しかし、ハルイトはラムさんにゾッコンですからね。レムさんのことは可愛い妹くらいしか思ってないことでしょう。レムさんの反撃を願って、前書きを終えようと思います。
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「……」
「ーーま」
この夜に開かれる勉強会も数で数えること、数十回となった。その数ほど、この屋敷で過ごしたということになるだろう。その分、思い出もあるし好きな人も大切にしたいと思う人も出来た。
“だから、あまりこの場所を荒らさせたくないんだよな……”
「ーーさま」
さっき結論に達した謎のフラグへと、いつの間にか思考に向かってしまう。ロ文字の練習といっても、ページを埋めるだけなのだから。こんな事を思ってしまっては、教えてくれている二人に悪い気がするけど……、この際仕方がないだろう。背に腹は変えられぬという奴だ。
“スバルのあのフラグは多分何やらかの原因でスバルが〈死に戻ってこれる〉ことを指しているのだろう”
大体、死に戻ってこれるような魔法力がスバルに備わってるのだろうか?否、スバルからそんな気配は感じ取れない。
母から受け継いだこの能力で、探ろうとしたが何も感じ取れなかったし、そもそもスバルがエミリア様を陥れようとしている悪い奴とはどうも思えない。
“うーん、降り出しに戻ったか……”
「ーーい様」
そういえば、朝にレムちゃんに〈スバルの事をどう思うか?〉と問われたが……、まぁ関係ないか。レムちゃんもスバルに警戒しているだけだろう。レムちゃんも冷静に見えて、冷静じゃないからね……うん。
ラムさん曰くレムちゃんは物事に集中しすぎると周りが見えなくなるらしい。
俺自身も最初はそんなバカなと思っていたが、この日が訪れるまでに数回そのような場面にあったので、レムちゃんが早とちりして行動に移さないように心がけたいものだ。そう、思いを新たにした瞬間ーートントンと軽く肩を叩かれて、無意識にそちらへと顔を向ける。
「やっと、気づいてくれましたか?兄様」
無意識に顔を向けたその先には、薄青色の大きな瞳に心配の二文字を浮かべているレムちゃんがいた。一瞬、その文字の意味が分からず、ポカーンとしていたが手元にあるノートを見て、その理由が分かった。
“これは……”
手本として書かれた五文字のロ文字。その五文字の内に最初の文字をなんと3ページ分殴り書きしていたのだ。思わず苦笑して、レムちゃんへと向き直る。
「ごめんね、レムちゃん。心配かけちゃったね」
「いえ、いいんです。レムは兄様の事を思っているだけで幸せなので」
「あははっ、俺もレムに思ってもらえて嬉しいよ。でも、心配は掛けちゃったんだし…ごめんね」
レムちゃんが慈愛に満ちた表情でそう言ってくれるのが、純粋に嬉しい。余計な心配をかけてしまったせめてものお詫びに手招きして、ふわふわと柔らかい青髪を撫でる。レムちゃんは目を細めながら気持ち良さそうにしていたが、やはり俺が思い悩んでいるのが分かるのか、上目遣いで俺を見つめる。
「兄様、また難しい顔をされてます。何か悩み事があるのですか?レムでは力になれないかもしれませんが、誰かに話すだけでも楽になれると思いますよ」
“うーん。レムちゃんにスバルのフラグを話すか……”
嫌な予感しか感じないから却下だな。例えば、スバルをあのモーニングスターやらで撲殺とか撲殺とか撲殺とか。ヤバイ、撲殺しか浮かばんわ。俺の不安を取り除きたい一心でとかシャレにならない。
ブンブンと横に顔を振り、レムちゃんに向けて笑顔を浮かべる。
「対したことじゃないから。レムちゃんも気にしないでいいよ」
「そうですか……。兄様がそうおっしゃるのなら」
ズーンと効果音がしそうな感じで肩を落とすレムちゃんに、罪悪感を感じながらも流石にフラグの事だけは人に話すわけにはいかないだろう。
羽ペンを握り直し、ロ文字を覚えるのに精を出す。俺が勉強してる横では一歩下がったところでレムちゃんが俺の勉強の様子を見守っている。
“レムちゃんに心配かけるわけにはいかないし、勉強へと視線を向けよう”
「兄様。ここの文字、見本と違います」
「あっ、本当だ」
いつもと同じにレムちゃんに厳しく教えられながら、その日の勉強会は終わりを迎えた。
τ
「うーん、結局 スバルが何者かは分からなかったわけか」
んーと背伸びをしながら、引き出しから破いたメモを取り出す。それを見返してみても、答えが分かるとはどうも思えない。
“魔法ではないというと……、何かしらのアイテムかな?”
しかし、そういったものを持ってるとも思えないんだよな……
「はぁ〜、やめだやめだ。ラムさんのところ行って、癒してもらおう」
新たに書き加えたメモを引き出しへとしまい、俺はラムさんの部屋へと向かった……
次はスバル視点の話を書こうと思います。
※ヒロイン変更によって、タグを変えようと思います