機動戦士ガンダム00 ~切り拓く明日~   作:ジャスサンド

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ものすごい久しぶりの投稿です。
…最新話をお待ちしてくださった方には本当に申し訳ないです。

久々の投稿なのにタイトルから察せられる通りシリアスなんてありません!!


MISSION17 テロリストだって恋してもいいじゃない

ユニオン、AEU、人革連これらの三か国が合同軍事演習を行うとの情報がソレスタルビーイングの元にもたらされた。

具体的な日時や場所どれだけの規模の演習になるのか、詳細な情報はまだ入手できておらず留美のエージェントからの報告を待つしかない。

だがこれが事実ならばソレスタルビーイングにとって看過できぬ事態だ。

三か国の狙いはおそらくというより十中八九ガンダムだ。

いがみ合ってきた者達がガンダム打倒のために手を組む。

一時的にしろそうでないにしろ、今後の武力介入における作戦行動はより熾烈を極めることになるだろう。

 

 

けれども具体的な情報のない現段階であれこれ考えていても仕方ない。

 

ガンダムマイスターとスメラギやラッセ達は留美が所有する別荘で短い休息を過ごしていた。

ただアレルヤとイアンは宇宙に残っているためガンダムマイスター全員がこの別荘に集っているわけではない。

プールサイドからリヒティは自前のカメラにビーチパラソルの真下でゆったりとくつろぐ二人の美女を納めていた。

スメラギと留美、どちらも異なるタイプの美しさを持つ女性だ。

そんな彼女達が水着で無防備な格好で張りのあるスタイルを堂々と見せびらかしているのをみすみすリヒティが見逃す手はなかった。

録画中のビデオカメラを回しリヒティは内心興奮に駆られる。

 

 

「あの二人何話してんだろ」

 

「君それセクハラ」

 

背後からクリスティナに咎められるがそれでリヒティは引き下がるたまではない。

むしろ

 

 

「セ、セク!?そ、そうっすかね」

 

「そうよ」

 

 

-やっぱりかわいいっす

意中の相手の水着姿を見れて眼福な気持ちで一杯だった。

リヒティはクリスティナに恋心を抱いていた。

いつ頃かは定かではないが気付いた時にはすっかりクリスティナにメロメロになってしまっていたのだ。

 

 

(この休暇中に少しでもクリスのハートを掴めれば俺にも春が)

 

 

などと一人勝手にやる気になってクリスティナに顔を向けた矢先のことだった。

振り向いた拍子に手からカメラがプールサイドに落ちた衝撃で、部品が弾け飛びリヒティは情けない声を出す。

 

 

「ああああああ!!俺のカメラ!ヤバい、どうしよう…」

 

 

慌てて拾い上げカメラの状態を確かめるが、散らばった部品をどこに戻せばいいのか機械に疎いリヒティにはわからず狼狽する。

撮影していたものがものだけに自業自得だとクリスティナは粒ほどの同情を寄せず、すっかり話を切り替えた。

 

 

「ねぇ他のマイスター達は?」

 

「刹那は隠れ家に戻ってロックオンはどっか行っちゃったっす。ティエリアは地下にいるみたいすけど」

 

「協調性なさすぎ…ジルウェは?」

 

「ここにはいると思うすよ。たぶんどっかで昼寝でも-」

 

 

そこで言葉を途切らせたリヒティはある妙案を思い付く。

 

 

(ジルウェならこのカメラ直してくれるかも)

 

 

シェーレのシステムメンテナンスもしてるし機械にはそこそこ詳しいと前に聞いたことがある。

彼ならカメラの修復ぐらいできるかもしれない。

そんな淡く身勝手な期待を寄せつつリヒティはジルウェを探しに行った。

 

 

 

当のそのジルウェはというと別荘の屋上でチェアに寝そべりながらタバコを吹かしていた。

曇りのない澄みきった青い空に浮かび上がる灰色のタバコの煙を呆然と眺めながら、ジルウェは心地よさに身を任せる。

 

 

「探したっすよジルウェ!ここにいたんすね!!」

 

「うおっ!!?」

 

 

ガラリと硝子を開け飛び出して来たリヒティに驚かされたジルウェはビクっと体を震わせ、咄嗟にタバコを投げ捨て靴底で踏みつける。

何度も磨り潰し火が完全に鎮火したのを見届けたジルウェは肩で息をし、呼吸が落ち着いたと同時にリヒティの方を振り向く。

 

 

「おまっ!急に大声出すなよ!びっくりするだろうが! 」

 

「も、申し訳ないっす」

 

 

捲し立てるように喚くジルウェにリヒティはたじろぎながらも、率直な詫びを入れる。

 

 

「ったくお前でまだよかったがこれがクリスティナだった日には何言われるか…んで何の用だ?用があるから俺探してたんだろ?」

 

「そうなんすよ。ジルウェに見てもらいたい物があって」

 

 

そう言ってリヒティはジルウェに壊れたカメラと飛び散った部品を手渡す。

 

 

「これまたずいぶんと古めかしいカメラだな」

 

「それを直して欲しいんすけど」

 

「あー見た感じそんな重症でもなさそうだし部品はめ直して完全におしゃかになってんのは予備がありゃどうにかなんだろ」

 

 

カメラを片手にジルウェは邸宅内に戻り勝手知ったるという表現が正しい無駄のない足取りで工具類を持ち出し、リヒティにあてがわれた個室で修復を始める。

 

 

「どうっすか?直りそうっすか?」

 

「そんな古くないタイプだし大丈夫だろ。この手のカメラは図体がでかいだけで内部構造はそうややこしくない。仕組みさえ理解できてりゃすぐ終わるぜ」

 

 

口と手を同時に動かしてジルウェはカメラを直していく。

時折手つきが覚束なくなる場面も見られたがてきぱきと作業をこなすジルウェを見守るリヒティの頭にある考えが過った。

 

 

(やっぱ絵になるっすねえジルウェは…)

 

 

同じ男だというのに何故こうも差が出るのかリヒティは納得がいかないところがあった。

モビルスーツパイロットとスペースシップの操舵士、年齢差、それぐらいしか違いがないというのに自分とジルウェではどこか男としては格が違うように思えてならない。

 

 

「-ヒティ、リヒティ」

 

「あ、なんすかジルウェ?」

 

「終わったぞ。何ボケっとしてんだ?」

 

 

リヒティが思考に没頭していた間にジルウェはカメラの修復を終えたようで、リヒティの注意はそちらに戻された。

 

 

「ほんと助かるっすよって何してるんすか!?」

 

 

礼を告げようとした瞬間リヒティの声が上ずった。

 

 

「何ってお前、データが吹っ飛んでないか確認してんだよ。問題あるか?」

 

「いや、問題というか、その何と言うか…」

 

「どうした?何かあるんならはっきり言えよ」

 

 

返答をはっきりしないリヒティに釈然としない思いを持ちつつも、ジルウェはカメラに記録された映像を閲覧する。

そして再生された映像を見た途端彼の表情はひきつった。

映像自体は破損を免れきちんと残されている。だが問題はそこではない。

スメラギ・李・ノリエガと王留美、二人の水着姿が長々とそれもピントを合わせた状態で映り込んでいたのだ。

 

 

「……」

 

 

ジルウェは暫し無言で何とも言えない面持ちで映像を眺め、一度深いため息をつく。

ハラハラと不安な眼差しをリヒティが向ける中ジルウェは彼に不気味なくらい清々しい笑顔を向け、おもむろに受話器へと手を伸ばす。

 

 

「通報するか」

 

「待って!待って!待って!」

 

 

笑顔から侮蔑の表情へと一変したジルウェにリヒティが懸命に説得を謀る。

 

 

「誤解っすよ!」

 

「いや無理だ。救いようがねえよお前、せめてもの情けだ。恥かかないうちに俺の手でブタ箱にぶちこんでやるよ」

 

「マジでやめてくれないっすか!冗談っすよね!」

 

「こっちが言いてえよ。よりにもよってこんな盗撮なんてテロリストの風上にも置けない真似しやがって、しかもお前被写体身内だぞ。この時点で大分引くぞ」

 

「そんな、俺達仲間じゃないっすかぁぁ~!」

 

「テロリストと変態のテロリスト一緒にすんな。安心しろ。今捕まっておけば、後々俺らは殺されてもお前は変態の烙印を押されたままテロリストの一味とは知られずブタ箱の中で過ごすんだ」

 

「それのどこが安心なんすかねえ!」

 

 

息をつく暇もない一方的な舌戦を展開するジルウェとリヒティ。

口論に疲れて肩で息をするリヒティを尻目にジルウェはあきれたように呟く。

 

 

「今回は見逃してやるけどよ。これに懲りたらお前気を付けろよ。ただでさえ口煩いクリスティナに色々言われるぞ」

 

「あのジルウェ、ジルウェってクリスティナやフェルトと仲いいっすよね?」

 

「ん、まあたまに飯食ったりとかしてるけどそれがなんだ?」

 

「ぶっちゃけどうっすか?」

 

「はあ?」

 

唐突に妙な質問をされた上に、質問を質問で返されさしものジルウェも目が点になる。

 

 

「さっきからなーんの話してんだお前」

 

「だからクリスのことどう思ってんすか?」

 

「いや何で急にそんなこと聞くんだよ」

 

 

困惑するジルウェ。

しかしふとリヒティの態度を冷静に観察してみると合点がいったかのようにああ、と呟く。

 

 

「さてはお前クリスのこと好きか」

 

「ちょっ!そんなぶっちゃけなくてもよくないっすか!」

「ふゃあが、ほまえや」

 

 

あっさり図星を突かれたリヒティは遅まきながらもジルウェの口を塞ぎにかかる。

顔を歪めつつジルウェは「ピュアかお前は」とまともに発音できぬままリヒティに反論した。

 

 

「とりゃえずてぇどけろ」

 

「ああ、悪いっす!」

 

「ったく、これで俺より年上ってんだからな。世の中まだまだ不思議なことがあるもんだな…んで?クリスがなんだって?」

 

「だからその…ジルウェはクリスのことどう思ってるんすか?」

 

「どうってなぁ…話しやすくていいやつだな。俺にとっては、面倒見もいいし」

 

「ジルウェもそう思うっすよね!!」

 

「お、おう」

 

 

これまでにない程食いついてくるリヒティにたじたじになるジルウェ。

リヒティはそんな彼に構わず一人自分の世界に入ったまま、問いかけを続ける。

 

 

「それでその、異性としてはどう見てるんすか?」

 

「安心しろ。お前の恋路を邪魔するような野暮な真似はしねぇよ」

 

「ほんとっすか!」

 

「ああ、むしろ応援するよ。今のところ一切好意を寄せていないクリスと奥手なお前がくっつくなんて土台無理な話だろうが、くっついたらそれはそれで面白そうだ」

 

「ジルウェ…さらっと傷つくこと言われたかも知れないけどありがとうっす!!」

 

 

感極まった様子で手を握るリヒティと健やかな笑みを浮かべるジルウェ。

 

今ここに『リヒティの恋愛を成就させよう同盟』が締結されたのだった。


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