機動戦士ガンダムSEED〜日本国自衛隊〜   作:名無之助

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第五十七話・ボアズ攻略戦・後編

 リクセント公国航宙防衛隊ら後方部隊がザフト軍の襲撃を受け、襲撃してきた部隊を撃破したその数十分後、日本、ユーラシア連邦、大西洋連邦の艦隊からなるボアズ攻略の主力艦隊は、遂にザフト軍の防衛ラインにて、ザフト主力部隊と衝突した。

 

 「ユーラシア及び大西洋連邦艦隊へ打電、右翼のユーラシア連邦艦隊はそのまま前進!左翼大西洋連邦艦隊は、交戦しつつ予定通りに左翼方面へ移動!くれぐれも意図に気付かれないよう注意してもらいたい!我が隊は、当艦隊はそのまま前進!第三独立戦隊は左翼へ移動、大西洋連邦第8艦隊と共同で所定の作戦に基づき準備に入れ!他の艦隊は陣形を維持し、持久戦に徹せよ!」

 

 命令を発したのは、作戦の総指揮官となった日本国航宙自衛隊独立航宙打撃群司令兼第一航宙打撃艦隊司令、菊地 純一郎宙将である。

 

 そして、彼の命令を受け、ユーラシア連邦、大西洋連邦の両軍の艦隊は行動を開始した。

 

 ユーラシア連邦艦隊の指揮官はディミトリー・ビラード中将で、彼は元は地球連合軍第三艦隊司令だったが、エンデュミオン・クレーターでの戦闘で右目を失い、左胸から右腹部に掛けて重度の裂傷を負うが奇跡的に生還した不死身の男として知られる人物で、ユーラシア連邦内でのブルーコスモス派の粛清で司令官が不在となったユーラシア連邦第一宇宙艦隊に昇進の上で着任、ユーラシア連邦の作戦参加部隊司令となる。

 

 彼は、菊地宙将からの指示を受け、艦隊に命令を伝える。

 

 「第二、第三艦隊へ打電。密集隊形を維持しつつ前進。MS隊は艦砲射撃に注意しつつ敵MS隊に対処せよ。第一艦隊は突撃隊形を取りつつ第二、第三艦隊の後方にて次の指示を待て!第一艦隊所属のMS隊は艦隊直掩に専念せよ!」

 

 ビラードの命令によりユーラシア第二、第三艦隊は前進を開始する。

 

 ザフト軍MS隊はその前進を阻止しようと攻撃してくるが、ユーラシア連邦MS隊とMA隊の連携した迎撃と、艦隊の濃密な対空防御により甚大な損害を出す事となる。

 

 ーー

 

 左翼の大西洋連邦宇宙艦隊もユーラシア連邦が動き始めると同時に戦闘を開始、より左翼側へ逸れながら交戦しつつ移動していた。

 

 大西洋連邦宇宙艦隊の司令はヨハン・エイブラハム・レビル中将で元は予備役だったが、ブルーコスモス派の大粛清により指揮官が不足となり現役に復帰し、その能力を発揮し、ザフト軍艦隊を引きつけて左翼側へと誘導しつつあった。

 

 「よし、このまま交戦しつつ押し込め。敵に余裕を与えるな。第八と日本の第三が合流し、準備が整えば合図が来る。それまで連中と遊んでやろうじゃないか」

 

 

 そう言ってレビル中将は余裕の表情を浮かべる。

 

 ー

 

 大西洋連邦第八艦隊と第三独立戦隊が合流したのはその十数分後だった。

 

 

 「こちら日本国航宙自衛隊第三独立戦隊司令、水瀬大鉄宙将補です。大西洋連邦第八艦隊、これより貴艦隊と合流し、作戦の第二段階の準備に入りたい。特務艦艇の準備は宜しいか?」

 

 第三独立戦隊司令の問い掛けへの返事はすぐにきた。

 

 『こちら大西洋連邦第八宇宙艦隊司令、デュエイン・ハルバートン少将です。特務艦艇…アークエンジェル級アークエンジェル、ドミニオン両艦とも準備は万全。後は貴隊からの特殊装置の受領、取り付けが完了し次第、行動を開始する予定です』

 

 「了解した。装備をそちらへ移送し、取り付け作業を開始する」

 

 そして、第三独立戦隊旗艦飛龍に曳航されていた輸送コンテナから巨大な装置の部品が次々とMS隊により運び出され、アークエンジェル、ドミニオン両艦のローエングリン発射口へと取り付けが開始された。

 

 ー

 

 その間もザフト軍と連合主力艦隊は苛烈な戦闘を続けていた。

 

 その戦域ではとあるMA隊がザフトMS隊を翻弄していた。

 

 『なんだあのMAは!?メビウスであんな機動ができるのか!?』

 

 『MAに負けるな!俺たちMS隊の立つ背がないぞ‼︎』

 

 『黄色中隊に遅れをとるな‼︎』

 

 ユーラシア連邦が担当する右翼の戦域で、ザフトMS隊は、両サイドが黄色で塗装されたMA隊13機と交戦…いや、もはや戦闘ではなく、それは蹂躙であった。

 

 『おい!や、奴等黄色だぁ!黄色がで…(ブツ)

 

 ザフト軍MS隊の一機が撃墜される間際に発した言葉は、ザフト軍部隊を絶望に染めた。

 

 『MS隊は一体何を言っている!?黄色いのがなんだ!たかがMAに何をしているのだ!』

 

 『対空防御が突破された!黄色いのがきた‼︎助け…ッ!』

 

 

 ザフト軍部隊は混乱した。

 

 右翼のザフト軍部隊は、たった13機のMAに蹂躙されつつあった。

 

 彼らの不幸は、本来5機編成の黄色中隊が、かつての所属隊員や新たに選抜された精鋭を加えて増強されていたこと。エースが単機で黄色中隊に挑んでは早々に退場してというのを繰り返し、10人ほどいたエース格が全滅したことだった。

 

 『MS隊!ぜ、全機退却‼︎艦隊を援護し後方へ退却せよ‼︎』

 

 MS隊が壊乱しかけている事にようやく気付いたザフト軍の右翼側の艦隊司令は、退却を命令した。

 

 しかし、黄色の悪魔は逃がさない。

 

 『全機に告ぐ。一機も、一隻も逃すな。狩り尽せ』

 

 『『了解‼︎』』

 

 こうしてザフト軍防衛部隊の右翼は崩壊した。

 

 ー

 

 中央の方はというと、右翼のザフト軍部隊が崩壊した直後に新たな命令が出され、航宙自衛隊の艦隊は第一打撃艦隊がザフト軍部隊に突撃を仕掛けて、それに続くように各艦隊がザフト軍部隊を押し込んでいく。

 

 『ディアポル1エンゲージ‼︎』

 

 そう言って吶喊するMS隊は、第一打撃艦隊の正面に展開したザフトMS隊に襲い掛かった。

 

 『悪魔だ‼︎白い悪魔が出たぞ‼︎』

 

 『む、迎え撃て‼︎奴らを倒せば勲章をバ!?』

 

 ザフトMS隊の通信に、悪魔という単語が増加した。

 

 第一打撃艦隊のディアボル隊…自衛隊で最も多くのザフト軍部隊を撃破した部隊として知られ、大半が小規模な戦闘だったり、偶発的な遭遇戦だったのだが、いつしか自衛隊の白い悪魔と呼ばれる様になった。

 

 『悪魔だと?…病原だな。戦場の病原は私が切除する‼︎』

 

 そう宣言してディアボル隊へと攻撃を仕掛けてきたザフトのエースの登場に、ザフトMS隊は湧き上がる。

 

 『ドクターが来た!助かるぞ‼︎』

 

 『悪魔をやっつけてくれ‼︎』

 

 ドクターと呼ばれるエースの登場、それにディアボル1は動じない。

 

 『仰木隊長、敵のエースみたいです』

 

 「分かってるよ、あれはきっと中ボスだ。そして俺たちはきっとそれを倒す主人公になれる!だから…やられる前に…小林や、これまでの犠牲になった同僚たちの為に‼︎殺る‼︎……ディアボル1…エンゲージ‼︎」

 

 かつて感じた何かが弾ける感覚と、研ぎ澄まされていく神経…それを自覚しながら、機体を操る。

 

 敵エースの動きが遅く見える。

 

 ビームサーベルを、そのゆっくりと動いているように見える敵エース機の腹の部分に添える様に振り抜く。

 

 それは一瞬だった。

 

 ドクターと呼ばれたエースは、何が自分の身に起きたのか知る間も無くその生涯を終えた。

 

 エースを失った中央のザフト軍部隊はパニックに陥り、さらに自衛隊の艦隊による攻撃に大損害を出し、壊乱に近い様相でボアズ方面へ退却していく。

 

 そこで気づくべきだった。

 

 自衛隊も、ユーラシアも、ある地点からピタリと追撃をやめていた(・・・・・・・・)ことに…。

 

 そしてそれは左翼にも言えることだった。

 

 ー

 

 『メビウス中隊、エンゲージ!』

 

 左翼では、死神とザフトから恐れられるエースMA部隊が、ザフト軍に恐怖をばら撒いていた。

 

 

 それに拍車をかけたのが、もう一つのエース部隊。

 

 MSに乗り換えたその部隊は、メビウスに並ぶ戦闘力を持っていた。

 

 『グリフィス1エンゲーシ!』

 

 『オメガ 11 エンゲー……イジェークト‼︎』

 

 グリフィス1が戦闘を開始直後、とあるMAが何故かイジェクトし、パイロットが居なくなったMAが、丁度グリフィス1を狙撃しようとしたザフトのエース、ハイネ・エステンフルスの機体に直撃。パイロットは生還するも機体は大破させる。

 

 そのハイネは、イジェクトしたオメガ11に捕獲され、捕虜となる。

 

 左翼のザフトは、死神と南十字星をトレードマークとする凶鳥の出現と自軍エースの早々の退場、右翼と中央部の部隊の状況から早々に後退を決意するも、彼らも誘導されたことに気が付いていなかった。

 

 気が付いていたら、多少結果は変わっていたかもしれない。

 

 「菊地司令、第三独立戦隊より準備完了との報告。チャージも完了したとの事です。敵艦隊も全て予定エリアに入ってます…一部は更に後方へ逃げようとしてますが…」

 

 オペレーターの報告に、菊地宙将は一緒だけ表情を曇らせるが、すぐに切り替えオペレーターに指示を出す。

 

 「分かった…連中に情報を持って行かれるわけには行かないからな……第三独立戦隊にコードを送信…【蒼き星と星に生きる生命の明日の為に】…許せ、名も知らぬ兵たちよ…」

 

 

 ー

 

 「司令、コードを受信しました。【蒼き星と星に生きる生命の明日の為に】入力しますか?」

 

 オペレーターの問いに、水瀬は無言で頷く。

 

 「コード入力完了、試製量子連動システム起動!試製陽電子圧縮集積システム正常!本艦の試製超小型マイクロブラックホール放射装置臨界点!アークエンジェル、ドミニオン、陽電子砲発射‼︎陽電子集積システム正常作動‼︎マイクロブラックホール放射砲、発射10秒前!対ショック、閃光に備え!………3、2、1、0…発射‼︎」

 

 

 アークエンジェル、ドミニオンの陽電子砲が陽電子集積システムで融合したところに、飛龍が放つマイクロブラックホールが黒い束の様になりながら突き刺さるように進むと、突き刺さった所からそれまでの黒から白い光の閃光となって進み、ザフト軍が退却して集結していたエリア手前に拡散し、エリアにあった全てをを焼き払う…。

 

 残存の全ての戦力が焼き払われた宇宙要塞ボアズは、降伏勧告を受諾。ここにボアズ攻略戦は終結した。

 

 

 ザフト軍損害

 

 艦隊

 

 ナスカ級 20隻→全滅

 

 ローラシア級 60隻→全滅(数隻のみ大破漂流中のを救助)

 

 MS、MA→要塞直掩の24機を残してMS約400機とMA120機文字通り焼失。

 

 宇宙要塞ボアズ→連合軍へ降伏

 

 連合軍損害

 

 MS 182機損失

 

 MA 238機損失

 

 艦艇 7隻撃沈 12隻大破 9隻中破又は小破 軽微な損傷多数 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 そりゃ千機超える数のMS隊で殴りかかられたら終わるよね…

 ザフト軍を焼き払ったのはのちに改良されて次元波動爆縮放射機…になるかもしれない。

 だって真田さんが作ったんだもん。(物体を転移させる装置の研究の副産物)

続編開始までの繋ぎとして短編ssを考案中、どれ読みたいですか?

  • BLEACHオリ主
  • 学園黙示録オリ主
  • 青つなぎの伝説のホモが色んな原作を破壊

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