あくまで独自設定の娯楽小説と思って読んでいただけるとありがたいです。
NO SIDE
検査のために入院中だったはやてを襲った覇王軍。それを迎え撃ったアメリアたちヴォルケンリッターだったが、それは罠だった。
彼女たちは覇王がかけた呪い[ギアス]に意思を支配され、助けに来たリナたちに襲いかかってきた…
SIDE:リナ
やれやれ、まさかアメリアと一騎討ちなんて予想してなかったわよ?!あの子のパワーは凄まじいから注意しないと…って来た!
「いくわよリナ…平和主義者クラーッシュ!!」
「いきなり奥義?!えぇ~い、これならどう?」
あたしはナイトメアハートをかざすと特性の異なる魔力壁を重ねて発動する。さらに最後のシールドにはトラップを仕掛ける。
「無駄よ、わたしの正義にそんなものは通じないわ!どりゃ~っ!」
アメリアの放ったパンチはあたしのバリアを軽々と破っていく。…さすがフィルさん譲りってとこか?でも?!
ガキン!
「な、これは!」
あたしの仕掛けたバインドシールドがアメリアの右手と左足を拘束した。…よし、作戦成功!
あたしは距離を取ると呪文の詠唱を始める。
『…空と大地を渡りし存在(もの)よ 優しき流れたゆとう水よ 我が手に集いて力となれ!』
掲げたナイトメアハートに魔力が宿る…今だ!
『いっけ~!霊氷陣[デモナ・クリスタル]!!』
放たれた魔力は氷塊となってアメリアを襲う。これであわよくば動きを封じ込めたいんだけど…。
「ぬお~っ、こんなもので~っ!」
…やっぱり。アメリアはバインドを無理やり引きちぎると氷塊を鉄拳一発で粉砕!…なんかパワーアップしてない、アメリア?
「ふっ、覇王様に戴いたこの力の前にはあんなバインド全く無意味だわ!」
「…アメリア…あんた…」
あたしは哀しかった。あの正義バカのアメリアがこんなに簡単に覇王の言いなりになるなんて…
「こらアメリア!はやてはどうしたのよ、はやては?!」
「えっ……は、はやてさんは…そうよ、シャマルさんが見てくれてるから大丈夫…」
「んな訳あるか~っ?!この様子だとシャマルも覇王の力に取り込まれてるのが目に見えてるわ。あんた、はやてが心配じゃないの?!それとも覇王様がそんなに大事?!」
あたしの言葉にアメリアは動揺を隠せない。
「そ、そんな…あれ?!はやてさん…覇王様…わかんない…わたしは…うわぁ~っ?!」
アメリアはパニックに陥って頭を抱えてる。…どうやら本来のアメリアと覇王に植え付けられた偽りのアメリアが葛藤を起こしてるみたい。もしかしてこれなら!
「があ~っ!わたしは…わたしは覇王様の…」
「…ねぇアメリア、その程度なの?あなたの『正義の心』って?」
「…えっ…?!」
あたしの問いかけにアメリアは眉をひそめ、こちらを振り向く。
「あなたは父上であるフィリオネルさんから正義の魂を受け継いだんじゃなかったの?…あ、それともそんなのは単なる見せかけのポーズだったとか?!…もしそうだとしたらフィルさん泣いちゃうわよ…」
「…………………」
アメリアは黙ったまま応えない。瞳を閉じたまま体を震わせ、立ち尽くしている。
「…まぁ後はあんた自信の問題よ。偽りの感情に負けて友達や家族を裏切るか、それとも信念を貫き徹し優しき主を護るのか…選ぶのはあんたよ、アメリア!」
あたしの叫びが聞こえているのかいないのか、アメリアはうつ向いたまま何か呟き続けてる。
「わたしは…わたしは…わたしは………わたしは~っ!!」
アメリアが眼を見開いて叫んだと同時に、アメリアの全身の蒼い光は白い閃光に包み込まれる。
「…マジカルプリンセス…ホーリーアーップ!!!」
閃光が消え去ったあとアメリアの姿は変化していた。
髪の毛は腰まで届く金髪に羽飾り。騎士服は澄んだ空のような青を基調としたものに赤いマント。そしてその手には一振りの短剣…
…これってまさか…某赤ず〇ん少女の変身形態?!
「アメリア、大丈夫?!」
「…うん、ありがとうリナ。あなたの言葉、確かに届いたよ!…わたしは八神アメリア、はやてさんはわたしが助ける!!」
アメリアは短剣を構えてポーズを決める。うん、完全に復活ね。
「それよりアメリア、あんたはやてを助けに行ったんじゃなかったの?はやてはどうしたのよ?!」
「それが…わたしあの状態になったあと、記憶があやふやで…ごめん。」
やっぱり…じゃ大至急探さないと、ってどこにいったら…ん?
その時何処かで物凄く大きな魔力がはじけた。あたしとアメリアはお互い頷くと、魔力を感じた方向へ飛び出した。
『『翔封界[レイ・ウイング]!!』』
待っててはやて、必ず助けてあげるから!!
時を同じくして…
SIDE:なのは
はぁ…はやてちゃんを助けにやって来たのに、まさかシグナムさんたちが操られてしまうなんて…
可能性はある、とは思ってたけどいざそうなると複雑な心境なの。
「なのは嬢、貴女とは一度闘ってみたいと思っていた。存分に撃ち合うとしようか!」
「シグナムさんどうしちゃったんですか?!今それどころじゃ…」
「そちらが来ないならこちらから行くぞ…紅蓮撃!」
シグナムさんはカートリッジを発動させレヴァンティンに炎を纏わせるとわたしに斬りかかってきた。
「くっ…。」
わたしもカートリッジをロード、エクセリオンシールドを張って防御する。
「…成る程、これは強固なシールドだな。これほどのものは古代ベルカでもなかなかお目にかかれん。」
「…それはどうも。シグナムさんの攻撃もさすがです。でも…」
わたしは話しながら誘導弾を展開するとシグナムさん向かって切り込んでいく。
「アクセルシューター!!」
わたしの放ったシューターはきれいな弧を描いてシグナムさんを襲う。
「…はっ!だっ!…だぁっ?!」
シグナムさんはほとんどは回避したものの、避けきれなかった数発を切り払う。あれ、これはもしかして…わたしは新たにシューターを放ちながら、レイジングハートにある指示をする。
「レイジングハート、…………お願い。」
「わかりましたなのは。発動のタイミングは貴女に…来ました!」
「紫電…一閃!」
居合いの構えから放たれるシグナムさんの必殺技。でも…
(…やっぱりいつもより切れがないし、さっきの回避も鈍かったの。操られてる影響かな?)
わたしはシールドで防御すると足元に魔方陣を展開して魔力の充填を開始する。と同時に…
『レストリストロック!』
レイジングハートに頼んで設置しておいた拘束魔法を発動、シグナムさんの両手両足を空中に縛りつけた。
「こ、これは?!くっ、外せん?!」
この呪文はわたしが初めて自分で構築した呪文。だから簡単には解けないよ。
「今です、なのは!」
「うん、いくよレイジングハート!ディバイーーン…バスター!」
カートリッジを使用してチャージ充分なディバインバスターは砲撃というよりはもはや桜色の壁となってシグナムに直撃する!…かに見えたのだが…。
ヴォン!
「えっ、消えた?!」
バスターが当たる直前、シグナムさんはどこかに転送されたらしい。辺りを見回したけど気配を感じない。一体どこに…
『なのは、聞こえるかい?』
アルフ?どうしたの、何か…
『いままでザフィーラと闘ってたんだけど、突然姿が消えたんだ!反応もロストしてるからどこへいったのかさっぱり…。』
ザフィーラさんも?!…シャマルさんも行方がしれないし、あとの2人も…
「なのは、無事だった?…シグナムはどうしたの?!」
あっ、リナちゃん!それに後ろにいるのはもしかして…アメリアちゃん…なの?!
「はい!ご迷惑お掛けしました!」
はやや…髪の毛は金髪だし、何だか大人っぽいの。
「それはそうとリナちゃん、シグナムさんが突然消えちゃったの!あとザフィーラさんも!」
「何ですって!そういえばヴィータも姿が見えないわね…アメリア、何か感じる?」
「ううん、何にも…やっぱりさっき感じた魔力の波動の影響かも…急ぎましょう、リナ、なのはさん!!」
わたしとリナちゃんは頷くと、アメリアちゃんの先導で魔力反応のあったらしい方へ飛び始めた。
SIDE:はやて
ん、ん~…あれ?わたし気ぃ失っとたんか?!ちょっと待ってや、ええ~っと…確か覇王の軍勢に襲われて、シャマルが倒した後なんやら蒼い光に包まれて…あかん、そこから記憶がないわ。
「ようやく目を覚ましたか、夜天の主・八神はやてよ…。」
目を覚ましたわたしの前に現れたのは、中年の渋い男性。
「あんた…覇王グラウシェラー!」
「ほほぅ、私を知ってるなら話が早い。いかにも、私が覇王グラウシェラーだ。」
「その覇王さんが一体何の用や!夜天の書は渡さ…えっ?!」
その時になって私は手元にあるはずの夜天の書が無いことに気がついた。
「…お探しの物はこれだろう、八神はやてよ?」
グラウシェラーが持っていたのは夜天の書!しまった、気を失っとる間に…。
「さぁ、余興の始まりだ。…これを見るがいい。」
覇王の声と共に空に浮かび上がったのは…
「…シグナム、ヴィータ、シャマル、それにザフィーラ?!」
それはわたしの大事な家族たち。でも…その瞳は虚ろに蒼い光を放ち、空中で直立不動に立ち尽くしてる。その姿は人形そのものや。
「あんたあの子たちになにをしたんや?!早ぅ元に戻して!」
「心配せずとも戻してやる、[元の形]にな…。」
グラウシェラーが呟くと同時に4人の頭上に蒼い雷光が…あかん、わたしが言ってるのはそういう意味や無い!!
「夜天の騎士たちよ、還るべき処へ還るがいい!」
「や、止め…いやぁ~~っ?!」
わたしの叫びも虚しく、蒼い光は4人の身体を貫き、…魔力の結晶体へと変化させた。
「あ…あ……あぁ………っ…」
「さぁ、騎士たちの力を得て、覚醒せよ夜天の守護システム、ナハトヴァール。お前の主に最後の時まで安らかなる眠りを…」
グラウシェラーの言葉に反応した夜天の書は騎士たちのコアを吸収、その瞬間わたしは…意識を失った。
NO SIDE
騎士たちを吸収した夜天の書は、まるで神話に出てくるヒドラのような姿、ナハトヴァールに変貌していた。
ナハトヴァールははやてに近づくと光を放ち、はやてを吸収した。
「やっと目覚めたようだなナハトヴァールよ…しかしまだあの方の覚醒には至らぬか…」
グラウシェラーはナハトヴァールの姿を見てそう呟いた。…どうやら思っていた通りにはいかなかったらしい。
「グラウシェラー様!」
声のした方にグラウシェラーが振り向くと、そこには多数のデーモンを引き連れた覇王神官グラーヴの姿があった。
「来たかグラーヴよ。早速だがお前には役にたってもらうぞ。」
「はっ、何なりと御命令を…」
しかし、グラーヴの言葉はそこで途切れた。グラーヴの胸をグラウシェラーの拳が貫いていたからだ。
「グ、グラウシェラー様…これは…一体…」
口から吐血しながらもグラーヴはグラウシェラーを問い質す。しかし覇王の答は…
「今まで御苦労であった覇王神官グラーヴよ。お前の最後の仕事、それは夜天の書の贄となり真の覚醒を促す事…。」
「そ、そんな…うわぁ~?!」
剰りにも非情なグラウシェラーの宣告にグラーヴは苦悶の表情と共に塵となって消え去り、拳の中には蒼いコアだけが残った。
「…たかが道具の存在のお前が最後に大きな貢献ができたのだ、誇りに思うがよい。…さぁ、お前らも無に還り、主復活の糧となるのだ!」
グラウシェラーが手を振りかざすと、辺りのデーモン達も全て魔力に変換されグラーヴのコアと共に夜天の書に吸収されていく。
次の瞬間、夜天の書から紅き光が放たれ1人の女性が姿を現した。
銀色のロングヘアーに紅い瞳はかの夜天の管制騎・通称クロハネと瓜二つ。しかしその顔や手足には禍々しい紋様が浮かび上がっている。
「目覚められましたか、ナハトヴァール、いや…魔王管制騎シャブラニグドゥ・ナハトよ!」
「…ほう、誰かと思えば…久しいな、覇王グラウシェラー。」
魔王の返事にグラウシェラーはほくそえむ。
(どうやらうまくいったようだな。あとは…ん?この魔力反応は…来るか、[魔を滅する者たち]よ。しかしもう手遅れだ、もはやこの世界は…)
「ふっふっふっ…は~っはっはっはっはっ…!!」
海鳴の空に邪悪な覇王の高笑いが鳴り響いた…。
…遂に覚醒した魔王管制騎。果たしてリナたちははやてを救う事ができるのか、そして覇王の真の思惑は?
次回「四十九、それぞれの 心に潜む 闇の意味」
意味深なタイトルですが多分気にしなくていーです。(笑)
それでは次回も見てくんないと…
「闇に…沈め~っ!!」
(BY魔王管制騎・シャブラニグドゥ・ナハト)