では本編、どうぞ!
NO SIDE
スバルたちナカジマ姉妹とティアナが運命の出逢いを果たしたその時同じ頃、リナとアメリアは時空世界の1つ、アルザスへと赴いていた。その目的は…
SIDE:リナ
「「竜の巫女?」」
今回の依頼人であるヴィレさんからでたその言葉にあたしとアメリアは聞き返した。
「…はい。このアルザス地方には〈竜の峰/ドラゴンズ・ピーク〉と呼ばれる秘境があり、数多くの竜が暮らしております。」
『…ねぇリナ、〈竜の峰〉ってわたしたちのいた世界の…』
会話の途中でアメリアが念話で話しかけてきた。
『…ん~、直接は関係ないと思うわよ?多分ドラゴンがたくさんいるからそんな名前がついたんじゃないの?』
そんな間にもヴィレさんの話は続く。
「…そして我が村には代々〈竜の巫女〉と呼ばれる竜を制御する力を持った少女が産まれ、その者が竜族の長と折衝にあたることで永らく事なきを得ていたんじゃが…」
「嫌です。」
「…そう言わずに続きを…?」
「だから聞きたくないです。」
「どうして?!」
「だってどーせ『実はお願い事が…』って言うんでしょ?面倒事になるのが目に見えてるし…」
「そんな…ただ竜の峰に1人で行って帰ってこない巫女を連れ帰ってほしいだけじゃよ?」
「そんなのアンタの後ろにたくさんいるおにーさんたちに行ってもらえば?…あたしたちもそんなにヒマじゃないのよ。」
あたしはわざと突き放すように答えを返す。…これには理由がある。実はこの仕事、ゼロスから頼まれたのだけど…ぶっちゃけ依頼人が胡散臭い事この上ないのだ。
ヴィレさんは自称村長を名乗ってるのだが、白髪の長髪に左目には眼帯、着流しの着物ってどちらかといえば…
(村長より盗賊の頭って感じよね~っ…それに…)
その後ろにいる男たちも善良な村民というよりはどう見てもごろつきにしか見えないし…
「…もちろん連れ帰って戴ければ報酬は弾みますよ。巫女の名前はキャロ・ル・ルシエ、歳は7歳です。恐らくフリードという名の子竜を連れているはずです…そちらは無理なら始末して戴いても結構ですよ?…巫女さえ無事ならね。(ニヤリ)」
…?!
『リナ…こいつら…』
うん、判ってるL様…間違いなくこいつら何か企んでる…。
「はぁ…判ったわよ、あたしらも上には逆らえないしね…」
あたしは答えながらアメリアと念話で打ち合わせる。
『アメリア、キャロって子はあたしが探してみるからあんたはあいつらを尾行してみてくれる?…絶対なんか裏があるわ!」
『判ったわリナ!もしこの人たちが悪なら…』
『…ぶん殴るのは合流してからよ。また始末書書きたいの?』
あたしとアメリアはコンビで動く事が多いんだけど…この子、直感で動いて見境なしにやっちゃうからね。
『う…わかった、連絡する…』
わかればよろしい。さーて、竜の峰は…あっちね。
「それじゃ先にいくわよネカネ…〈翔封界/レイ・ウイング〉!」
「OK、リ…じゃなかったアンナ!すぐ追い付くから。」
一応考えておいたコードネームで呼んだんだけど…間違いかけたよねアメリア?
(ま、あの子の父親も馬鹿姉もその辺り空気読めないところあったから…遺伝なのかな?)
そんな事を考えつつあたしは竜の峰の麓に辿り着く。
「ふ~ん、この辺りには見当たんないか…峰の奥に迷いこんでるなら厄介よね…。」
いかな竜の巫女とはいえ幼い少女、連れてるのが子供の竜じゃ…ん?
バッサ、バッサ…
山頂から1匹のドラゴンがこちらに向かってくる…結構大きいわね。
「ちょうどいいわ、聞いてみるとしますか。『おーい、そこのドラゴンさーんっ?!』」
あたしが念話で呼んでみると反応するドラゴンさん。
『…我を呼んだのはお前か?…このヴォルテールに何の様だ?!』
どうやら警戒しているみたいね…
『別に怪しい者じゃないわ。少し人を探してるのよ…子供の竜を連れた女の子なんだけど…』
あたしがそう言った途端に目付きがきつくなるヴォルテール…やな予感。
『竜を連れた女子だと…お前やはりあの連中の仲間か!巫女は貴様らには渡さぬ、命が惜しくば即刻立ち去れ!さもなくば…』
やっぱり…説明するのもめんどくさいしなぁ…仕方ない。
『いきなり〈竜破斬/ドラグ・スレイブ〉っ!』
あたしはあさっての方向に呪文をぶっ放す。放たれた砲撃はヴォルテールの真横を通りすぎ…
ドッカーン!
峰の崖を跡形もなく吹き飛ばした。
『………………』
『…見ての通りよ。あたしはあなたを倒せるのに倒さなかった…あたしは敵じゃないわ。』
あたしは言葉を選びながらヴォルテールを説得する。…脅迫って言わないでぷりーず。
『…う、うむ。…しかし今の魔法…まさか貴…いやあなた様はあのドラまたリナ…どの?』…ちょっと待て。
『ヴォルテール、何でアンタがその渾名を知ってんのよ?!』
『おぉやはりそうであったか!それならそう言ってくれれば直ぐに長老さまの元へお連れしたものを!』
ん、長老?!…まさかとは思うんだけど。
『さ、我らが棲む谷に案内させていただきましょう。竜の巫女も長老も其処に居られますが故。』
仕方ない、行ってみるとしますか?
あたしはヴォルテールの後を追って竜の峰の奥へ。…あれ、茨が茂って行き止まりになってるけど?
『グゥーオゥ…』
ヴォルテールが発した声に反応して茨が開き道が現れた。…なるほど、秘密の入り口って訳か。
『…ヴォルテール、戻ったぞ。…長老に客人だ。』
ヴォルテールの声に2匹の竜が近寄ってくる…どうやら見張りみたいね。
『なんだ、その小娘は?』
『ヴォルテール殿、人間は立ち入らせては…』
竜の1匹があたしをつまみ上げようとする。
『…その方は〈あの〉リナどのだ…そなたら死にたいのか?』
ヴォルテールの声に竜の動きが止まり…
ズシン!
あたしの前でUターンして後退る。
『こやつ…いやこの方があの伝説のドラまたリナ?!』
…だから何であたしの前世(黒歴史)を知ってん…?
『…ゼロスから聞いてはいたが、久しいなリナ・インバース…いや、今は逢魔リナ…だったか。』
そう言いながら奥から現れたのは、青いローブを身に纏った金髪の初老の男性とピンクの髪の女の子。側には赤色の子竜もいるし、この子がキャロね。それにしても…
「やっほ~、久しぶり♪…まさかあなたに逢うとは予想外だったわ…〈黄金竜/ゴールデン・ドラゴン〉の王、ミルガズィアさん。」
こんな姿をとってはいるが、この人(?)の名前はミルガズィア。竜族を統べる黄金竜の長老だ。
でもミルガズィアさんはあたしの前世での知り合い、どうしてこの世界に?
「我らが棲む竜の峰は異世界同士でも繋がっておる。竜族のみが通れる〈竜の門/ドラゴンズ・ゲート〉によってな。それにしてもあの〈赤眼の魔王〉との戦いから幾千年、再び逢見えようとはな。」
…えっ、あっちの世界ではそんなに経ってるの?そりゃミルガズィアさんも老けるはずだわ。
「…で、その子が?」
「うむ、この少女がお前の探しておる竜の巫女だ。…心配するな、この者は味方だ。挨拶しておくといい。」
ミルガズィアさんの言葉にキャロはうなづくと、こっちに近寄ってきてポケットの中から何かを取り出してあたしに手渡す。…これって、メモ?
どれどれ…
『キ、キャロ・ル・ルシエです…よろしくお願いしますっ!』
「めんどくさっ?!」
あたしは思わず声をあげる…って遠い昔に似たような記憶が…デジャヴュ?!
「ミルガズィアさん、もしかしなくてもこの子…極度の人見知り?」
あたしの問いに大袈裟にうなづくミルガズィアさん。
「うむ。実は私も会話が成立するまで3日かかった。」
しかも筋金入りっ?!
…まさかと思うけど…〈あの子〉の転生体、なんていわないでしょうね…?
「…逢魔リナよ…よろしくね。」
あたしが挨拶を返すとキャロはまたメモを手渡す。
『…昔どこかでお会いしましたか?』
…!
「…たぶん気のせいよ。それより…訳ありなんでしょ、事情を聞かせてくれる?」
ややこしい事になりそうだと思いつつ、あたしは話を聞くことにした。
キャロが誰の転生体か判った人は通だと思います。
次回!
「六十二、「ウチに来る?」 今紡がれる 縁(えにし)かな」
それでは次回も…
『リリカル、マジカル、頑張りますっ!』
「…メモじゃなくて声出しなさいよ…」
(BY キャロ&リナ)
※引き続き活動報告にてキャラクター人気投票継続中です。詳しくは活動報告の「キャラクター人気投票」を参照してください。