Re:フラグから始める攻略生活   作:律乃

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あけましておめでとうございます。

そして、ここまで更新を長引かせてしまってすいません……(大汗)
ほんっとすいません(高速土下座)
何度謝ればいいか…わかりませんが、本当にごめんなさい……

多くの方に『更新待ってます』と感想を頂いたこと、そしてこんな私の小説を多くの方が読んでくださっていること…励みになってます!!

ありがとうございます!!!!




※UA14万突破!お気に入り登録者1077人!評価者63人、そして休んでしまった間に多くの励ましの感想を書いてくださった多くの皆様、ありがとうございます!!!!

っていうより、いつの間にお気に入りが4桁に…(ガタブル)

お祝いの話書かなくては…っ!


三十二話『ラムさんの手を血で染めたくないから』

月夜に蠢くのは二つの影。

一つは自身が巻き起こす疾風に肩出し改造メイド服と桃色のショートボブをはためかす小柄な少女・ラムで、もう一人はそのラムが放つ緑色の刃から必死に逃げ回っている安易なワンピースと濃い青色の髪を三つ編みにしている幼い少女・メィリィだ。

 

「エルフーラ!」

 

右手を振るうラムの改造されたメイド服にはこれまで彼女が葬った数多くのウルガルフの返り血によって黒ずんでおり、またフリが沢山ついた白いエプロンや黒いスカートは切り裂かれた後があり…破けた場所から覗く白い肌にも一筋の数が走っており、そこから薄っすらと血が吹き出ているのだが、ラムにとってその痛みはあってないようなものなのだろう。

ぶんぶんとウルガルフの返り血によって赤く半分染まっている桃色のショートを風によって巻き上げるラムの表情は常に瞋恚だけで染め上げられている。

 

“なんなのお、なんなのお!”

 

ラムが絶え間なく繰り出す緑の刃が寸前で交わし続けながら、メィリィは愛らしい表情を苦悶に染め上げて、目の前で荒れ狂う赤鬼に慄く。

このまま避け続けているだけでは自分に勝ち目がないのは火を見るようも明らかだ。しかし、もうメィリィには引き寄せられる魔獣が居ない。

手詰まりを再認識してしまったからか、メィリィの足取りが鈍くなり、そこをラムに突かれたメィリィはでんぐり返しをして、ハルイトが転がっている近くへと辿り着く。

 

「くっ……」

 

数枚ほど脚の皮を緑の刃で引き裂かれたのだろう。夜風に当たり、チクチクと染みる痛みを堪えて、立ち上がろうとした瞬間

 

「エルフーラ!」

 

またしても緑色の刃にメィリィの逃げ道を塞ぐように左頬のすぐ横を通り過ぎて行き、頬を流れる血と共に冷や汗が背中を流れるのをメィリィは感じた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「もう鬼ごっこは終わりなようね。観念したのかしら?」

 

薄紅色の瞳へと凍え死にそうなほどの絶対零度の視線を讃え、追い詰めたメィリィを見下ろしながら、無造作に右手を上がるラムは目の前の少女の可愛らしい口元が微笑の形に歪んでいる事を知り、訝しげに片眉をあげる。

 

「…ふふふっ」

「何?自分が死ぬとわかって遂におかしくなっちゃったのかしら?この泥棒猫」

「ううん、そうじゃないよお。私が可笑しいのはお姉ちゃんだよお」

「は?」

 

思いもよらぬ名指しにラムが眉を潜めるのを見上げながら、メィリィは余裕に満ち満ちた笑みを浮かべる。

 

「お姉ちゃん、羨ましいんでしょうお。私がお兄ちゃんとキスしたからあ」

 

ニンヤリと嗤う少女を、その唇を見た瞬間、ラムの中にフラッシュバックしたのは先程の少女とハルイトがキスをしているシーンだった。

小さな唇がハルイトの唇がぴったりと合わさり、身体を外した二人の間に僅かな唾液の橋が架かるのまで……思い出したラムはニタニタと挑発的な笑みを浮かべている少女を感情が消え去った瞳で見下ろす。

 

「ーーい」

「お姉ちゃんしたことなんでしょう?お兄ちゃんと。お兄ちゃんの唇ね、すっごい柔らかいんだよお」

「ーーなさい」

「くっつけた瞬間、ぷるって弾いてくれるのお。それで僅かに甘いんだよお、お兄ちゃん男の人なのに不思議だよねえ?」

「黙りなさいと言っているの。聞こえないのかしら?」

 

静かに憤る赤鬼に少女はほくそ笑む。

やはりだ、この少女は自分の背後に力無く寝転がっているこの少年へと思いを寄せている。そして、その思いを寄せている少年が自分とキスをしたのが気に入らないんだ。

ならば、分からせればいい。後ろにいる少年がその真実を知ってどうなるかを。

 

「お姉ちゃんも分かってるんでしょう?お兄ちゃんが本当はお姉ちゃんのことをどうとも思ってないってえ。それはそうだよね。だって、初めてお兄ちゃんとキスしたのは私がだもの。私のことを好きになるのは当たり前……痛ぅっ……」

 

頬に痛みが走り、少女は恐る恐る痛みが走る頬へと掌を添えるとべったり叩くのは真っ赤な血痕で背筋を悪寒がゾクゾクと走っていく。

カンカンと脳内を警告音が響き渡る……六感が告げている。このままここに居れば、自分は確実に目の前の赤鬼に八つ裂きにされる、と。

その証拠にメィリィを見下ろすラムの瞳は光沢の一つもなく、桜色の唇から流れる凛々しい声は温かみを全く感じられない北極の氷のような冷たさを持ったものだった。

 

「そこまでラムをーー何よりもハルをコケにしたのだから。もう手加減は要らないわよね…?」

 

蛇に睨まれた蛙のようにガタガタと恐怖によって身動きが取れないメィリィにトドメを刺すべくラムが動く。

自分を怯えたように見上げる青色の瞳をただただ感情に消え去った薄紅色の瞳で見下ろしながら、右手を上へとゆっくりと持ち上げていき……そしてーー

 

「エルフーラ!」

 

ーー勢いよく振り下ろした右手から緑の刃がメィリィの身体めがけて飛んでくる最中、メィリィの背後で蠢く影があった……げほげほと吐血しながらも自分の目の前で怯えるお下げの少女を守るべく、少年は母親が得意としていたパロールを弱々しく口にする。

 

「開け開け開け開けよ、天地開闢の調べ。調べ調べ調べ調べて、光を知らしめせ!………ァァァァ!」

 

パチン、と薄い光の壁によって弾かれた緑の刃を苦々しく見送りながら、ラムは自分の前に現れる人物を一瞥し、怒りを抑えきれてない声音で問いかける。

 

「……ハル、どういうつもり」

 

「どういうつもりも何も無いよ」

 

ラムにそう問われた人物・ハルイトはもう原型を留めてない返り血や自分の血によって黒ずんだ執事服を揺らしながら、メィリィを庇うように両手を広げる。

にっこりと笑っているがその笑みが強がりであるのはラムももちろんメィリィも知っているだろう。

実際、ハルイトは立っているだけでも限界なのだろう…全体的にぷるぷると震えており、にっこりと笑っている顔からは冷や汗が流れては頬を濡らしている。

 

「何も無いのならそこをどきなさい。ラムが用事があるのは後ろにいる小娘だけよ」

 

「いいやどかない!ラムさん、俺はね。これ以上ラムさんの手が血で汚れるのを見てられないんだ」

 

ラムは自身の手を汚す赤黒い液体を見て、鼻で笑う。

 

「これはウルガルフの血よ、ハル。ラムはこれまでも何度もこの血を浴びてるわ。今更よ」

 

「確かに今更だね。……でも、それでも嫌なんだ。俺はこれから先はラムさんの手をこれ以上血で汚したくない。だって、俺が好きになったラムさんの手は優しくて暖かい思いやりのある手なんだから…」

 

そうにっこり笑うハルイトをラムはただただ感情が消え去った瞳で見つめていた。

その瞳の奥に揺らめく感情をハルイトが気づくことはないだろう……




異世界かるてっとのラムさん可愛すぎ…っ、惚れてまうやろ!

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