レナの兄貴に転生しました【完結】   作:でってゆー

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5人(6人)集合 ついでにラスボスも集合

雲ひとつない晴天の青空の中、4人の子供が1人の老婆と歩いていた。

 

「おばちゃん。これで全部?」

 

カゴの中に大量に詰め込まれた野菜を家の玄関に置きながら尋ねる。

 

「ええ。それで全部だよ。重たいのにありがとうね」

 

「これぐらい大したことじゃないです」

 

同じく野菜の入ったカゴを持っていた悟史が和やかな笑みを浮かべてながらそう返す。

 

「沙都子は・・・・大丈夫じゃないな」

 

「ぜ、全然平気でしてよ」

 

見栄を張って俺たちと同じ量の野菜を運んでいた沙都子は生まれたての子鹿のように足をガクガクさせていた。

 

「はぅー!震える沙都子ちゃんかぁいいよう!」

 

そう言いながらくねくねしている礼奈。

 

礼奈も俺たちと同じ量を運んでいるが平気そうだった。

 

「4人ともわざわざありがとうねぇ」

 

「あれだけの量を持って帰るのはお婆ちゃんじゃ大変だよ」

 

「困ったときはお互い様ですわ!」

 

お婆ちゃんから感謝の言葉を悟史と沙都子がそれぞれ違った言葉で返す。

よし、これでまた村から見た悟史と沙都子の好感度が上がったな。

 

「お礼にお菓子をだすからゆっくりしていってね」

 

「はぅー!やったー!」

 

「ありがとうございます」

 

「ですわ!」

 

3人ともお菓子という言葉に一気に笑顔を浮かべて靴を脱いで家に上がる。

 

なぜこうなったかというと、いつも通り4人で遊んでいた俺たちは、重そうなカゴを必死で運ぶお婆ちゃんと遭遇した。

そして当然の流れでお婆ちゃんの手伝いをすることになったのだ。

 

こういった手伝いは何もこれが初めてではなくかなり頻繁に行っている。

これもいずれ訪れる最悪の運命に備えての行動のひとつだ。

 

こういった手伝いをすることにより悟史と沙都子の印象を少しでも良くしておく。

 

そうすることによって少しでも悟史たちの迫害を和らげさせることに繋がればいいと思っている。

 

地味なことだが、こういった小さなことが後から効いてくるんだ。

 

それに沙都子は最初の頃は大人が苦手で嫌そうだったが手伝ってお礼を言われていく内に苦手意識はなくなっていたように思う。

 

これは嬉しい誤算だった。

これで両親との不和を解消できたらと思う。

沙都子と両親の不仲は後に起こる両親の転落事故へと繋がる。

 

必ず救うなんて思ってはいないが、救える人は救いたい。

 

「この後どうするの?」

 

畳に座り、お婆ちゃんが用意してくれたお菓子を食べながら悟史が聞いてくる。

 

「ああ、公由さんに今日はお呼ばれしてるからそっちに行こう」

 

「え?いつの間に」

 

「昨日たまたま会ったからその時に約束した」

 

公由さんは、この雛見沢で村長をしているおじいちゃんで優しくて穏やかな良い人だ。

 

「・・・・公由おじちゃんのところですの?」

 

沙都子が口元をヒクヒクさせながら嫌そうな顔をしている。

 

公由さんのところに行くと毎回かぼちゃが出てくるのだ。

かぼちゃが嫌いな沙都子にとってあの家は敵地と言っても過言ではないのだろう。

 

好意で出してくれるから沙都子も断りにくいのだ。

 

「沙都子、もちろんお前も行くよな?」

 

公由さんは雛見沢の御三家の一つである公由家の代表で雛見沢でかなりの発言力を持つ人だ。

公由さんの悟史と沙都子に対する好感度は可能な限り上げておきたい。

 

よって悟史と沙都子は強制参加である。

 

「そ、そういえば今日は用事がございましたわ!」

 

「そうなのか?悟史」

 

「ううん。特にないよ」

 

あっさりと沙都子を見捨てる悟史。

こいつ、俺と会ってから性格悪くなったな。

いや良いことだと思うけどね?

 

「に、にーに!」

 

味方をしてくれると踏んでいた悟史に裏切られ、顔を絶望に染める沙都子。

 

「沙都子。好き嫌いはよくないよ」

 

「・・・・あぅ」

 

悟史に頭を撫でられながらそう言われ、ションとなる沙都子。

 

「はぅはぅー!涙目の沙都子ちゃかぁいいよう!お持ち帰りー!!」

 

そう言いながら沙都子に抱きつく礼奈。

本日二度目のかぁいいモード。

 

この礼奈のかぁいいモードは気が付いたら礼奈に搭載されていた。

いやほんとなにがあった。

 

「じゃあ決定だな。早速行こうぜ」

 

沙都子に抱きついて離れない礼奈にチョップ入れながら立ち上がる。

 

ちょうどお菓子も食べ終えたのでお婆ちゃんにお礼を言って外に出る。

 

「そういえば知ってる?」

 

「ん?何を?」

 

お婆ちゃんの家を出ると悟史が思い出したかのようにそう言ってきた。

 

「もうすぐここに診療所ができるらしいよ」

 

「げっ」

 

悟史の口から予想外の言葉が飛び出し、心臓が大きく跳ねる。

 

診療所・・・・この雛見沢にできる診療所はひとつだけだ。

 

入江診療所。表向きは普通の診療所だが実際はそんなところではない。

 

雛見沢症候群。この雛見沢特有の感染症だ。

確か、こいつを軍事転用か何かに利用するために発足された極秘機関とかだったはず。

 

そして、この世界のおけるラスボスがそこにいる

 

鷹野三四。この物語で梨花ちゃんを殺して村の人たちを皆殺しにする最悪な存在。

 

会いに行くべきだよな?

いやでもめちゃくちゃこえーーー!!

 

あの人も相当暗い過去を持ってる可哀想な人なんだけどさ。

ちょっと危険人物過ぎだよね?

 

生で見て平静でいられるかと言われるとちょっと自信がない。

 

よく考えてから会いに行こう!そうしよう!

 

「診療所ですの?」

 

「そうだよ。雛見沢には病院がないからみんな喜ぶよ」

 

「まぁそれはそうなんだよ、うん」

 

悟史の言葉に同意する。

 

確かに診療所が出来るのは嬉しい。

雛見沢には病院がないから何かあれば隣町の興宮まで行かないといけないからな。

 

「お兄ちゃん?」

 

礼奈が心配そうに俺を覗き込んでくる。

 

「ん?どした?」

 

「・・・・ううん。なんでもない」

 

そう言いながら俺に抱きついてくる礼奈。

 

・・・・心配させたか、本当に礼奈は鋭いな。

 

さすがは俺の妹。洞察力がやばい。

いつか礼奈のこの勘の鋭さに助けられる日が来るかもしれない。

 

「よし!公由さんのところに行こうぜー!」

 

気持ちを切り替えて大きな声でそう言って歩き出す。

そうして再び視線を前に向けると、前方から人影が見えた。

 

って梨花ちゃんじゃん。

 

「あ!トウカ!」

 

「梨花ちゃん?」

 

「トウカがいるのです!」

 

梨花ちゃんは俺を見つけると嬉しそうに目を輝かせてこちらに駆け寄る。

そしてそのまま俺に飛びついてきた。

 

「こら。いつも言ってるだろう?走ったら危ないって」

 

「えへへ。ごめんなさーいなのです」

 

こいつ、反省してないな。

まぁ可愛いから許しちゃうけども。

 

「おおおおおお兄ちゃん!?そそそそのかぁいい子は誰なのかな!?かな!?」

 

やばい。礼奈がかつてないほど興奮してる。

気持ちは痛いほどわかる。

 

けど少し落ち着け。

 

「初めましてなのです。古手梨花なのです。にぱー☆」

 

梨花ちゃんは礼奈の方に顔を向けると俺に抱きついた状態のまま挨拶をする。

 

「はぅ!!!」

 

梨花ちゃんの笑顔に悩殺され地面に倒れる礼奈。

 

「灯火。知り合い?」

 

「ああ。いつも神社に行ってるって話してるだろ?その神社の神主さんの娘さんだ」

 

「なるほど、梨花ちゃんだね。僕は吉澤悟史。こっちは妹の沙都子。よろしくね」

 

「はい!よろしくなのです!!」

 

 

「・・・・」

 

柔和な笑みの悟史とは違い、沙都子は不機嫌そうにしながら口を閉じる。

久しぶりの同年代の女の子だからか警戒しているようだ。

 

まぁでも梨花ちゃんのコミュ力があればすぐに仲良くなるだろう。

 

ちなみに礼奈は放置。誰も起こそうとしないところに友情を感じる。

 

「サトシにサトコ。2人ともトウカの友達なのですか?」

 

「うんそうだよ」

 

「じゃあ、そっちで倒れてるのはだれなのですか?」

 

梨花ちゃんは地面に恍惚の笑みを浮かべながら倒れている礼奈に指をさしながら言う。

 

「恥ずかしながら俺の妹だ。可愛いものに目がなくてな。梨花ちゃんの可愛いさに悩殺されたんだ」

 

「みぃ?のうさつ?」

 

「梨花ちゃんの可愛さにメロメロなのさ」

 

「おほほほほ!私だってそれぐらい出来ましてよ!」

 

「安心しろ。お前には一生縁のない話だから」

 

「むきぃぃぃぃ!」

 

「ばっ!噛むな!」

 

ついつい反射的に沙都子をからかってしまい、狂犬と化した沙都子に襲われる。

 

「僕も襲うのですよーワンワン!」

 

梨花ちゃんも沙都子と一緒になって噛み付いてくる。

 

「ちょ、マジで歯をたてるな!?沙都子お前の歯は八重歯だからいてぇんだよ!」

 

この後、2人によって俺の体中に2人の歯型がついた。

子犬などの甘噛みみたいなものだが、沙都子はけっこう本気で噛んできやがった。

 

痛かったけど、梨花ちゃんと沙都子が仲良くなったみたいなので良しとしよう。

 

 

 

 

「そういえば梨花ちゃん」

 

梨花ちゃんに近づき小声で話しかける。

 

「みぃ?なんですか?」

 

「今は羽入はいるの?」

 

「いるのです!1番後ろにいるのですよ!!」

 

梨花ちゃんは振り返り、最後尾である悟史のさらに後ろを指差しながらそう言う。

 

一瞬、俺達5人を優しい笑顔で見守る羽入の姿が見えた気がした。

 

「いつか、ちゃんと羽入もこの輪の中に入れてやりたいな」

 

俺は6人で笑いながら歩く光景を思い浮かべた。

 

「俺に梨花ちゃん、礼奈に悟史に沙都子。そこに羽入を入れた6人で遊びたいな。山で走り回って、川で水を掛け合って、明日は何をするか想像しながら眠る。そんな毎日を送れたらいいな」

 

「みぃ。そうなったらすごく楽しいと思うのです!」

 

「だな」

 

そしてこれは難しいことじゃない。きっとそう遠くない未来の話に違いない。

 

ここに、まだ出会ってないが魅音に詩音、そして圭一が入ればもう最高だ。

 

「うし!灯火さん頑張るぜ!最高の未来をこの手で掴みとる!」

 

「みぃ。トウカ頑張れなのですよ」

 

「おう!まか「あらあら。可愛い子供たちがいるわね」

 

俺がやる気を出して叫ぼうとした瞬間、見慣れぬ女性が立っていた。

 

「・・・・どちら様?」

 

「あら。ごめんなさいね。私はもうすぐここにできる診療所でナースとして働く」

 

女性はこちらを見下ろしながらなぜか寒気を感じさせる笑みを浮かべる。

そして自身の名を口にした。

 

「鷹野三四って言うの。よろしくね」

 

 

 

帰ってお願いだから。

 

 

 

 

 


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