もしも、バーサーカーが誰かにイリヤスフィールを助けてほしいと願い、それに答えた者がいたなら。







完全に思いつきなので批評等はご遠慮ください

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IF バーサーカーの死後、もし、彼が呼ばれたなら

狂戦士は数多もの鎖に縛られ、最後の命を散らした

 

「やだ、やだよ……バーサーカー!」

 

叫ぶのは彼のマスターである少女、しかし、彼の狂戦士はそれに答えることはできない。対峙していた黄金のサーヴァントは一本の剣を抜き、狂戦士へ歩み寄る少女を眺める。

 

──つまらない──

 

それが、この男、ギルガメッシュが抱いた感情だった。

大英雄ヘラクレス、狂戦士として召喚された彼はギルガメッシュと同じ半神半人の英雄だ。サーヴァント同士の戦いなどギルガメッシュにしてみればお遊びもいいところ、英雄殺しの武器を千と保有している彼からすれば他のサーヴァントなど凡夫に過ぎない。だが、ヘラクレス、彼は自身の持っていない彼唯一の宝具を所有している。【十二の試練(ゴッドハンド)】それは生前のヘラクレスが課せられた十二の難行を乗り越えた逸話そのものが宝具として顕現したものだった。それだけは自身の蔵にはない。尚且つ、この男にはAランク以下の宝具が全くと言っていいほど通用しないのだ。故に、ギルガメッシュは期待をした。このつまらない戦いで、自身とまともに張り合える猛者が現れたこと、しかし、蓋を開けてみればどうだ?奴はマスターの人形を庇うばかりで攻めて来ない。最後の最後まであの小娘を守り続けるとはくだらないにもほどがある。確かに、宝具を全て叩き落としたのには驚いた。だが、その程度だ。12個の命を全て使い切り、マスターを守る。だが、ギルガメッシュに擦り傷一つ負わせられなかったことで、ヘラクレスが死んだ後、必然的に彼のマスターも死ぬのだ

 

「……ふん」

 

ギルガメッシュは歩き出す。此度の聖杯でなすべきことがあるが故に、この娘の心臓が必要だ。なれば、殺して奪う。先程から階段の上に誰かいるのは気づいている。あえて無視していたが、あちらも何もしてこないので特に気にはしなかった。

 

狂戦士は彼女を守ることを望んだ。

それは彼が召喚された時から、目の前にいた少女を守ろうと誓ったのだ。武には自身がある。そこいらの英霊が相手なら負ける気がしなかった。だが、目の前の男は規格外すぎた。マスターの少女を守るのが彼の関の山だったのだ。傷一つ負わせることもなく破れてしまった自分が妬ましい。だが、彼が消える直前まで願ったのは

 

───誰でもいい。マスターを……この孤独な少女を自分の代わりに助けてあげてほしい───

 

ギルガメッシュが少女……イリヤスフィールの目の前に立つ。その手には剣を持って、イリヤスフィールには成すすべはない。ただ殺されるしかない、だが、願ってしまった。誰でもない過去にかっこいいと思っていた自分の父親に……

 

「助けて……キリツグ……」

 

「死ぬがいい、人形」

 

剣が振り下ろされる。瞬間、鉄のぶつかる音がした

 

「なに?」

 

「え?」

 

少女を抱きしめ、振り下ろされた剣をナイフで受け止める男がそこにはいた。肌は褐色で、髪は白く染まっている。しかし、その顔は忘れてはいなかった

 

「だいぶ、遅くなった。迎えに来たよイリヤ」

 

「……キリツグ?」

 

10年前に最後に聞いた優しい父親の声がイリヤスフィール耳に届く。彼は助けに来てくれたのだ。どれほどの奇跡かは言われるまでもないだろう。彼は確かに死んでいる。それなのにこの場にいるということは、彼は、衛宮切嗣は英霊としてこの場に降り立ったのだ

 

「貴様……前回のセイバーのマスターか!」

 

「ああ、ギルガメッシュか……僕の娘に手を出した罪は重いぞ」

 

ギルガメッシュですら底冷えするような冷たい声。

腕の中にいる少女は初めて聞く父親の冷たい声。

 

「ふん、興醒めだ。此度は引いてやろう」

 

「……逃すと思っているのか?」

 

「貴様がどういう経緯で英霊に……いや、守護者になったのかは聞くまい、だがな、貴様が何人集まったところで我は倒せん。精々、次会う時までに勝算を見つけておくことだな」

 

そう言ってギルガメッシュは黄金の粒子となって消えていく。その場には父と娘だけが残っていた

 

「ごめんな、イリヤ、怖かっただろう?」

 

先程までの声の冷たさはまるでない。

自分の知っている衛宮切嗣が目の前にいた。

約束は守られた、必ず迎えに来るからと。あの冷たい冬の城での約束は10年越しに守られたのだ

 

「キリツグ……キリツグ!怖かったよ!」

 

「ああ、もう大丈夫だ。父さんが、イリヤの敵をみんな倒すから」

 

自身の胸の中で泣く娘を抱きしめて、切嗣は階段の上を見つめる

 

「出てきたらどうだい?そこにいるのはわかってるんだ」

 

「え、誰かいるの?」

 

声をかけられた先から出てきたのは赤銅色の髪の少年と黒髪の少女だった

 

「シロウ……リン?」

 

「ああ、ごめん、イリヤ助けてあげられなくて」

 

答えたのはシロウ……衛宮士郎だった。

 

「ううん、いいの。キリツグが助けてくれたから」

 

「士郎……君もマスターになったんだね?」

 

問いかけられる父親からの問い

 

「いや、元マスターだ。俺にはもうサーヴァントはいない。キャスターに取られたからな」

 

「そうか、だが、どうして君は戦う?」

 

「聖杯戦争なんて馬鹿げた殺し合いを止めるために」

 

「だったら、なんでここに来た?」

 

「イリヤに協力してもらう為だ」

 

「君の目的は?」

 

「聖杯の……完全な破壊だ」

 

答えに満足がいったのか切嗣は目を閉じる。

 

「僕は今は2人の父親でありたいと思うが、生憎とイリヤのサーヴァントとして現界している。クラスは救済者(セイヴァー)、バーサーカーの願いを聞き届けて現界した。イリヤが士郎からの協力を拒否した場合、どうなるかはわかるよね?」

 

「……ああ、わかってる。だからこそ、俺はイリヤに問いたい。イリヤ、聖杯戦争を終わらせる為に俺と遠坂に協力してくれ」

 

「お願い。イリヤスフィール」

 

2人揃って頭を下げる。それをイリヤは見て悩み、父の顔を見る。その顔は「イリヤの思うままにしなさい」と語っていた

 

「いいわ、受けてあげる。シロウ、リン、アインツベルンはあなたたちを同盟相手と認めてあげるわ」

 

「ありがとう、イリヤ!」

 

士郎は喜び、イリヤの手を取る

 

「けど、条件があるの」

 

「なんだ?飲める条件ならなんでも飲んでやる」

 

「シロウのお家に行かせてほしいな。もともとキリツグのお家なら、私が行っても……いいよね?」

 

その条件に士郎は一瞬驚いたのか、凛の顔を見る。しかし、答えは決まってると言わんばかりに言葉を返した

 

「もちろん、彼処は切嗣の家だ。そして、切嗣の娘がイリヤならイリヤの家でもある。“家族”を家にあげるのに躊躇いなんかない」

 

「……うん!」

 

「よかったな。イリヤ、そして、ありがとう士郎。そして、リン?ちゃんでいいのかな?君もありがとう」

 

「べ、別に構わないわよ。彼処は衛宮くんの家なんだし」

 

多くのものを失った。

イリヤスフィールの……いや、アインツベルンの聖杯戦争はここで終結した。

 

その後の顛末をここに記しておこうと思う

 

キャスターは衛宮切嗣の宝具の一つ【起源弾】を受けて死んだ。セイバーを取り戻した衛宮、遠坂、アインツベルン陣営は凛をアーチャーに連れ去られてしまう。再び訪れたアインツベルンの城でアーチャー、英霊エミヤは結果として衛宮士郎に破れ、彼を認めた。その過程で英霊エミヤキリツグとの対話もあった。ここで、正史と変わったのはギルガメッシュの仮初めのマスター間桐慎二が逃げている途中に何者かに殺害された事だろう。そして、言峰綺礼は生き残り、ギルガメッシュのマスターとして立ちはだかったのだ。最終決戦ではギルガメッシュの相手を衛宮士郎が、アサシン、佐々木小次郎の相手をセイバーが、言峰綺礼の相手を衛宮切嗣が行い。これに勝利した。

 

その後、柳洞寺の地下、大空洞にて、イリヤスフィールに溜まった英霊の魂を一度大聖杯に接続し、魔力だけを流して一度聖杯を完成させ、それをセイバーの宝具【約束された勝利の剣】で吹き飛ばすことに成功。奇跡とも言える結果でイリヤスフィールは生存し、最後まで勝ち残った3騎のサーヴァント、アーチャー、セイバー、セイヴァーは現世に残ることができた。

 

イレギュラーな聖杯戦争は終結し、イリヤスフィールや衛宮士郎は衛宮切嗣とともに空いてしまった10年の時を埋めるように家族として暮らしていった。

 

更に数年後、衛宮士郎と遠坂凛は結婚をし、子供を授かり冬木にある武家屋敷で静かに家族で暮らしたとのこと

 

イリヤスフィールは聖杯としての機能を失った為か、年齢に沿うようにどんどん成長を遂げ、母親のアイリスフィールに迫る美人になり、父親の衛宮切嗣は涙を流していたという。

 

これで、この話は終わり。

もしも、衛宮切嗣がサーヴァントとしてイリヤスフィールの最後に現れ、助けていたら。それはきっと、こんな物語だったのではないだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 



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