アイツ"ら"の愛は重い?   作:因幡の白ウサギ
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4000字しかないけど堪忍してつかぁさい。


高町ヴィヴィオの憂鬱

「はっ…はっ…はっ…」

 連休合宿が終わり、いつもの日常が帰ってきた。
 そんな中で私は今日も今日とて日課の早朝ランニング。今日は平日だからナカジマジムまで遠出はしないで、近所を1時間ぐるぐると回るだけ。
 変わり映えのしない景色に飽きが来るし、本当は平日もナカジマジムの方まで行きたいけど、此処からだと時間的に学校に間に合わなくなるので我慢している。

「………!(うでをぶんぶんさせてアピール)」

「はっ…はっ…?もう、終わりかぁ……」

 無心で走る私の前でクリスが手をばたつかせて時間が来た事をアピール。長く走った気は全くしないけど、これはきっと私が走るのに慣れただけだろう。
 今度はもう少し走る時間を伸ばしてみてもいいかもしれないと考えながら、ペースを落として息を整えながら家に帰る。

「ただいまー」

「おかえりー。シャワー浴びてきちゃってー」

「はーい」

 リビングの方からするなのはママの声を背に受けながら汗を流すために廊下を通って風呂場へ直行。脱いだ服をささっと洗濯機に叩き込んで、そのまま頭からシャワーを浴びる。ちょっとぬるめの水温が火照った体に心地いい。

「あ"~~~~~……」

 そんなおっさんみたいな声を出してシャワーを浴び続けること数分。閉じていた目を開けると、目の前の鏡には自分の姿が写っている。

「……むぅ」

 私の身体にはまだ色々と未発達な部分が残っているけど、それでも同年代より幾分は発育がいい。目標がアインハルトさんだから霞んで見えるだけだ。
 実際、なにを食べてどんな運動をすればあんな急速に発達するのか疑問は尽きない。2年前はそこまで胸も大きくなかった筈なのに。

 アインハルトさんの生活を真似すれば私もああなれるのかな……

「……でもなあ。真似をするっていっても、そのためにシュウさんと同じ屋根の下で何年も暮らすって必要が……」

 もう前提から叶わないんだけど。

 アインハルトさんみたいな家庭事情ならワンチャンあったかもしれないけど、家で立派にママをしている2人のママが許す筈もないのでワンチャンすらない。不満じゃないからいいけどね?
 しかし、改めて字面に起こすと訳が分からなくて笑いがこみ上げてくる。2人のママってパワーワードすぎないかな。


 閑話休題

 確かに私は前提からしてアインハルトさんとは違う。しかし、いやだからこそ、私にはアインハルトさんには無いであろうアドバンテージがある。
 私は思う。向こうは常にシュウさんにくっついているが、裏を返せばそれは飽きが来やすい事と同じじゃないのかと。
 どんな好物だって、毎日出され続ければうんざりするだろう。それは食べ物に限った話ではなく、全てにおいて適応されるはず。

 つまり、向こうが常にくっついているのなら、こっちは意外性というか、目新しさみたいな物で勝負した方が勝率は上がるのでは?というか、これしか勝ち目無くない?と私は考えている。

 しばらくシャワーを浴びていると、私の腹の虫がくぅくぅと唸り声をあげた。お腹減った。

「…………よし。今日も頑張ろう」

 なのはママ曰く、朝ごはんには、1日に必要なエネルギーの全てが詰まってるんだよ。との事だけど、それは私も運動してるとよく痛感する。なんというか、食べないと身体が上手く動かない。

 着替えに袖を通してリビングへ戻ると、そこではメガネ装備のフェイトママがコーヒー片手にテレビを見ていた。めったに見ない珍しい光景に思わず二度見。

「おはようフェイトママ。この時間に家に居るなんて珍しいね」

「おはようヴィヴィオ。言われてみればそうかもね、いつもはもう仕事に向かってるし……ふあぁ」

 普段はこの時間に居ないフェイトママは、今日は非常に珍しくパジャマ姿で眠そうな様子を隠さなかった。少し目を離した隙に眠ってしまいそうだ。

「……大丈夫?凄い眠そうだけど」

「最近は忙しさに輪をかけて忙しくて……」

 普段の言動と奇行からは想像があまりできないけど、フェイトママにだって活動限界はある。眠そうに見えて口調が素に戻った時は本気でギリギリな時だとなのはママは言っていた。つまり今だ。

「ご飯出来たよー。はい、ヴィヴィオは座って。フェイトちゃんはどうする?食べてから寝る?」

「ううん、コーヒーだけ飲んだらもう寝る……あふぅ」

 ぐっと一息で飲み干すと、フェイトママはそのまま千鳥足でリビングから出ていった。

 ……そして程なく"バタンッ"と何かが倒れたような音がする。そして「お゛う ゛ っ ゛ 」という声も。私となのはママは顔を見合わせて思わず苦笑い。

「ヴィヴィオは食べてて。私はフェイトちゃんをベッドに運んでくるから」

「はーい」

 フェイトママを運びになのはママとレイジングハートがリビングを出て、残ったのは私とクリスだけ。背中から聞こえるテレビの音をBGMに私は食べ始めた。

<フェイトちゃんしっかりー

<なのは……私は多分、3人目だから…………

<ネタなのかマジなのか判断に困る発言やめて

 あー、休みが終わるのは早いなぁ。



 00-V



「おはようリオ、コロナ」

「おはよーヴィヴィオ」

「おはようヴィヴィオ」

 St.ヒルデ魔法学院の生徒達が利用するバス停の前でリオとコロナに合流して、そのまま学校へ。

「今日って小テストあったっけ?」

「応用魔法理論で一つ、後は実技が一つあったような」

「うげっ、実技はともかく魔法理論か〜……アレ苦手なんだよね。聞いてると眠くなるし」

 それに関しては大いに同意できる。理論系の授業は真面目に受けなければならない筈なのに、どうしても眠くなってしまうから。
 あの授業を受け持つ教師はラリホーマを使えるとリオは常々主張しているけど、妙に説得力を感じるのは私も寝落ちした経験があるからなのかな。


 そんな感じの当たり障りないことを話しながら昇降口へ。まあまあ混み合っている昇降口で右に左にと人の波に流されながらもなんとか自分の下駄箱前に辿り着いた。

 そうして下駄箱を開けると、そこには情報化社会の今では絶滅危惧種であろう真っ白い便箋があった。
 私はそれを素早く手に取り、靴を入れ替えるような形で下駄箱に手早く突っ込む。手紙は鞄の中へ丁寧に押し込んだ。

「クリス」

「…………(くびを左右に軽く振る)」

 クリスが出した答えは黒。つまりアウト。私の表情はきっと苦虫を噛んだようなものに変わっている筈だ。

「どうだった?」

「ギルティ」

 苦笑いが2つ増えた。

「またかー、最近多くない?」

「まあ、そうだね」

 これで5回目。分かってはいた事だけど、間接的に悪意を叩きつけられるのはどうにも慣れない。
 しかし、真っ白い便箋を見て真っ黒いとはこれいかに。

「でも気にする事でもないよ。いつもみたいにシャンテとか、シスターシャッハに丸投げすればいいかな」

 そう言った私の頭の中では、デフォルメされたシスターシャッハがシャンテを捕まえて説教しているいつもの光景が繰り広げられている。もし怒られているのなら多分今頃かな。

「っと、ごめん。ちょっとトイレ」

「ん、じゃあ先に行ってるよ」

「うん。じゃあまた教室でね」

 階段の前で一旦リオとコロナとは別行動。2人は階段を上っていき、私は一階の廊下をそのまま進む。St.ヒルデはかなり広いから、トイレに行くのにもそれなりに歩かなければならない。

 私が1歩ずつ歩を進める度に静まり返った廊下にチリンチリンと鈴の音が鳴り響く。今は肩に乗っているクリスのリボンに付いている鈴が鳴っているのだ。

 廊下の突き当たりを曲がって15秒くらい歩けばトイレがある。
 トイレの清掃をしていた人と入れ替わるように私はトイレの個室に入りながら後ろ手で鍵をかけ、鞄に押し込んだ便箋を取り出しながら言った。

「──セイン。居るでしょ?」

「そりゃもちろん」

 トイレの壁から生首とかいうホラー映画みたいな目の前の状況にももう慣れた。それはセインの能力を悪用した脅かしに何度も引っかかったからだし、このような会い方を繰り返している所為でもある。

「これ処分しといて」

「はいはいっと。まったく、連中も懲りないねぇ」

 壁から伸びてきた腕が手紙を掴んで、やがてそれは壁の中へ消えた。

「ほい、確かに受け取りましたっと。じゃあちゃちゃっと渡してきちゃうよ」

「うん、お願い」

「このセイン速達便に任せとけって」

 そのやり取りを最後にセインの生首は壁の中に消えた。それを見届けてから私は普通に用を済ませてトイレから出る。
 "清掃中"と書かれた立て看板を掃除用具入れにしまっている用務員さんの背後を通り抜けて廊下に出ると、廊下の向こうの側から喧騒が微かに聞こえてきていた。


 01-V


 聖王教会のとある場所には、"嘆きの部屋"と呼ばれる呪われた部屋があるという。
 そこに入ったが最後。決して出る事は許されず、部屋の中からはその事を嘆くすすり泣きと呻き声が永遠に聞こえるらしい……聖王教会の職員達の間で囁かれている話の一つだ。

 それだけ聞くとホラーな話のようだが、この話をする時の職員達の表情は決まって明るい。
 それは、これが与太話の類いであり、実際には存在しない事が確定しているから──ではない。

 嘆きの部屋は実在するし、そこからすすり泣きと呻き声も実際に聞こえてくる。しかし、その部屋の前を通る職員達は肩を竦めて声を出さずに笑いあいながら通り過ぎるのだ。

「…………」

「はい。次の書類です」

「……ねえシャッハ」

「駄目です」

「まだ何も言ってないのに」

「いいから仕事してください。書類の山はまだ大量にあるんですから」

 バッサリと懇願を切り捨てられたカリムは机の上で力尽きた。

 職員達が笑っているのは、部屋の内側で繰り広げられている惨状を職員が正しく理解しているからである。
 嘆きの部屋とはカリムの執務室の事で、出る事が許されないというのは仕事が終わっていないから。すすり泣きと呻き声はカリムが出している。

 職員達はそんな上司を見て「仕事をサボってるとああなる」とネタにしているのだった。それと同時に「あんまりサボりすぎるとシスターシャッハ(なまはげ)に連れ去られる」とも言われていたりするのだが、そんな事はネタにされている両人が知るはずもなかった。

 少なくとも今は。

 その事について水色髪のシスターが用事ついでに口を滑らせ、なまはげ(シスターシャッハ)が全力で教会内を走り出すまで、あと5分




おまけ

「どーも。フーカ&リンネの、忍者アニメと聞いて真っ先に思い浮かぶのがニニンがシノブ伝な方、フーカです」

「ドーモ。フーカ&リンネの、ニンジャアニメイシヨンと聞いて真っ先に連想するのはニンジャ出て殺す例のアレ、フーカです」

「あの作品の"1/3+1/6+1/2だけくれ"は今でも使える名言だと思っとる」

「リリカルなのはvivid完結オツカレサマドスエ。しかし、そこからvivid strikeの漫画が始まらないのはケジメ案件では?」

「まあ確かに。そこの辺りはどうなっとるんじゃろな」

「ところでさっきからリンネ=サンが見当たらないが、わしは誰と話しているのだろう」

「「…………ん?」」

次回 魔術師、還らず

リンネが飲む朝のコーヒーは、苦い







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