「フゥ〜、これでお終いか…」
と呟くと、俺は汗を拭う。どうやら、この前にある結晶でアーラム村に設置してあるものの検定を終えたらしい。
「んー、じゃあ、帰るか」
踵を返し、ロズワール邸へとトボトボと歩いて帰る。ロズワール邸についた後も、俺は夜になるまでキッチリと働き、ついにレムさんと約束した時間を迎えることになった……
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説明のために、星座の絵を描いていると控えめにトントンと扉を叩く音が聞こえてくる。
「どうぞ〜」
と俺が言うと、そこには待ち人が立っていた。
伺うように、少しだけ扉を開けて俺を見つめる大きな瞳は薄青色で、その仕草で肩までで切り揃えられている青髪がサラサラッと揺れて、仄かにシャンプーの香りを漂わせる。身につけている服装は、普段から彼女が身につけている胸元や肩が大胆に露出した改造メイド服で、少し前屈みの姿勢のためか、パックリ開いた胸元から覗く双子の姉よりも大きい胸が作り出す溝が更に深くなった気がするーーそんな彼女の胸元へと遠慮のない視線を向けていた俺はブンブンと首を横に振ると、ニッコリと微笑む。
「どうぞ、レムさん、中に入ってよ。対したものは無いんだけどね…」
「失礼します」
何処と無く緊張した面持ちで、俺の部屋へと入ってきたレムさんにベッドに座るように伝えて、俺は勉強椅子を動かして、レムさんと向かい合うところに配置する。そこで、俺は振り返るとレムさんへと問いかける。
「そうだ、レムさん…何か、飲む?……って言っても、対したものは淹れなれないんだけどね、お茶でいいかな?」
「へ、あっ…はい……ハルイトくんにお任せします」
レムさんがそう言うのを聞き入れて、俺は立ち上がると手に持ったスケッチブックをレムさんへと手渡す。それを戸惑いの表情で見つめているレムさんに、俺は適当なページを開きながら、言う。
「ん、じゃあ少し待てて。そうだ、このスケッチブックに描いてる絵を見てていいよ。殆ど、落書きって感じだけど……予習することは大事な事だと思うから。じゃあ、レムさん、少しだけ離れるね」
俺はレムさんを残して、お茶を淹れるに部屋を後にした……
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“どうしましょう…”
一人、とり残された青髪の少女は暫し、手元にスケッチブックを持ったまま固まっていたが、癖っ毛の多い赤髪の少年の言うとおりにスケッチブックを見て、少年の事を待つことにした。お茶を淹れるだけなので、すぐに帰ってくるとは思うが、パラパラとページを捲るだけでも青髪の少女・レムはそこに描かれている絵に夢中になっていったーー
“この方は何をされてるのでしょうか?”
赤髪の少年・ハルイトが適当に開いて行ったページに描かれていた医者らしい男が大蛇を持っている姿が書かれている絵には、眉をひそめて、この人は一体蛇を持って何をしているのだろうか?という疑問を抱いてしまう。その後も描かれている絵に疑問や感想を抱きながら、何と無く最後のページを開いた時だった……
“この方たちは…?”
最後のページから前に数ページ程、見たことない人たちの似顔絵が描かれていた。最後のページには、その人たちとハルイトが並んでいるーーまるで、写真のようなカットで描かれている絵があった。その中に居るハルイトは輝くような笑顔を浮かべていて、何故かそれが何処と無く悲しく思えてしまう…。
“レムは何を悲しんでいるのでしょうか?”
しかし、このスケッチブックに描かれているどの絵も嬉しそうな笑顔を浮かべているが、何処と無く哀愁が漂っているーー多分、それは…描いているハルイトもこの人たちを思い出しながら……いや、懐かしく思いながら描いたからだろう。
「……レムは…ハルイトくんのこと、何も知らないんですね……」
気が付くとそんな事を口にしていた…、ハルイトによく似た女性の絵を見つめながら、レムは暫し、呆然と胸に浮かんでくるいろんな気持ちを整理していた……
続く