プロローグ:旅立ち
SIDE:??
あれ?あたし、どうして宙に浮いてるの?それに真下でベッドに横たわってるのって…あたし?!
「そっか…あたし、死んじゃったんだ…」
あたしは即時に理解する。だって、真下に寝てるあたしはよぼよぼのおばあちゃんなのに、今のあたしは10代中頃、超絶美少女の姿になってる…おまけに身体も透けて見えるしね。
いや~我ながら長生きしたわね。150歳まで生きるとは思わなかったわ。ま、おかげで曾孫の花嫁姿もみれたし、この人生に悔いはないわ。
「で、いつまで隠れてるつもりなの?ゼロス!」
「おやおや、やっぱり気付いていましたか、??さん。さすがですね。」
あたしが声をかけると、あたしの背後におかっぱ頭の優男が姿を現す。この男の名はゼロス。
…一見、人畜無害そうに見えるが実は魔王シャブラニグドゥの側近、獣王に仕える上位魔族、獣神官[プリースト]。たぶん、全盛期のあたしでも1人では勝てない位の化け物だ。
「ひどいなぁ、こんなお茶目な青年を化け物だなんて。久しぶりに会う友人にいう台詞じゃないですよ…」
「はっきり言っておくわゼロス。あんたはお茶目な青年でもなければ、友人でもない。只の腐れ縁の知り合いよ。」
苦笑しながら、ゼロスのぼやきに答える。「でも、腐れ縁は認めるんですね?」
「ま~ね…ってか、あんた何しに来たのよ?まさかあの世へのお見送りに来た訳じゃないでしょ?」
そう、あたしの疑問はそこだった。死んでしまったあたしに利用価値があるとは思えないのだけど…
「そうですね…時間もあまりないので、ぶっちゃけいいますと、??さん、貴女の魂を転生させる為にきました。」
「転生!?それって一体…」
「ま、簡単に説明しますと、貴女も知っての通り、貴女の中には異世界の魔王、金色の魔王[ロード・オブ・ナイトメア]が眠っています。本来なら、貴女が亡くなった時点でその力は解放され、他の誰かに移るはずだったのですが…」
ゼロスはここまで言うと一呼吸置き、話を続ける。
「貴女が生前、その力を何度も行使し、1度は力の暴走により、身体を乗っ取られた事により、貴女の魂と混じり合い、切り離す事ができないのです。だから、我々魔族は貴女ごと異世界に転生させる事にしました。??さんには、誠に申し訳ないんですが…」
ゼロスの全く心のこもっていない話を聴き終えたあたしは、深いため息をつく。
「ま、いいんじゃない?この力を他の人が使いこなせるとは思えないし。それで、あたしは何処の世界に行くの?」
あたしの質問にゼロスは人差し指を口にあてて、「それは、ひ、み、つ、です。」ととぼける。
「というか、僕も異界黙示録[クレアバイブル]で調べて初めて使うんですよ、この転生術。だから、解るところだけお教えします。僕が解るのは??さんが記憶と知識、容姿はそのまま、何処かの異世界に転生する事。それだけです。」
「そ、わかったわ。それじゃさっさと転生するとしますか?どーせ、拒否権はないんでしょ?」
そう答えるあたしにゼロスは呆れた表情を見せる。
「やれやれ、即決で決めてもらえて何よりです。それでは早速…」
ゼロスが呪文を唱えると、あたしの身体が金色の光に包まれる。
「それじゃね!…」
………
少女が光と共に消えた後、そこにはゼロスが1人立っていた。寂しげな表情を見せながら…
「さようなら、リナさん。よい旅を…」
ご意見ある方待っています。