「時間が無いから単刀直入に言うけど、彼女たちについて相談があるの」
「彼女たちとはアルベドたち階層守護者について、という事ですか?」
「いいえ違うわ。そうね、言い方が悪かったわね。このギルドアインズ・ウール・ゴウンに、ナザリック地下大墳墓に住まう元NPC達についてよ。これでもしモモっちと意見の対立があったら、私はこのギルドから脱退させてもらうわ」
エミーのその眼は今までのふざけていた態度とは全く違い、このギルドアインズ・ウール・ゴウンが結成されてから5本の指に入るくらいの付き合いの長さを持つモモンガが、ここまで真剣なのは初めてと言ってもよくモモンガも落ち着いてエミーの話を聞くことにした。
「それで、その話とは一体何ですか?」
「彼女たちに私たちの事について話そうと思うの」
「……!」
モモンガはエミーの話に驚きを隠せず絶句した。当然だ、自分たちの事について話すという事は自分たちが元は人間であるという事を教えるという事だ。アルベドだけではなくこのナザリック地下大墳墓に住まう
「彼女たちが人間にどんな印象を抱いているか、そんな事は最初から分かっているわ。…ここに来るまで数人のメイドに会ったの。名前すら憶えていないわ、そんな相手に私は聞いたの「私のことをどう思ってる?」って命令で本心を言うようにっとまで言ったわ。そしたら彼女たちはこう言ったわ「エミー様はこの世で一番美しく、私達を見捨てなかった慈悲深く聡明で尊敬していて、出来ることならエミー様の様な女性に生まれたかった」ってね。言い回しは違ったけど、聞いた娘は皆似たようなことを言っていたわ。それを聞いた時に私は彼女たちを騙しているような気持になったわ。それに、あの子たちはユグドラシルの時とは違って思考も魂も無いただのNPCではなく、自分の想いを感情を持った生き物になったの。そんな彼女たちに選択肢を与えるのは主であり親代わりでもある私達の役目だとは思わない?」
エミーの言葉にモモンガは言葉を失った。当然だ、もしそんな事をしたらどんな結末が待っているか、予想すら出来ないほどモモンガはバカではないし、エミーだってバカではない。それでも言わずにはいられなかった。
アインズ・ウール・ゴウンにはもちろんルールがある。とはいえ別にそこまで難しい物ではない、ゲームを始めたら挨拶してログアウトする時にはもう一度挨拶をする。と言った物ばかりだ、その中の一つにギルド内で攻略に行く際に意見の食い違いがあった際には、ギルド内の投票または当人同士の決闘で決めるという決め事がある。もしここでモモンガとエミーの意見が別れたら、2人は戦って決めるかどちらかが折れるかの二者択一を迫られる。
エミーの最初の前置き「ギルドから脱退させてもらう」というのはこのことを示していた。もしエミーの考えに賛同してくれたらこれからも一緒に過ごすことに、反対したらエミーはここから出ていく事になる。この未だに自分たちがこの世界で強いのか弱いのかも、そして自分たちの存在は普通なのか異形なのかも分からない状態で。
そんな状態で自分から出ていくと言い切ったエミーの覚悟は、常人では図ることの出来ない物だろう。そんな事はモモンガにも分かることだ。彼らは他の39人のメンバーが居なくなっても、ここを支えてきたのだ。別に言わなくても互いの事はある程度理解しているつもりだ。そんなモモンガが出した決断とは……
※
「すまないな皆、待たせたな」
モモンガとエミーが守護者達の前まで戻ると、そこには誰も立ったりだらけた座り方をした者はおらず、2人が席を外した時と全く変わらずにそこにいた。
「これからエミーさんから話がある。心して聞くように」
『ハッ!』
モモンガの紹介によりエミーは一歩前へ出ると「コホン」と小さく先払いをした。
「知っての通り私が先ほど紹介されたエミーよ、改めて皆とは初めて会話することになるけどよろしくね。さてまずは話を始める前に
エミーが手のひらを横へ振りながら一つ魔法を唱えると、それぞれの後ろにパイプ椅子の様な物が現れた。
そう、これがエミーの
料理に例えれば少しは分かりやすいだろう。料理を作る時にはその料理のレシピや材料を用意する。そしてその料理は誰が造るのか、そういったことを想像しなければ能力が使えない。もっとシンプルに言うのであれば、この職業はユグドラシル史上最も面倒臭い職業なのである。
「さあ、その椅子に座って話を聞いてもらえると嬉しいわ。安心して私達も座らせてもらうから。それからごめんなさい、こんな貧相な物で」
「そんな事はございません!エミー様のお造りになった物はどれも一級品の出来だと思っております!その様な貴重な品の上に我々の腰を落とす等出来るはずがありません!」
アルベドの言葉に守護者達は「その通りです!」と頷く者や口にする者がいた。するとコキュートスがスッと手を挙げた。
「恐レナガラエミー様、ワタシハコノ中デイチバン重クエミー様ガオツクリニナッタコノシナヲ、破壊シテシマウ可能性ガ高イカト」
コキュートスの考えはもっとものはずなのだが、エミーは「フフフ」と笑みを浮かべた。
「そうね、確かに貴方の考えは間違っていないわコキュートス。でも安心して、この椅子は別に高価な物ではないから壊れても別に構わないの。そしてこの椅子の耐久性は、私の魔法で例えこの上でガルガンチュアがコサックダンスを踊っても、耐えられるくらいの耐久性を誇っているわ」
エミーがそこまで言うと、ようやく全員が席に着いた。もちろんエミーやモモンガも同じ物に腰を置いた。
「さて、これから貴方達にはとある話を聞いてもらいます。いえ、聞きなさい。そしてその後一つの命令を実行してもらいます。それは『考えなさい』よ」
エミーの命令『考える』それは彼女たちにとって今は意味の良く分からない事だ。なので、その直後、場が多少ざわつくとアルベドが「静かに!」と声を上げた。
「畏まりましたエミー様、我々一同至高の御方のお話しの後に全力で思考いたします」
アルベドの返事にエミーは「よろしい」とだけ応えコホンと咳払いをすると話し始めた。
「さて、これから貴方達にお話しするのは、貴方達が至高の御方々と呼ぶ私達。いえ、正確には私やアインズ以外の39人の皆さんが何故居なくなったのか、それをお話ししようと思います」
エミーがそう言いきると、守護者達はまたざわつくと思われたがそんな事はなかった。というよりも、エミーが今から話すことは自分たちにとって大事なこと過ぎて、その言葉を一言一句聞き逃すまいといった気迫が感じ取れるほどだった。そんな中エミーは「ですが」と一拍おいて続けた。
「そのことを話す前に、前提条件として貴方達にはもう一つの事を話しておかなければならないわ。それは私達41人のプレイヤーの真の正体についてよ。最初にハッキリと言っておくわ、あのユグドラシルもそして私達のこの姿も造られた物なの。きっと今ので困惑している者も居るでしょうけど、意味は
エミーのその言葉には動揺を隠し切れなかった。シャルティアは辺りをきょろきょろし、アウラとマーレは目を丸くしながら互いを見つめ合い、コキュートスは長い荒い息を上げ、アルベドは平静に見えるが只々固まっていた。だが、そんな彼らを落ち着かせたのはデミウルゴスだった。デミウルゴスが「落ち着きなさい!」と声を上げると、全員が落ち着きエミーの話を聞く体勢が出来た。エミーはきっとデミウルゴスのスキルか何かだろうと思い「ありがとう」とだけ言うと話を続けた。
「そう、私もモモンガもその他のプレイヤー達も全てが人間よ。そして私達プレイヤーの半数近くは、会社や企業と言った組織、ギルドに属しているわ。特にこのギルドアインズ・ウール・ゴウンに属していた者たちは全員ね。そしてその中には家庭を持つ者が居るわ。もちろん私やモモンガみたいにそんなのを持っていない者もいたけれど。そしてユグドラシルはとあるゲーム会社が製作したゲーム盤、それに私たちはアクセスすることが出来その中で私たちは思い思いの姿形になり遊んでいたの。でも、遊びとは言っても本気だったわ、決して只の遊びなんかではなくむしろここにいた方が、自分が自分でいられすべてをさらけ出せる。そんなとても一言で言い表せない掛け替えのない場所だった。けれど、人生と言うのはそうそう思う通りには進んでくれないわ。例えどんなに大切な場所でも、家族と喧嘩してまで時間を作っても私たちの本当の肉体も魂もここには無いの。もし一週間も元の肉体へ戻らなかったら、私たちは死んでしまうの。私たちの様な独り身だったらそこまで大したことではないかも知れない、究極的に自己責任で済むのだから。でも彼らみたいに家庭を持つ人達や現実を手放せない人たちは違う。もちろんどちらを選ぶか、それはきっと容易な選択ではなかったと思うしそう願うわ。きっと悩みに悩んだ末の結果なんだと私は思っているわ」
「なるほどそういう事でしたか」
デミウルゴスは誰にも聞こえない声で呟くき、エミーはそこまで言いきると「ふぅ~」と一息つき本題へ入った。
「さて、ここからが本題よ。貴方達はそんな私達の下で働きたい?そして私達はここでこれからも過ごしてもいいのかしら?」
※
エミーのその問いにアルベドはすぐさま答えようとするが、それに待ったをかけたのは何とデミウルゴスだった。デミウルゴスは守護者達とセバスを加えて、コロシアムの隅へ集め防音の魔法を掛けた。だが、その行動にすぐさま怒りを露わにしたのはアルベドだった。
「どういうことデミウルゴス!なぜ止めたの、貴方まさか至高の御方々に反逆しよう等と愚かな考えを持っているのではないでしょうね⁉」
「まあまあ落ち着いて下さいアルベド。もちろん私はそんな事を微塵も思ってもいませんし、考えてもいませんよ。むしろ至高の御方々の命令に従っているにすぎませんよ」
デミウルゴスは眼鏡をクイッと掛け直しながら少し自慢げに弁明すると、コキュートスが「ドウイウ事ダ?」と質問するとマーレが「あ!」っと声を上げた。
「そ、そういえばエミー様がお話をなさる前に、話を聞いた後によく考えるようにと仰っていましたよね?」
マーレのその言葉で、デミウルゴス以外は「あ…」と声を上げデミウルゴスは周りの反応に表情は特に変わっていないが、自慢げに眼鏡をクイッと上げた。アウラは焦った口調で「さ、流石私の自慢の妹ハハハ…」とマーレの背中を叩きながら誤魔化し、アウラの妹発言に周りの者は「え?」と困惑した声を上げた。
「え、え~っと、そのことについては後で話すとして、デミウルゴス話を続けてくれない?」
「え、ええもちろんです。良いですか、マーレの言う通りエミー様はお話しをなさる前に私達に対して、考えろと命令を下しました。それはつまり今の肉体は仮初で本当の肉体は別にあり、しかもそれは人間の身体であるそんな自分たちが私達の主でも良いのか、またはこのまま主として続けても良いのか?という問いなされ、私達はそれに応えなければならない義務があります。それともう一つ、この問いには私達を試すための試練が組み込まれているのです」
「試練トハ一体何ノダデミウルゴス?」
「そこまで難しい内容ではありませんよコキュートス。その前に念の為に一つ確認しておきますが、セバス貴方が視てモモンガ様達にお伝えしたのは事実で間違いありませんね?」
「はい勿論でございますデミウルゴス様。この世界は以前我々が居たユグドラシルの世界ではなく、全くの別世界で間違いないかと。周りに木が生えており、その中にはいくつか実をつけている物もございまましたが、私の記憶にはどれも該当する果物はございませんでした」
セバスの言葉にデミウルゴスは「なるほどなるほど…」と一人で納得すると「早くエミー様の試練を教えて欲しいでありんすが」とシャルティアが催促すると、デミウルゴスは「すみませんすみません」と軽く謝ると説明の続きを始めた。
「私が思うにエミー様の試練、それは単純に私たちが御方方の忠義が本当の物なのか、信頼に値する
「う~ん、だとしてもどうしてエミー様やモモンガ様はそんな事を?」
「それもそこまで難しい事ではないでしょうアウラ。例えどんなに力を持っている御方でも、最悪の事態だけは避けなければならないでしょうからね」
「さ、最悪の事態?」
「私達守護者、並びに配下の者たちによる裏切り」
「その通りですアルベド。どんな王でも、配下の者は信用に値する者が好ましい。この新しくなった世界で最も避けなければいけないのは、混乱に乗じてモモンガ様やエミー様へ裏切り行為を行う者たちによる暗殺行為。それを阻止するべく、こうやって裏切り者またはその可能性のある者たちを炙り出し、早々に処刑することだと思われます」
デミウルゴスはそこまで言いきると、またもや表情を一つも変えず眼鏡をクイッと上げながらドヤ顔を行っていた。デミウルゴスの話を聞いていた守護者達はなるほど~と感心していた。ただ一人苦虫を嚙み潰したような悔しい顔をした者がいた。言わずもがなアルベドである。
アルベドは当初、エミーからの命令を無視して自分の考えをエミーへ示そうとした。そのギリギリでデミウルゴスに止められ、その後そのデミウルゴスに完璧なまでの説明を受け、アルベドの中のプライドはもうボロボロに近かったのだから。
「わ、分かったわ…もう、分かったわ。貴方が正しかったという事はデミウルゴス」
「それは素直に感謝を言っておきましょうアルベド」
「さて、ではこれから私達が至高の御方々をどう想っているのか、ここでハッキリさせましょうか」
※
「モモンガ様エミー様、大変お待たせ致しました。これより私達の想いを告げたいと思います」
「うにゅ…う、うむアルベドよ話すがいい」
二人の元へ戻った守護者達は、再び椅子へ座らず椅子の前で拝謁の姿勢を取りアルベドが代表してそう言うと、モモンガはやはり緊張している様で最初思いっきり噛んでしまったほどだ。その緊張からか、モモンガはまた出さなくても良い絶望のオーラを放っていた。
ちなみにモモンガは現実ではもちろん会社員をしており、何度か緊張する場面もあったがここまでの事は一度も無かったという。
「私たち守護者全員、モモンガ様エミー様並びに至高の御方々が例えどんな御姿、どんな真実があろうと絶対なる忠誠を誓います!」
「「誓います!!」」
「……なるほど各員の思いは十分に理解した。それでは私たちの仲間が担当していた執務の一部まで、お前たちを信頼し委ねる。今後とも忠義に励め。私からは以上だ。エミーさんは何かあるか?」
「そうね、私も貴女たちの忠誠を信頼にしましょう。もう貴女達に言う事はありません。ですが貴方達に一つ命令を追加します。守護者各員はそれぞれの部下に先ほど私が話しをきちんと伝えるように、アルベドは自身の部下と第四第八階層、セバスはまずプレアデスに話しその後プレアデスと協力してその他の僕へ話すように!そして、私達の下で働くのに納得いかない者が現れた場合は、決して貴方達が裁くことはせずその場合は私たちのどちらかの前へ連れてくる様に」
「「はっ!」」
エミーの言葉に守護者達は応えると、モモンガとエミーは互いの顔を見るとリングオブアインズ・ウール・ゴウンの力で適当な場所へ転移したのだった。そこには緊張で気持ち的に参っているモモンガと、その場に座り込んでいるエミーの姿だった。
「「あいつら……
どうも、前話での約束通り5月中に投稿した作者のshimito18です!いや~本当はGW中に出来るかな~?と思ってたんですけど、やっぱり物事って予定通りに行かないものですね~ww
さてそろそろ「言い訳するな!」というお叱りの声や「今回の後書きいつもより長くね?」と言った疑問の声も聞こえてきそうなのでお答えしますと、単純に私が好きなラノベ作者の後書きってやたらと長くてその影響ですね(笑)その先生のお名前は伏せさせてもらいますね。注意事項としては、今回の話のネタバレや次回に向けての方針などを書いてしまうので、ネタバレを避けたい人は読まなくておkですので無理に読む必要は皆無です。
さて今回はアニメでいうところの第2話のAパート辺りを長々と書いてみました。皆さんも読んでもらって感じてもらえれば幸いですが、エミーって部下思いの良い奴でしょ?ただの変態ではないんですよ。まあ、これにはちゃんとした理由?がありますので乞うご期待!
それからデミウルゴスの深読みはこんな感じで良かったですかね?私は頭良くないんでこのぐらいしか書けなかったので意見がもらえると嬉しいです。あ、感想では規約に引っかかりそうであれば、メッセージに下されば嬉しいです。
…さて今回の話はこれぐらいかな。で、次回からですが、どうしましょうか?やっぱりアルベドとシャルティアの正妻側室話はやったほうがいいですかね?でも、あそこは話的にほとんど本編と変わりないんですよね~まあ、世界征服話は絶対するとして。
それでは、話変わって実は読者の皆様へお願いがあります。この「オーバーロード 錬鉄の造物主」の主人公エミーのイラストを私のTwitterにて募集しております。投稿されたイラストは本編中もしくは前書き後書きにて紹介したいと思います。絵に自信がない方でもある方でも下記のURLにてどしどし投稿して下さい。お待ちしております。
さて、皆さん次回までお元気で!感想、お気に入り登録、評価等々お待ちしております!!
URL:https://twitter.com/A12Oshi