この一章が何話続くか分かりませんが、飽きず応援の程をよろしくお願いします
※お気に入り登録・303人!!評価者15人!!感想を二件新しく頂きました!!ありがとうございます!!
感想で頂いた主人公の魔法の属性を説明する話ですが、もう少しお待ちください。
「ふぅー、やっと一息がつけるかな。ねぇ、レムちゃん」
「はい、兄様」
食器の片付けをラムさんとスバルに任せ、俺は先に東棟で掃除を行っているレムちゃんと合流する。手分けして、各部屋を掃除していくと今度は窓ふきを行う。俺が上を掃除して、レムちゃんが溝を掃除していく。一人前とラムさんとレムちゃん二人に認められてから、レムちゃんと仕事を共にすることが増えた。なので、連携も板についてきたというところだろう。
全ての窓を吹き終わり、堪らず ため息をつく。下で溝を掃除をしているレムちゃんへと声をかけると、レムちゃんも快くうなづいてくれた。梯子を降りて、掃除用具を片付けていく。
「その……兄様、少しいいですか?」
梯子を肩に担いだところで後ろから声をかけられる。小首を傾げながら振り返ると、強い意思を感じる薄青色の瞳が俺を射抜く。その目力にたじろぎながら、わざとおどけるような声を上げる。
「んぅ?レムちゃんから俺に質問とは珍しいね、それで用って何?」
「兄様は。スバルくんの事をどう思ってるのですか?」
“どう……思ってる……。ね……”
この視線は何処かで見たことがあるとは思ったけど、あの時か……。俺を始末しようと襲いかかってきた時と同じ雰囲気に視線か。ふぅ〜〜
“どうしたものかね、これは……”
どう答えればいいのかね、スバルから俺と同格かそれ以上の〈魔女の残り香〉が漂ってくるのだろう。俺や他の住人には匂わないその微々たる香りが彼女の鼻腔を刺激し、彼女の思考回路をあらぬ方向に進ませようとしてると……。参ったな、これ……
“ロズワール様からもラムさんからもきつく言付かってるしな”
俺は肩を竦めて、首を横に振る。
「うーん。まだ会ってちょっとしか経ってないからね、何ともいえないけど……そうだね、スバルはいい奴だよ」
「いい?」
「うん、いい奴だよ。不思議で得体の知れないというのもあるけど、あいつはいい奴だよ。少なくとも俺はそう思う。ラムさんの説明にも真剣に耳を貸してるみたいだし、まぁ レムちゃんの思ってるような事をしない奴だと俺はスバルを信じてるよ。だから、レムちゃんももう少しスバルを信じてもいいと思うよ」
「……はい、兄様がそう言うなら……」
“ひとまず、これでいいか……”
薄青の瞳にはまだ疑念が渦を巻き、納得もいってないみたいだけど 今はこれでいい。俺の時もそうだったが、レムちゃんは一度冷静になる必要があると思う。今がその機会というわけだろう。
“くっ、痛ぁ……”
ズキンズキンと心臓を締め付ける感覚と共に現れる白い旗。青い髪の上にひょっこりと顔を出したそれはーー
【3と書かれた三角旗の周りに赤い矢印が書かれており、その矢印が斜め上へと向かって伸びている】
と描かれていた。
“レムちゃんがスバルを敵とみなしてるところで、ストーリーが3に進むとか縁起があまり良くないね……”
頭痛を感じ、頭を抑えると思わず隣が気になり、チラ見すると至って普通な様子のレムちゃんに俺は癖っ毛の多い赤髪を撫でながら謝る。
「レムちゃん、ごめんね…嫌な匂いを漂わせちゃって…」
「いえ、構いません。鼻が曲がりそうな匂いでも、それが兄様の匂いですので…どんな匂いでもレムは兄様の匂いが好きですよ」
「んー、それは素直に喜んでいいのかな?まぁ、いいや。それじゃあ、行こうか、レムちゃん」
「はい!兄様」
τ
「うーん」
無事に今日のお勤めを全うし、俺は自室に戻り 私服へと着替えていた。この屋敷で働き始めてから、俺の服はこの私服と執事服しか持ち合わせてない。実際、その二つしか必要と感じないから不思議なものだ。
「しっかし、スバルの頭の上に現れたあのフラグは何なんだろうな……」
顎に右手を添えて、目を瞑り 目の前のメモ帳に考えをまとめていく。
“白い旗というのは本来〈生〉を司るものだ。そして、その反対は黒。その禍々しい雰囲気から黒い旗は〈死〉を司る”
白い旗の絵を書き、その横に生の文字を。黒い旗の絵の隣には死の文字を書く。
「なら……、なら あのフラグは何を示している?スバルは何を隠してるというんだ?それは俺にーーいや、この屋敷に何を招く?」
“白い旗と黒い旗が変わり番にたち、赤い矢印が互いを指差しあってると……”
カリカリとメモ帳に今日見たスバルのフラグを書き留める。トントン、羽ペンで紙を叩きながら この無理難題を頭を抱えて解いていく。
“生と死は常に隣り合わせであり、交わることも重なり合うことは断じてない。命はいつも一つであり、それだからこそ大切に大事にしようと思うのでないだろうか?”
「そう……命は本来一つ……一つであるべき」
だからこそ、スバルのフラグは訳がわからないのだ……
“〈生〉→〈死〉へ矢印が向かうことはあっても、〈死〉→〈生〉へと矢印が向かうことは本来ならあり得ない”
死んだ者が生き返るのだ、不死身ならまだしも普通の人間が……
“普通の……人間?”
「俺がそうであったようにスバルも異世界から召喚されたと考える。その時に俺はこの〈フラグを見る力〉を、スバルも何か受け取ったと考えられる。こんな力を俺みたいな凡人にくれるんだ、スバルも俺以上のーーいや、それ以上のものを受け取ったとしても何も不思議ではない。そう、不思議じゃない……」
そう、不思議でないのだ。ならば、このフラグが指す意味はーー
“あぁ、そうか……。スバル、君は……死にもーー”
「兄様、レムです。ロ文字を勉強する時間となりましたので、部屋を訪れました。入ってもいいですか?」
ドアから聞こえてくるレムちゃんの声にハッとする。バタバタとメモ帳からさっきの落書きを破りとり、引き出しへとつっこむ。ガチャンとドアを開けて、中に入ってきたレムちゃんはさぞかし、不思議だっただろう。だって、不気味な笑みを浮かべ、はぁ……はぁ……と肩で息をしながら、俺が冷や汗をダラダラと流しているのだから……
変な終わり方をしてしまった……。
※レム章により内容が変わりました!
魔女の匂いを嫌がるレム→魔女の匂いを気にしないレム