魔法少女リリカルすれいや~ず!   作:タカヒロオー

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…なんとか2月中に投稿できました。待っててくれた方に感謝です!

なお、今回の話に登場している古代ベルカ神話は言うまでもなくオリジナルの設定です。ご了承の上で読んでいただけると幸いです。


四十一、語られる 古代ベルカの 神話かな

NO SIDE

 

[覇王将軍]シエラの襲撃から一夜開けた翌日、名薗森 寛(なぞのもり ひろし)を名乗り転校してきたゼロスから夜天の書の真実と転生の経緯を告げられたリナたち。

 

暴走させることなく夜天の書を覚醒させるべく、彼女たちはそれぞれに行動を開始した…。

 

SIDE:なのは

 

放課後、リナちゃん達と別れたわたしとフェイトちゃんは本局のデバイス整備室へと向かった。目的は傷付いたレイジングハートとバルディッシュのお見舞い。

 

わたしたちがデバイス整備室に入るとそこには眼鏡をかけたショートカットの小柄な女性がいた。

 

「…あの~…」

 

「…あ、高町なのはちゃんとフェイト・テスタロッサちゃんね。…はじめまして、ここの技術官でデバイスマイスターのマリエル・アテンザです。マリーって呼んでくれたらいいよ。」

 

…どうやら気さくな人みたい。じゃマリーさん、さっそくですけど…

 

「デバイスね?レイジングハートとバルディッシュはこっちよ。」

 

マリーさんに連れられていくと待機状態のレイジングハートとバルディッシュが治療中だった。

 

「幸い両方ともコアにはたいした損傷はなかったわ。ただ、フレームの方がかなりの損傷を受けてるから、この機会に補強しておくわね。…2人とも使い方荒いみたいだし。」

うぅ…すいません、ご迷惑かけます…。

 

わたしは、カプセルの中のレイジングハートに念話で呼びかけた。

 

『ごめんねレイジングハート、わたしのせいでこんなに傷ついて…』

 

『お気になさらずにマスター。…むしろマスターを守りきれなかった私達がいけないんですから。』

 

レイジングハートの言葉にわたしは頭を振って答える。

 

『そんな?!レイジングハートは何も悪くないよ…でも、もっと強くならないとね…わたしも、レイジングハートも。…今はゆっくり休んで。』

 

『…ありがとうございますマスター。』

 

そういうとレイジングハートのコアの光が弱くなった。…どうやら眠ったみたいだね。

「マリーさん、バルディッシュとレイジングハートの修理、どれくらいかかりますか?」

 

フェイトちゃんがマリーさんに尋ねる。

 

「…3日もあればフレームを強化した状態で返せるよ。ただ、レイジングハートとバルディッシュから更なる強化をお願いされたんだけど…それはフェイトちゃんのお母さん…プレシアさんに力を貸してもらいたいんだ。」

 

「母さんの?」

 

プレシアさんに?マリーさんだけじゃダメなんですか?

 

「バルディッシュはプレシアさんの使い魔だったリニスさんが創ったって聞いたけど…今は居ないんだよね?」

 

「うん…わたしがある程度魔法が使えるようになったのを見届けたら居なくなっちゃったんだ。多分あの頃の母さん病んでたから…精神的に。リニスは自らの寿命を悟ってたんだと思う。」

 

フェイトちゃんの口から出たのはバルディッシュと自分の魔法の師とも言うべきリニスさんの重い話。

 

「…でもその主だったプレシアさんだったらバルディッシュの構造にも詳しいんじゃないかなって。あとレイジングハートに関しても普通のデバイスと違うんだよね…。」

 

えっ?違うって何が違うんですか、マリーさん?!

 

「…ミッドチルダ式のデバイスには違いないんだけど、色々と解らない技術が使われてるんだ。それこそある意味ロストロギア級の技術が。」

 

マリーさんはそう言いながら首を傾げる。

 

「それでレイジングハート自身に聞いてみたら『詳しい話はプレシア女史とリナさんが居るときに話したい』って…。というわけで、プレシアさんに弟子入りしてレイジングハートとバルディッシュの改修と魔改造したいなぁと思っているんだけど…」

 

「…今、さらっと『魔改造』っていった?!」

 

「…フェイトちゃん、あきらめよう。この人『マッド』だよ、間違いなく…」

 

わたしとフェイトちゃんは顔を見合わせると同時にため息をつく。

 

「どうしようなのは?大丈夫かなバルディッシュたち…」

 

「…あとはマリーさんとプレシアさんに任せるしかないよ…大丈夫、間違いなく強くしてくれるよ…多分。」

 

…ほんとに大丈夫かな?わたしも心配になってきたよ。…無事に戻ってきてね、レイジングハート…

 

…一方その頃、無限書庫では…

 

SIDE:アリサ

 

「な、なによこれ?!」

「…噂には聞いてたけど、まさに『無限』書庫だね…凄い…」

 

わたしとすずかは手土産を持って無限書庫に篭って夜天の書の事を調べてるユーノの陣中見舞いに来たんだけど…なんなのよ、この本の山、山、山は!

 

「まぁ管理世界全てのデータベースだからねぇ…あ、あれユーノ君じゃない?」

 

すずかが指差す方を見たら、空中に浮かんだ状態で本を調べているユーノを発見!!

 

…って何あのスピードは!片手でスクリーンを操作しながらもう片方で本を調べているんだけど、みるみるうちに本の山が減ってる…

 

「マルチタスクで処理してるのはわかるけど…ちょっとチート過ぎない?」

 

「おーい、ユーノ君~!陣中見舞いに来たよ~!」

 

わたしの言葉をスルーしてすずかが声を掛けると、ユーノはこっちに視線を向けた。

 

「…やぁ、アリサ、すずか!どうして此処へ?」

 

「陣中見舞いよ、あんたの様子を見にね。」

 

「あ、これ差し入れ。翠屋のシュークリームとコーヒー、なのはちゃんから。」

 

すずかが差し入れを渡すと、ユーノは嬉しそうに受け取った。

 

「ありがとう!ちょうど甘いものが欲しかったんだ。」

 

「…あとリナから伝言よ。あんまり無理するなって。」

 

「うん。なのはと姉さんにはあとで礼いっとくよ。」

 

「それで何か解った?夜天の書の事…」

すずかの質問にユーノの表情が少し険しくなる。

 

「うん、色々とね。…まず、夜天の書はそもそも主と共に次元を旅しながら、蒐集した魔法を記録していく魔導書だったんだけど…あ、そこ座って。」

 

あたしとすずかが用意された椅子に座るのを見て、ユーノは話を進める。

 

「その夜天の書が暴走を繰り返すようになったのは、邪な意思を持った主がプログラムを改変、それによりバグが発生したらしいんだ。」

 

「プログラムのバグ?!だったらそれを取り除けば…」

 

でもユーノは首を振って話を続ける。

 

「それが出来たらいいんだけど、バグが宿ってるのはある程度魔力を蒐集したら現れる、夜天の書の管制人格の中らしいんだ。」

管制人格ですって?!もしかしてそれって夜天の書を…

 

「そう…管制人格は夜天の書の全ての力が使えるんだ。その魔力ランクは最低でも推定SSS以上…しかももし守護騎士システムも管理されたら騎士たちまで敵に…もしそうなったらプレシアさんとリナが万全だとしてもつらいかも…」

 

そんな…何か対策はないの、対策は?!

 

「まずは管制人格が覚醒する前に、少しでもはやてに魔導師の勉強をしてもらって夜天の書の制御をしてもらう。それと同時に覚醒・暴走に備えて、みんなはデバイスの強化と自らの特訓だね。」

おぉ、武器のパワーアップと猛特訓はヒーロー物の醍醐味だよね!

 

「デバイスの強化はプレシアさんたちに任せれば問題ないとして…特訓は時間が限られてるからね。多分苦手分野は捨てて長所をより特化する形になると思うよ。」

 

ということは…わたしとすずかは炎と氷の力を強化するって事ね?…おもしろそうじゃない!

 

「あと無限書庫を調べてたらちょっと気になるものが見つかってね…さっきプレシアさんには資料送っといたんだけど…」

 

 

SIDE:リナ

 

「「「「「…古代ベルカ神話?!」」」」」」

 

あたしとアリシア、八神家のみんなはプレシアさんからでた単語におなじ声をあげた。

「プレシアさん、古代ベルカ神話って何なの?」

 

こっちの世界でいうところのギリシャ神話とか日本神話みたいな物なのかな?

 

「…古代ベルカ神話はその名の通り、古代ベルカを創ったとされる神々のお話をまとめたものよ。地球にも似たような話があるはずだけど…。」

 

「…で、それがどーしたんだ?古代ベルカ神話はあたしもある程度知ってるけど、夜天の書のことなんて…」

 

ヴィータの反論に苦笑いでプレシアさんが答える。

 

「あら?それならこのお話も知ってるかしら?」

 

そう言ってプレシアさんが差し出した一冊の本。手に取ったあたしは本のタイトルを見た瞬間…

 

「…………………!?」

 

思わずフリーズしてしまったわよ。だってそのタイトルは…

 

 

 

[金色の魔王と白輝の聖母]

 

 

 

「「「「「え~~~~っ!(×5)」」」」」

 

ど、どういうことなの?!あたしはページをめくり物語を読み始めた。

 

〈…今から時は遡り、この世界(古代ベルカ)が神々に治められていた頃、その頂点に立つ主神の元に2人の姉妹がいた。

 

姉の名はルシフェリア。黄金色の髪に金色の瞳の美しい女性だったが、気性が激しく気に入らない人を拷問しては楽しむため民からは恐れられていた。

 

妹の名はオリヴィアナ。白金色の髪に紅色と翡翠色のオッドアイという風貌の彼女は逆に民に優しく、慕われていた。

 

そんな2人の女神が父である主神の跡を継ぐ事となり、それぞれの側近同士の争いが生まれる。

 

そんな中、姉のルシフェリアは異世界から現れた魔族を倒すため軍を率いて遠征し、妹のオリヴィアナはその間ベルカの民を護り、国を繁栄させた。

 

しかしオリヴィアナの側近たちの陰謀によりルシフェリアはこの世界を追われる事となり、魔族達が開いた異次元の扉の先へと旅立ちたどり着いた先に新たな世界を築いた。

 

一方オリヴィアナは姉と生き別れた事を嘆くも、残された民たちを導き、古代ベルカ王朝の礎となった。

そして後の人々はルシフェリアを[金色の魔王]と、オリヴィアナを[白輝の聖母]と呼ぶようになり、畏怖と尊敬の対象となった…}

 

… ……… ………………

 

物語を読み終えたあたしは呆然と立ち尽くすだけだった。

 

…間違いない、この[金色の魔王]というのはあたしの中に眠っているアレだ。まさか異世界の神様だったなんて…

 

でもある神話の神様が他の話では悪魔や魔王、魔神として伝えられたりすることはある。それにあの圧倒的な力は…

 

それに[白輝の聖母]って確かゼルの蘇生呪文やなのはの星光収束斬[スターライト・ブレイカー]の力の根源よね?

 

「ゼルやなのはは神の力を制御できてるのは何故?」

「…推測だけど[白輝の聖母]は[金色の魔王]よりこの世界に近い存在だからだと思うわ。」

 

 

…な~る。確かにあたしも前世でルークと戦った、[もとの世界と紙一枚を隔てた世界]って所だと神滅斬[ラグナ・ブレード]も長時間使えたからなぁ。

 

…待って?!あたしはとんでもない事を思い出した。あたしが暴走したあのとき、あたしの身体を乗っ取ったあれって[金色の魔王]よね?!

 

以前の世界で暴走したときは冥王(フィブリゾ)のポカで助かったけど、今回はなのはが止めてくれた…でも考えてみたら、どうして止まったのかわかんない。

 

いってもなのはは普通の(?)人間よ?なにか他の力が働いたとしか…

 

「…リナさん、実はその件も含めてレイジングハートが話したい事があるらしいの。」

 

「レイジングハートが?」

 

…そうか、レイジングハートはあのとき何が起きたのか知ってるわけね。

 

「デバイスたちは3日後帰ってくる予定だから、その時当事者全員集めて相談しましょ?私もそれまでにもう少ししらべてみるわ。」

 

お願いしますプレシアさん。はやてたちもそれでいい?

 

「…了解や。わたしも夢の中であの子に会えたらいいんやけどな。」

 

「あの子?」

「夜天の書の管制人格や。たまに出てきてくれるんやけど、たまにやから…。」

 

夜天の書の管制人格?!…はやて、もし今度会えたら、今までの事全部話して力を借りれない?!

 

「?!…そやな、何でそれを思いつかんかったんやろ…わかった、今日から枕のしたにあの子の似顔絵敷いて寝るわ!」

 

…た、頼んだわよ、はやて。…まぁ昔から見たい夢の絵を枕の下に敷いて寝たら見れるとは言うけど…どうなんだろ?

 

「それじゃ3日後に[時の庭園]で集まりましょう。あそこだったら魔族たちにも見つけられないわ。」

 

うん、賛成。…レイジングハート、あんたは何を知ってるの?3日後、全部しゃべってもらうから覚悟しときなさい!

 




はい、楽しんでいただけたでしょうか?

次回はいよいよデバイスたちの秘密に迫ります。

次回「四十二、金色と 挫けぬ心と 護る者」

それでは次も見てくんないと…

「久しぶりですね、フェイト…」


「…嘘…どうしてあなたが?!」

(BY 〇二〇&フェイト)

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