吸血鬼は紅い血を吐いた   作:個人宇宙

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【08】

 

 

 卓郎が紅魔館で働き始めて、十日が経った。

 さすがに十日も経つと仕事にも多少の慣れが出てくる頃で、最初はたどたどしかった掃除や洗濯も少しはこなせるようになってきた。

 制服もようやく完成して、これまでの着物からおしゃれな感じの服で仕事をすることになった。

 ネクタイにワイシャツ、ウエストコート、スラックスなど、どれも十五年の人生で初めて聞くような名前の服ばかりだった。着物に比べたら非常に圧迫感を感じる服で、やや動きにくい所が難点だったが、そこはすぐに慣れた。

 

 そして、肝心の卓郎が作った仕事の役割分担については、大きな問題が起ころうとしていた。

 それは、メイドたちの「わがまま」が一向に改善されないことだった。

「卓郎さん。今日の確認が終わりました」

 夜に差し掛かった頃、ユキが手帳を卓郎に渡してきた。

 中身に目を通してみると、今日は七つの×印が付いていた。

 

 この仕組みになってから、卓郎はユキと一緒に毎晩、メイドたちがしっかり今日の仕事を行ったのかを確認するようにしていた。

 どうやら、今日は七人のメイドが仕事をサボってしまったようだ。

 卓郎は困ったように言った。

「ちょっと多くなってるな」

 一昨日は三つ。昨日は六つだったから、徐々に増えていることになる。

 

 当初は誰が仕事をサボっているのかを明確にして、それを注意していけば、おのずとみんなしっかり仕事をしてくれるだろうと踏んでいた。

 だが、事態はそう簡単にうまくいってないようだった。

 卓郎とユキは、今日サボったメイドたちの所に向かった。

 最初は、二階の廊下掃除を担当していたアキである。

 廊下に掃除用具が放置されたままだったのを他のメイドが見つけ、卓郎に報告してきたのである。

 

 そのことを指摘すると、あっ、と思いだしたように彼女は両手を口元に当てた。

「ごめんなさい。途中で疲れちゃったので、ちょっと部屋で紅茶を飲んでました」

「本当に紅茶を飲んでいるだけだったの?」と、ユキ。

「じ、じつは気持ちよくて、ついうたた寝をしちゃいましたー」

 えへへ、とアキは照れくさそうに笑う。卓郎はがくりと頭を落とした。

 

 彼女は警備に関わる仕事ならやる気を見せてくれるのだが、それ以外の仕事になると、すぐにサボる傾向にあった。おまけに本人の性格が非常におっとりしていることもあり、あまりサボったことを気にしない所も少し問題だった。

 とりあえず注意はしておき、卓郎たちは次の所へ向かった。

 

 次はハルだった。今日のハルは食事の当番だったが、調理場に来なかったらしい。

 そのことを話すと、ハルは珍しく謝罪の言葉を述べた。

「すいませーん。実はナツが洗濯と交換してくれないかって頼んできたんです」

「えっ。でも、調理場にナツはいなかったと聞いたぞ」と、卓郎。

「な、なんだってーっ! じゃあ、あいつもしかしてサボったな」

「ということは、お前はナツの代わりに洗濯をやったということだな」

「はい。そうですよー」彼女は微笑む。

「そうなると、ちょっとおかしいんだよな」

「えっ?」

「だって、今日は僕も洗濯当番だったんだけど、ハルの姿は全く見かけなかったよ」

 しまった、というような顔をハルは浮かべた。

 

 アキよりもきつめに注意しておき、卓郎たちは次の所に向かった。

 ちなみにユキの手帳には、アキの方も今日サボったメイド一覧にきっちり入っていたので、ハルの嘘は最初の段階でとっくに見抜いていた。ハルはサボりの常習犯なので、警戒するのは当然である。

 

 残りのメイドたちにも注意を済ませ、ようやく卓郎は今日の仕事を終えた。

 ユキと「おつかれさま」の挨拶を交わして、部屋に戻った。

 扉を閉めて、大きく深呼吸をする。

 今日も疲れた。本当ならば、すぐにでもベッドに横になって明日に備えたい所だったが、そうはいかない。

 

 部屋に入って寝間着に着替えた卓郎は、そのままテーブルに置いてあった教科書を開く。これから毎日一時間、睡眠時間を削って勉強をするつもりでいるのだ。

 本はパチュリーの図書館から借りたもので、内容はやや高度な漢字を取り扱った教科書だった。以前、仕事の役割分担表を作ろうとした時、なかなか文字を思い出せずにユキの助けを借りてしまったことがある。

 この出来事で自分の学力不足を痛感した卓郎は、パチュリーに頼んで、今の自分に分かる内容の教科書はないかと尋ねてみたのだ。

 

「真面目な奴ね」と言われたが、彼女は快く教科書を貸してくれた。

 勉強を行いながら、卓郎は今日のことを思い返す。

 どうやったら、メイドたちに仕事を行わせられるか――。

 この問題の厄介な所は、何度も何度も卓郎が注意しても、メイドたちは一向に聞く耳を持たないということだった。アキはすでに二回もサボっているし、ハルも今日で四回目である。よっぽど、卓郎が来る前からサボることが日常茶飯事だったのか、妖精という種族の性質なのかは定かではないが、あまりよくない流れであるのは間違いなかった。

 

 だからといって、メイドたちを傷つけるような方法はやりたくない。

「うーん……」

 鉛筆を持つ手を止めて、卓郎は何か良い方法がないか考えた。

 しかし、なかなか有効な手段が思い浮かばず、考えすぎても仕方ないと思い、勉強を再開させようとした直後だった。

 こんこん、と扉が叩かれた。

 はい、と答えると、中に入ってきたのはレミリアだった。

 

 突然の主人の来訪に、卓郎は驚いた。

「お嬢様。こんな時間にどうかされましたか?」

「別にたいしたことではないわ。あなたに頼みがあってやってきたの」

「頼みですか?」

 ええ、と言ってレミリアは続けた。

 

「明日の夜、あなたに洗濯の仕事をしてもらいたいの。おそらく、そこにはユキもいると思うから、実質二人でやることになるわね」

「洗濯、ですか」

「言っておくけど、そこらへんのメイド服を洗えというわけじゃないわよ」

 レミリアは自分の服をつまむと、口元を吊り上げた。

「私の服を洗うのよ」

 

 ※

 

 十一日目の夜は、雲一つない満天の星空だった。首を大きく曲げて夜空を見上げていると、一瞬にして星の世界に吸い込まれそうな感覚に陥ってしまう。

 だが、今の卓郎は綺麗な星空を堪能する気分にはなれなかった。

「お嬢様はもうすぐ帰ってきます。それまでもう少しでの辛抱ですよ」

 彼の横にいる美鈴がつぶやく。

 

 今、卓郎は紅魔館の門の前で、美鈴と一緒にレミリアの帰りを待っていた。

 レミリアは現在、ユキを連れて外に出ている最中である。外出の内容については、まだ具体的に明言していないが、何となく嫌な予感はした。

 普通の洗濯だったら、わざわざ卓郎を呼び出したりしないだろう。

 そして、その嫌な予感は的中することになった。

 

「あっ、帰ってきましたよ」

 美鈴の視線の方向に目を向けると、上空から二つの人影がこちらに降りてきた。一人はユキ、そしてもう一人は血まみれ姿のレミリアだった。二人は地面に着地する。

「お帰りなさいませ、お嬢様」先に美鈴が言う。

「お帰りなさいませ、お嬢様」

 目を逸らしたい気持ちを何とか抑えながら、卓郎も言葉を紡いだ。

 

 レミリアは疲れたような目つきながら、口元を吊り上げた。

「ええ、ただいま。早速だけど、血が乾かないうちに洗濯してもらうわよ」

 そう言って、そそくさと館の敷地へと進む。卓郎とユキもそれに続く。

 館の玄関から最も近い大部屋に入ると、すぐにレミリアは服を脱ぎ始めた。そして下着姿のままで、血まみれの洋服と帽子を卓郎に投げてきた。

 

 血生臭い匂いがして、わずかに顔をしかめた。

「ほら。さっさと洗いなさい。あと、今から私の方に顔を向けてはダメよ」

 あらかじめ用意しておいた洗濯桶を使って、卓郎は彼女から背を向けて洗濯を始めた。その直後、背後から「ユキは下着の方をお願いね。こっちも汚してしまったから」という声と共に、わずかに布の擦れる音が聞こえてきた。

「それじゃあ、私が戻ってくるまで、しっかり済ませておくのよ」

 その言葉と共に、がちゃりと扉の閉まる音が聞こえてきた。

 

 卓郎は石鹸を使って、慎重かつ素早い手つきで服を洗った。もし服を傷つけたり、汚れを残してしまったりしたら、レミリアの機嫌を大きく損ねてしまう。

 これが今日、レミリアが卓郎に与えた仕事の内容だった。

 仕事自体は決して難しいものではなかったが、精神的にはなかなか辛い仕事であった。

 この血を持った人間は、今ごろどうなっているのだろう……。洗うたびに桶の水がどんどん真っ赤に染まっていく光景は、見ていて気持ちの良いものではなかった。

 

 ようやく服を洗い終え、ユキと休憩している最中にレミリアが部屋に戻ってきた。洗っている間に新しい服に着替えたようで、赤い血は一滴もついていなかった。

「ごくろうさま。時間も余っていることだし、少しお茶にしましょ」

 別の妖精メイドにお茶を用意させ、卓郎とユキはレミリアと向かい合う席に座った。

 

 紅茶を一口飲んでから、レミリアが問う。

「卓郎。初めてやる仕事だったと思うけど、どうだったかしら」

「少し大変でした」

「血まみれの服を受け取った時、すごくおびえた目をしてたじゃない」

「ええ、まあ……」

「かなりの頻度でやる仕事じゃないから安心しなさい。せいぜい月に一、二回くらいね」

「そうですか」

 卓郎はうつむいたまま紅茶を飲む。

 

 彼の様子をうかがいながら、レミリアが呟いた。

「なんか、すごく疲れた顔をしてるわね」

「体調でも悪いのですか?」ユキは心配そうな目で見つめてくる。

「いや、そういうわけじゃないんです」

 卓郎は慌てて手を横に振る。

 どうしようかと一瞬迷ったが、思い切って言うことにした。

「あの、お嬢様」

「なにかしら」

「今日はどちらまで行かれたんですか?」

 

 その質問に、彼女の手が止まる。

 これでもだいぶ内容を遠回しにした方だ。

 本当ならば血を吸った人間はみんな殺してしまうのか、どのようにして吸っているのかと、もっと直接的な質問をしたかった。

 

 レミリアは不敵な笑みを浮かべた。

「そんなことを知って、何になるのかしら」

「そ、そうですよね……。おかしな質問をして、申し訳ありません」

「今日は人里から少し離れた村まで行ったわ」

 えっ、と戸惑う卓郎にレミリアは続けた。

 

「そうしたら、ちょうど良く歩いている人間を見つけたの。おそらく盗賊か何かの類でしょうね。こんな遅い時間に提灯も持たずに歩いている人間なんて、だいたい予想がつくわ。その後のことは、あなたの想像に任せることにするわ」

 卓郎は唾を飲み込んだ。あまり考えたくないことだった。

 レミリアは小さく息を吐いた。

「でも、最近の人間はみんな人里に集中しているから、探索もやりにくくなってるのよね。人里の近くは妖怪に対する防御も固くなってきているし」

「ああ。人里に集まっている話は、僕も聞きました」

 

 これは、卓郎の住んでいる村にとっては大きな問題であった。

 近年、悪質な妖怪に対抗するため、人里は以前よりも防御を固めるようになった。

 それを受けて、幻想郷の各地に住んでいる村の住人が、安全を求めて里に移住するようになってきたのだ。卓郎の村でも同様のことが起こっており、村の人口もどんどん減少傾向になっている。最近では、里の者がわざわざ各地の村にやってきて里への移住を勧めているという噂も聞いたことがある。

 

「まったく、おかしな話だと思わない?」レミリアが呆れたように言う。

「なにかですか」

「昔から人里は人間だけじゃなく、妖怪の出入りも認めているのよ。人間と妖怪の共存を目指しているとか言っているくせに、肝心の人間がこのような態度をとってくるんだからね。妖怪が嫌なら、嫌だとはっきり言えばいいのにね」

 

 ――人間と妖怪が一緒に暮らすなんて、できるわけないじゃない。

 

 これは以前、卓郎の母親がつぶやいていた言葉である。

 卓郎は幻想郷の歴史には詳しくなかったが、レミリアの言う通り、昔から人里は人間だけではなく妖怪も積極的に出入りしていた。

 もちろん、人間に危害を加えるために里に来ているわけではない。

 だいたいは買い物のために来るので、妖怪が商店の主人と値段交渉している姿は、人里では割とよく見かける光景となっている。だから、妖精メイドも堂々と人里で買い出しができるのだ。

 

 ただ、必ずしも妖怪とは穏便な関係が続いているわけでもない。

 妖怪による人間殺しはほとんど無くなったが、相変わらず妖怪によって怪我をする人間は後を絶たなかった。

 一年前には、卓郎の近くの村に住んでいる陶芸家が人喰い妖怪に襲われてしまったことがある。陶芸家は命からがら逃げ切ることができたが、左腕を丸ごと持っていかれてしまい、二度とろくろを回すことができなくなってしまった。

 

 襲われる側の人間と、襲う側の妖怪。

 人間と妖怪との間に、どんな歴史的な取引があったのかは知らない。

 ただ、何とも奇妙な関係が人間と妖怪にあるのは確かだった。

「もしかしたら、この世界の人間はみんな人里に集まってしまうかもしれないわね」

 レミリアの言葉に「そうかもしれないですね」と、卓郎も同意する。

 

「まあ、一つの場所に集まるのは一向に構わないけど、もし里の防御力を超える脅威がやってきたら、中の人たちはどうやって対処するのかしらね」

「脅威、というのはどういうことでしょうか」

「例えば、強力な妖怪が里に襲ってきた時とかね。下手したら、里の人間が一気に全滅しちゃうかもしれないわ」

「そうなりましたら、お嬢様にとっても深刻な問題になりそうですね」

「ふふっ。そうね。あなた以外の人間が全滅しちゃうんだもんね。そうなると、今後は卓郎からでしか血を吸えなくなっちゃうわね」

 嫌な冗談に、卓郎は苦笑いするしかできなかった。

 

 レミリアはカップを持ったまま部屋を見回した。

「深刻な問題が人里に起こったら、私も少しは人間が生き残るように協力しちゃうかもね。例えば、紅魔館の一部の部屋を人間に貸したりとかね」

「これだけ広い屋敷でしたら、かなりの人が入りそうですね」

「まあ、よほど物好きな人間でないと、こんな紅い館に滞在しないと思うけどね」

「……物好きな人間ですか」

 それは自分も含まれるのかと思いながら、卓郎は紅茶を飲む。

 

 外面はともかく、この館は非常に広いことは確かである。現在、卓郎を含めて多くの妖精メイドが住んでいるが、それでもかなりの部屋が余ってしまうほどだ。

「で、話は変わるけど――」カップを置き、レミリアは両手を絡めた。

「新しい仕組みを作って六日が経つけど、メイドたちの感触はどうかしら?」

「まあまあという感じですね。真面目なメイドはしっかりとやってくれますけど、一部のメイドはよくサボってますね」

「ふうん。何はともあれ、パチェの出したヒントから正解を導き出せたようね。でも、パチェも言ってたけど、それだけじゃメイドたちはあなたに従わないわ。今の問題をどう改善するのかは、あなたの考えにかかってるわね」

「そうですね」

「それで、何か改善策はあるのかしら?」

「一応、考えてはいるんですけど……」

 卓郎はうつむきながら呟く。

 

「あら。あんまり自信がなさそうね。言ってみなさい」

「サボっているメイドに、何らかの罰を与えようかなと思っているんですが、いまいちその気になれないんです」

「へえ。頭で考えてるくせに、どうして実行する気が起こらないのかしら」

 卓郎はうーん、と唸りながら答えた。

「これ以上、僕が勝手なことを決めてもいいのかなって……」

「ずいぶんと弱気な態度ね」

「最初に役割分担表を作ったときにも、メイドからいろいろ言われたんです。僕がメイドたちの今日の仕事を全て決めるのは自分勝手すぎるんじゃないかって。だからこれ以上、僕が勝手な仕組みを作ってもいいのかって思うんです」

「なるほど。自分勝手すぎる、ね」

 

 あの時は気にしない素振りをしてきたが、実は彼自身、ハルの言葉はけっこう気にしていたのだ。 

 自分の生活が掛かっているので、今は必死でこの仕事をやっているが、決して卓郎は自分がリーダーに向いている人間だとは思っていなかった。

 今でも妖精たちに命令を出す時は、何とも言えない後ろめたさを感じてしまうのだ。

「彼女たちを大切にするのは良いことだわ」

 カップを持ちながら、レミリアは彼を見据える。

 

「でも、その考えでは紅魔館の使用人は務まらないわね。時には反発されるのを覚悟でリーダーが厳しい命令を出さなくちゃ、後で強烈なしっぺ返しを喰らうことになりかねないからね。特にユキは、私の言ってることがよく分かるんじゃないかしら」

 ユキは何も言わず、メイド服をぎゅっと握る。

「まあ、具体的にどうするかは全てあなたに任せるわ。約束の一ヶ月までまだ二十日も余っているんだし、じっくり考えてみなさい」

 ここでレミリアは紅茶を一気に飲んで、立ち上がった。

「そろそろ寝ましょう。二人とも、準備をしなさい」

 

 ※

 

 レミリアの就寝準備を済ませて、二人は彼女の部屋を出た。

 今日の仕事はこれで終わりなので、後は自分の部屋に戻るだけである。すでに薄暗くなっている廊下をユキと肩を並べて歩いていく。

「ふう……。今日も疲れたな」

「卓郎さんもお疲れ様です」

 迷惑にならない程度の音量で会話をする。

 

「ユキは明日、買い出しに行くんだっけ」

「はい。卓郎さんは明日の午後はお休みでしたよね」

「うん。初めての休みだよ」卓郎は声を弾ませる。

 本来ならば、使用人の仕事に休みはないものである。

 しかし、妖精や体力のある妖怪ならともかく、人間の卓郎にとって休みを与えないのは体力的な面において非常に辛いことだった。なので、十日に一度――それも午後の時間に限って、休みを与えることになったのだ。

 

「休みの時間は何をするつもりですか?」ユキが尋ねる。

「特に考えてないな。一応、勉強しようかとは思ってるけど」

「それじゃあ、一緒に里に行きませんか?」

 突然のユキの誘いに、卓郎は目を瞬かせる。

 

「卓郎さん、まだ館の外に出ていませんでしたよね。だったら、休みの日のうちに人里への道を覚えておいたほうがいいんじゃないかと思うんです」

「でも、ユキは明日は仕事だろ?」

「そうですけど、私が明日に買うものは日用品ですので、そんなに焦って買う必要はないです。食材とかでしたら、すぐに飛んでいかないといけませんけど」

「なるほどね」

 悪くない提案だな、と卓郎は思った。

「じゃあ、里への案内を頼もうかな」

「はい。任せてください」

 にっこりと笑うユキに、卓郎は「よろしく頼むよ」と返した。

 

 


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