メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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サンシャイン11話見ました。
最後のあれは予想外すぎてもう……。
もしかして勇君って浦女の校歌とかなんですかね?


第77話 闇の巨人

過去に何度も訪れた病院の一室。

 

酸素マスクを付けてベッドに横たわるステラを囲みながら、千歌達はどん底にいるかのような空気を感じていた。

 

「……向こうには俺達だけで行く」

 

沈黙を破ったのは未来だ。

 

連れ去られた果南の救出。ステラとヒカリが倒れた今、それに出動できるウルトラマンは他にいない。

 

地球を離れるのは危険だが、そんなことを考えていられる状況でもない。

 

「未来くん……メビウス……」

 

「あいつらの狙いはわからないけど……その場で手をかけずにわざわざ連れ去ったってことは、そうする必要があったってことだ」

 

『彼女は殺されたわけじゃない。……すぐに、僕達が連れ戻してみせる』

 

既に果南が連れ去られてから一時間ほど経っている。これ以上の猶予は望めない。

 

「……!ステラちゃん……?」

 

横になるステラの手を握っていた千歌がふと声を上げる。……と思えば未来に対して手招きするので、何事かと急いで駆け寄った。

 

いつもの彼女からは想像もつかないほどに弱り切った表情で、ステラはゆっくりと右腕を差し出してきた。

 

「…………」

 

「……!」

 

彼女の右腕に現れたナイトブレスが発光し、幾筋もの光の繊維となって未来の左腕へと移る。

 

強い力を感じた後、ステラの意思を確認するように言った。

 

「持ってけ……ってことか?」

 

無言で頷く彼女に対してこちらも首を縦に振って返答した。

 

どの道今の状態ではウルトラマンに変身できない————ならば未来とメビウスにナイトブレスの力を与えておこうと考えたのだろう。

 

これから未来達が始めようとしていることは、自殺行為にも等しい。その僅かな助けになればというささやかな願いだ。

 

「……ありがとう。あとで必ず返しに戻るからな」

 

微かに笑ったステラが目を瞑る。

 

その横で千歌はどうすればいいかわからない、といった顔で未来を見上げていた。

 

「……その、未来くん……私達……」

 

「みんなも気をつけてくれ。また狙われる可能性もないわけじゃない」

 

「待って!」

 

焦燥に駆られた未来が病室を出ようとしたところで曜が口を開いた。

 

背を向けたまま彼女の声を聞く。

 

「果南ちゃんがこんなことになったのは……未来くんのせいじゃないからね」

 

引き締まった口元から発せられた震えた声を聞き、未来は一歩踏み出した。

 

「……ああ」

 

 

◉◉◉

 

 

暗くてじめじめした空間で目が覚めた。

 

周囲は明かりのない真夜中の街のように真っ暗だ。目が慣れるまでしばらく無言で過ごす。

 

「……ここは……?」

 

果南は小さな声で呟いた後、すぐ近くにいる人影の存在に気がついた。

 

暗闇のなかで黒い衣服をまとっているせいでその全貌ははっきりとはわからない。

 

「やあ、目が覚めたみたいだね」

 

「あなたは……」

 

陽気な声が飛んできたことでほんの少し安心する。が、自分が誘拐されたという事実を思い出してすぐさま身構えた。

 

「……!」

 

ぽっ、と青色の炎が灯され、目の前に一人の青年の顔が浮かんだ。

 

「こんにちは果南ちゃん、こんなところで会うとは思ってなかったよ」

 

「……確かノワール……」

 

「あれ?ボクの名前知ってるの?嬉しいな!」

 

「未来が前に呼んだのを聞いてたから……」

 

灯りがついたことで自分がどのような状況にいるのかはっきりした。

 

透明な球体の中にノワールと共に閉じ込められている。外は深海にでも沈んでいるかのように真っ暗だ。

 

「…………あなたが私をここに連れてきたの?」

 

「いいや違うよ。実はボクも無理やり連れてこられた身でね」

 

「そ、そうなの?」

 

とりあえず彼自身は何かするつもりはないと判断し、胸をなでおろした。

 

自分達を覆っている透明な障壁に触れ、小突いてみる。

 

「……この壁、壊したりできない?」

 

おそるおそるノワールに質問する果南に、彼は迷うことなくあっさりと答えた。

 

「できるよ」

 

「……!なら————」

 

「でも今はやめたほうがいい。…………ほら」

 

ノワールが指差した方向に視線を向ける。

 

徐々に暗闇が晴れ、外に巨大な人影があることに気がついた。

 

「皇帝くんのお出ましだ」

 

闇を体現したかのような巨人がゆっくりとこちらへ歩み寄る。

 

例え難い雰囲気と威圧感に圧倒され、果南は血の気の引いた表情で巨人を見上げた。

 

「さてエンペラ、果南ちゃんがこの場にいることで君がボクを呼び出した理由がなんとなくわかったよ」

 

ノワールは立ち上がり、両手を広げては軽快な口調で言った。

 

「光の欠片について…………聞きたいのかな?」

 

 

◉◉◉

 

 

向かう場所は敵の本拠地。

 

メビウスと未来はエースからもらった情報をもとに宇宙を飛翔しながら捜索していた。

 

『ダークネスフィア……それがエンペラ星人の宇宙船だ』

 

(メビウスは一度あいつと戦ってるんだよな?)

 

『……うん』

 

メビウスが力を失い、未来と一体化することになった元凶。

 

暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人。奴が住まう場所へと今から単独で乗り込むというのだ。

 

『……!未来くん!』

 

(……!)

 

遠くから放たれた光線に反応し、瞬時に回避行動をとる。

 

メビウスの姿が敵に見つかったのか、迎撃体制へと入った兵士達が次々に現れた。

 

『レギオノイドだ!多いよ!』

 

(敵のアジトが近いってことか……!?)

 

放たれる光柱を避けながら突き進み、レギオノイドの集団へと迫る。

 

一つ一つ落としていくんじゃキリがない。ここは一気に————

 

(使わせてもらうぞヒカリ、ステラ……!!)

 

左腕に宿るナイトブレスとメビウスブレスを融合させ、一つのアイテムへと変える。

 

メビウスの身体に金色のラインが走り、ナイトメビウスブレスからは黄金色の長剣が伸びた。

 

『(うおおおおおおッッ!!)』

 

ありったけのエネルギーをブレスに込め、解放。

 

爆発的に膨れ上がった光の刃がレギオノイドの群を焼き払う。

 

そのまま身体ごと回転し、周囲に残ったレギオノイド達を巻き込みながら前進した。

 

無数の爆発を背に、メビウスはダークネスフィアを目指す。

 

(待っててよ……果南さん!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗闇に浮かぶ球体に囚われた果南とノワールを見下ろし、エンペラ星人は口を開いた。

 

「小僧、貴様は以前余に言ったな……"このままでは負ける"と」

 

「ああ、確かに言ったね」

 

暗黒の支配者を前にして動じない様子のノワール。

 

一度裏切られた相手を前にして何の感情も抱いていないような様子で語りかけるのだ。

 

「……その光の欠片、とやらの詳細を教えてもらおうか」

 

「……へえ、興味持ってくれたんだ?」

 

「答えろ、あれは光の者が地球人に向けてばら撒いたものか?」

 

「いいや?そういうことができる奴を知らないわけじゃないけど————」

 

一拍置いて皇帝の顔色を伺いつつ、ノワールは言った。

 

「あれは正真正銘、地球人が生み出す力だ。君が想像するような第三者が作ったものじゃないよ」

 

特定の人物から確認できる謎のエネルギー体。

 

ノワール自身その由縁を知っているわけではないが、ウルトラマンキングの予言を知った時は心が躍った。

 

「まあすぐに信じられなくても仕方ない。何の力もない地球人が、闇の皇帝を倒し得る力を持つなんて————ボクでも飲み込むのに少し時間がかかった」

 

エンペラ星人は何も言わない。納得しているのか考え込んでいるのか。

 

背後にいる、怯えた表情で二人の会話を聞いていた果南の方へ視線を向ける。

 

「実際に発動するまで見分けることはできないけれど……彼女に関しては確かに欠片を宿しているよ。それがどれだけ強力なのか……身をもって体験したしね」

 

話の矛先を向けられた果南の肩がビクリと揺れる。

 

「……この矮小な輩が、余を倒すだと……?」

 

「ま、ボクでも知ってることはそれくらいのものさ」

 

果南を観察するように視線を落とした後、馬鹿馬鹿しいと笑い飛ばすような声をあげた。

 

「やはり戯言に耳を貸すべきではなかったな。この怯えきった小娘が……余より絶大な力を秘めていると……?」

 

「正確にはその断片、だけど……」

 

直後、遠くで聞こえる戦闘音に反応し、ノワールは意識を外へと移した。

 

立て続けに耳に滑り込んでくる爆発の音。間違いなく誰かがこの場所に近づいている。

 

それが何者なのか。ノワールにはもう考えるまでもない。

 

「ちょうどいいや、()とも会ってみなよ。いずれ君の前に立ちはだかる少年だ」

 

 

◉◉◉

 

 

レギオノイドの集団を蹴散らし、さらに先へと進んだ宙域。

 

禍々しい漆黒の炎を視界に入れたメビウスは、一直線に飛ぶ速度を上げた。

 

(あれが…………ダークネスフィア)

 

決して途絶えることのない闇の炎が燃えている。

 

この先にエンペラ星人がいると考えただけで身体が震えてきた。

 

(この中に果南さんが……)

 

『慎重に進もう。……極力戦闘は避けてね』

 

一度皇帝と対峙したメビウスは至って冷静にそう口にする。それによって未来の緊張感もさらに膨れ上がった。

 

徐々にその宇宙船との距離を詰める。

 

いつでも敵を迎撃できるようにと、ナイトメビウスブレスから伸ばした光の長剣を常に構えていた。

 

ここに来るまでどれだけ果南の無事を祈ったかわからない。彼女に何かあったら千歌達に顔向けできない————

 

 

 

 

 

(…………)

 

…………重なった。

 

ふと視界の端に捉えた人影を見やる。

 

あとほんの数メートルでダークネスフィアに到達するというところで、メビウスは飛行を中断してその場に留まった。

 

…………重なった。過去に見た巨人の姿と重なった。

 

横に浮かんでいた一人の巨人と目が合う。向こうは何を思っているのだろうか。

 

未来とメビウスは突然の邂逅に驚きつつも、漆黒の鎧をまとった戦士の名前を呼んだ。

 

『(————ベリアル)』

 

 

 




ベリアルと再会した未来とメビウス、そして囚われた果南達の行方は……⁉︎

解説いきましょう。

光の欠片はジードに登場するリトルスターと似てはいますが全くの別物です。
作中語られた通り伏井出ケイによって生み出されたリトルスターとは違い地球人が自力で発するものです。
他の宇宙人から発現することもないので、宿している者は宇宙全体で見ても希少と言えるでしょう。

さて次回は……まさかのエンペラ星人と激突……?
※まだ最終回ではありません。

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