レナの兄貴に転生しました【完結】   作:でってゆー

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綿流し後3

「・・・・北条さんが雛見沢症候群というのは本当なんですか?」

 

重い空気が漂う入江の診療室の中に私と両親の3人が集まっていた。

集まった理由は今回のことの真相を入江の口から両親へ説明してもらうためだ。

 

重い沈黙が流れる中、母が代表して尋ねる。

両親には診療所に来る前に私から今回の本当に原因について説明している。

私の説明を聞いて最初は半信半疑な様子だったけど、私が入江から聞いたことを含めて真剣に話したことで最終的には二人とも信じてくれた。

 

母の言葉を受けた入江は辛そうに目を伏せながら肯定する。

 

「・・・・はい。申し訳ありません、全ては私の責任です」

 

そう言いながら入江は私達へ頭を下げる。

入江はこの件のことを本当に自分のせいだと思っているんでしょうね。

あなたのすぐ近くに今回の件の黒幕がいるとも知らずに。

 

頭を下げる入江に父が若干顔を青くさせて質問をする。

 

「・・・・以前に説明していただいた時に雛見沢症候群の症状について教えてもらいましたが、つまり今回北条さんが起こした事件の原因は雛見沢症候群だということですか?」

 

「・・・・その通りです。北条さんに何があったかはわかりませんが、彼女は雛見沢症候群を発症させ疑心暗鬼に陥り錯乱、結果としてこのようなことになってしまいました」

 

「「・・・・」」

 

入江の説明を聞いて2人とも黙り込んでいしまう。

半信半疑だった雛見沢症候群という病気の患者、それも知り合いがなってしまったことで二人に何とも言えない表情を浮かべる。

 

二人の様子を見ていた私はさらに補足を加える。

 

「・・・・みぃ、それも末期症状なのですよね?」

 

「・・・・ええ、以前にも説明しましたが我々は雛見沢症候群をレベル1から5までで分類しています。レベル3から症状は現れ、レベルが上がるにつれて幻覚や幻聴そして疑心暗鬼を発症していきます。そしてレベル5になると極度の疑心暗鬼によって錯乱状態になり、最後は」

 

「「・・・・」」

 

入江は最後まで言葉を言うことが出来ずに黙り込んだ。

この説明は以前に私達全員が聞いている。

だから入江が言わずとも全員最後の言葉の続きはわかった。

 

・・・・このままでは悟史達の母は首を掻ききって死んでしまうのだ。

 

「な、なんとか治療することは出来るんですよね?」

 

「・・・・」

 

黙り込んでしまった入江に父が声を震わせながら問いかける。

しかし・・・・その問いかけに入江は答えることは出来ない。

 

私は入江が答えることが出来ない理由を知っている。

なぜなら・・・・末期症状まで発症した人はもう治らないのだから。

 

「・・・・今の私達の研究段階では、レベル5まで進行してしまった者の治療をすることは出来ません」

 

入江は懺悔するかのように父の言葉に答える。

その言葉を聞いた父は辛そうに顔を歪める。

 

半年前の悟史達の両親達の謝罪以来、私の両親は彼らとよく話すようになった。

彼らが雛見沢への貢献のために古手神社の掃除を手伝いにやってくる度に世間話に花を咲かせていたのを何回も見た。

 

もともと彼らの息子と娘である私達が仲が良いのだから、その親である彼らも私達の話を中心に話題が尽きることもなく楽しそうに話しているようだった。

 

そんなせっかく仲良くなれた人達がこんなことになってしまった。

それも雛見沢症候群という私達にしか知られていない病気によって。

 

絶望した表情を浮かべる三人を見ながら私は口を開く。

確かに現状では末期症状にまで陥った人を治すことは出来ない。

でも、治すことは出来なくても症状を和らげることは出来る。

 

雛見沢症候群の女王感染者である私の頭を入江に調べてもらう。

女王感染者である私には雛見沢症候群を抑える特別な何かがあるらしい。

 

そのデータを入手することが出来れば末期症状から脱することが出来るかもしれない。

今までの世界では母親ではなく、沙都子が雛見沢症候群の末期症状を発症していた。

 

そしてその時に入江に私を調べさせて末期症状を脱する治療楽を作ってもらっていた。

だから今回も私を入江に調べさせれば末期症状を脱することが出来るかもしれない。

 

「入江、今の研究段階では治療は出来ないで合っていますですか?」

 

「・・・・ええ、治療薬の開発を進めていますが、今の段階ではデータが不足していて、とても使用することは出来ません」

 

「・・・・だったら「データが集まればいいのね」みぃ!?僕のセリフを取られたのです!?」

 

私が言おうとした言葉が母によって奪われる。

ちょっと!ここは私がクールに決めてみんなから驚かれるところでしょう!

 

少し恨めしそうに目を向ければ、そこには覚悟を決めた表情を受かべている母の姿があった。

 

「私を使って研究データをとってください。私は元女王感染者というものなんですよね?だったら治療薬を作るためのデータを集めるのにお役に立てるはずです」

 

「そ、それはすごくありがたい申し出ですが、よろしいのですか?」

 

「はい、北条さんは私達の大切な友人なんです。彼女が死ぬとわかっているのに何もしないなんてことは出来ません」

 

「あ、ありがとうございます!必ず治療楽を作り北条さんを救ってみせます!!」

 

「・・・・みぃ、お母さんより僕の脳を調べたほうがもっとデータをとれると思うのです」

 

少し口を尖らせながら小さな声で呟く。

それを聞いた母さんは鋭い目を私へ向ける。

 

「梨花。気持ちはわかるけどあなたは幼すぎるわ、あなたの母として危険な検査をさせることは出来ません。入江さん、梨花にはこれまで通りの検査でお願いします。その代わり私が梨花の分までお手伝いをさせていただきますので」

 

「・・・・2人のようにお役に立てるかわかりませんが、私も出来る限りのお手伝いをさせてください」

 

私の言葉を聞いた母は即座に私の脳を調べさせるのをダメだと言う。

その代わり自分が頑張ると言い、父も出来る限りのことをすると入江さんに言っていた。

 

はぁ・・・・この様子では私を調べてもらうことの許可を得ることは難しそうだ。

いつものように事後承諾のような形で無理やりやっておけばよかったかしら。

 

「・・・・本当にありがとうございます」

 

両親の言葉を聞いた入江は目を潤ませながら深く頭を下げる。

それを両親は慌てて頭を上げるように言っていた。

 

「入江先生、頭を上げてください。北条さんがあんなことになってしまったのは私達、村の者達のせいです。こんなことで罪滅ぼしになるとは思いませんけど、出来る限りのことはしたいんです」

 

「そ、そんなことは!私が北条さんの症状にいち早く気づいてさえいればこんなことにはならなかったんです!」

 

父の言葉を聞いた入江は慌ててそれを否定する。

しかし両親はゆっくりと首を振る。

 

「・・・・いえ、今日行われた会議で私達は自分達が犯した罪を知りました。大人である私達が子供に気付かさられるなんて、本当に恥ずかしい限りです」

 

母は俯きながら恥じるように語る。

その様子を入江は怪訝そうな表情で見つながら口を開く。

 

「・・・・気になってはいたんですが、灯火さんはどうしたのでしょう?彼も無関係ではありませんので北条さんのことを説明したいのですが」

 

「「「・・・・」」」

 

入江さんの言葉を聞いた瞬間、診療室内の空気が凍り付く。

 

・・・・ずっと考えないようにしてたのに。

目を細めながら場の空気の変貌に固まる入江を睨みつける。

 

あの会議で灯火が部屋の外に連れていかれた後。

彼がいなくなったことで話は進まなくなり、その後すぐに解散となった。

去り際に茜が北条の問題は今日の会議の内容を聞いて園崎家で判断し、後日判断を伝えると言っていた。

 

会議が終わった後、私はすぐに灯火のことを確認したけれど茜は答えてくれなかった。

ああ・・・・彼は無事なんだろうか?

彼のことを気に入っている園崎家が何かするとは思えないが、それでも不安なものは不安なのだ。

 

彼のことが心配で会議が終わってからも私はろくに眠れていない。

もし彼の身に何かあったら・・・・ダメだ、ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだ!!!

 

大丈夫、灯火は無事に決まってるわ!どうせ今頃家に帰って疲れて眠ってしまっているだけに決まっている。

早く彼の家に行って叩き起こさないといけないわね、私があなたのせいで眠れていないというのに、何を呑気に寝ているんだってね。

 

もし・・・・彼が家にいなかったら。

いえ、みんなの目がない時に鷹野に捕まっていたとしたら。

 

「あ、やっと見つけた!梨花ちゃんに梨花のお母さんとお父さん!入江さんのところにいたんだな」

 

私の頭の中で最悪な想像が完成しかけた時、待ち望んでいた声が耳に届く。

急いで声のほうへ振り向けば、私がずっと心配していた男が扉の前に立っているのが見えた。

 

「灯火ちゃん!よかった、無事だったのね。あなたが園崎家に連れていかれた時は本当に心配で」

 

「あらら、それは心配させてしまってごめんなさい!でも少し叱られただけでこの通り何ともないです!ちょっと眠いですけど」

 

心配そうに近寄ってくる母に灯火が笑顔で答える。

そして眠たそうに大きく口を開けて欠伸を浮かべる。

それを見ていた両親は安心したようにため息を吐いて灯火に笑いかける。

 

私はそんな光景に一切興味を持つことなく、ただただ彼の状態を観察する。

そして、彼の右手の指二つに包帯が巻かれていることに気が付いた。

 

「灯火」

 

「ん?ああ梨花ちゃんも心配かけて悪かったな。とりあえず今どうなってるのか教えてくれると助かるんだが」

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

申し訳なそうな表情で近づいて来た灯火に問いかける。

その時に私達に見えないように後ろに回していた手を掴んで包帯が巻かれた指を全員に見せつける。

 

「・・・・いやこれはちょっと指の皮を切っただけだよ」

 

「へぇ、だったらこの包帯を解いても別にいいわよね?ちょうど入江がいるんだし綺麗な包帯に替えてもらえばいいわ」

 

「い、いや大したことないから包帯は変えなくていいよ!本当に大したことないから!」

 

「・・・・」

 

私の言葉を聞いた灯火は私から目を逸らしながら適当な嘘を口にする。

・・・・自分でも怖いほどの怒りが身体を満たしていく。

しかしそれとは裏腹に心が冷たくなっていく。

 

危ないことはしないって言ったのに、灯火は嘘をついた。

私がどれだけあなたのことを心配していると思っているの?

それなのにあなたは何事もなかったかのように周囲に振舞っている。

 

彼はきっと私がどれだけ心配していたか気付いていないんでしょうね。

私がこの数時間どれだけ心が狂いそうだったか、彼は気付いていないんでしょうね。

 

昨日あれだけ必死に危険なことはしないでって言ったのに。

・・・・本当にしょうがない子。

どうやらこの子には二度と危ない真似をしないように色々と教えてあげないといけないようね。

 

「あ、あの梨花さん?なんか瞳の中にあるはずの光が見当たらないんだけど。あ、あと手を離してくれないか?地味に痛いんだが」

 

私の怒りを察したのか、灯火は冷や汗を流しながら後ずさる。

しかし私が彼の手を強く握っているからこれ以上離れることは出来ない。

 

さらに私が彼に近づこうとした時、診療室に入江を呼ぶ声が届いた。

それは悟史達の父が目を覚ましたという知らせだった。

 

「入江所長、北条さんが目を覚ましたそうです」

 

「わ、わかりました!すぐに向かいます」

 

「よろしくお願いします。すでに息子さんと娘さんは病室にいらっしゃいますので」

 

私達のことを気にしながらも悟史達の父の元へ向かう入江。

その後に私の両親も続く。

私の手から逃れた灯火もどさくさに紛れてみんなの後に続いていた。

 

・・・・まぁいいわ、今は悟史達のことを優先しましょう。

 

 

 

でも、次はないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「北条さん、目が覚めたんですね!本当に安心しました」

 

「・・・・入江先生、ありがとうございます。事情は息子達から聞きました」

 

病室にやってくるとベッドで起き上がっている悟史達の父とそれを心配そうに見つめている悟史と沙都子の姿があった。

どうやらすでに今の状況を2人から説明をうけていたようだ。

事情を聞いた彼は顔を歪めながら入江に問いかける。

 

「・・・・嫁の容態は」

 

「・・・・残念なら芳しくはありません。彼女は今、錯乱状態になってしまっています。今は睡眠薬を投与して眠ってもらっています」

 

「・・・・」

 

入江の話を聞いた悟史達の父は悔やむように無言で顔を伏せる。

それを見た入江はすぐに口を開く。

 

「あなたの妻は必ず私達が助けます。だから今はご自身のことを気遣ってください」

 

「・・・・ありがとうございます」

 

「北条さん・・・・」

 

「っ!古手さん、来てくださっていたんですね。あの、今回のことは・・・・」

 

「・・・・すでに聞き及んでいます。私達は北条さんが村を裏切ったなんて思っていません。ですが、その他の人達は」

 

「そんな・・・・」

 

「・・・・今回の件はほとんどの村の人達は知りません。園崎家によってすぐに口止めがされましたので、最終的に今回のことは園崎家が判断するみたいです」

 

「だったら俺が今すぐ園崎家に行って説明を、ぐっ!!?」

 

「北条さん!!無理をしてはいけません!まだ傷は全く完治していないんです!」

 

慌ててベッドから出ようとして痛みで顔を歪めている。

それを見た入江は慌てて彼を止めていた。

 

「止めないでくれ!!このままじゃ俺達はこの村にいられなくなる!もう少しで悟史君達と本当の家族になれるんだ。こんなことで村を追い出されたら、それこそ妻が悲しむ!!」

 

「落ち着いてください!傷口が開いたらいけない!あなたに何かあったら、それこそ奥さんは悲しみます!!」

 

「それは、しかし・・・・」

 

「そうそう、怪我人は大人しくしてなきゃいけないよ」

 

焦る悟史達の父を入江さんが止めている。

そして、病室の扉のほうから女性の声が届いた。

 

振り向けば、そこには今の話の中心になっている人物。

園崎家、魅音達の母である茜の姿があった。

 

「っ!!?園崎さん!今回のことは決して俺達が村を裏切ろうとしたわけでは」

 

「はいはい大きな声で叫ぶんじゃないよ。傷口が開いたらどうすんだい」

 

大声で叫ぶ彼を茜が止める。

そしてゆっくりと彼に近づきながら口を開く。

 

「いや、本当に災難だったね。通り魔に襲われたんだって?よく無事だったもんさね」

 

「・・・・え」

 

茜の言葉にその場にいた全員が困惑する。

それを見た茜は口元に笑みを浮かべながら続けて口を開いた。

 

「奥さんもあんたが刺されたのを見て気を失ったらしいね。昨日の会議であんたの息子に教えてもらった時はびっくりしたよ。ねぇ?」

 

「え!?あ、は、はい!」

 

いきなり話を振られた悟史はびっくりしながらも茜の話に頷く。

なるほどね・・・・話が読めてきたわ。

どうやら園崎家は今回のことをなかったことにするつもりのようだ。

 

「この状態じゃあ雛見沢への貢献はしばらく無理そうだね。ゆっくり休んで退院したらまた始めるといい。村の連中にも()()()()()()私達から説明しておくよ」

 

「っ!!ありがとうございます!!退院したらすぐにまた雛見沢のために頑張ります!!」

 

「期待してるよ。じゃあ私はこれでさよならだ、もう息子達を泣かすんじゃないよ」

 

目に涙を溜めながら頭を下げる悟史達の父を見た後に茜は病室を後にする。

悟史と沙都子も同じように必死に頭を下げていた。

・・・・とりあえず何とかなったということでいいのかしら。

 

茜の言葉を聞いた胸をなで下ろしていると、茜の出ていった後にバレないように部屋を出る灯火の姿を見た。

それに気付いた私もみんなにバレないように後に続いた。

 

 

 

 

 

「茜さん」

 

「なんだい灯火、ついて来たのかい?」

 

廊下を歩いていた茜さんに声をかける。

茜さんは俺が来るのをわかっていたかのように笑みを浮かべながら振り返った。

 

「・・・・今回の件のことありがとうございます」

 

「・・・・あんたがちゃんとケジメをつけた。私達も同じようにケジメをつけただけさね」

 

茜さんは俺と同じように包帯を巻いた二本の指を見せる。

・・・・俺は悟史達の父と母を庇った罪で二つ。

しかし、茜さんは一体何の罪を犯したというんだ。

 

「・・・・両親はともかく息子達は村の一員、御三家である私達が守るべき対象だ。それをどこの馬の骨とも知らない連中に危険な目に遭わされたんだ。これはそのケジメだよ」

 

「・・・・」

 

「北条の息子が言っていた連中のことは前々から気にはなっていたんだ。何をしているかは知らないが、村の連中を傷つけたんだ。責任は必ず取らせるさ」

 

茜さんは目を細めながらそう呟く。

園崎家が鷹野さん達のことをどこまで掴んでいるかわからないが、茜さんが本気で言っていることがわかる。

悟史が言っていた時は信じていないようなことを言ったけど、内心では違っていたということなのか。

 

「・・・・灯火、あんたの言っていたことは正しいよ。私らはダム戦争の時に鬼になったんだ。村を守るためには全員が鬼になるしかなかったからね」

 

茜さんは目を伏せながらゆっくりと語る。

俺は茜さんの言葉に黙って耳を傾けた、

 

「でももうダム戦争は終わった。もう鬼でいる必要なんてないんだ。それを私達はいつまでも鬼のまま、このままじゃ私達は人間に戻れなくなる。どこかで変わる必要があるのさ」

 

「・・・・俺もそう思います」

 

「ふ、あの会議であれだけのことを言ったあんた達がいるならこの村も安泰だね。これで新たにやってくる人たちが良い風を吹かせてくれたらいいんだけどね」

 

「・・・・新たな連中?」

 

茜さんの言葉に眉を顰める。

茜さんはそんな俺を見て小さく笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「まだ内緒だけどね、今朝、園崎家の土地の一つを売りに出そうって話が出てきたんだ。余所者嫌いな御婆がそう呟いた時には心臓が飛び出るかと思ったよ」

 

「っ!!?それって!」

 

俺のほうこそ心臓が飛び出そうだ。

そうだ、圭一がここにやってくるためには園崎家が土地を1つ売りに出さないといけなかったんだ。

家を建てられる土地がなければ圭一達はここにやってきてはくれないのだから。

 

やべぇ、今の今まですっかり忘れていた。

茜さんが言ってくれなかったら、いつまで経っても圭一が来なくてヤバいことになってたぞ。

 

茜さんは口を開けたまま呆ける俺を見て可笑しそうに笑う。

 

「それとまた別の話も話題に上がったよ。それもあんたのことさね」

 

「え、もしかして俺に対してお魎さんがお怒りだったりとか」

 

最悪の想像して顔を青ざめる。

やべぇ、これ以上は本当に泣き叫びそうなんだけど。

 

「あっはっは!逆だよ逆!今回のことで完全にあんたのことを気に入ったみたいだよ!」

 

「そ、そうですか。それならよかったです?」

 

俺の言葉を聞いて笑う茜さんを見て胸をなで下ろす。

あれ?これはよかったのか?いまいち判断が出来ない。

 

「そんなあんたに良い話があるだけどね・・・・あんたには魅音と夫婦になってもらいたいんだよ」

 

「・・・・んん?」

 

茜さんの言葉に冷や汗が流れる。

話がいきなりぶっ飛んだ気がするんだけど。

 

「まぁ元々口には出さなかっただけで園崎家では暗黙の了解でわかってたことだったんだけどね。今回の件でいよいよって感じだね」

 

「・・・・いや、俺まだ小学生なんだけど」

 

身体中から汗を噴き出しながら口を開く。

待って、待って待って待って!

いきなり話が重いんだけど!

 

魅音は確かに可愛いが、俺の中ではあくまで妹なんだよ!

礼奈も詩音も沙都子も梨花ちゃんも全員そうだ!未だに好きな子すらいないのに、いきなり結婚なんて理解できるか!

 

「あっはっは!まぁいきなり言われても混乱するだろうね。でも私達はもうあんたを手放す気はないよ。そのことをしっかりと自覚しておきな」

 

茜さんは笑いながらそう言って診療所を後にする。

残された俺は呆けたままそれを見送るしかできない。

 

これから先、一体どうなっていくんだろうか。

明るい未来を想像して乾いた笑みを浮かべる。

 

・・・・これって誰に相談すればいいんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「・・・・」」

 

 

 

 

 

 

 




灯火が連れていた後の描写も書いてはいたんですが、少し残酷な描写になりそうだったので止めました。

すいません、この問題の解決に関しては少し雑かもしれません。
とりあえず新章優先でいかせてください。


次話から新章突入です。

そしてヤンデレ達が本格始動。
それとIFのストーリもこの章から本格的に動き出します。
こちらのほうも読んでくださると幸いです。


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