今回はレムちゃんの気持ちを中心に書きましたので、宜しければご覧ください!では!!
癖っ毛の多い赤髪の少年との対話を終えて、自室へと帰った青髪の少女・レムは心ここに在らずの様子で、寝支度を済ませていく。
露出度が高い仕事着から、水色のゆったりしたネグリジェへと着替えると、レムはストンとベッドへと座る。
「……」
“レムはハルイト君のことをどう思ってるんでしょうか?”
確かに最初の頃は怪しくて、この屋敷の、姉様の害となる存在だと認識していた。そして、何よりも彼から漂ってくるあの悪臭が、レムの深いところにある傷を引っ掛いて行くのだ。そのレムの気持ちにプラスして、彼の容姿もレムの心を脅かすものであった……。
燃える炎のように真っ赤な瞳と癖っ毛の多い髪の毛は、あの炎の夜を安易に思い出してしまうものであり、それに加えて時折漂ってくるあの魔女の残り香に…あの時に思ってしまった気持ちを責められている気がしてーーあの夜にレムはずっと考えていた襲撃を実行した。そして、レムは思い知ることになるあの頃の自分と、今の自分が変わってい事にーー
“でも…、ハルイト君はレムが思っていた人と違って…”
ーー彼はレムの考えているよりも、もっとずっと思いやりに溢れた心優しい少年だった。それは、彼と共にレムが滅ぼそうとしたあの小鳥と虎も同じであって……
「そんなハルイト君と…あの子たちをレムはこの手でーーゥっ」
“何も変わってない…あの時のレムと何一つも……”
罪悪感から溢れてくる涙を俯いて、堪えようとするがどうも上手く行かない。暫し、静かに涙を流している時だったーーその僅かな音が聞こえたのは……
コンコン
「?」
コンコンコンッ!!!
「!?」
激しさを増す音を探る為に、後ろへ振り向いた時だった……
「キュルルル」
「あなたは…」
窓の外に、燃えさかる炎の鶏冠と羽根を持つ小さな小鳥が顔を覗かせているのを見たのは…レムが慌てて、窓を開けると肩へと止まって、何かを訴えているようにしきりに、森へと視線を向ける。レムが眉を顰めると、今度は外に出るようにコンコンと、嘴でドアを叩く。そこで、レムは気付いたその小鳥の主が居ないことに……
「ハルイト君に何かあったのですか?」
「キュルルル!!キュルルル!!」
「ッ!」
炎の小鳥がレムの問いに肯定と思える鳴き声を上げるのを聞いて、レムは一目散に玄関へと駆け出し、暗闇に紛れ異様な存在感を表す森へと足を踏み入れた…
τ
炎の小鳥に導かれるままに、森を横切るように走り続けるレムに突然、横から黒い影が襲いかかる。
「キュルルルーーッ!!」
そんな黒い影へと体当たりして、その小さな体から出てるとは思えない程に大きな炎の玉をその黒い影目掛けて吹き付ける。
「グルルル……」
情けない声をあげて、忽ち丸こげになった黒い影を見て、レムは呟く。
「ウルガルフ……、この魔獣にハルイト君は…」
「キュルルル〜〜」
そんなレムの肩へと乗っかり、頬に擦り寄る炎の小鳥にレムは微笑み、優しく撫でる。
「レムを守ってくれたんですね、ありがとうございます。……やっぱり、あなたは優しい子ですね。確か、あなたの名前は朱雀ちゃんでしたか?」
「キュルルル〜!」
肯定とばかりに、更に擦り寄ってくる炎の小鳥・朱雀のふわふわな羽毛が頬を撫で、擽ったい。
「ふふふ…くすぐったいですよ、朱雀ちゃん…」
「キュルルル」
朱雀が前を向くのを見て、レムは頷き、その手にはいつの間にか重量感たっぷりの鉄球が鎖に繋がれた武器を持っていた。
さっきまでの微笑みを消して、薄青色の瞳を鋭く細めてレムは歩き出す。
「えぇ、そうですね。ハルイト君を救い出しましょう、魔獣からーー」
「ーーキュルルル!!!」
レムの言葉に甲高い鳴き声で答えた朱雀は、レムを導くように先頭を羽ばたいていく。
そこに現れる複数のウルガルフに、レムは青いレーザービームを放ち……
「ガルルルゥ……」
「そこをどいてください、レムは先を急いでいるんです」
と愛武器のモーニングスターを横になぎ払い、複数のウルガルフを葬った……
十一話へと続く…