さて、今回の話ですが…レムちゃんとお下げの少女ことメィリィのこの二人が中心に話が進んで行きます。
どうか、最後までご覧ください!では!!
その後も、幾度となる戦闘の果てにレムと朱雀はやっと、ハルイトの所へと来ることができた。
「ハルイトくん!!」
レムが見たのはーー草むらの上に横たわる癖っ毛の多い赤髪の少年で、その少年を取り囲むようにどす黒い液体が草を濡らしているのを見て、レムはカァーと血が上り、赤髪の少年の側にしゃがみ込み、その髪を撫でている藍色の髪をお下げにしている少女に鋭い視線を向ける。
「あなたですか…」
俯き、静かに少女へと問いかけるレムにやっと気づいた様子でレムの方を向くお下げの女の子は、事の重大性が分かってない様子でプク〜と頬を膨らませる。
「あぁ〜ぁ、あと少しでお兄さんの心はわたしのものだったのにいー。青髪のお姉さん早すぎい来るのおー」
「あなたなんですか…」
「……」
レムが漂わせている雰囲気に気づいた様子で、押し黙るお下げの少女にレムはカッと目を見開き叫ぶ。
「レムの大切な人を傷つけたのはーーッ!!!」
青い髪を掻き分けて、姿を現す桃色の光を放つ角にお下げの少女はサッと指を口に咥えて、ピィ〜と笛を吹く。
そんな少女の呼び掛けに応じるように森の奥から様々な魔獣が姿を現すがーー
「しっ!」
短い掛け声と共に葬られる複数の魔獣たちに、お下げの少女は焦ったように更に口笛を吹き、更に多くの魔獣を呼びつける。
「あのお姉さんを殺して!早く!早くしてよお!!」
甲高い声で、複数の魔獣の中央で荒れ狂うように戦い続ける青髪の少女へと指差すお下げの少女に答えるように飛び掛かる魔獣は、忽ちに肉の塊へと早変わりしたのは想像するも容易いだろう。しかし、魔獣たちも黙って殺されるようなものではない。
「ガルルルッ!!」
「しッ!」
「ガルルルッ!!」
「!?」
レムの一瞬の隙をつき、腕や腹部へとその鋭い牙を突き立てる。しかし、それも一瞬であるのだが…
「ーーッ!!」
レムの鋭い拳を受けた魔獣たちの身体から、内臓や血が溢れるのを見て、お下げの少女は、これ以上マズイと思ったか身を翻すと
「あぁ〜ぁ、もう少しでいいところだったのにー。でも、あのおねーさんを相手するのは疲れそうー。仕方ない、逃げようか…、じゃあ、またね、メィリィのおにーさん♪」
地面へと倒れ伏せるハルイトへと、最後の投げキスをして、森の中へと姿を消した…
τ
「…………」
“あぁ…ヤバ…これ、死ぬパターンだわ…”
ボヤける視界の中、ハルイトは自身の死を確信する。
「……ーーッ!」
“え?”
走馬燈のように今までの出来事が頭の中で流れる中、聞き慣れた声が聞こえた気がして、顔をゆっくりと上げる。そして、ハルイトは目を丸くする。
「しっ!ッ!?」
鉄球を振り回し、魔獣を葬っている青髪の少女のおでこ当たりに桃色の光を放つ角が顔を表しているのを見て、ハルイトはこう思った。
“へ?鬼?”
鬼って……あの、鬼だよな……?
昔読んでもらった桃太郎さんやらでも、悪役に指定されているあの鬼がこんな可愛らしい女の子?
“いや、待て…レムさんが鬼ってことはーーラムさんも?”
いやしかし、ラムさんからそんな話を聞かなかった気がーーって、殆ど俺が勝手に行って、俺の家族の話やらを話して帰ってくるだけだったっけ?
“俺のバカッ!なぜ、もっとラムさんにーー”
「……ハルイト君。…無事ですか?」
後悔する俺の耳に愛らしい声が聞こえてくる。しかし、その声も疲れている様子で所々掠れている。
俺を抱きかかえるように腕へと抱いた青鬼はその幼さが残る顔を悲痛な色で染め上げて、大きな薄青色の瞳に沢山の透明な雫を溜め込んでいた。
そんな青鬼の姿に、俺はーー
“あぁ…綺麗だなぁ…”
ーーと場違いの感想を抱いてしまう。それ程までに、青鬼は美しく愛おしかった……。
俺を助けるために無理をしてくれたのだろう、普段はて丁寧に整えてある青髪はボサボサで返り血を浴びて、べったりとしていた。涙をたたえた薄青色の瞳は静かに波を立てており、桜色の唇は何かを堪えるように一文字に結ばれている。
そして、その唇はゆっくりと開くと可愛らしいが疲れを含んだ声が鼓膜を擽る。
「…良かった…………、生きて…る、んですよね?」
「…………」
小さく僅かに首を縦に振る俺を見て、青鬼・レムさんはヒシッと俺を抱きしめる。
「ハルイト君!ハルイト君!良かった…です、本当に良かった!!」
「…………」
“レムさん…苦しーー?”
俺をポロポロと大量の涙を流して抱きしめてくれるレムさ
んの後ろに広がる森の中、ピカッと何かが光ったような気がした。
目を凝らして見ると、やはり僅かにピカッと光る僅かな光の後に小さな足音が聞こえる。
“あれは!?”
あの光が見えたところから、いつの間にか姿を消していたあのお下げの少女がレムさん目がけて、ナイフを構えて走ってくる。レムさんはそれに気づいた様子はなく、涙を流し続けている。
“俺が守らなくちゃ!レムさんを!!”
「ーーはぁっ!!」
「っ!?」
「へ?」
抱きかかえてくれているレムさんの右肩に手を置き、軽い掛け声と共にレムさんを草むらへと引っ張る。レムさんは突然のことに、抵抗出来ずに草むらへと身体を横たわさせ、その上へと覆いかぶさるように両手を草むらへと両手を付いた俺の背中へと深々と突き刺さるナイフ。
「ゴホッ」
「ハルイト君!」
「うそ…、なんでお兄さん……まだそんな力…」
血を吐き、唖然とするレムさんへと倒れた俺にお下げの少女は後ずさる。
そんな少女に向けて、レムは鋭い視線を向ける。
「また…あなたですか…ッ。あなたなんですかッ!!」
「………」
「待て!絶対に逃がさない!!エル・ヒューマ」
その視線を負けてしまい、逃げるように森へと走り出すお下げの少女にレムは氷の槍を突き立てる。それを器用に避けたお下げの少女の放った一言で、レムは動きを止めてしまう。
「……早くしないと、お兄さんが死んじゃうよ、青髪のお姉さん」
「ッ!?」
「じゃあねえ、青髪のお姉さん、メィリィのお兄さん」
レムは早速と逃げて行くお下げの少女の姿に、悔しさから地面を叩きつける。
そして、ハルイトを優しく持ち上げると
「ハルイト君…絶対に助けますから、死なないでください…」
風を切るように、一目散に屋敷へと帰っていった……
勝手に沢山の魔獣を動かしてしまったメィリィは、多分ママに怒られたことでしょうね(笑)
それほどまでに、ハルを自分のものにしたかったのでしょう…。
で、次回でこのレム章が最終回となります。最後まで、どうかよろしくお願いします(礼)