絢辻詞 ~footage~   作:北海銀
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 輝日東高校の創設祭も無事に終わり、冬休みも足早に過ぎ去ってしまった。絢辻や十文字は三学期を迎えて、いつものように二年A組の教室で高校生をしていた。二人の距離は相変わらずだった。創設祭や年末で忙しく、なかなか二人きりになる状況はにめぐまれなかった。

 一月のある寒い日の午後。絢辻は化学室にいた。生徒会担当の高嶋教諭に、創設祭の資料を持ってくるように言われたのだ。昼食をとる前に片づけてしまうつもりだった。

「どこにおいたかな」

 絢辻は教室の中を探していたが、見つけることができなかった。どこにしまったのか、完全に忘れてしまっていたのだ。

「準備室だったっけ」

 ためしに化学準備室への連絡ドアひねると、カギがかかっていなかった。そういえば以前ここで足を握られたことがあったと、その時の情景を思い出し一人ほくそ笑みながら中へ入った。

「きゃっ」と悲鳴を上げてしまった。なぜなら、準備室の床に生徒が倒れていたからだ。

 急病人だと思った絢辻は、先生を呼ぶよりも先に彼に駈け寄った。どうしたの、大丈夫と声をかけて、そっと身体をゆさぶった。

「うう寒い、ってか眠い。もうちょっと寝かせてくれよ」

「え」

 床に転がっていたのは十文字だった。絢辻に背中を揺すられると、ボリボリと尻を掻いて大きなアクビをした。

「ちょっと十文字君。ひょっとして寝ているの」

「ああ、ううん。昨日は一晩中ゲームしてたから」

 気持ちよさそうに寝返りをうった刹那、ようやく異常に気づいたのか跳ね起きた。

「って、誰」と叫んだ。

 ややふくれたような表情の絢辻と目が合って一瞬混乱し、さらに数秒の時をおいて混乱は続いていた。

「絢辻さん。どうして俺の部屋に」    

 自分の部屋に、しかも寝起きの男のベッドに絢辻がいることが信じられなかった。いつの間にそういう親しい関係になってしまったのかと、心の片隅にあるなにかがポッと燃える男子高校生であった。

「しっかりしないさい。ここは化学準備室でしょ」 

 絢辻を三秒ほど見つめた後、十文字は弾かれたように周囲を見渡した。

「ああ、そうだった。ここ学校だよ。なんだよもう」

 寝ぼけていたことを理解し、絢辻が自分の部屋のベットの脇にいるというのが虚構だと知って、少しばかりガッカリしていた。

「どうして床なんかに寝てるのよ。風邪ひいちゃうでしょう」

「なんか眠くてさあ。椅子に座ったって腰が痛くなるだけだし、床に寝たらいいのかなあと思って」

「あきれた」

 二人は椅子に座って話すことにした。

「絢辻さんは、どうしてここに」

「高嶋先生から創設祭の資料を持ってくるように言われたの。それがどこにしまったのか忘れちゃって、どこを探しても見当たらなくて」

「それって、ひょっとして、あの時の段ボールか」

「知ってるの」

 絢辻の表情がパッと明るくなった。対照的に、十文字の様子に翳がかかっている。やってしまった、とのバツの悪そうな顔だった。

「いや、じつは、そのう、ゴメン、絢辻さん。あれ、捨てちゃったんだよ」

「ええー」

 当然、非難する声である。

「ゴミは全部始末しとけって高橋先生に言われてさあ。終わった資料はもう使わないと思ってさ。ははは」

「ははは、じゃないっ。もう、信じられない。どうするのよう」

 絢辻は頭を抱えていた。優等生な学究委員にとって、資料の紛失などあってはならない事態なのだ。

「俺、高嶋先生に謝りに行くよ。絢辻さんは悪くないって、ちゃんと言っとくから」

 十文字は言い訳をしなかった。

「それはダメ。私がしっかりしてなかったのも原因だから。十文字君だけに責任を押しつけるわけにはいかない。それに高嶋先生って男子にきびしいでしょう。きっと何かされるよ」

 高嶋教諭は身長が高く筋肉質な男だ。コワモテで知られており、悪さをした男子生徒をシバくのを日々の好物にしていた。

「うう、たしかに。女子だったら怒られないかも」

 そのかわり、女子にはトロけるように甘かった。とくに美少女には目がなく、生徒会役員でもない絢辻になにかと声がかかるのも、彼の趣向の反映だ。

「いや、それは悪いよ。絢辻さん、下手したら高嶋のエジキになってしまうよ」

「大丈夫大丈夫。女は度胸よ」

 ポンと胸を叩いて、私にまかせないさいと言った。

「じゃあ、そうするよ」

 すんなりと受け入れてくれたので、絢辻は安心した。それでは元気よく謝ってこようと立ち上がろうとした時、十文字が思い切ったように口を開いた。

「絢辻さん、お詫びと言ったらなんだけれど、俺におごらせてくれないか。昼飯食べてないのなら、連れて行きたいところがあるんだ」

「お昼はまだだけど、どこに行くの」

「前に話しただろう」

 絢辻はなんのことだかわからないでいた。

「とにかく行こうよ。すぐそこだから」

「ああ、ちょとまって」

 十文字は絢辻の上着の袖をつかんで引っ張った。そのまま強引に連れて行こうとする。

「どこに行くか知らないけど、先に高嶋先生へ報告しないと」

 その提案を十文字は受け入れた。

 案の定、高嶋教諭は絢辻を責め立てなかった。いやむしろ、シュンと申し訳なさそうにしている彼女を気づかい、心配するなと笑みを浮かべながら肩に手をかけた。しつこく肩に手を置くので、顏が引きつる学級委員であった。これなら怒鳴られたほうがマシだと、内心では思っていた。  

 ようやく職員室を出ることができた絢辻を引き連れて、十文字は学校を抜けだした。裏校門から人目を気にしながら、こっそりと脱出するのだった。

「もう、どこにいくのよ」

「いいからいいから」

 十文字と絢辻は、輝日東高校のすぐ裏手にある駄菓子屋にやってきた。古い民家の軒先を商店にした、昔ながらの郷愁を感じさせる店だ。店主もいい感じに熟成された老婆であり、その薄暗い店内に椅子を置いて、ヌシのように鎮座していた。

「ばあちゃん、ばあちゃん、今日はお客を連れてきたよ」

「なんだい、そんなにデカい声を出さなくても聞こえるよ」

 老婆は椅子から立ち上がった。身体は小さくて腰も曲がっているが、動きは意外と敏捷だった。

「ほう、めんこいねえ。どこで拾ってきたんだい」

 老婆は絢辻にくっ付くくらいに接近して、下から舐めるように見上げた。

「いや、クラスメートだから」

「で、いくらで買ったんだい。二万か」

「ばあちゃん。絢辻さんはそういうひとではないんだよ」

 二万の意味がわからず、絢辻はただ愛想笑いをしていた。

「このばあちゃんさあ、いい人なんだけど死ぬほど口悪いから。あんまり気にしないように」

 十文字がそっと耳打ちする。

「口は悪いが、耳はいいぜよ。聞こえとるがな」

 二人とも苦笑いをした。

「そんで、今日はなんにする」

「そうだなあ、絢辻さんもいることだし、ちょっとばかり豪勢にいこう。ブタと海鮮のミックスで。もちろん二人前」

「あいよ」

 駄菓子屋なので、狭い店内にはたくさんの駄菓子が並んでいる。学校帰りの子供たちが来るにはまだ時間が早いので、客は十文字と絢辻のみだ。奥のほうに鉄板焼き専用のテーブルが一つある。二人はそこに座った。老婆は居間にあがって、なにやら食材の仕込みをしている。

「もうわかったよ。前に言っていたお好み焼きでしょ」

「正解」

 十文字が胸を張った。  

「おごってもらうなんて悪いわ、と思ったけど、やっぱりおごってもらうかな。アルバイトに励んでいる十文字君は、さぞかしお金持ちだろうから」

 意地悪そうな、それでいてクスクス笑う絢辻の雰囲気が、とても心地よいと十文字は感じていた。

「バイトはやめたんだ。目標額が貯まったんでこれにて終了」

 十文字は昨年の末でアルバイトを辞めていた。

「貯めたお金をどうするの。貯金かな」

「ドラムセットを買うんだ。ずっとほしかったんだよ」

「持ってるじゃないの」

 絢辻は十文字の部屋でドラムを見て、そして聴いてもいる。

「あれはシンセドラムだから。生ドラムっていうか、ちゃんとしたアコースティックドラムがほしかったんだ」

 十文字が割り箸をもって、机を叩きだした。ドラムセットが買えることが嬉しくてたまらないといった様子だ。

「それで、いくらぐらいするの、そのセットは」

 その金額をきいて、絢辻は目を丸くした。

「床屋さんにも行かないで、制服も先輩からのヨレヨレのおさがりで、そんなに貯めこんでいたのね。あきれた」

 本気で呆れ顔をしている絢辻に、十文字はヘラヘラと笑って誤魔化していた。

「ほうれ、仲のいいお二人さん。それじゃあ、焼くでえ」

 材料をお盆にのせて、老婆がやってきた。ボウルの中身を鉄板の上に流すと、慣れた手つきで焼き始めた。ジュージューと食欲を刺激する音が響き、いい匂いが充満していた。

「おいしそう」

 これには絢辻も目を奪われた。ちょうどお腹が空いていたので、ワクワクしながら見つめていた。

「あ、ばあちゃん、その大エビはたのんでないよ」

 老婆が巨大なエビを二匹ずつ、それぞれの玉の上にのせた。海鮮ミックスの中には含まれない食材で、もちろん値段も相当高かった。

「今日はさ、このババの腰の具合がいいんで、おごりだよ。おまえみたいなコジキ男に、こんなにめんこいつれ合いができた記念じゃて」

 老婆に恋人同士だと思われたようだ。お好み焼きに見入っていた絢辻が慌てて手を振った。

「クラスメート。そうよねえ、十文字君」

「そうそう、俺たちクラスメートだから」

 言い訳をする若者二人に対し、目の前の煙が邪魔だとばかりに手を振る老婆であった。

「ほうれ、できたでえ。ババの駄菓子はマズいけれど、これは美味いぞ。たっけーエビものせてるしな」

 ソースとマヨネーズをたっぷりとぬり、青のりを振りかけた。香ばしい匂いが立ちのぼる。見るからにおいしそうだ。

「なにぼさっとしとる。熱いうちに食わんと固くなるがな」

 二人は両手を合わせて、同時に言った。

「いただきます」

「いただきます、ばあちゃん」

 十文字よりも先に絢辻がヘラをいれて、プリップリに焼けたエビと生地とを同時に口の中に入れた。

「エビ、このエビが」

 はふはふと、口の中で悶えながら絢辻が言う。

「死んじゃう。美味しすぎて死んじゃう」

「な、うまいだろう。ばあちゃんのお好み焼きバカうまなんだよ。生地にダシがすごくきいてるんだ」

 うまそうに頬張る高校生を見つめて、老婆は満足そうに頷いた。昔ながらの古めかしい冷蔵庫からラムネを持ってきて、ドンとテーブルの上に置いた。

「ほれ、こっちは冷たいうちに飲めや。これもおごりだ」

「サンキューばあちゃん、今日は気前がいいなあ」

 無邪気に喜ぶ十文字であったが、彼のツレは不満げだった。

「おばあちゃん、ダメです。ちゃんとお金を払いますから」

 毅然とした態度だった。絢辻らしい律義さを見せた。

「いいんだよ。こんなもの。なんぼもないで」

「いいえ、払います」

「絢辻さん。ばあちゃんがおごってくれるんだから、素直にもらおうよ」

 おごることが老婆の心を喜びで満たしていると、十文字はわかっていた。断ることは、かえって傷つけてしまう。

「いいえ、払います。このおっきなエビの分も払いますよ」

 鋭角的で断定的な物言いに、彼女を説得するのは無理だと十文字は思った。

「十文字君が」

「ええー、俺かよ」

 老婆がゲラゲラ笑った。一本とったとばかりに、絢辻は得意そうに腕を組んでいた。

「あんなに高い物を買うぐらいお金を貯めたのだから、払うのは当然ね。いくら持ってるの」

「エビの分は計算に入れてないから、そんなにないよ。ええっと、二千円ぴったし」

 尻のポケットから財布を取りだして、しぶしぶと中身を確認する十文字であった。

「ちょっと、かしなさいよ」

 絢辻がその薄っぺらい財布を素早く取り上げると、中身の二千円を抜きとって、それを老婆に渡した。ああ、と、なさけない表情を浮かべる十文字にカラになった財布を返した。

「これで足りますか」

「十分だ。かえって、つりがでるでよ」

「それはいいです。とっておいてください」

 ニッコリと意味ありげに笑みを浮かべる女子高生に、老婆は年季の入った笑みを返した。

「おいコジキ男、この娘を大事にするんだぞ。おめえが食えなくても、この娘には腹いっぱい食わせてやれ。こりゃあ、しっかりした嫁になるで」 

 人生の大先輩にそう評価され、まんざらでもない絢辻だったが、慌てて手を振って否定しなければならなかった。

「クラスメートです。十文字君は、あくまでもクラスメート」

 ははは、と十文字が元気なく笑っていた。

 絢辻と十文字、老婆をまじえてのお食事会は良き団欒となった。釣銭のお返しだと店主が駄菓子を持ってきたので、それらをつまみにしながら、楽しい時間を消費していた。

「へえ、來未ちゃんもよく来るんだ」

「ここはあいつの溜まり場だよ。家にいないと思ったら、ばあちゃんに駄菓子ねだってるんだ」

 常に勝気で攻撃的な十文字來未は、敵が多くてよく一人ぼっちになる。そういう時はこの駄菓子屋に来て、老婆相手に愚痴をもらすのだった。

「あいつの口の悪さは、ばあちゃんゆずりだよ」

「人生、なにごとにもナメられたらイカン。ケンカに負けんようにな、いいだけ仕込んだで」

「仕込み過ぎなんだよなあ」

 イカ風味のスナック菓子をボリボリやりながら、十文字がぼやく。

「そういえばな、來未っ子のツケも、だいぶんたまっとるで」

「それはお兄さんがキッチリ払っておかないとね」

「もう、ないよ。かんべんしてくれって」

 十文字は苦笑いしながらカラになった財布を空に振った。

「そんじゃ、ババは後片付けしてくるで。おまえさんたちはマズい駄菓子でも食ってな」

 老婆は、食べ終わった食器類をお盆にのせて行こうとした。絢辻が手伝おうとするが、いいからいいからと制止し、そのまま居間へと上がっていった。二人はあらためて向かい合った。

「絢辻さん」

「なに」

「歯に青のりが付いているよ」

「え、うそ」

 絢辻があわてて口を手で隠した。すぐにポケットから手鏡を出すが、十文字が見ているのでやりにくそうに身をよじった。

「冗談だよ。付いてないよ」

「え」

 見えないように椅子の上に伏せて鏡を見ていたが、冗談と聞いて起き上った。十文字がニヤついている。

「このう、意地悪ドラマーめ。こうしてやる、こうしてやる」

 青のり缶を持った絢辻が、十文字に向かってそれを振りかける動作を何度もやっていた。やめろやめろと言いながら、あきらかに楽しんでいる様子の男子高校生だった。

「へえ、君たちすっごく仲いいのね。付き合ってからどれくらいなの」

「は、」

「へ、」

 青のりの缶を二人で握ったところで固まってしまった。石膏のようになった頭部をギリギリと回した。

「ちょっと、はるか。邪魔しちゃだめだって」

 テーブルのすぐ脇に女子高生が二人いた。いつの間にか来店していて、いつの間にかそこに立っていた。絢辻と十文字はじゃれあっていたので、気づかなかったのだ。

「だって、後輩にこんなの見せつけられたら、ぜひともお邪魔したくなるじゃない。ひびきだってそう思うでしょう」

「そう思うのは、はるかだけだって」

 三年生の森島はるかと塚原響だった。

「ごめんなさい。邪魔するつもりはないのよ。ちょっと、お菓子を買いにきただけだから」

 響にそう言われて、二人はやっと解き放たれた。握り締めていた青のり缶から手を離して、はははと愛想笑いをしている。

「森島さんと塚原さんもよく来るのですか」

 じゃれあっていたことをこれ以上追及されぬように、十文字が話しかけた。

「あらあ、あなたわたしと知り合いだったかしら」

「いえ、その、こっちが勝手に知っているだけでして」

 輝日東高校で、三年生の森島はるかを知らない生徒はいない。突きぬけたような美貌とモデル顔負けのスタイルの持ち主で、全校生徒、とくに男子には絶大な人気がある。無邪気で茶目っ気の利いた性格も男心をくすぐってやまない。もちろん、十文字の極秘ノートにも詳しく記載されている。また、森島の天然さをいつもフォローしている塚原も有名人だ。その面倒見の良さから、とくに後輩からは慕われる存在となっていた。

「君たちは二年生ね、フフ。この駄菓子屋さんで密会デートとは、やるわね」

「私たち、とくに付き合っているということじゃないんです。ただ一緒にお昼を食べに来ただけでして」

「それを付き合っているというのじゃないかしら」

 はるかではなくて、響が言った。絢辻は言い返すべき言葉を見失っていた。

「いいえ、それはないです。だって俺と絢辻さんじゃあ、ぜんぜん釣り合わないし」

「へえ、そうなの」

 はるかが十文字の顔に自分の顔をくっ付けるばかりに近づけて、じーっと見つめた。校内一の美女にキスされるほどに異常接近され、その男子はドギマギしていた。

「ほんとだー。これじゃあ、つりあわないね」

 ほんの一瞬、絢辻の方を見た後、そう言い放った。

「もう、はるか。こっちに来なさい」

 響が小言をぶつけながら、親友を引っぱっていった。

「あれ、あんたらも来てたのかい」

 老婆が店に出てきた。はるかと響きには、常連客への態度だった。

「またサボってんかいな。しょうがないねえ」

「三年生はもうやることないから、ヒマなのね」

 三年生の三学期は受験シーズンへと突入している。はるかと響きは、すでに進学先が決まっているので、あくせくすることはないのだ。

「私たちはいいけど、二年生は普通に授業があると思うのだけれども」

 響がそういって、テーブル席を見た。その声をしっかりと聞いていた二人は、あれえ、という表情をした。

「ああー、マズい。昼休みとっくにすぎてるよー」

「え、うそー」

 昼休みはとうに過ぎていた。二年A組の授業は四時間目に入っている。よりによって、高橋担任の科目だ。

 二人はあたふたと席を立ち、三年生に一礼すると、同時に店を出ようとした。

「ちょっとー、一緒に帰ったら誤解されちゃうでしょう。十文字君は後から来なさいよ」

「そ、そうだな、俺は遅れて行ったほうがいいか。てか早退したほうがいいか」

 恐妻に叱られ、追い立てられているようだった。結局、二人はそのまま店を出た。

「あの二人、青春してるね。なんか、うらやましいなあ」

 はるかは、イカ味のスナック棒をサクサク食べながら感想を述べた。

「さっきは言い過ぎたんじゃない。あの男子、結構傷ついたかもよ」と響。

「だってつり合ってないじゃん。男子はすごくいいけど、女子がイ・マ・イ・チなのね」

「はるかの男を見る目って、不思議でならないわ」響きは本気でそう思っていた。

 老婆がお茶をもってきた。「ばあちゃん、サンキュー」と、はるかは遠慮なくズズズっとすすり、響は丁寧にお礼を言った。

 








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