NO SIDE
陽が天高く昇る頃、なのはと仲間達は秋羅が指定した海岸へと向かっていた。そして一夏たちもまた…
SIDE:一夏
「…ここだな、指定場所は…」
時間を確認するとまだ余裕がある。
「なのは達はまだのようですね。」
まぁまだ時間前だからな。でもなんなんだ、この澱んだ空気は…?
「恐らくあやつが近づいてる…あの変態がな。」
王様の言葉で俺たちに緊張感が走る。…でも俺たちは絶対に負けねぇ!必ずレヴィやアリサさん達を取り返してやる!
(それに俺は決めたんだ…あいつに伝えるって、ほんとの気持ちを。)
「お待たせ~!」
「これで全員集合だね。」
なのはさん、フェイトさん、ユーノさん!…それにはやてさんとリインにシグナム師匠、ヴィータ師匠、ザフィーラ、アメリアとゼルガディスさんにアインスさんまで!
「あたしたちもいるよ~!」
あっちから来たのは…アリシアにアルフとプレシアさん!…それに…あれ、貴女はまさか?
「はじめまして、私の名前はリニス。元はプレシアの、そして今はアリシアの使い魔です。」
やっぱり!…リニスさんの事は俺たちの世界のプレシアさんやフェイトさんから聞いてたけど、こっちの世界では死んでないんだな。
「向こうのプレシアやフェイトが見たら狂喜乱舞しそうですね。」あぁ…でもフェイトさんの師匠であるリニスさんの力は頼りになるぜ!
…で、〈アレ〉はなんなんだ?
「ほーほっほっほっほっ!わたしの名前は白蛇のナーガ!…リナの永遠のライバルにしてテスタロッサ家のユニゾンデバイスよ、覚えておくといいわ!」
…!
(…この人か…リナが言ってた『自称ライバルを名乗る金魚の糞』って…)
黒の棘つきビキニアーマーとマントを身に纏い、首にはドクロのネックレス…何処のラスボスだよ?
「…あれでも前世じゃ一応わたしの姉さんだから…うん。」
アメリアの姉ちゃん?…確かアメリアって前世じゃ王女様だったよな?って事は…げっ。
「でもあれって死んだ母さんの形見だから…あんまりきつく言えないのよ。」
母さんの形見?!…アメリア、お前の母さんって事は王妃様だよな?
「…いかん、考えるのはよそう。」
「多分その方が賢明であろうよ。それより…」
王様が辺りを見渡して言葉を続ける。
「やはりリナは間に合わなんだか…奴を欠くのは痛いぞ?」
そう、この場に逢魔リナはいない。まだ回復してないのか…。
「うん…ここにくる前に病院にも寄ってきたんだけど…まだ目を覚ましてないって。」
なのはさんが心配そうに話す。
『…ひゃあはっはっはっはぁ!雑魚が雁首並べてよく来たなぁ一夏よぉ!』
…!今の声は…!
「どこにいやがる秋羅!正々堂々出てきやがれ!」
『まぁ慌てるなよ一夏。』
秋羅の声と共に空中に次元の穴が!
『俺はこの奥で待ってるぜ、いとしのレヴィちゃんと一緒にな?!ま、その前に…こいつらの相手でもしてもらおうか?』
秋羅の声と共に時空間が歪み大量に現れたのは…
「な、なんですかこれは~!」
それはよくゲームとかに出てくる下級の悪魔みたいな化け物だった。
「レッサーデーモンにブラスデーモン…なんでアイツが使役できるの?」
『ひゃあはっはっはっはぁ!これがあの方から戴いた俺様の力の一部だぁ!どうだ、恐れ入ったか?!』
………
「…てめぇバカか?」
「あん?」
俺はあきれ果てるしかなかった。
「…てめぇの言うあの方ってのが誰かは知らねぇがな、そんな貰い物の力使って喜んでる時点でてめぇに怖さなんてねえよ!」
『………。そ、それはここまで来てから言うんだな!…やれ、てめぇら!』
秋羅の命令に従って魔物たちが襲い掛かってくる。1匹1匹は大したことなさそうだけど、ここで削られるわけには…
「ここは我らに任せておけ一夏!」
「あなたたちは敵の本拠へ!」
シグナム師匠、プレシアさん!
「おめーの露払いはあたしたちがしてやる!」
「レヴィたちの事は任せたよ!」
ヴィータ師匠にアリシアも…はいっ!
「白雪、ユニゾンだ!…リヒトもいけるか?」
「うん!がんばる!」
俺は右手に白雪、左手にリヒトの手を取りダブルユニゾン!…淡い茶色い髪に翠色のアッシュ、瞳は銀と翠のオッドアイか…派手だな、おい。
『ご主人たま、変わったところはない?』
今の声はリヒトか?いや、特に何も…いや、これは?!
(あ~、秋羅の馬鹿ヤロー…ぶっ飛ばしてぇ~!)
な、なんだ今の衝動は…?
『…今のはあたしのオリジナルの影響。あたしとユニゾンすると見境なしに敵をぶっ飛ばしたくなるんだ。』
…マジか?…でもあの変態相手なら問題ないぜ!
「リイン、わたしらもユニゾンや!」
「はいですぅ!」
「ゼルガディスさん、わたしたちも!」
「承知した…ユニゾン・イン!」
はやてさんとアメリアもユニゾン…ゼルガディスさんってユニゾンデバイスだったのか?
「マジカル・ホーリー・プリンセス・アメリア、ここに降臨です!」
おぉ、金髪のロングヘアーにまるで勇者みたいなバリアジャケット…カッコいいじゃねーか!
「へへっ、似合うでしょ♪」
はやてさんは安定のリインとユニゾンか…ん?
「ナーガ、貴女はフェイトとユニゾンよ…いいわね?」
「ほーほっほっほっほっ!よろしくてよ…ユニゾン・イン!」
フェイトさんとナーガも?…何時ものよりフリフリした衣装だけど、可愛らしい。
バルディッシュも形が違う。…斧の部分が円月刃になってる。
まさかとは思うけど…
「…わたしはあんな笑い方はしないよ?ほんとだよ?!」
俺の視線の意図に気づいたのか、苦笑いで否定するフェイトさん。…よかった。
「よし!それじゃわたしとなのはちゃん、フェイトちゃん、それにアメリアとアインスに一夏くんとマテリアルズのみんなで乗り込むから、あとのみんなは援護頼むわ?そんじゃ…突撃やぁ~っ!」
はやてさんの掛け声と同時に俺たちは突入を開始する。
「紫電…一閃!」
「ラケーテン・ハンマー…ぶっとべ~っ!」
「これでも喰らえ…鋼牙!」
ヴォルケンリッターが前面の敵を薙ぎはらい…
「サンダーレイジ!」
「魔竜烈火咆[ガーヴ・フレア]!」
「フォトンランサーファランクスシフト!」
プレシアさん、アリシア、リニスさんのテスタロッサ一家が強力な砲撃で殲滅していく。
「み、皆さんすごいですぅ!」
「よし、突入できた!…なんだここは?」
突入したその先にはだだっ広い異空間が広がっていた。
「…よく来たわね織斑一夏。」
「ご主人様を害する愚か者は…」
「排除しますわっ!」
そこにいたのはアリサさん、すずかさん、ククリとその他大勢の女の子たち。
「アリサちゃん、正気に戻って!」
「…なに言ってんのよなのは?わたしは正気よ…あんたたちこそアキラ様の邪魔をするなんて…そんなんだから良牙みたいなヘタレを好きになるのよ…」
ピクン!
「…今なんて言ったのアリサちゃん?」
尋ねるなのはさんの声が一段低くなったの
は気のせいじゃないと思う。
「あら聞こえなかった?良牙なんて魔法も使えないヘタ…ひっ?!」
次の瞬間…なのはさんの全身からとてつもない怒気が発せられる。
「あ~、アリサちゃんたち終わったなぁ…な、フェイトちゃん?」
「うん…いくら操られてても、逆鱗にふれちゃったら…ねぇ?」
はやてさんとフェイトさんが半分諦めたように呟く。
「は、はやてさん…これはいったい?!」
「…なのはちゃんと良牙くんは5歳の頃出会ったきり、やっとつい最近再会して今ラブラブ状態なんやけど…」
「…その反動か、良牙の事を馬鹿にされるとぶちギレちゃうんだ…わたしたちは〈魔王降臨〉って呼んでる。」
…なっ?!
「…3人ともどうしちゃったのかなぁ…?わたしと良牙くんは運命のベストカップルなんだよ?…それを『魔法が使えない』?『ヘタレ』ぇ?!」
…なのはさんの顔から表情が消える…はっきりいって怖い。
「いくら3人とも彼氏がいないからってそんな言い方はないんじゃないかなぁ…どう思うすずかちゃん?」
「わ、わたしは言ってないよ?ねぇククリちゃん?」
「わたくしも言ってませんわ…アリサさんだけですわよ、おっしゃったのは…」
「ち、ちょっと2人ともずるくないっ?!わたしはただ…」
「…少し静かにするの。とりあえず3人とも…」
なのはさんは1度言葉を切り、そして…
「…少し、頭冷やそうか?」
「「「ひい~っ?!」」」」
だ、大丈夫なのかあの3人?
「…まぁなのはちゃんも殺しまではせんやろ。仕方ない、あっちの女の子たちはわたしとアインスで面倒みるわ。」
「テスタロッサは一夏たちと一緒に親玉を叩け!」
はやてさん、アインスさん…
『お別れはすんだのか一夏ちゃんよぉ?』
そのムカつく声は…とうとう現れやがったなクソ秋羅!
異空間の奥から現れたのは因縁の宿敵・織斑秋羅。そして…
「レヴィ…?」
秋羅に寄り添うように現れたのは、秋羅に拐われていたはずのレヴィの姿だった。
『あぁ、紹介がまだだったなぁ…おい、名乗ってやれよレヴィ?』
「はい、秋羅サマ♪…〈ワタシ〉の名前はレヴィ・ツェアシュテールング。秋羅サマにお仕えする破壊の使者だよ!…織斑一夏、大好きな秋羅サマのためにキミは〈ワタシ〉の手で殺してあげる♪…覚悟してね?」
…?!
…覚悟はしてたけど…
『ひゃ~はっはっはっはっ…どうだ一夏、愛しのレヴィちゃんを寝とられた気分…「黙れよ。」…あん?』
「黙れっていったんだよ!…みんな、レヴィは俺1人で相手する。みんなは秋羅を頼む!」
「うむ。…レヴィは任せたぞ、一夏。」
「必ず連れ帰りましょう!」
「頑張ってくださいっ!」
王様、シュテル、ユーリ…頼んだぜ!フェイトさんとユーノさんもお願いします!
「うん、任せて!」
「大丈夫。一夏こそ気をつけて!」
俺はレヴィの方を振り返ると…
「さぁレヴィ、かかってこいよ!たまには殴り合いの喧嘩もいーんじゃないか?」
「…キミらしいなぁ…いいよ、勝った方が正しいってことでいいんだよね?」
心底嬉しそうに笑みを浮かべながら応えたレヴィは右手にデバイスを具現化させる。…ツイン・ブレイバーって感じの双剣で色はどす黒い紫だ。
「この子はドゥンケルハイト。秋羅サマが〈ワタシ〉のために調整してくれた相棒だよ。」
…やっぱりバルニフィカスも弄られてたか…
「今の〈ワタシ〉はさいきょ~だよ?それでもやるの、一夏?」
「…あぁ!俺はお前に伝えたい事があるんだ。本当のお前…レヴィ・ラッセルにな!」
『ご主人たま、これを使って!』
頭の中にリヒトの声が響き俺の右手に一振りの日本刀が現れる。…なにか不思議な力を感じるな。
『その刀は〈神刀・蓮花〉…破邪の神刀だよ。その刀ならレヴィの身体と魂を支配してる闇の力にダメージを与えられる。』
マジか、それはありがてぇ!
「いくぜレヴィ!」
俺は蓮花を構え、レヴィとの〈最初で最後の真剣勝負〉を始めた。
NO SIDE
こうして一夏たちと秋羅軍の全面対決が始まった頃…
「リ、リナちゃん?!…いったい何が起こってるの?」
見詰めるシャマルが困惑している。
ナイトメアハートが放つ結界によりリナの身体に近づけないのだ。しかも…
「ぐっ…がはっ?!…まだまだぁ!」
時々寝言と共に全身に傷が現れる。恐らくナイトメアハートがなにかしているのだろうが…。
(…お願いだから無理はしちゃ駄目よリナちゃん、L様…)
今のシャマルに出来るのはただ祈るだけだった…
次回はリナ復活?!なんとかGW中には書きたいですね。