人たる所以を証明せよ、と魔法師は言った   作:ishigami

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 月とナイト
 嘘はつきとない
 月とナイト
 嘘はつきとうないから言うよ

   ――ecosystem/月夜のnet

















23 冗談

 

 ――「トーリ。おまえさ、ほんッと、いい性格してるよな」

 

 ――「いや、褒めてないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 両儀(しき)御嵜十理(おさきしゅうり)吸血(・・)するのには、当然のことながら理由がある。

 

 両儀織は、自身の裡に殺人衝動(・・・・)が存在していることを理解している。社会に適合するうえでこの性質はあまりにも異端であり、これを発散せず、溜めこむばかりでいては何時か暴発しかねないことも識っていた。だからこそ御嵜十理との「繋がり」を利用して供給源である彼の構成要素を裡に取り込むことで、定期的に「裡」から生じる衝動を塗り替え、閾値を上回らぬよう抑制し、さながら陰陽のように均衡を整えておく必要があった。

 

 無論、副作用はある。そして御嵜十理が「血」を媒介に体内精気を「吸われて」いる以上、彼も倦怠感に襲われざるを得なくなるという問題があった。

 

 しかし逆説すれば――被吸血者は、擬似的な抗躁剤の効果を得ることができるのだった(そも、幽体の総量が減る云々以前に、貧血になれば気分や身体が不活化するのは当然のことではある)。

 

 

「お前に言われて考えたんだが……このままだと、九校戦に集中できない気がしてな。どっちつかずになるのが一番困る。だから」

 

「今のうちに、保険をかけておこうって?」

 

「ご明察」

 

「……呆れた」

 

 ため息を吐く音。織のだった。そして、やっぱり目の前の少年が気にしちゃいなかったことを思い知らされ、少しささくれたような気持ちにもなった。あるいは、オレが怒っていると考えて、こちらに歩み寄ろうとしている?

 

「織のほうも、時期的に、しておいたほうがいいだろうと思ってな」

 

 どうだろう、と窺うような声色で。

 

 断る理由は、なかった。十理の懸念は否定できるものではない。それに、なんというか。

 

 ――断るのは、負けたような気がするし。

 

 負けっぱなしは、それこそ癪だった。

 

「わかった」

 

 覚悟を決めた、というのもおかしな話だが。身を起こし、毛布を退けた。

 

 隣の布団を踏む。互いに浴衣姿だった。

 

 安堵したような、明るい顔をしている。薄明りでも、それが分かった。

 

「にゃー」

 

 十理の布団のなかで、黄金の双眸が瞬く。

 

「だめ……にゃ」

 

 かじかじと、歯は立てず十理の指を()むようにしながら、抗議の声を上げた。

 

「私が、してほしいんだ。火艷(かえん)

 

「にゃあ。でも」

 

「それに、そんなに多く吸う必要はない。あくまで保険だ。だろう?」

 

「ああ」

 

 肌触りのいい毛並みを撫でながら、十理が微笑んだ。

 

 黒猫は、あるじ(・・・)の「お願い」を断れない。

 

「分かってるよ、クロ」射抜くようなその視線に、苦笑を返した。「気を付ける」

 

 一度。血を吸われ過ぎたためか、十理は体調を崩したことがあった。疲れが溜まっていたせいもあるのだろうが、そのとき火艷は猛烈な非難を織に浴びせたものだった。以来、吸血への理解は得られているものの、彼女の目は厳しい。無理もないことだ、と思う。それもあって、最近は吸血を避けてきたのだ。

 

「じゃあ……、しようか」

 

 十理が言った。頷く。口のなかが乾いているのを意識する。

 

 薄暗がり、空気の質に微妙な変化が生じるのを感じていた。緊張を帯びている。たぶん、自分がそう感じているから、そう思うのだろう。十理のほうに、気負った様子は見られない。

 

 正面から向かい合った。彼が、肩をはだける。衣擦れの音。纏うものがはらりと落ち、(はだ)の雪が露わにされる。

 

 ――ふわり、と――

 

 彼のものでありながら、普段の彼のものではない匂いが、すぐ傍にまで香ってきた。

 

「おいで」

 

 ――なあトーリ、気づいてるか。

 

「ほら」

 

 ――お前の顔。これから自分の血を吸う相手に向ける表情じゃないよ、それは。

 

 普通(・・)なら。怯えや抵抗があってしかるべきだろう。なのに、十理にはそれがない。

 

 むしろ、逆だった。響きは、子供に言い聞かせるみたいに優しかった。こちらの逡巡や苦悩を見透かしたうえで、すべてをやさしく抱擁するかのように。受け入れている。まるでそのことが、彼にとって心から嬉しいこと(・・・・・・・・)であるかのように。

 

 心臓の高鳴りと、かすかな胸の痛みを自覚した。何の感情に由来する痛みなのかは分からない。しかしどうしてか、十理から目を背けたいという想いと、彼の笑顔をずっと見ていたいという矛盾が織のなかに生じていた。軋むような痛みも。痛みにつけるべき名前を、今の織は知らなかった。

 

 常々の、犯し易からぬ冷貌は今は白桃の花のように笑っている。濡れ〃々たかの黒曜石は、あくまで信頼に清らかなのに、頬は恍惚(うっとり)と色づいている。温気(ぬくみ)にふっくらな下唇をわずかに開くと、見える並びの白磁の輝きは、てらてらとまみれて誘うようで……、ちろちろと引っ込んだ赤い舌が蠢く……、

 

 しき、と、

 彼が、名を、

 呼んだ――

 

 あまやかな吐息がひとたび音を為すと、背筋にふるえが奔った。まるで別人のような変貌――(いいや)(これ)は普段は(はだ)に潜んでいるナニカが(あらわ)れようとしているに過ぎない。さながらキャンバスで塗られた現実と虚構(ふたつのえのぐ)の境目に現出したかの只ならぬ気配には、深山幽谷の怪異ですらも慄然(ぞッ)とするような艶めきがあった。

 

 いつまでも、慣れることはない。だが此処に至って、どぎまぎもしていられない。煽情的であること、そして十理の雰囲気が異なることが織を戸惑わせていたが、このまま生娘みたいな反応でいては不自然に思われるし、告白しても心配されるか、わらわれるだけだった。大人しく背中に手を回し、顔の位置を調節した。香りが強くなる。彼の匂いが。痛みは、無視する。

 

 首筋。汗に混じった、マンションのとは違う石鹸の匂いがした。小さなほくろを見つける。いつも同じ場所にあるほくろ。唇で、濡らしてゆく。噛みつき易くするために。舌を押し返す肌が、緊張の加減を伝えてきていた。

 

 囁く。ちから、抜けよ。

 

 頷かれる。ああ、いいよ。

 

 して(・・)――

 

 織は、一気に突き立てた。

 

「―――」

 

 ンッ、とこぼれた吐息が、耳朶をふるわせる。弾力のあるものを裂き、肌の下に通った食感のあと、血の味が口のなかで跳ねた。

 

 

 ――ぴちゃり――くちゅり―――

 

 

 水気を含んだ響きの。

 

「………、」

 

 耐えるような、吐息(こえ)

 

「………、」

 

 織にとって、吸血という行為は率先してしたい(・・・)ことではなかった。しかし行為そのものに、最初期ほどの忌避感は、実は今は感じていない。

 

 啜る。飲み込むには、少しコツが必要だった。喉を滑り、食道を通り、腹のなかに落ち、そして生血に溶け込んでいた精気は、ゆっくりと織の躰に馴染み、広がってゆく。

 

 ――トマトジュースみたいに、たくさんは飲めないけども。

 

 吐き気を覚えたりはしない。真っ当な味覚であれば受け付けがたい「生血」でありながら、織はこれを「普通」に飲めてしまう。不味いと、思うこともない。

 

 味覚に異常をきたしているわけではなかった。生血を取り入れ続けた結果、十理に合わせて織の体質が変化したということなのかもしれない(・・・・・・)。本当のことは分からない。可能性は、なくはないのだろう。

 

 ――ますます人間してないよな、オレ。完全に。

 

 ――これじゃまるで吸血鬼だよ。

 

 互いに無言で。

 

 ンッ。

 

 織は。少年の、忍ばせようとする声を耳元にしながら、生温かい血を啜り、その熱が冷める間も無く胃のなかに滴り落ちていくのを感覚しつつ、奇妙な充足で満たされてゆくのを感じていた。そして次第に、愉しくなってくる。彼の苦しげな声が、徐々に織を高ぶらせてゆく。まだ冷静だった。だが、もっと(・・・)だ。もっと(・・・)、とこの感覚(・・・・)に自分を重ねたい欲求が膨らみ強くなってくるのを、俯瞰するような視座で感じていた。肌の雪を踏み荒らすように、自分を受け入れている彼の笑みをもっと(・・・)歪めさせたい。自分がしたこと(・・・・)(きずあと)もっと(・・・)刻み込んでやりたい。血をこぼすようなことはしないさ、そんなはしたない(・・・・・)真似はするもんか。オレが与えるおまえの痛みも、オレで感じているおまえの悲鳴も。ぜんぶ。一片だって取りこぼしはしない。だっておまえは(・・・・・・・)オレのものなんだ(・・・・・・・・)から(・・)――

 

 このまま首を掻き切ったところで(・・・・・・・・・・・・・・・)どうせおまえは(・・・・・・・)オレを(・・・)憎んだりしないんだろう(・・・・・・・・・・・)

 

「織。少し、強いよ」

 

「……ごめん」

 

 (こわ)いことを考えていた。考えただけだ、でも火艷が唸り声を上げているのは、今しがたした怕い想像をなんとなく悟ったからかもしれない。まだ、大丈夫だった。勝手に「魔眼」が開くようならともかく。自分の行動を理性的にコントロールできている。

 

「私は逃げたりしないから。あせらないでいい」

 

「ごめん」

 

 やさしく笑われる。「いいよ」囁くように。そして軽く、背を叩かれる。トントン。あやすように。完全に身をこちらに委ねたまま。無防備に。無警戒に。

 

 羞恥心に襲われる。だがそれ以上に罪悪感があった。今回は十理に乞われた形でしているが、だからこそ、自分の薄暗い欲求を隠していることに対して、思うところもある。

 

 本当は十理は気づいていて(・・・・・・・・・・・・)気づいた(・・・・)うえで(・・・)織を怕いとは思って(・・・・・・・・・)いないのかもしれないが(・・・・・・・・・・・)

 

 促される。

 

 吸う。

 

 甘い香りがした。彼の匂いだ。しかし明らかに普通とは違っていて、まるでフェロモンのように甘く感じられた。血も同じく。甘い味がした。酔い始めている、そう思った。

 

 濃厚な甘い香り。火艷に変化はない。やはり気づいているのは織だけだった。

 

 ――もっと(・・・)。嗅ぎたい。

 ――もっと(・・・)。吸いたい。

 ――もっと(・・・)もっと(・・・)

 

 なんとなしに、クチナシの花を思い浮かべた。十理がクチナシなら、引き込まれそうになっている、今のオレは、さしずめ吸血虫(ちすいむし)か。あんまりわらえないな。そして挙体芳香という言葉も浮かんだ。三大美女。躰からいい香りを立たせていた女たち。そういえばこの甘い香りは、どこか似ている気がする。自分の吸っている煙草の、あの特徴的な、クローブの香りとも。

 

 ふと、羞恥が加速するような「可能性」を思いついた。

 

 ――もしかして、オレがあの煙草を選んだのって。

 

 分からない。証明することはできない。たぶん偶然だろう。でもこれって、考えれば考えるほど墓穴にはまるような気がする。

 

 考えないことにした。

 

 ンッ。

 

「……トーリ。ヘンな声、出すなって」

 

 躰からはとっぷりと、花びらにくるまれたかの()いかおりを放っているうえ、血の陶酔作用が織に昂揚を及ぼしているせいか、

 

 ――さっきから、いかがわしいことやってるわけじゃないのに、そういうの聞くと、ますます背中とか腕とかがぞわぞわして、そういうこと(・・・・・・)してる気分になってきちゃうだろ。

 

 なまめかしい線の首は、唾と(べに)で濡れている。自分が汚したのだ、と思った。同時に、なにか形容しがたい、切々としたものが迫ってくるような気がして、胸が軋んだ。

 

「なあ。そういえば聞いたことなかったけどさ……どういう感じなんだ、血を吸われる感覚って?」

 

「ふむ」

 

 十理は。

 

 少し考えるように間を開けたあと、

 

「傷口に触れられると、やっぱり痛みはある。ただ、こうやって抱き合っていると、心地いい感じもあるかな。織は?」

 

「……嫌なら、こんなこと何回もしようなんて思わないだろ」

 

「そうか」

 

 嬉しそうに、彼が言った。

 

「私もだよ。たぶん、こう思えるのは、織が相手だからだろうな。……おい、なんで爪を立てるんだ」

 

「うるせーよ」人の気も知らないで。「誰のせいだと思ってる。まったく」

 

 少し、狼狽えてしまう。悪意はないのだろうから、余計に。

 

 ――笑ってるんだろうな。本心から。

 

 ――身内びいきでなくとも、トーリって美人だし。そんな顔向けられたら、女は一撃、男でも一撃だな。そのあたり、ちゃんと自覚しとけっての。危なっかしいったらありゃしないぜ。……けっこう天然なとこもあるし、こうやってときどき……いやわりと結構な頻度で爆弾だって放るし。

 

「お前だってそうだろう。違うのか? 私は、織にほかの人間で吸血してほしいとは思わないんだけどな」

 

「おまえ以外から血をもらう意味が、そもそもないだろ」

 

 吸血はあくまで手段で、十理の要素を取り入れるのが目的なのだから。

 

「それはそうだが。私にだって独占欲くらいはある」

 

 ――拗ねたような声。

 

 ――そんな声で、そんなこと言うなよ。

 

 噛みついた。

 

「痛ッ。織?」

 

 痛そうにしている。でもこれは、さすがに弁解の余地はないと思う。自分がどれだけ危険なことをしているのかまるで気づいちゃいないのだ。餓えた虎の前で、いい肉付きの鹿がでろんと仰向けになっているようなものだ。襲われたところで文句は言えない。

 

 ――夜でよかった。今の顔なんてゼッタイ見られたもんじゃない。この天然あほトーリ。ちくしょう、おかげで火を噴きそうだ。

 

 だが、黙ったままというのも彼に悪い。どうも、本気でそう思っているようだから。仕方ないな、一度しか言わないぞ。「……おまえだけだよ」顔をうずめながら、小さな声で言った。「それでいいだろ……」

 

「そっか」

 

 案の定、嬉しそうで。ため息を吐きそうになる。

 

 ――まったくなあ。なんだってさっきから、こんな気分になるんだ。いよいよおかしいぞ、オレも。ちょっと血を吸い過ぎたかな。悪い酔いじゃないのがまた癪だけど。

 

「なあトーリ。そういうのさ」

 

「うん?」

 

「そういう、恥ずかしいの……もう、禁止な」

 

「はあ」

 

「はあ、じゃなくて。オレ以外のやつに言って、誤解されたら面倒だろ? だから、禁止」

 

「誤解とは」

 

「いいから! 分かったなら、イエスって言え。じゃなきゃもっと噛みつくぞ」

 

「ううむ。ノー、と言ったら?」

 

「本回答におきましては、イエス以外受け付けておりません」

 

「なんだそれは」

 

 イエスだよ。それでいいのか?

 

「よろしい」

 

 結局、ため息。もう疲れた。激しい運動をしたわけでもないのに、ココロも身体もガス欠寸前だなんて。

 

 血は吸わないまま、身を預け合い、じっとしていた。

 

 互いの、息づかいの音だけが聞こえる。ほかのいきものの声は聞こえない。

 

「織?」

 

「うるさい。少し、静かにしてろ」

 

 目をつむる。心臓の音が聞こえる。

 

「……なんだろうな。今さらだけど」

 

 織は。先程までの取り乱し様の反動のように、盛大な自己嫌悪に襲われながら、呟いた。

 

「ほんと、今さらだけどさ。ゼッタイ誤解されるよな、今のオレたちを、愛花とかが見たらさ」

 

「まあ、言われてみれば、確かに。でも大丈夫だろう。二人とも、もう寝てる」

 

「……気づいていると思うか?」

 

「私たちの関係を?」

 

「愛花には助けるって言ったくせに、今は、オレがおまえを襲ってる」

 

「後ろめたいのか」

 

 ――それもある。けど、それだけじゃない。

 

 織は、沈黙を選んだ。それを、十理はどう受け取ったのか。

 

 彼のため息の音。織は、かすかに肩を強張らせた。まるで叱られるのを怖れる子供みたいに。

 

「……襲っている、か。それは誤りだよ、織。大きな間違いだ」

 

 ふわり、と。

 

 あまいかおりが、わらったような気がして――

 

 

「お前が襲っているんじゃない。私が(・・)お前を襲っているんだ(・・・・・・・・・・)

 

 

 ――え?

 

 無防備な躰に囁かれた、ナイフの放つ冷気を想わせる、残忍な響きが、織の心の奥を、委縮させた。

 

わかっているのか(・・・・・・・・)?」

 

 抱きすくめられている。

 

「なにを、」

 

 背に回された手が、すぅ、と撫ぜた。

 

「――っ!」

 

「なら、それをわからせてやろう」

 

 抜け出せない。息を吹きかけられる。感覚が敏感になっていた。

 

 わらっている。逃げ出せない。

 

「お、おい、」

 

 囁き。「私がお前の躰を作ったんだ。お前の躰で知らない部位(ところ)があると思うか?」

 

 ラクにしていろ。すぐに、わからせてやるから。

 

「お、おまえ、ヘンだぞ」

 

 触れ合わせた肌が、異様に熱を放っていた。

 

 吐息が、濡れている。

 

「ふざけるな、やめ」

 

 違う、同じことだ。普段と似たようなもの。ただ少し、十理は()れただけだ。ただの、家族間のじゃれ合いに過ぎない。そのはずだ。わかっている。なのに。

 

 意識することなどないはずなのに。笑ってたしなめればそれで終わりになるはずなのに。なぜだか、ひどく息苦しい。押し返す力も、出ない。言い返すことも。

 

 ――あまいかおりが、胸を衝く。

 

 おかしかった。十理の雰囲気も、自分も。

 

 息が、知らず、ふるえている。

 

 おびえているみたいに。

 

「トーリっ?」

 

「痛くはしない。力を抜け」

 

 やさしい手つきだった。声も。なのに、勝手に弾かれたように息が漏れてしまう。恥ずかしさと混乱でわけが分からない。探るような指先に、その都度、

 

 ――なんでオレ、女みたいな声、だして。

 

 心臓が、痛いくらい速い。汗で濡れていた。でも突き飛ばすこともできない。

 

 ――敵なら斬ればいい、嫌いなら無視すればいい。だけど、こいつは、そうじゃなくて。

 

 どうすればいいんだ。混乱していた。正常な判断がわからない。だから、しがみつくだけだ。どこかへ放り出されまいと細指でそうするように。

 

「く、クロ――」

 

「手を出すなよ、火艷。【命令】だ」

 

 布団のなかの黒猫は、あわあわと二人を見比べている。役に立ちそうもなかった。そして同時に、火艶に自分が見られている(・・・・・・・・・)ことに気が付くと、途端に織のなかで何かが大きくよじれて暴れた。見るなよ、と怒鳴ってやりたいのに――それなのにどうして、動けないんだ。

 

「私を見ろ。私の目を、よく見るんだ……」

 

 黒曜石が、微笑んでいる。ただ一人だけを映して。

 

 ふるえる織だけを見つめている。

 

 すべてを受け入れる、まるで底無し沼のような(・・・・・・・・)、黒い魔力に。

 

 ひとたび舌で感じれば二度と離れられない、甘美な、惹きつけてやまぬ惑わしの花蜜(ネクタル)のように。

 

 引きずり込まれそうになる。そのまま、沈み込んでいきそうになる。

 

 ――魔性(・・)

 

 ほんの少し前に聞いたばかりの言葉が、虚空に浮かび、

 

 ――とらえられる。

 

「織……」

 

 あまいかおり。彼の囁き。彼の、熱が。泥濘のような心地よさで、意識がぼやけてゆく。視界が薄れてゆく。視野が狭くなり、息苦しさが強くなった。これは何の警鐘(ちょうこう)なのだ。目蓋が熱い。指先が命令を拒否する。汗。拍動。痛み。きっと目を逸らしたなら、それだけで楽になれる。わかっていた。でも、逸らすことができない。自分の躰じゃないようだった。まるで――奪われたみたいに。自分自身を。

 

 なのに、彼はわらっている。香る花のような笑みで。こちらを見ている。

 

 そら寒い予感が、織のなかで一つの想像と重なった。それは、罠に引っ掛かって、抜け出せなくなっている虫の姿だ。

 

 食虫植物の腹のなかで、罠にかかっている虫たち。蜜を求めた彼らは、何を考えるのだろう。答えはすぐに出た。何も、考えはしない。空を仰ぐ余裕などないからだ。抵抗することもできず、自分が溶かされてゆくのをただ感じるだけ(・・・・・・・)。そのとき、胸中を占める感情はなんだろう。自分がなくなってゆくのを感じながら、何を想うのだろう。

 

 ――つつまれ、とかされ、なくなってしまいそうになる感覚に。

 

「ァ……、」

 

 あえぐ。

 

 息をさせてくれ。あくまで微笑みながら見つめるだけの彼へ、言葉にすらできないまま、乞うていた。縋りつくみたいに。ふるえながら。トーリ、オレに息をさせてくれ。おかしくなるよ、このままだと。せりあがってくる、内側から。逃げられない。何一つ、目蓋を拭うことすらできず。どうしようもない。呑み込まれてしまうのか。彼のわらう貌。すべてを見透かすような(・・・・・・・・・・・)。そんな、まさか。しびれのようなふるえが走った。

 

 ――このまま、おぼれるみたいに、とかされて。

 ――おまえに、(ころ)されて。

 

 ――オレは、■■のか?

 

 

「トー、リ」

 

 彼が。

 

 ふっと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冗談だよ」

 バカだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――――――」

 

 耐まらなく可笑しいといった然で。

 

 くつくつと、肩を震わせている。

 

「……………………………………………、」

 

 織は。

 

 闇のなかでもはっきり分かるほど、真っ赤にふるえながら。

 

 呆然と、十理を見た。彼の手は、気が付くと緩められている。

 

 ――息。呼吸。指先。動いている。

 

 ――動かせる。自分の意思で。

 

 わるい夢から覚めたように。まじないが、とかれたように。自分自身を、取り戻していた。

 

「……勝ち負けじゃないが、これで分かっただろう。おあいこなんだよ、実は。つまり……、共犯ってこと。だからさ、お前が気にする必要はないんだ。気に病むことはない」

 

 笑っていた。彼は、どこか得意げですらあるような表情をして。

 

「それにしても、なんだ……織ってあんがい、かわいい声を出すんだな」

 

 混乱から回復する間も無く。

 

 

「――――――――――――――――――――ッッ!!」

 

 

 織は、目の前のほくろに噛みついていた。

 

 思い切り。

 

 

「――ぃ…………ッてえッ!!」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「悪かったって」

 

 無視している。今度は、怒っている原因はどう考えても間違いなく十理なので、無視することに何ら心が痛むことはなかった。肩の傷に容赦なく噛みついたことも。

 

「冗談だったんだ。あそこまで怒るとは思わなかった」

 

 ――冗談じゃないだろ。あれは流石に、冗談ってレベルじゃないだろ。ほんと、冗談じゃないぜ。オレが……どんな気持ちになったと思ってる。このやろう。このやろう!

 

 考えるだけで感情が沸き立ってくる。全身の毛が逆立ちそうだ。まったく普段の自分ならぜったいに考えないようなことを考えてしまったような気がする覚えていないけど。とんでもなくクツジョク的だ。なんだよあれ。なに考えてんだよ。いいやもう、考えないようにしないと。もうとっくに夜なんだからさっさと寝ないと。はやく寝よう。もう寝ろよオレ。おやすみオレ。グッナイ。

 

 ――なんて簡単に寝られるわけないだろ、バカ! あんな目にあったばっかりで。まだ感覚だって鮮明に残ってるってのに!

 

 織はひとりで毛布にくるまりながら、隣で横になっている馬鹿を極力無視して目をつむった。精神が火照りすぎているせいで、まったく眠くならないけども。

 

「織の機嫌があまりよくないみたいだったから……すまん。もうしない」

 

「―――」

 

「織?」

 

 眠れない。眠れるわけがない。

 

 だから必然的に、そばで何度も繰り返される、十理の猛省の加減を示している、その声色に、耳を貸さざるを得なくなってしまって。

 

 何度目かになると、もう。無視することができなくなってしまっていて――

 

「………、」

 

 ――まったく。

 

 ――許したく無く、無い、って想ってる自分がいる。認めるのは癪だけど。

 

 ――まったくなあ。トーリも大概だけど、オレもそこんとこ、ほんと甘いよなあ。

 

 寝返りを打った。結局いつもと同じように、一緒の布団だから、向かい合うようにして、至近距離に彼の顔がある。毛布は織が奪っていたから、いくら黒猫が引っ付いているとはいえ、少し肌寒そうだった。

 

 首筋は肌色の絆創膏(バンソウコウ)で隠されており、反省しきった表情に、安堵の変化が現れている。甘い香りは、すでにしなくなっていた。

 

 ――まだ残り香に、顔が赤いかもしれないけれど。

 

 それは夜が、隠してくれているはずだった。……じゃなきゃ、ほんとうに赤面ものだ。

 

「許してほしいか?」

 

 仏頂面で、小声で言った。先ほど大声を上げたときは幸いにも祖父母たちは起きてこなかったようだが、迷惑を考えなくてはならない。

 

「ああ」

 

「いいぜ。許してやるよ」このままじゃきりがないからな。眠れないし。ただし、と付け加えた。「罰は、受けてもらう」

 

「罰?」

 

「破っただろ。禁止だって言ったのに。だから、罰だ」

 

 十理は。どこか納得がいっていないような目つきをしていたが――火艷は、やはり主人の味方の立場のようだったので無視する――織の眼差しに閉口し、頷いた。

 

「どんな罰を?」

 

 ――決めてなかった。

 

「……まだ、言わない。言う時が来たら言う。忘れるなよ」

 

「分かった。約束する」

 

「じゃあ、許す」

 

「よかった」

 

 毛布を半分返してやる。織はその機会がきたら、絶対に十理が思いっきり恥ずかしがるようなことをさせてやる、と固く誓っていた。おずおずと身体を入れてきた彼を睨みつけ、げしげしと足先で攻撃しながら、想像を絶するような復讐に慌てふためく様子を想像して、何とか自分の怒りをなだめてゆく。

 

 ――後悔しても、もう遅いんだからな。

 

「……にゃあ」

 

 火艷が、眼差しで「おまえ自分の有るんだからそっち使えよ」と雄弁に訴えてきていたが、織はそ知らぬ顔を通した。あとあと冷静に考えればどちらが正論なのかは明らかであったけれど、十理も、あまり気にしていないらしい。それとも遠慮しているのか。

 

 身動ぎした瞬間、彼の顔が、かすかに歪んだ。

 

「……大丈夫か、肩は?」

 

「そりゃあ、痛いさ。思い切り噛みついただろう」

 

「それは、トーリが悪い」

 

 そこは譲れない。

 

 ただ――その。強くしすぎたかな、と思う面もある。本当に、容赦とかしなかったので。

 

「けっこう、吸ったよな。結局。貧血だ、これだと」

 

「……わるい」

 

「いいよ」

 

 沈黙。

 

 火艷は、もう何も言わなかった。呆れているのか。そりゃ呆れるよな、と思う。だけどさ、あれはさすがにないだろ。なあ、おまえもそう思うだろ? オレの身にもなってくれよ。言わないけどさ。というか、見てたくせに助けてくれなかったよな。おまえ誰の味方なんだよ。いや、訊くまでもないか……。ほんと、ひでえ目にあった。

 

「………、」

 

 静寂。

 

 ―――。

 

 織はさ。

 ああ。

 体温が低いよな。こうしていると、ひんやりしてて、気持ちいいな。

 そう。

 いいにおいもするし。

 知らない。

 ん。

 ……おまえだって。

 そう?

 ああ。

 そうか。

 気づいていないわけ?

 まあな。どんなにおいなんだ?

 それは。

 織?

 なんでもない。

 うん?

 オレは。

 うん。

 ……………嫌いじゃないよ。

 よかった。私も、織のにおいは嫌いじゃないんだ。落ち着くっていうのかな。うん……、好きなにおいだ。

 あっそ。……なに笑ってるんだよ。

 なんでもない。

 今日は疲れたな。誰かさんのせいで。だれかさんのせいでー。ほんっとに。

 わるかったよ。

 反省してんのか?

 うん。

 ……眠いのか?

 うん。

 そっか。……いいよ、寝ても。

 うん。

 

 ―――。

 

「おやすみ、織」

 

 まぶたを閉じた彼に、そっと言った。

 

 

「おやすみ。トーリ」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 音が、近づいてくる。

 

 それは、黒い牝馬(ひんば)の蹄の音か――

 はたまた何者かが扉を叩きつけている音か。

 

 男が言った(・・・・・)

 

「『今、運命が私をつかむ。やるならやってみよ運命よ! 我々は自らを支配していない。始めから決定されてあることはそうなる他はない。さあ、そうなるがよい! そして私に出来ることは何か?』 ――運命以上の、何者かになることだ」

 

 その日(・・・)は。

 

 もう、間もなく――

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 八月一日。

 

 

 懇親会の会場は、参加者だけで三〇〇人から四〇〇人に及ぶ大規模なものである。

 

 国立魔法大学付属高校の第一から第九までの各生徒たちに加え、潤滑に会を回すためのスタッフまでいるのだから大変な大勢であり、会場入りのタイミングが一律とされていないのもあって、この人数のなかから知り合いを探すのは、中々に難儀を強いられることであった。

 

「こっちだ、十理!」

 

 学校側の手配した車両で、遅ればせながら会場入りした御嵜十理は、振り向いた先で、嬉しげに手を挙げている森崎駿の姿を見つけた。

 

 互いにユニフォームではなく制服姿であり、駿は会場の空気に少し浮かれているようだった。

 

「無事に着いたんだな。よかった」

 

「遅れて申し訳ない。問題はありませんでしたか」

 

「調整は万端だ。ああ、問題というか、途中で僕たちのバスが事故に遭いかけた。先輩たちの活躍で怪我人は出なかったけど……それくらいだな」

 

「それは、また。幸先がいいのか悪いのか」

 

「いいと思おう」

 

 近くにいたウエイターからソフトドリンクをもらうと、十理たちはグラスを合わせた。

 

「ノンアルコールなんですね」

 

「学生だぞ、僕たち」

 

「やあ、御嵜」

 

 第一高校の制服を着た、五フィート五インチはあろうかの、背の高い優男が近づいてきた。

 

(ひいらぎ)。もう彼女との挨拶はいいのか?」

 

 十理が(遺憾ながらも)出場予定であるモノリス・コードのチーム、森崎駿とそのもう一人のメンバーが、この柊(かおる)という少年だった。

 

「まあね。あとでゆっくり一緒に過ごすつもりだよ。こっちに来たのは君たちの顔が見えたからだ」

 

 団体競技の新人戦に出ることが決まって以来、連日のように連携を確かめてきたから、三人ともある程度の性格は互いに掴めている。柊勲は人の群れのなかへ振り向くと、遠くで集まって行動している他校の女子の一人と笑顔で手を振り合い、それから十理を向いた。

 

「それはそれとして御嵜、調子のほうはどうなんだい」

 

「というと?」

 

「わざわざ一人だけ時期をずらしたんだ、君にとってご両親のお墓参りが大事なのは分かっている。俺もそれは理解しているよ。だけどこれから十日間、俺たちは戦わなくちゃならない。メンタルは大丈夫なのか」

 

「ご心配なく。オンオフはきっちり分けていますから」

 

「ならいい。君の言葉を信用しよう」

 

 にやりと頷くと、彼は大テーブルの近くで他校の生徒会幹部勢と談笑している七草真由美や司波深雪たちを目に留め、次いで、その周辺でじろじろと噂している学生らに目をやった。

 

「それにしても、我らが生徒会の華たちは大変な盛況だな」

 

「どこも似たようなものでしょう」十理は、隣で司波深雪に見惚れているクラスメイトを見やると、揶揄するように笑い声をあげた。「駿。声をかけてきたらどうですか?」

 

「冗談だろ。邪魔はしたくないし、負担になりたくない」

 

「見ているだけですか。成長しましたねえ、実に健気です。まあ話しかけたところで君の場合、今は迷惑がられるだけかもしれませんが」

 

「ほほう、森崎も司波さんのファンだったのか。あれは、まさしく高嶺の花って感じだよ。俺は可愛い婚約者がいるから、すんばらしい目の保養ってことで見ていられるけど、難攻不落を攻略しようと真面目に考えてる奴には、災難だろうな」

 

「僕に言ってるのか、それ」

 

「そう聞こえたかな?」

 

「まあまあ。ここは抑えて、抑えて」

 

 駿を宥めようとした十理は、急に奔った痛みに顔を歪めた。

 

「どうした?」

 

「いえ。少し肩が」

 

「怪我したのか」

 

「寝違えたとか?」

 

「いいえ。まあ、猫のようなものに噛まれたんです」

 

「猫のようなもの(・・・・・)って……猫じゃないのか」

 

「大丈夫?」

 

「問題にはなりません。それよりも……」

 

 

 ―――。

 

 

 なんやかんやと話しているうちに、来賓の挨拶が始まった。

 

 生徒たちは食事の手を止め、魔法界の名立たる顔ぶれの紹介に耳を傾けている。十理たちもそれに従って口を閉ざしていたが、十理自身はピンと姿勢を正した駿ほど真面目にはなれず、じゃっかん貧血気味なことも手伝って、興味のない置物を眺めるような気分で過ごしていた。

 

 だから(・・・)――

 

「――続いて、クドウレツサマの――」

 

 つい最近聞いたばかりの名詞(・・・・・・・・・・・・・)が呼ばれたときでさえも、十理は単に聞き間違えたのだと、うとうとする心地でぼんやりと壇上を眺めたのだった。

 

「………、」

 

 壇上には、若い女が立っていた。

 

 会場のほとんどの人間は壇上に立つ、ドレス姿の女を目にし、困惑の囁きを交わしていたが。

 

「………………、―――――――――――――――んん(・・)?」

 

 十理は。極めて自然現象に近しい高度な「精神干渉魔法」が会場全域に展開されていることに、気づいたわけではなかった。

 

 単純に、壇上に現れた女にそそられなかった(・・・・・・・・)から、興味を失って視線を逸らしたために、女のすぐ後ろに(・・・・・)誰かが立っていることにたまたま気が付いたに過ぎない。

 

んんん(・・・)――――――ああ(・・)?」

 

 老人だった。

 

 それも、つい先日会って(・・・・・・・)、とても面倒なことを話したばかりの――

 

 

 目が(・・)合った(・・・)

 

 

 老人は、まるで気の利いた冗談を言ったかのような、悪戯が成功したときみたいな笑みを浮かべていて。

 

「……紹介に預かった、九島烈(くどうれつ)だ。まずは悪ふざけにつき合わせたことを謝罪する」

 

 女が横へ退くと、ほとんどの人間にとっては突然そこに現れたかのように見えたであろう老人が、そう切り出した。そして懇親会に相応しからぬ、非常にショッキングな内容を話し始める。

 

 だが、十理は衝撃のあまり内容が入ってこない。加えてヒジョーに、嫌な予感がひしひしとしていた。

 

「し、駿。あの人が誰か、知っていますか」

 

「なんだよ、知らないのか。聞いてなかったのか?」

 

「誰なんです」

 

「……九島烈。かつては世界最強の魔法師と謳われた一人で、この日本に十師族を確立した人だ」

 

「は。十師族(・・・)?」十理は呆気に取られながら、訊き返す。「え。まさか十師族なんですか、あの人?」

 

「そうだと言ってるだろ」

 

 

「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ええええええぇぇぇぇ……?」

 

 

 愕然と見やった先の、九島烈は、愉しそうに笑っている。

 

 十理は。

 

 たいへん今さらながら、非常にとてつもなく厄介な人物に目をつけられたことを知り、細々と慨嘆の息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――あ。そういえば伝えとくの忘れてたな。

 

 ――まあいっか。気づかなかったことにしよう。

 

 ざまあみろ、ってね。

 

 

 ……「影」のなかで、そんな言葉が呟かれていたとか、いなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 年下のあるじに翻弄されるオレっ子着物美人の慌てふためく様子(イベントCG)。
















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