それにも増して近頃は、わたしやアルフにまでそれを強要する始末。アルフは断固
拒否してるみたいだけど、わたしが断って母さんが悲しい顔をしたら嫌だから、
「せめてもう少し地味なのを…」
って頼んだらわざわざ母さんが管理外世界の書物を調べて「これよ!」と用意してくれたのが今着てるバリアジャケット。
まぁこれだったら元々のと似てるし、母さんがわたしのために用意してくれたんだから恥ずかしくないよね?
わたしはそう考えていた。ついさっきまで…
管理外世界・地球に降りたって数日、ついに最初の反応を見つけた。アルフに結界の展開を任せて、わたしはジュエルシードの異相体と対峙する。翼の生えた黒豹型と、たくさん尻尾の生えた狐型…うわぁ、2匹同時はきついかな…
そう考えていたら、誰かこっちに向かってくる。白いフレアスカートのバリアジャケットを身に纏ったツインテールの女の子と翠色のバリアジャケットを纏ったポニーテールの女の子…ポニーテールの子の肩には使い魔かな?フェレットが乗ってる。この世界には魔導師はいないって聞いてたけど…
彼女たちはわたしの手前で立ち止まってこっちを見てる。でも…何?!あの子達の「可哀想な物を見てしまった…」感じの生暖かい視線は!?……ま、まさかわたし?
そ、そんなこと無いよね?そんなこと…
聞いてみようかな…よ、よし!
「あ、あの… 」
SIDE:リナ
あたしたちが反応のあった場所に辿り着くと、そこには2匹の怪物と対峙する金髪ツインテールの美少女がいた。大きな鎌型のデバイスを構えたその姿はとても凛々しい…はずなのに…その身に纏うのが何故スクール水着…?
「リ、リナちゃん…」
「皆まで言わないで…なんなのよ、あの娘…」
あたしたちが呆気にとられてると、あたしたちの視線に気がついたのかこちらに振り向いた。その途端顔を赤らめ、もじもじし始める。…何、この可愛い生物は…
あたしは思わず抱きしめてほおずりしたくなったわ。隣を見ればなのはも目をキラキラさせてる。
「あ、あの…」
そう思ってたら向こうから話しかけてきた。
「わたしの格好って…」
彼女がこちらに気をとられていると、その隙を狙って翼豹と九尾の狐がこっちを襲ってきた。
「話は後!翼豹はあたしがなんとかするからなのはとえ~と…名前はふぇいとでいいの?」
「…フェイト・テスタロッサ。フェイトでいいよ。」
「じゃフェイトはなのはと組んで狐の方をお願い!なのはも頼んだよ!」
「う、うん!」「…解った。」
2人は頷くと翼豹の方へ向かっていった。「さて、あんたの相手はあたしよ、覚悟しなさい!」
あたしはゼルを構えて翼豹と相対した。
SIDE:なのは
は~なんか分からないうちに金髪の子とタッグを組むことになっちゃったの。
「…えっと、なのはだっけ?名前…」
「う、うん!高町なのはだよ。なのはって呼んで。」
「じゃなのは、射撃魔法は使える?」
「大丈夫だよ。フェイト…ちゃん。」
名前フェイトちゃんでよかったよね?間違えてないよね?
「それじゃ射撃魔法であの魔獣を牽制して。隙を狙ってわたしが封印する。」
「うん、解ったの。」
わたしの魔法で牽制に使えそうなのは…
よし!いくよ!
「いっけ~、ディバインシューター!」
わたしが呪文を唱えると目前に魔法弾が現れ、翼豹に向かって飛んでいく。もちろん相手は避けるけど数発連発すれば…
ドガン!
ドガガン!
えっ、まさかの全弾命中!?なんかわたしの魔法を見た途端、動きが止まったような気が…とにかく、今がチャンス!
「ジュエルシード、封印!」
すかさずフェイトちゃんが間を詰め、大鎌型のデバイスで狐を切り裂く。同時に大爆発が起き、爆煙の後に残ったのは封印されたジュエルシード。それと…あれは子狐?しかも空に浮いてる?何で?
「マスター、落ち着いてください。あれはどうやら魔法生物の類いみたいです。敵意はないみたいですが…」
『なのは、後ろ!』「ほぇ?」
突然頭に響いた声に振り向くと、フェイトちゃんが大鎌で斬りかかろうとしていた。わたしは咄嗟にラウンドシールドを展開して受けとめる。
「フェイトちゃん、何でこんなことするの?」
「母さんがそれを必要としてるから…なのはたちには悪いけど、ジュエルシードは
わたしが貰う!邪魔するなら痛い目みるよ…」
う!フェイトちゃん本気なの?でも、ジュエルシードはユーノ君が見つけた物だから渡すわけにはいかないの!
『大丈夫、なのは?』
わたしの側にさっきの子狐ちゃんが寄ってきた。あの声、あなただったんだ…
「うん、大丈夫。さっきはありがとね。」『気にしなくていいよ。それより久し振りだね、なのは…僕のこと、おぼえてない?』
ほぇ?わたし狐に知り合いなんて…えっ?ちょっと待って!もしかして幼い頃に神社でよく遊んでた…?
「もしかして君…[くおん]?」
『そうだよ。思い出してくれた?まぁ、話したい事はたくさんあるけど、まずはあの金髪の子をなんとかしないとね。手伝うよなのは。』
「…!うん!」
わたしは頷くと、ディバインシューターを展開してフェイトちゃんに向かっていく。くおんもフェイトちゃんの周りを飛び回ってくれてるから、狙いが定められないみたい。
「フェイトちゃん、力になれるなら協力するからO・HA・NA・SHIしない?
悪いようにはしないから…」
「…嫌だ。なのは、ものすごく怒ってる、よね…?」
…そりゃ、いきなり理由もなく襲いかかられたら誰だって怒るよね。だからこそ理由が知りたいの!
「フェイトちゃんはどうしてジュエルシードが必要なの?ちゃんと説明もしないで
渡せるわけないよ!」
「それは…」「フェイト、話す必要なんてないよ!」
むぅ、もう少しで話してくれそうだったのに…誰かな余計な事するのは!
「アルフ…」「お前らこそフェイトの邪魔をするな!こいつはもらってくぜ!」
あ!わたしたちが話してる隙に犬耳、犬尻尾をつけたオレンジ髪のお姉さんに封印したジュエルシードをとられちゃったの!
「フェイト、仲間と合流されたら面倒だ!今日の所はこれ1つだけで引こう。あんたらもあんまり調子に乗ってるとガブッっていっちゃうよ?」
あぁ、フェイトちゃんと犬耳お姉さんが離れていく…でもこれだけはいっておかないと!
「フェイトちゃん!」「…何?」
「…そのスクール水着はないと思うの…
フェイトちゃんの趣味なら仕方ないけど…」
………
「う、それは…やっぱり、変?」
「うん、変だよ。フェイトちゃん可愛いのに勿体ないの。」
わたしの返事に、フェイトちゃんは何故か顔を赤らめ、俯いてしまったの。
「………!」
あ、姿が消えちゃった…多分瞬間移動でもしたのかな?
「フ、フェイト?!おい、あのバリアジャケットは鬼婆の趣味でフェイトはあんな服着たくないんだからな!次に会うときはちゃんとしたのを着せてくるから驚くな!」
………シュン!!
…犬耳お姉さんもどこかにいっちゃった。鬼婆ってフェイトちゃんのお母さんなのかな?今度会ったら聞いてみよ。それより、リナちゃんの方は?…
『なのは、あれを見て!あれってなのはの友達なんでしょ?』
くおんの視線を辿ると、その先にはリナちゃんが翼豹を撃ち落とした所だった。さすがリナちゃん!
『どうやら、大丈夫みたいだね。ありがとう、なのは。おかげで助かったよ。お礼といっちゃなんだけど、僕を君の使い魔にしてほしいんだ。』
「えっ?…うん、こちらこそよろしくなの !!」
くおんの願いにわたしは笑顔で答える。
「それじゃ、リナちゃんと合流…ってあれ?何だか様子がおかしいの…」
猫を抱き抱えて狼狽えてるリナちゃんと、ユーノ君…まだトラブルは終わらないみたいだね…
はい、みての通り次回に引っ張ってしまいました…文才がないのが辛いです。
それでは次回「十三、助けたい 瀕死の子猫 どうしても」
「リリカルマジカル頑張るにゃん!」
(BYヌ〇ヌ〇)