一人を追って   作:ソックス

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連載開始して2年以上たったってマジ!?


突入!鐘鳴りの高台!!

 アドルフとスティービーのバトルは結論から言うとスティービーの勝利である。決定打である最後の一撃は自身の体力が少ないほど威力が増す“起死回生”だ。アドルフが順調にダメージを重ねても逆転される一撃は理不尽なものだが、勝負時を見逃さなかったスティービーのファインプレーとも言える。

 結局買い物はふらふらしながら、オレンの実や癒しの種などを購入し、少しだけ自分達に使った。お互いの実力はハッキリとわかったのだ。後は収穫祭を成功させるのみである。二匹は拳と拳を突き合わせて微笑む。

 

「なぁ、やっぱりさ俺と一緒に探検隊やらねぇか?」

 

 収穫祭の成功を誓い合った矢先、アドルフは前回同様スティービーを探検隊の道へと誘う。実力の高い仲間はアドルフとしては魅力的だった。今回の勝負はアドルフの気持ちを一層強くさせた。

 スティービーはそれを聞いて驚いた表情をしていた。まだ自分を誘うのかと。しかし、彼の気持ちは前とは違っていた。何となく断ろうという気にはならないほどに。

 

「……答えは収穫祭の時に言うぜ。いいだろ?」

「充分さ」

 

 少し考え込んで答えを言う機会を先に延ばした。これからちょうどいい事にアドルフと探検するのだから、その時次第でいくらでも考えようがあるから安易にイエスとは言わなかった。どうせなら楽しく冒険したいからだ。

 アドルフはスティービーの様子を見て満足げに頷いた。手応えは十分あったと見てもいい。父がやっていた探検隊と言う仕事に興味を持ち、学んで夢が膨らんでいった少年には仲間との冒険もその夢の一つとして強く刻まれている。

 

「それじゃあ、明日“鐘鳴りの高台”に現地集合だな」

 

 アドルフは、今日はお開きと言わんばかりに話を切りだす。経緯がどうであれ、今日は依頼の後に激闘を繰り広げたのだから明日の為にしっかりと英気を養わなくてはならないからだ。ダンジョン名を確認するかの様に告げ、ギルドへと帰っていく。スティービーも頷いて帰路につく。

 

 

 そして、翌日収穫祭の時は来た。

 

 

 町中は屋台にあふれ、活気づいている。木の実ジュース、木の実のお菓子、木の実の特売などエトセトラ……、殆ど木の実ではあるが、だからこそ収穫祭という名なのである。鐘は昔からこの町では一年の豊穣を記念して鳴らすものである。しかし、ダンジョンの出現により一般のポケモンでは厳しい状態が続いた。そこでウォーベックギルドが名乗りを上げ、この近辺で台頭していった歴史がある。

 故に、この仕事は町とギルドをつなぐ大仕事である。優秀なギルドとなり、外部からの依頼も増えてきてはいるが、これだけは外せないアイデンティティーだ。あくまでもデルトタウンと共に生きる。

 

「さて、わかっているかもしれないけどこのダンジョンは岩・地面の2タイプが主流だ。鋼もチラホラいるらしいし、正に俺たちにうってつけのダンジョンだ」

「ああ、俺が前者2タイプでスティービーが鋼をやってくれりゃあいい」

「俺、格闘だから岩もいけるが……その分お前が多く倒すってことか?」

「当然。昨日負けて悔しいもん」

「そいつは頼もしいねえ」

 

 スティービーがおさらいするかの様にダンジョンの説明をする。目的の高台に着くには洞窟を抜けなくてはならない。その洞窟は当然ダンジョンであり、中に出てくるのが岩・地面・鋼と二匹にとってはカモの様な相性だ。

 アドルフはスティービーに鋼を一任させるかのような発言をする。スティービーがそれを聞いてニヤッとして挑発のような返しをする。アドルフは昨日の敗北もあってスティービーへの対抗心が芽生えたのか、多く倒してみせると豪語する。

 ダンジョンのレベルは低くもないが高くもない。初心者にとっては大きな壁かもしれないが、アドルフとスティービーなら問題はない。それなりの戦闘力と相性のよさもあって特に危険視はされなかった。ウォーベックからすれば丁度いいのだ。

 

 二人は小競り合いでもしているような気分でダンジョンへと入っていく。入った途端、ダンジョン特有の異様な雰囲気が二人の肌を撫でる。広がるのは岩、岩、鉱石、岩といかにもと言いたげな光景だった。

 そして、ダンジョンに入って早々まんまるとした岩に両腕が生えているポケモン、イシツブテが勢いよく突貫してくる。よくある“体当たり”だ。

 それに反応したのは、先程岩地面を全部やってやると豪語したアドルフだった。正確に言えばスティービーは仁王立ちしてアドルフに任せきった。あそこまで言い切ったのだから最初は自分でやれと言いたいのだろう。

 アドルフはお得意の“水の波動”を素早く形成し、ボールを投げる要領でイシツブテにぶつける。水タイプの技はイシツブテにとっては致命傷そのものになりうるもので、当たってしまえば為す術もない。項垂れるように前のめりで倒れた。

 

「おーおー、幸先いいじゃん。この調子で倒しちまってくれよ」

「おう、お前の出番はないから気楽にやっとけ」

「ぷ……、言ったな?任せるぜ」

 

 スティービーはアドルフが景気よく敵を撃破したのを見て煽てる。さながら大舞台でのスタンディングオベーションを大げさにしたかのように拍手も加えて、完全に煽っていた。

 アドルフもどこか誇らしげに両手を腰に当てて威張るかの様に返答する。調子に乗った子供のようなその態度はスティービーを軽く吹かせる。まるで、遊び盛りの子供のようなやり取りをする二匹は短い間で確実に仲良くなっていた。

 そして、ここから散歩をするかのように二匹は歩き出した。警戒は怠らないが、二匹は余裕で突破できると進んでいくうちに確信していった。

 

 結局、その後も大した敵は現れなかった。情報通り、岩地面鋼といったタイプぐらいしか現れず、進化したポケモンがまず見られなかった。

 だが、しばらくすると白が中心のポケモンを多く見かけるようになった。こちらに襲ってくることなく警戒心を剥き出しにしているため、不自然極まりない。

 

「お、ありゃあココドラか。格闘にはうってつけのタイプだな」

 

 進んでいくうちに見かけたのは白い鋼鉄の鎧で覆われたポケモン、ココドラだった。鋼・岩タイプで格闘には滅法弱い相性ではあるが、高い防御力を誇っているポケモンでもある。しかもコドラ、ボスゴドラと進化を2段階残すポケモンでもあるため、ダンジョンで見かけたらこれら2匹の存在を疑わなくてはならない。

 アドルフは気軽に話し出すが、今までの静けさが嵐の前だからこそではないかという考えがよぎる。ダンジョンにはボスとも呼べる存在が潜む可能性が存在する。”木の実林”に鎮座していたラフレシア同様、ボスとして進化先がいるのは不思議ではない。

 

しかし、ある意味その予想は裏切られる。

 

「……なんかこいつら俺らよりも別の何かに警戒してないか?襲ってこないのも余裕が無いからじゃないのか?」

「言われてみれば……攻撃する気配がないのはおかしいもんな」

 

 スティービーが先に異変を察知したのか、今までの余裕が消え警戒心を露わにしながらアドルフに警告を促すように話しかける。アドルフもそれを聞いてこの光景の異常さに気づく。すぐにわかりそうなものを余裕すぎるがゆえに見逃していたのだ。

 そうなれば今からやるべきは敵に悟られぬよう隠密行動に徹するのみ。ダンジョンで一種族が集団でどこかへ避難する光景など以上にも程がある。これが意味するのはダンジョンの適正レベルをゆうに超えた敵が出現したという証拠なのだから。

 

「……。幸い、洞窟だから岩も多いし隠れながら進むぞ……」

「だな。正直言って挑みたいけど……」

「おい」

 

 アドルフは冷静に辺りを見渡して岩が多い事から、隠れながら進むことを提案した。見えない強敵を警戒するが故の行動としては王道を征くものである。

 スティービーはしぶしぶと言った感じで了承する。その後に漏らす本音はアドルフを呆れさせる。戦闘好きとしての一面が強いのがよくわかるやり取りだった。

 会話の後、壁沿いを通りながら岩に隠れる。お互いに周りを見張って大丈夫なら次の岩に移る。この一連の行動を繰り返すことで時間はかかるが確実に進むようにした。鐘を鳴らすまでの時間はだいぶ余裕があるため、もしもの事がないように行動する。

 

「うぉ、こりゃあ……」

 

 進んでいくうちに、見つけたのはココドラより一回り大きくその面影を感じられるポケモン、ココドラの進化先であるコドラが倒れていた。全身傷だらけではあるが、今までのポケモンとは感じられる雰囲気が違うためこいつがここのボスだったと確信した。

 ここに倒されたボスがいるのなら、現在この場所はそのボスより強いやつがいると考えるのは自然な事である。それを探すために背中合わせにして目を行き来させる。

 そして、それらしきポケモンを発見した。不運にも奴はアドルフ達を先に見つけていたのか、すでに技を放とうとしている最中だった。

 

「うおぉっ!?いきなりロックブラストか!?」

「まだ来るぞ!」

 

 気づいた時には既に遅く、技は勢いよく放たれる。アドルフはそれを寸前のところで躱す。運よく躱せても技は止まない。ロックブラストは最大5回の連続攻撃であり、一発躱したぐらいでは躱したのうちに入らない。

 それをスティービーは指摘するかの様に叫ぶ。彼は既に戦闘の準備を整えており、まずは迫りくる巨岩を見据えていた。残りは4発、一発でも当たれば一溜りもないだろう。巨岩は勢いを衰えさせることなく2匹に迫る。

 

「こりゃあ、こいつを倒さないと鐘は鳴らせそうにないな。手伝ってくれるか、スティービーっ!!」

「勿論!」

 

 アドルフは残りも避けていき、ダンジョンに入った時のような緩い雰囲気は捨て去っていた。もう既に難易度は跳ね上がっているのだ。スティービーに手伝いを求めるのに何のためらいを持たなかった。

 スティービーも似たようなことを感じていたのかあっさりと了承した。紙一重で巨岩を躱して電光石火で突貫をかます。

 それを前進が岩に覆われたポケモン、ゴローニャは迎え撃つべく力をためる。今度は岩が浮き出てそれがとがったものへと成型されていく。

 

そして、ある程度尖り切った後岩を勢いよく放つ。威力が高い分、命中率が低い大技ストーンエッジが戦いを加速させていくのであった。

 


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