レナの兄貴に転生しました【完結】   作:でってゆー

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疑心暗鬼の結果

なんとか無事に大臣の孫である寿樹君を誘拐犯から救出することが出来た。

 

怪我の有無を確認するが、多少の擦り傷はあるが大きな怪我はなさそうだ、受け答えもしっかりできることから精神状態も悪くはないように思う。

 

俺や葛西が怪我一つなく無傷で誘拐犯2人を制圧することが出来たのは、かなりの幸運だろう。

なぜなら、室内にいた誘拐犯はこのひぐらしの世界での死神と言っても過言ではないやつらだからだ。

 

殺しの訓練を受けており、相手が子供だろうと躊躇なく殺す男たち。

 

原作ではこいつらに梨花ちゃんはまったくの抵抗をする間もなく殺されてしまっている。

 

そんなやつらを一方的に制圧できたのは葛西のおかげなのは当然だが、やはり運がよかったのも大きな要因だ。

 

まさか羽入のかけてくれたおまじないが本当に効くとは思わなかったな。

 

これから大臣の孫を救出しにいく前に何か良いこと起こるおまじないとかない?と聞いたところ、

 

「不幸よ飛んでいけなのですー!なのですー!あうあう!!」

 

なんていいながら俺の周りをクルクル回りだし、これで灯火の運はばっちり上がりました!っと得意げに言った時は、無言で頭をなでてその場を去ってしまったが、この結果を見るにガチで効果があったのでないだろうか。

 

お礼にシュークリームを買って帰るか。

 

まぁこれで暇潰し編終了!悲劇の運命?おいおい回避楽勝じゃん!

 

なんて考えていたのだが

 

「‥‥なんだ‥‥これは?」

 

「おやおや‥‥これはすごいことになってますねぇ」

 

俺の背後から若い男性の声と年季の入ったおっさんの声が聞こえてしまった。

 

「・・・・ジーザス」

 

ゆっくりと後ろを振り向くと予想通り、見覚えのある二人組、大石さんと赤坂さんがそこにいた。

 

羽入へのシュークリームは酢昆布に変更だ!

 

「これはどういう状況か・・・・教えてくれますかねぇ?灯火さん?」

 

うわぁ・・・・呼ばれてしまった。

 

「・・・・こんなところで奇遇ですね大石さん」

 

自分でも暗い声になっているのがわかる、きっと目のほうもどんよりと濁ってしまっているに違いない。

この2人にだけは会いたくなかった。警察である2人にだけは。

 

「んっふっふっふ、本当に奇遇ですねぇ、まさかこんな場所であなたと会うことになるとは思いませんでしたよ」

 

そう笑いながら口にする大石さん。だけど目は全然笑ってない。

 

よりにもよって救出直後に遭遇してしまうとは。

 

これ絶対俺らが誘拐犯だって疑われてる。だって園崎だもん、ダム建造阻止のためなら大臣の孫くらい拉致るだろって思われててもまったく不思議ではない。

 

「いやぁ、今日はなんか暇だったから葛西と一緒に散歩をしてたんですけど、そしたらこの小屋から子供の泣き声が聞こえてきたもんだから、ちょっと様子を見に来たんですよ」

 

我ながら自分を殴り倒したくなるレベルの言い訳だ。残念ながら俺には圭一のような口先で話を誤魔化したりする才能はないようだ。

 

「あなたの『様子を見に行く』は、銃を片手に扉を粉砕することを言うんですねぇ。さすがは園崎家の人は違いますねぇ、んっふっふっふ!」

 

俺、園崎家じゃないねぇし!あと扉をヤクザキックで壊したのも、銃を片手に乱入したのも葛西だから!

 

「・・・・物騒な雰囲気だったから仕方なくね。中を覗いてみたら悪い顔をした大人と縄で縛られた子供がいたら、そりゃ強引にでも助けるでしょ」

 

「んっふっふっふ、ここの小屋に室内を覗く窓なんてありませんよ?」

 

もう俺、黙ってたほうがいいな、うん。

 

「後ろの男の子が捕まってた子供ですよね?そして後ろで倒れてる人達が中にいた大人たちですか?」

 

 

大石さんの視線が俺の後ろに隠れている子供とさらに後ろで倒れている男達にいく。

 

 

「あってるよ、葛西のことは大石さん知ってるでしょ?」

 

ここで葛西が誘拐犯に疑われないように発言する。

まぁダム建造妨害する時はよく葛西と一緒にいたから知ってると思うけど。

 

「ええ、よぉく知ってますよ。んっふっふっふ!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

俺の言葉を聞いて大石さんは意味深に笑い、葛西は無言で大石を睨んでいる。

勘弁してください。

 

・・・・俺、なんでこんなことしてるんだろ。

 

俺まだ小学4年生だよ?いや、元の世界を合わせると違うけど、それでも元の世界でも中学3年生だ。

 

青春のせの字も味わっていないというのに、どうして先にこんなバイオレンスな世界を味わわなければならないのだろうか。

 

なんかもう悲しみが一周してなんか笑えてきた・・・・。

 

「・・・・まぁ、細かい話は署のほうで聞くとしましょうか」

 

俺が現実逃避で死んだ目のまま笑みを浮かべていると、そんな俺の様子を不憫にでも思ったのか、大石さんはこの場での追及はせずに、続きは署のほうで聞くと言ってきた。

 

おお!これは助かるかも!落ち着いた場での話なら寿樹君の証言や犯人の証言で俺たちの無実が証明できるはずだ!もしもの時は園崎家パワーを使えばなんとかなるだろうし、なにより赤坂さんを早く家族の元に帰らせないといけない!

 

「んっふっふっふ、ではまずそちらの少年の保護をさせてもらいますよ、赤坂さんは後ろで倒れている2人の捕縛をお願いします」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・赤坂さん?」

 

大石さんの声に赤坂さんが反応しない。

 

というかずっと黙ってたから気にしなかったけど、赤坂さんの顔色が見てはっきりわかるくらい悪い。

なぜか、青ざめた顔で俺をじっと見つめた状態で固まってしまっている。

 

・・・・そういえば赤坂さんとはバスから降りた時に少し話して以来だな。

少ししか話していないとはいえ、顔見知りの少年がこんな物騒なところにいたらびっくりして当然だ。

 

「・・・・き、きみが・・竜宮灯火だったのか・・・・」

 

赤坂さんが震えた声でようやく口を開く。

 

え?なんでフルネーム?しかも俺のこと知ってたの?

 

ん・・・・まぁ考えたら園崎家とかかわってるせいで村でも有名になってしまったし、知っててもおかしくないか。

 

きっと大石さんから竜宮灯火という園崎家に関わっているガキがいると教えられたのだろう。

 

赤坂さんとはこれから良好な関係を築かなければいけないというのに大石さんめ、勘弁してくださいマジで。

 

「うん、バス停で会って以来だよね。顔色悪いけど大丈夫?」

 

「あ、ああ・・・・・大丈夫だよ」

 

真っ青な顔でそう言われても説得力ないよ赤坂さん。

 

一体どうしたのだろうか?原作では赤坂さんが体調不良になるなんてあっただろうか?

 

記憶を掘り起こしてみるが思い出せない。

まぁ赤坂さんも原作のキャラクターなんかじゃなく、ここに生きている1人の人間だ。

 

それならば原作通りの体調じゃないことだって当然あるか。

 

そんなことを考えながら、ふとポケットに手を入れると手に何かが当たる感触があった。

 

そういうばポケットにチョコレートがあったな!

甘い物でも食べれば赤坂さんの体調も少しはマシになるかもしれない。

 

赤坂さんへの俺の印象アップも出来て一石二鳥である。

 

「ふっふっふ、赤坂さんに良い物をあげるよ」

 

得意げな顔でポケットに手を入れながら赤坂さんに近づく。

 

このチョコはただのチョコでない!なんと礼奈の手作りチョコなのだよ!

礼奈の料理の腕は小学生にしてすでにかなりの腕前だ。

 

さすがにまだ包丁や危険な道具は使えないが子供用の料理器具で毎日一生懸命に料理を頑張っている。

 

なんでも良いお嫁さんになるために頑張っているらしい。

 

近い将来に、きっと礼奈が恋するであろう圭一がうらやましいぜ。

 

「ほら、このチョコでもたべ「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????」

 

俺がポケットからチョコを取り出し、赤坂さんに差し出した瞬間、叫び声とともにチョコを持っていた俺の腕が払われる。

 

え!?腕を払われた!?どんだけチョコ嫌いなんだよこの人!!

 

「若!!!?胴体に風穴空けたろかわれぇぇぇぇ!!」

 

葛西が俺の腕を払われたのを見た瞬間、震えあがりそうな怒声と共に銃口を赤坂さんに向ける。

 

「葛西まって!!赤坂さんも悪気があったわけじゃないって!!」

 

慌てて今にも鬼の形相で引き金を引こうとしている葛西を止める。

 

この人の場合、止めないと相手が誰であろうと引き金を引くから洒落にならない。

俺が葛西を止めた後、大石さんが赤坂の肩をしっかり掴んで落ちつくように言っていた。

 

もし今ので礼奈の作ってくれたチョコが割れでもしてたら許さないからな!

ずっと根に持つから覚悟しとけよ!

心の中でチョコが割れてないように祈りながらチョコが落ちた場所に向かう。

 

よかった!チョコは無事みたいだ。

 

俺の腕に赤坂さんの手が当たったためチョコ自体は無傷だったようだ。

これで俺も赤坂さんに恨み言をぶつけなくてよさそうだ。

そんなのんきなことを考えていた時。

 

「っっ!!??」

 

突如、首を何かに掴まれた。

 

「バカが、油断したな」

 

俺の目の前に、倒して捕縛したはずの誘拐犯の姿がそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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