※感想で訂正した方がいいところを教えて頂いたので、そこを訂正したのとラムさんのセリフを少し変えました…
レムがそんな複雑な気持ちを抱いているとは、露も知らずにハルイトはお茶選びに精を出していた。
“ん〜、レムさんってどんな味のお茶が好きなんだっけ?”
今の今までギクシャクしていたのと…あまり、接点がなかったために彼女が喜びそうな味や温度がイマイチ分からない。俺は割と熱いものでも、ガブガブと飲めたり、甘かったら何でもいいという適当な基準なので、それを参考にするのはーー
“ーー流石に…ねぇ”
そういうことで、手の持った茶筒を見比べたりしながら、頭を悩ませていると背中に凄まじい激痛が走る。その衝撃で前のめりに倒れ、更に鼻や顔面を打った俺は涙目になりながらも後ろへと振り返り、やはり予想通りの人物が立っているのを見て、心から湧き上がってくる怒りの気持ちとこんなに好意を伝えているのに今だに変わらない俺へと接し方へと落胆から複雑な気持ちになる。
「コソコソと戸棚を漁っていたから、泥棒と思ってしまったわ。よく見たら、ハルだったのね…」
詫びる気持ちもない淡々とした口調で紡がれる言葉は、凛とした雰囲気を漂わせている。しかし、その凛とした雰囲気はその声の持ち主が常に漂わせているものでもある。その凛とした雰囲気に、更にマイナス0度の如き視線が加わった暁には…流石に泣きたくなってくる。
「何、泣きそうな顔をしているの?女々しい顔が更に女々しくなるわよ」
そう言って、俺を見下ろすのは桃色の髪を肩まで切り揃えている少女である。薄紅色の大きな瞳は、泣き出しそうになっている俺を心底、面倒に思っているように思える。しかし、それには異議を唱えよう。
“俺がなきそうになってるのは……こんなにも気持ちを伝えているのに、一向に俺への態度が甘くならないラムさんに対してです…グスン”
桃髪の少女・ラムさんは大きくため息を着くと俺を見る。
「はぁ…、それでハルはこんなところで何をしているの?もしかして、自分の部屋が分からないの?ボケるにはまだ早いでしょう」
「自分の部屋くらい分かるよ!まだ、そこまでいってないしッ!!」
俺のツッコミをスルーして、ラムさんは腕組みして、他に考えていた予想を口にして、俺へと風の刃を放とうと右手を振り上げる。その素早い行動に俺は手を高速で横に振る。
「そう、ということは…本当に盗みを働こうと企てていたわけね。見損なったわ、ハル」
「ちょっ、何故、そうなるの!違う、違う!レムさんが部屋に来てて、レムさんってどんな味のお茶がいいかなぁ〜ってとおもっグハッ!?」
「ーー死になさい」
「何で!?」
今度は回し蹴りを食らわされ、俺はラムさんの足がめり込んだ横腹へと両手を添えて、起き上がろうとする。そんな俺を底冷えする視線で見つめるのは、ラムさんだ。
「ハルごときがラムの世界で一番大切で可愛い妹に手を出そうとしているなんて…万死に値するわ、今すぐ死になさい」
「いやいや、俺がそういう事を考えるのはラムさんだけだから!?」
「そう…ラムに気持ちが通じないと分かって、外見が瓜二つのレムに欲情したとーー汚らわしい、今すぐにそこにある包丁で命を絶ちなさい。ラムの気が変わらないうちに」
「いやいやいや、ちゃんと話聞いて!!お願いだから!!そして、その目はやめてください……お願いします……」
マジでその道端に落ちてるウ○コを見るような瞳には、これ以上俺には耐えされそうにない。
“なんで…好きな人にこんな目で見られなくちゃいけないんだよ……”
しょんぼりする俺に、ラムさんは戸棚からある茶筒を取り出すとそれを俺へと差し出す。
「…?」
それを不思議そうな顔をして、受け取る俺にラムさんは小さく嘆息すると俺をチラッと見て、説明してくれる。
「レムの好きなお茶でしょう?それがこの屋敷であの子が好きって言ってたお茶だわ」
「ありがとう!やっぱり、ラムさんは優しくて思いやりに溢れた人だね!」
満面の笑顔でお礼を言う俺を、まるで追い払うようにシッシッと右手を振るラムさん。
「……そういうのはいいから、早く行きなさい。レムが待っているのでしょう?」
俺は痛む横腹を抑えながら、立ち上がると俺の部屋へと歩き出そうとして、もう一度振り返り
「ラムさん、大好きだよ、愛してる。茶筒ありがとうね」
とラムさんに言うと、心底うっとおしそうな顔をしてた。
“まぁ、そういうところがラムさんらしいんだけどね…”
と思ったのは、秘密である…
八話へ続く…