NO SIDE
シャブラニグドゥ・ナハトによって夜天の書に吸収され、夢の世界にたどり着いたリナ。そこで再会したのは、前世での旅の相方にして生涯のパートナーだったガウリイ・ガブリエフだった…
SIDE:リナ
…まさかあたしの心の闇がガウリイだったなんて…
「どうしたリナ、まだ寝ぼけてんのか?」
そう聞いてくるガウリイはあたしの知っているガウリイそのもの。だけど…
「はいはい…で、あんたは何者?幽霊、それとも…魔族かなんか?!」
「おいおい、何いってんだリナ、俺は…」
何か言おうとするガウリイ(?)をあたしは指を横に振り制止する。
「…残念だけど、もうこの世界にガウリイ・ガブリエフは存在しないの。だってあいつはあたしよりも先に病気で亡くなったんだから…」
あたしは言葉を止め、ガウリイを見つめる。…金色の長髪、澄んだ青い瞳…見れば見るほど本人にしか思えないけど…でも違う、それだけは解る!
「…だからこれは夢。そうでしょ、ガウリイ?!」
あたしの問いかけにガウリイは困った表情を見せる。
「……、やっぱりリナだな、甘い夢より現実を選ぶところは。…そうさ、ここは夜天の書の中、そして俺はおまえの記憶から産み出された残留思念みたいなもんだ。」
やっぱり…目的はあたしを夜天の書の一部に取り込むためね。
「ねぇガウリイ、ここから出るためにはどうしたらいいか解る?!…わたしには待っている友達がいるんだ…」
でもガウリイは首を横に振る。
「残念だが、リナ1人じゃ出れないんだ。ここは夜天の書の最深部、ここを破るには内と外、両側から結界破壊しないとダメなんだ。」
そんな?!それじゃなのはたちが…
「…ちょっと待ってくれるかリナ、ひとつだけ試したい事があるんだ。…〈声〉があいつに届けばあるいは…」
「…ガウリイ?!」
ガウリイはそういうと目を閉じ、精神を集中し始めた。
いったいガウリイは何を…あたしはただ見守る事しか出来なかった…。
NO SIDE
その頃、無限書庫で夜天の書の調査を続けていたユーノの元に、『リナ消失』の報が届けられた…。
SIDE:ユーノ
「何だって?!姉さん…リナが消失しただって…どういう事だよクロノ?!」
僕はモニターのクロノに怒鳴った。
『…どうやら夜天の書に吸収・封印されたらしい。現在なのはが戦闘を続行しているが、状況は芳しくない…僕もこれから現地へ向かうが君もこっちへ来てくれ、頼む!!』
クロノの依頼に僕は即決した。
「解った、直ぐにそちらに向かうよ!!」
『あぁ、それでは現地で!』
クロノとの通信が切れると僕は机の引き出しからゴルンノヴァとガーディアンを取りだし、ゴルンノヴァに話しかける。
「頼むよゴルンノヴァ、リナを助けるため力を貸して!!」
『了解しました、我が主。』
僕は掌にのるガーディアンを見つめる。…あれから色々調べてみたけど結局解らなかったなぁ…でも今はそれどころじゃ…
『おい、聞こえるか?!』
…えっ、何今の声?!…ゴルンノヴァ、君かい?
『いえ、私ではありません。』
じゃどこから…ってあれ、ガーディアンが青い光を…まさか起動したのか?!
『おい、聞こえてるなら応えてくれ!…お前はリナを助けたいのか?!』…?! どうしてリナの事を…
『そんなことはどうでもいい!お前はリナをどう思ってるんだ?!』
………
「リナは僕の大事な人だ。恩人であり、義理の姉でありそして…僕の想い人だ!」
いなくなって、そしてこいつ(ガーディアン)に言われて初めて気がついた。…僕はリナの事が好きだったんだ…LikeではなくLoveの方向で。
『…それだけ聞ければ充分だ。俺がお前をリナの元へと連れてってやる!…ゴルンノヴァをセットアップして柄の所に俺を取り付けろ、早く!』
僕は頷くとゴルンノヴァをセットアップして、ガーディアンを柄に取り付ける。するとそれはぴったりとはまり…
「こ、これは…頭の中になにか…あ…、そういう事だったのか?!」
ガーディアンから送り込まれた記憶、それは僕も知らなかった自分の出生の秘密。そして…
「…そうか、僕がリナに惹かれたのは運命だったんだね、ガーディアン…」
『まぁ、そう言うことだな。…詳しいことはリナを助けてからだ。…いくぞユーノ!!』
ガーディアンから眩い光が放たれ、それと同時に僕の姿は消え去っていた…
一方海鳴に目を戻すと、なのはとナハト以外の戦いも熾烈さを増していた。
SIDE:フェイト
「サンダーレイジ!!」
「ほ~っほっほっほっほっほっ、冥王降魔陣[ラグナ・ブラスト]!!」
…うん、やり過ぎじゃないかな、母さんとナーガさん…
さっきからシエラが幾度となくデーモンを召喚するんだけど、その端から薙ぎ倒してる…
「…えぇ~い、あんたら本当に人間なの?!本当は魔族の血を継いでるとかそんなんじゃないでしょうね?!」
あまりといえばあまりの状況に泣き言を放つシエラ。
「…まぁ彼女がぼやきたくなるのも解りますけどね…プレシアはともかく、何なんですかあのナーガさんって…」
「えっ、ナーガさんは元々異世界の魔導師で今は母さんのユニゾンデバイスだよリニス?」
お互い撃ち合いながら会話するわたしとリニス。アリシアやアリサ、すずかの4人を相手しながら向こうの様子を見る余裕…やっぱりリニスはすごいね。
「…でも今日は必ず勝つ!勝ってリニス、貴女を取り戻す!!…バルディッシュ、ブレードモード!」
『Yes、Sir!』
わたしの命令でバルディッシュは片手持ちの光剣に変化する。
そのままわたしは前方にランサーを展開しリニスに向かって放つ。
「それは効きませんよフェイト!」
リニスは体を捌いて回避するけどそれは予想済み!…アリシア、アルフ!
「フォーチュンドロップ[スキル=スイーフィード]…破砕鞭[バルス・ロッド]!」
「バリアブレイク!!」
アリシアの光の鞭とアルフのパンチが同時に襲いかかり、リニスのシールドに亀裂が入る。…今がチャンス!!
わたしは魔力を充填しつつリニスに接近。そして…
「サンダー…スマッシャー!!」
近接用のスマッシャーを撃ち込んでバリアを破壊、ダメージを与えることに成功した!
「本当に強くなりましたね、フェイト…それに貴女の周りにはプレシアやアリシア、アルフ…それに友達も出来たみたいだし、もう私の居場所なんて…「違う!!」…フェイト?!」
それは違うよリニス。確かに今のわたしは以前とは比べられないほど幸せだと思う。だからこそ、その幸せの中にリニス、貴女がいてほしいんだ!
「そうだよ、あたしが甦って、ママも昔の優しいママに戻って…あとはリニスだけなんだよ!」
「…あの時は本当に申し訳無い事をしたと思ってるわ。でもまだ間に合う、家族としての時間を取り戻すのよ!!」
…アリシアお姉ちゃん、母さんも想いは同じだよ。お願いリニス、戻って来て!
「フェイト、アリシア、プレシア、アルフ…私だって戻りたい、昔みたいにあなたたちの側にいたい…」
涙を流しながらリニスは想いを伝える。
『…所詮捨て猫風情だったか…これまでね。』
ザシュッ!
…えっ?!
リニスの背後に現れた覇王将軍シエラが手に持った剣でリニスの胸を…貫いた?!
「あ…あぁ…フェイ…ト…」
口から血を吐きながらもわたしに手を差し伸べようとするリニス。でもシエラの剣に魔力を吸いとられたリニスは山猫の姿に戻り、地面へと落下していく…!!
「「「「リニス!!」」」」
いち早くアルフが追い付いてなんとか受け止めたけど…
「駄目だ、呼吸が止まってる…どうしたらいいんだよフェイト…」
狼狽えるアルフを見てシエラが不敵な笑みを浮かべた。
『使い魔ごときが私の力になれるんだからありがたく思いなさい!!…うおぉ~っ!』
シエラの体を蒼い光が包み込み頭からは角が、背中からは黒い翼が生えてきた。魔剣・ドゥールゴーファもより禍々しい外見に変化している。
『あの子の力を吸収して私は更なる力を得たわ。もはやお前らが束になってかかってこようが勝ち目は…』
「…ふざけるな…」
『はあっ?!今なんと…』
「ふざけるなと言ったんだこの外道!リニスの命はお前のおもちゃじゃない、それを踏みにじったお前をわたしたちは絶対に許さない!!」
わたしはバルディッシュを天高く掲げ、新たな形態を命ずる。
「バルディッシュ、ザンバーフォーム!!」
「Yes、Sir!」
バルディッシュは巨大な両手持ちの光剣に変形した。さらに…
「あんただけは絶対に許さない!…フォーチュンドロップ[スキル=スイーフィード]!」
お姉ちゃんがデバイスを双銃に変形、チャージを始めた。あの赤い魔力光は…
『ふん、いくら頑張っても無駄よ!!所詮あなたたちではこの私には…』
シエラは依然として強気。でも…
「あら、リニスの力を吸収したぐらいで勝ったつもりなのかしら?…嘗めるんじゃないわ、下衆が!…ナーガさん、貴女の力を貸してもらうわよ!」
「ふっ、わかったわプレシア。…いくわよ!!」
ナーガさんが体を小さくして母さんに近づくと2人の身体が紫色の光を放つ。
『『ナーガ・サーペンツ、ユニゾン・イン!!』』
ナーガさんとユニゾンした母さんは髪の毛と瞳の色は紫に、更にバリアジャケットも変化している。
ボディラインを強調した大人の魔法少女…って感じかな?
ナーガさんのバリアジャケットは嫌だけど、あれだったらいいかも知れない。
それはともかく、ユニゾンした母さんの周りには紫色の魔力光が弾けている。多分触れるだけで大ダメージ確実だ。
『な、なによそれは!あんたたちも合体できるなんて聞いてないわよ?!』
シエラが余りの事に狼狽えて目が泳いでる。
「さぁいくわよフェイト、アリシア!このふざけた馬鹿女を滅殺するわよ!!」
「はい、母さん!!」「りょ~かい、ママ!!」
さぁ、もうここからはテスタロッサ一家のターン、覚悟をするなら今の内だよ!!
その頃、夜天の書の中のリナは…?
SIDE:リナ
…さっきからガウリイは目をつぶったまま精神統一をしている。「アイツに声が届けば…」って言ってたけど、アイツって誰なんだろ?!
「………よし!…おい、リナ!」
よ~やく話が終わったみたいね。
「俺が合図を出したら、目の前の空間を神滅斬[ラグナ・ブレード]でぶったぎれ!同時にアイツが外から同じように斬りつければこの世界から出れるはずだ!」
「ねぇガウリイ、アイツって…」
「すぐに解る!はやく準備しろっ!」
なによもう…あたしは腑に落ちないながらも詠唱を始めた。
『…悪夢の王の一片よ 空の戒め解き放たれし 凍れる黒き虚ろの刃よ 我が力我が身となりて 共に滅びの道を歩まん…神々の魂すらも打ち砕き!』
詠唱が進むと共にあたしの手に虚無の刃が具現化し、そして…
「2人とも、今だ!!」
『神滅斬[ラグナ・ブレード]!!』
『吼えろ、ゴルンノヴァ!!』
えっ、今の声ってまさか?!
虚無の刃と烈光の刃が重なりあい、ひび割れた空間から現れたのはバリアジャケットに身を包んだユーノだった。
「リナ、大丈夫?怪我はない?!」
「あたしは大丈夫よ。それよりユーノ、どうしてここに…。」
尋ねるあたしに応えたのはガウリイだった。
「俺が呼んだんだ。…こいつは俺の転生体だからな。」
あ、なるほどね。そうか、ユーノはガウリイの転生体なの…か…って…
「え~~~~~っ?!う、嘘でしょ、そんなことあるわけ…」
「本当だよリナ。ガーディアン…あのデバイスの人格はガウリイさんを元に作られてる。そして僕の前世は君のパートナー、ガウリイだって…教えてくれたんだ。」
そ、そんな事って…あたしは予想外の展開に頭が混乱してしまっていた。
「リナ、聞いてほしい事があるんだ。いい?」
「ひゃ、ひゃい?!」
…ダメだ、動揺がおさえられないよ…
「リナ…僕は君が好きだ。前世は関係ない、今の君…逢魔リナの事を大好きなんだ!!」
…はい、とうとうやってしまいました。(笑)
でも最初から決めてたんですよ、このカップリング…
次回、「五十一、いざ行かん 激闘が待つ 海鳴へ」
それでは次回も…
「…………(放心)」
「お~い…こりゃ次回まで無理かな?」
(BY呆けたリナ&作者)