で、今回の話はいよいよハルがラムへ告白です。ハルの愛がラムへ届くといいですね〜。では、ご覧ください
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「ぅ……ん?」
「あら、起きたのね。ハル」
「えっ?」
聞き慣れた声に俺は目を丸くする。見開いた赤い瞳に映るのは、俺を優しげな表情で見る桃髪の少女でーー
“ん?ん?ん?、なんでレムさんじゃなくラムさんが?もしかして、幻???、いや……にしては……???!?!?!?!?”
突然の展開に脳がついていけない。それもこれも後頭部に感じる柔らかい感触のせいでもあるだろう。
“柔らかく感触……?えっ?もしかして……俺、ラムさんにーー”
つまり、この状況を簡単にいうと俺はラムさんに膝枕されているということだろうか?傷だらけの無残なカッコ悪い格好で……
「どうしたの?ハル。顔が赤いわ」
「いや、その……。ラムさんがこんな事してくれるなんて、ご褒美にしては豪華すぎるな〜と思ったりするんだけど?俺、ラムさんにこんな事してもらえる資格ってあったけ?」
「資格はないけど、ハルの無用さが目についたのよ。こんなにボロボロなハルを虐めてもやり甲斐がないわ」
「一瞬〈今日のラムさん優しいー!〉って思った俺の気持ち返して」
「そんなものラムは受け取ってもないし、渡したくもないわ」
「本当っ、いつも通りですね!!ラムさんっ」
喚く俺にラムさんはフッと口元を小さく緩める。そして、膝に乗せている俺の赤い髪を優しい手つきで撫でる。普段見せない彼女の母性に満ちた姿にドクンドクンと心拍数が上がっていく。
“……もう、言ってしまおうか?俺の気持ち”
半分、無意識に右手がラムさんの手へと伸びて ギュッと握りしめる。ラムさんは一瞬、驚いたような顔をしたがすぐに不機嫌と戸惑いを混ぜたような顔つきへと変わる。
「ハル?」
「ラムさんは……俺の事、どう思ってる?」
「…………。女々しくてなよっとしてパッとしない奴と思ってるわ」
「悩んで、その答えって……。俺ってどんだけ女々しいって思われてるの……」
予想通りといえば予想通りの答えに悲しく思いながら、俺は薄紅色の大きな瞳を見つめる。そこに映る俺が余りにもカッコ悪いけど……
「じゃあさ、俺がラムさんの事 どう思ってるか知ってる?」
「……知らないわよ。さっきから回りくどいわよ、ハル。言いたいことがあるなら、はっきりいいなーー」
「ーー俺はラムさんの事を好きだよ、愛してる」
ラムさんが眉を顰める。
“あっ、信じてない顔だ……”
俺はニッコリと微笑んで
「俺はラムさんの事を愛してる。付き合いと思ってるし、結婚もしたいと思ってる」
「意味が分からないわ、なぜ そうなるの」
「好きになった事に理由なんて無いよ。気付いたら、好きになってた。ただ、それだけだよ」
俺をジィーと見つめていたラムさんが頭を抱える。そのまま、頭を横に振り 「はぁ……」と溜息をつくと感情の消えた表情で俺を見つめて、こう言った。
「なら、ハルはラム以外の全てを諦めてとラムが言ったらそうするの?」
「うん、するよ。君が……ラムがそれを望むなら」
「……、本当に全てよ。この世界に溢れているものからラムだけを選んで、ラムだけを見つめて、ラムだけを愛して、ラムだけに尽くして、ラムだけに愛されて、ラムだけに許されて、ラムだけに全てを捧げて……それがハルは出来るというの?」
「うん、出来るよ。ラムだけ居れば、他は何もいらない。ラムが傍にいてくれる、それが……ううん、それだけが俺の今の望みだから。どうしても叶えたい」
真剣な表情で答える俺にラムさんは苦笑して、小さく呟く。
「……ラムにはハルがそこまで慕ってくれる理由が見当たらないわ」
「ふふふ……本当に分からない?でも、ラムさんは分からないだろうね〜」
「えぇ、全然分からないわ。それとハル、その笑い声は少しイラっとしたわ」
ムスーとした表情を浮かべているラムさんを〈可愛い〉と思いながら、俺は思いつく限りの理由ーー彼女を愛おしく思ったキッカケを語り出す。
「………勉強を教えてる最中にさ、居眠りをよくするでしょう?ラム。その時ね、ふと笑顔を浮かべてくれるんだ。それがとても可愛らしい」
「……」
「俺が仕事で失敗した時に浮かべる呆れた表情も好き。俺を虐めて詰る表情も好き。時々、俺が仕事を失敗した時 慰めてくれようとする言葉が好き。いつも、自分に正直な所がもっと好き」
「……」
「撫でると柔らかいサラサラな桃色の髪も意思の強い大きな薄紅色の瞳も控えめな胸元も華奢な体躯も全てが大好き」
「……」
「でも、もっと好きなのはね。ーー俺を罵倒する声が一番好きだよ」
「はぁ……、ハルはとんでもない変態なのね。貶されて喜ぶとかとんでもないマゾ野郎よ」
「マゾ野郎でもなんでもラムと話せるならいい」
ラムさんの表情が少し崩れた。いつもの無表情が何かしらの感情を抑え込もうとしてる。俺をまっすぐ見つめる薄紅色の瞳が色々な感情でごちゃ混ぜになっている。
“追い打ちをかけるなら、ここかな?”
俺はもう一度、ラムさんの手をギュッと強く握りしめる。
「ねぇ、ラム。俺はラム、君が好きで愛おしい。世界一愛したいし、愛されたい。こんな告白だけどラムは俺の事も受け入れてくれる?」
俺の言葉を受け取ったラムさんは無表情を崩して、しどろもどろになる。しかし、すぐにいつもの調子へと戻ったのが残念に思う。
「……そんな事言われてもラムは戸惑うわ。でも、それが事実というのなら、これから それを実践してみてちょうだい。ラムがハルのその気持ちに揺れたら、お望み通り ハルに尽くしてあげるわ」
「おぉ〜!!それはいい条件だね。まぁ、言われずとも そうするけどねっ。今はロズワール様が一番かもしれないけど必ず俺がその座 奪ってみせるから」
「ラムのロズワール様に対する敬愛は揺るがないと思うけど」
すっかりいつもの調子に戻ってしまったラムさんをこれ以上押すのは無理と判断して、別の提案を出してみる。
「うん、だから 困ってるだけどね。あっ、そうだ ラムさん。一つだけお願いしていい?」
「面倒事?」
“うわぁ……心底嫌そうな顔された……”
俺は首を横に軽く降ると
「違う違う、違うよ。ただ毎日、一時間……ううん、もっと短くてもいい。十分でも五分でもいいから会いに行っていいかな?」
「それのどころが面倒事じゃないのよ、面倒事じゃない。それにハルの言っている意味が分からないわ。ラムとハルは毎日会っているでしょう」
「仕事の話じゃないよ、それが終わった後の話。もっとラムの事を知りたいし、俺の事も知ってほしい。ダメ?」
「ラムの事?知ってもいい事は無いと思うのだけど」
ラムさんは本当に思っているそうで、俺の提案も乗る気ではないらしい。しかし、それでも俺は少しでも彼女の事ーーラムの事が知りたい。
「それでも構わない。ラムの事は全て知りたいんだよ。ラムがどういうところでどう育ったのか、とか好きな食べ物とか色とか。ラムはくだらないと一蹴するかもしれない些細な事から全部、俺に教えてほしい」
「………ハルにとって聞きたくない話もあるかもしれないわ。それでもいいというのなら来なさい」
呆れ顔をしながら、そういうラムさんに俺はニッコリと笑って
「うん、ありがとう ラム。大好きだよ」
と言ったが、すぐに不機嫌な顔つきのラムさんによって撃沈。
「今の大好きは安っぽかったわ。その一言でラムがハルになびくのは数十年先になったわ」
「………、マジっすか……」
「えぇ、だから その間にラムが認める男になりなさい」
「うん」
素直に頷く俺に優しい手つきで頭を撫でるラムさん。そんな穏やかな時間が流れ、俺は眠りについた……
τ
ラムは膝の上で安らかな寝息を立てている赤髪の少年を見つめる。その表情は数メートル後ろで、二人の様子を見ていた青髪の少女も近頃、見ることがなくなった〈母性に溢れた〉表情であった。
「レム」
名前を呼ばれた青髪の少女は姉に近づくとグッと唇を噛む。そんな妹を見上げたラムは
「レムも分かったでしょう?ハルはレムの思ってるような輩じゃないわ。第一、こんなパッとしない奴にラムがやられるわけないでしょう」
「……ですが、姉様……」
「レムの言いたい事も分かるわ。でも、ハルにそんな力もないし ロズワール様のご恩を無下にする男とはラムは思えないわ」
「……」
青髪の少女は姉の言葉に押し黙る。そして、姉の膝の上で眠りにつく少年を見る。その幼い子供のような顔にさっきまで燃えていた怒りの炎が小さくなっていく。姉の横に跪き、そおっと赤い髪を撫でてみる。
「……ふ」
「!?」
ふにゃふにゃと口元を動かして、微笑んだ少年に青髪の少女も吊られて 笑顔を浮かべる。それの様子を見ていたラムは
「全く男とは思えない。女々しい寝顔ね」
「はい、全くです」
その後、桃髪の少女と青髪の少女が微笑みあったのは、空に浮かぶ月のみぞ知る……
結局、レムさんにトドメを刺されそうになったハルはラムさんが助けてくれました。そして、氣と能力の使いすぎで倒れたハルは目が覚めるまで ずっとラムさんが膝枕してくれていました。ハル、羨ましいですね〜
次回はレムさんの英雄登場!!
で、此方も予定なのですが。お気に入り登録数が100人を皆さんのおかげで達成出来たので、特別編を書きたいと思います。皆さんの期待を越えるよう、頑張るつもりです!!