Daydream 0(デイドリーム・ゼロ)   作:皐月潤

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大きい方の虎徹GETだぜ!
宝物庫荒らしまくってやんよ。


第十一話~武器の仕事~

少女審神者(予定)side

 

 

 

 ──私は、今、夢を見ているのだろうか?

 

 限界まで見開いた目が、乾燥ではなく感動から濡れていく。

 目の前の加州清光はひどく優しい笑みでこちらを窺っていて、握る手は温かく柔らかく、思いやりに溢れている。

 

 この家にいて、人の温かさに触れるのは初めてだ。

 それに気付いて傷つく心にも傷ついた。

 これだけ愛されていないのに、まだ自分では期待をしているのか。

 見向きもしない人に縋り付き、愛して欲しいなんて(みじ)めったらしい。

 プライドが無いのかと自分を罵りたい。

 

 全然まったく平気な振りをして、家族を嫌いながらも自分を見てほしかった。

 私が一体何をしたのか教えてほしかった。

 周囲のほのぼのとした一家団欒が心底羨ましかった。

 私以外で成り立つ仲良し家族が──切なかった。

 

 ちっともまともに目を見てもらえないんだから、もう無理だと、私だけがこの家で家族ではないのだと知ってはいた。

 でも、友人でも満たされない無償の愛というものは甘美で、眠くなるような温かさとどうしても手を伸ばして手に入れたくなる魅力があって。

 いつしか、無条件に受け入れてくれる【人ではない付喪神】に夢を見ていた。

 

 

 

「ぁ、う」

『うん……今までよく頑張ったね、主』

「ひぐっ」

 

 いいこ、と。どこまでも甘やかな加州に、情けない嗚咽が漏れた。

 内に包み込むような大きな腕が、私を取り囲む。何者からも守るように。

 

『もう大丈夫だよ、私が来たからね。悪い(えにし)は断ち切ってあげよう』

「…パッ、パ……」

『ふふっ』

 

 真上に見上げたそこに、キラキラとエフェクトがかっている麗しい御神刀様がいらした。

 うっかり親代わりにパパ呼びしていたことがモロバレしてしまったが、それはそれは幸せそうな微笑みにこちらが気抜けする。

 怒ってない。それどころかめっちゃ嬉しそう。パッパまじ包容力。

 

「ちょっとちょっと! 何よぉこれ、あんたがヒロインの逆ハーみたいじゃない!」

「ぎゃくはー?」

「ちょ、おま、ここでそんなオタク知識披露すんな、つかお前ゲーム機持ってないから未プレイだろやめろ下さい!」

 

 妹も私の部屋には無許可出入りしやがるので、私の室内にある乙女ゲー(小銭稼ぎと親族からのお年玉で買いましただって愛に飢えてたの言わせんな恥ずかしい!)でパッケージ読みしただけの中途半端知識と思い込みで文句を言う、これ何て羞恥地獄。

 

 石切丸の腕の中で白目を剥く私に追撃がかかる。

 

「女の子がモテちゃう系のやつ! えっと、ぎゃ、ぎゃるげー?」

「(節子それ違う! BOYSサイドや!)」

「何それコイツの癖に生意気、夢見すぎ」

「(ゲームの中なんだから夢でいいんだよぉおおおお!)」

 

 死相すら出てきた私に姉妹はマジで容赦ない。

 

「あんた如きがそんな美形に惚れられるわけないじゃん、この人らもどうせコスプレやってるオタ友でしょ?」

「(違います刀剣男士です、二世紀先の次元の狭間から来られてます)」

「着物で刀とかマジうける。オニーサン写真撮っていーですかー?」

 

 妹は未来政府が秘匿する存在にレンズ向けやがった。

 

 とすっ。

 

 ガッチャン!

 

『ごめんなー? 俺たち撮影禁止だからさぁ』

 

 と芸能人発言するのは御手杵兄さん。あなたも来ていたのか。

 室内という狭いスペースで針の穴を通すが如く、スマホレンズを貫通しよった。さすがっす。

 

 身近に迫った槍の先が豆腐のようにスマホを刺し貫き、松田○作状態で床に落ちているそれにキョトンとした後、じわりじわりと頬をひきつらせる妹。小道具どころか本物の殺傷能力を持つことに今気付いたらしい。バカス。

 

「なっ、ななななな何すんのよっ」

『いやー時の政府が言うには俺達の存在って秘密らしくてさぁ、隠せって言うから』

 

 証拠残されそうになったら機械ごと撮影者を消せば機密保持になるらしい、ナ、ナルホドー! 穏健派な振りしてやるぅーヒュー!

 

『ふぅん……そう、そんなこともあったんだね。それで?』

「(やばい霊刀が中空に向かって会話してる)」

 

 室内戦有利な脇差しのにっかりも来てた、あなたはそこで何してらっしゃるの?

 

『あ、そうそう。ここの家族全員の真名と生年月日も教えてくれる?』

「(マジで何してんだ)」

『ご親切にどうも。おや、そんなことまで教えてくれるのかい?』

「(そんなことってどんなこと? 青江がにっかりどころかニッタリしてますけど)」

 

 しかし知ったら後悔しそうなので見て見ぬ振りをしよう、そうしよう。

 

『主』

「あっ、平野も!」

 

 我が愛しの近侍、粟田口さんちの平野きゅんがそこに居た。

 

『遅くなり申し訳ありません。遅参致しましたが、平野藤四郎、これより地獄の果てまで主にお供します!』

「平野きゅううううん……!」

 

 感動して涙が止まらない。

 嫌々でも無理やりでもない忠節を誓ったその瞳が嬉しかった。

 泣く私に困るでもなく、にこ、と微笑んで見せて。

 

『やっとお役に立てます。ええ、やっと! ふふっ、気合いを入れて特上銃兵を連れて来ましたよ!』

「おおお刀装兵! すごっ! かわいっ……かわいい?」

 

 あれ、目が疲れてるのかな? 銃兵の顔がゴ○ゴなんだけど。

 

 黄金色に輝く鎧の下に隠しきれない太眉が覗く。三白眼でほうれい線がしっかりクッキリ。直線の鼻筋にニヒルな口元。頭身が低かろうがその目が何より物語っている。「後ろに立つとブッコロリ」と。

 

「(こわあ! こわあ! まじこわあ! えっ、公式発表の刀装フェイスは? 戦ってるうちにこんなになんの?)」

『この殺気素晴らしいでしょう? 戦場ではスミス&ウェッソン社のリボルバーメインですけど、他にもウルティマ・ラシオや場合によってはグレネードランチャーも使い分けるんですよ!』

「ランチャー……?」

 

 あれ、私の情報って古いのかな? てっきり火縄銃でも使ってると思ったんだけどってか、重火器オールマイティ刀装兵とか何それ殺意高い。

 

「え、ええと……みんなは何で来たの、かな?」

 

 全員戦闘着で帯刀、特上刀装までお持ちだ。

 青江は家族の真名を見えない誰かから聞き出しているし、これ絶対平和な訪問じゃないでしょ。

 

 にぱ、と御手杵が笑った。

 どかん、とリビングの扉が吹っ飛んだ。

 

『はっはっは! 刀剣乱舞始まるぞ!』

 

 岩融、ここを戦場にする気か?




イベントで窒息させられそうな審神者です。資材と依頼札に休息はないん?

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