では楽しんでいただけると幸いです。
はいすくうる編プロローグ~なのはの追憶~
SIDE:なのは
『…なんだ、ないてるのか?どうしたんだ…そうか、おまえのとーちゃんが…よし、おれがあそんでやるよっ…』
…あれ、これって…10年前、わたしがリナちゃんに出会う少し前…泣いてたわたしを励ましてくれた男の子。
『おいだいじょうぶか…わ、すりむいてちぃでてる?!ちょっとまってろ…これでだいじょうぶだろ?」
転んで膝を擦りむいたわたしを、自分が着けてたバンダナで手当てしてくれたぶっきらぼうだけど、優しい子。
「…あしたもあそんでくれる?」
『あぁ、あしたもこのこうえんで、やくそくだ!』
「うんっ、やくそくっ!」
…だけどあの男の子は…
「はっ?!…なんだ、やっぱり夢かぁ…」
わたしが目を覚ましたのは海鳴の自分の部屋のベッドの上だった。
「…久し振りに見たなぁあの男の子の夢…。」
わたしは身体を起こすとベッドから立ち上がり窓のカーテンを思いっきり開けて身体を伸ばす。
…あの男の子は、結局その日もその次の日も来なかった。少し希望を持った分、裏切られた感が強くなったわたしはひねくれ、その後リナちゃんにスリッパでしばかれたりもした。(2話参照)
…まぁ、そのお陰(?)でリナちゃんとは親友になれたんだけど…
わたしは苦笑いしながら机の引き出しを開ける。
その中に入ってたのはわたしの3つの宝物。
さっきも話したリナちゃんに叩かれたスリッパ、フェイトちゃんと交換したリボン、そして…あの男の子のバンダナ。
「…あの子、今頃どこにいるのかな…」
バンダナを手に取りしばらく呆けていると…
「なのは、もう起きてるの?リナちゃんが迎えに来てるわよ?」
下からお母さんの声。時計を見ると…えっ、もうこんな時間?!
「…すぐ着替えるから待ってて貰ってっ?!」
わたしは慌てて着替えを済ますと、支度しておいた旅行カバンを持って階段をかけ降りた。
「ごめんリナちゃん寝過ごしたっ?!」
食堂に行くとリナちゃんがお母さんの出した紅茶を飲んでた。
「おはよ~なのは。…珍しいわね、あんたが寝過ごすなんて。」
「ほんとごめん!さ、行こっ!…お母さん行ってきま~す!」
「はい、行ってらっしゃい。…楽しんでくるのよ?リナちゃんもなのはの事、頼むわね。」
「うん!」
「まかせといて!」
わたしとリナちゃんは返事すると待ち合わせ場所のアリサちゃんの家に向かう。
中学の卒業式からはや3日、わたしたちは卒業記念に2泊3日の旅行に行く事になった。
行き先は、はやてちゃんやヴォルケンリッターのみんなの研修先の近所の療養施設。
「温泉とか色々あるんでしょ、楽しみよね~…あれ、どしたのなのは、なにか考え事?」
リナちゃんに呼ばれてわたしははっとする。
「…ううん、なんでもないよなんでも?!」
いけないいけない、無意識のうちにさっきの夢のこと考えてた…ってやだ、バンダナ持ってきちゃったよ…!
「あれ、なのは、その手に持ってるのはなに?」
「な、なんでもないよ!」
わたしは慌ててバンダナをポケットに隠す。
「?…変ななのは。…あ、アリサたちもう集まってる。」
リナちゃんのいう通り、アリサちゃん、すずかちゃん、フェイトちゃんが集まってる。
「あ、リナとなのはだ…お~い!」
アリサちゃんの声に駆け寄るわたしとリナちゃん。
「おはようみんな、待たせちゃってごめんね!」
「どーせリナが寝坊したんでしょ?」
「…おあいにくさま、寝坊したのはなのはよ。」
リナちゃんの言葉に驚く3人。
「珍しいね、なのはが寝坊するなんて…」
「それよりわたしはリナが寝坊しなかった事にビックリだわ…」
「何気にきついわね、アリサ…」
アリサちゃんのツッコミに凹むリナちゃん。
「さ、さぁそれじゃ行こっか、はやてちゃんたちは現地で待ってるから。」
「そうだねすずかちゃん。…それにしても、なんで今になって…?」
わたしはポケットに入れたバンダナを取り出した。裏返すとそこには平仮名で…「りょうが」…あの子の名前なのかな…?
「ほら~、早く早く!置いてくわよ!」
「あ、待ってよみんな~っ?!」
わたしはバンダナをもう一度ポケットにしまうと、アリサちゃんの庭に開いた転送ゲートに向かった。
…だけど、このあとわたしたちはある事件に関わる事となる。
そして、その事件の中でわたしは1人の少女を救い、更にある少年と運命の再会を果たす事になるのだが…
その時のわたしには知るよしも無かった…
今、新たな刻(とき)が動き出す…!
リリすれではリナの転生により、時間軸がずれる等のパラドックスが発生しています。何卒ご了承ください。
さて、次回は言うまでもなく空白期のメインイベント(?)の1つであるあの事件が起こります。
なのはだけでなく、リナやフェイトにも何かが?
次回、「はいすくうる〈1〉 運命の出逢い、運命の再会」
あ、申し遅れましたが、はいすくうる編はナンバリングを別枠にします。
従来のナンバリングはSts編から再開します。
それでは次回も…
「リリカル、マジカル、頑張り…えっ、もしかして…りょ…」
「こ、ここは…何処だ?」
(BY なのは&あの人)